《神様との賭けに勝ったので異世界で無雙したいと思います。》第21話 最弱
「む、無理……もう全部無理……なにがなんでも無理……無理以外の何でもない」
「あ、あの……悠斗様、大丈夫ですか?」
リリアが心配そうに名前を呼んでくる。
文字通り死ぬほど過酷な訓練でへとへとな僕にはその姿がまるで天使に見えた。
決めた。
僕が死んだら全財産を彼に譲渡しよう。
一銭も持ってないけど。
「あの、佐山さん? 次は合同力訓練らしいんですけど」
「無理、仮病でお腹痛い」
困った顔をする秋山さん。
みんなが心配してくれている。
姫木さんも、栗田さんも、秋山さんも、リリアも。
だけど僕はそれどころじゃなかった。
筋痛は治癒スキルでどうにかなかったけど、未だに癒えることのない疲労は消えず指一本かす気力もない。
セラさんがトイレかどこかに行ってる間にこっそり治癒スキルを自分に使わなければ本當に死んでいたんじゃないだろうか?
「どうしましょう?」
「さすがに休ませてあげた方がいいんじゃ……」
「そうですね……ほんとに死にそうですし」
Advertisement
皆の心遣いが嬉しかった。
そうだ、そうだよ。
人とは本來こうあるべきなんだ。
間違っても休憩もロクにさせずに日が沈むまで走らせるのはいけないことなんだ。
僕はようやく大切なことに気付いた。
「佐山悠斗はいるか?」
ビクリッ、とが反的に跳ね上がる。
こ、この聲は……と、恐る恐る聲の方向に目を向けた。
「せ、セラさん……?」
そこには騎士団団長のセラさんがいた。
相変わらず暑苦しいフルプレートアーマー。
金屬のれる音がトラウマになってるな僕。
「そこにいたか、いくぞ」
「……どこにですか?」
「お前が知る必要はない」
いや、あると思います。
◇
セラさんの背中を見ながら城を歩く。
僕は必死にセラさんの説得を試みていた。
「セラさん、僕が思うに人は優しくあるべきだと思うんですよ。
人が人に優しい世界、それが僕の夢でした。世界の平和……何て尊いんでしょう。
間違ってもスパルタな特訓で死ぬ寸前まで走らせたりしてはいけないんです。
なのにその次の日にまだ同じ過ちを繰り返そうとしている。人は愚かな生きだと思いませんか?
ですが、だからこそ人とはおしい。人とは學ぶ生きです。そう、長できるんです。
反省を繰り返し失敗を失敗として認識した時、人は初めて」
「そこまで喋る元気があるなら過酷な訓練でも大丈夫だろう」
「生涯黙り続けることをここに誓います」
「なら黙って歩け」
駄目だ、何を言おうとこの人は止まらない。
城を歩く二人分の足音。
まるで死刑宣告のように聞こえる。
「ご苦労」
そう言って門番の人に労いをいれる。
見張りをしている人を労う暇があるなら殺そうとした相手を労わってほしい。
そのまま城門を通った。
「外に行くんですか……?」
「そうだ」
えぇ……何しに行くの……?
そして、やってきたのは森だった。
暗くじめじめしていて変なツタが木から垂れ下がっている。
森の奧は真っ暗でほとんど見えない。
晝間だというのにそこだけ夜のような……
「殺せ」
「主語は何処へ」
セラさんはチッと舌打ちをして説明してくれる。
いや、さすがに今のは分からないですよ。
森まで來て殺せの一言だけ告げられても凄い困る。
「この森は魔の巣窟だ」
「えーと、つまり何でもいいから魔を殺してこいと?」
「そうだ、ただし……」
セラさんは人差し指を一本だけ立ててきた。
僕は恐る恐る「10匹……?」と、尋ねた。
「千匹だ」
レベル凄く上がりそうですね。
背中から嫌な汗が止まらない。
「もう一つ條件だ、盜賊団がいるらしい噂がある。そいつらも殺してこい」
「一応戦闘未経験なんですが」
無駄とは思いつつも一応言ってみる。
こんなことで諦めてくれるはずもないだろうと。
まともな答えが返ってくることも期待していなかった。
だけど、意外なことにセラさんは真面目に言ってくれた。
「生死を賭けた戦闘において一番大切なものとは」
セラさんは一呼吸置いた後で答えた。
「経験があるか否かだ」
え、なに? そういう話?
と、思ったけどそんなわけないだろう。
真面目に聞くとしよう。
「お前の世界に戦爭があるかは分からないが、この世界では頻繁に戦爭が起きる。
小さなものから數十萬単位が殺し合う大きなものまで。
大勢の生命が消えていった。そして、戦爭において生き殘った兵士が決まって言う言葉がある。それは」
―――二人目からは楽だった。
「………」
「殺し合いにおいてこの差が絶対的な優劣を決する。
その一歩を踏み出したことがあるか否か。その一歩は小さな一歩……だが、しかしその一歩を踏み出した者と踏み出せなかった者の間は斷崖絶壁だ」
なるほど……つまりセラさんが言っているのはそういうことなんだろう。
これはレベルを上げることが目的じゃない。
戦闘に慣れさせるわけでもなければ強くするわけでもない。
「歴代の勇者の中で最強と呼ばれていた勇者がいた」
「剣聖リョーマですか?」
「ああ、そんな男もいたらしいな」
「? 違うんですか?」
「違う……とは斷言できないがな。どちらも死んでいるのだから」
だが……と、彼は続ける。
「スキルの數だけが全てではない。その勇者はある特別なスキルを有していたんだ」
僕が黙ったまま聞いていると、彼はフッと笑った。
その笑みにはどこかやり切れない悲しみが浮かんでいる気がした。
「スキル名は不明、その力も不明。そして、その勇者は生涯一度もその力を使うことはなかった」
「じゃあ……なんで最強だと?」
「その勇者はこのスキルを使えば世界を破滅させることができるとすら豪語したんだ。そして、誰もがそれを否定できなかった」
「なぜです?」
「神眼というスキルを知っているか?」
心臓が跳ね上がった。
どくん、と鷲摑みにされたような覚。
だけど僕は平靜を裝った。
落ち著け……僕のことを言っているわけじゃない。
過去の誰かがその勇者に神眼スキルを使ったということだろう。
そして、召喚したばかりの勇者の言葉が真実だと、そのスキルが証明したんだ。
「偽裝の上位スキルでも持っていたんだろう、あるいはそのスキル自のランクが高かったか。とにかくそのスキルは確認できなかった、だが……その勇者の言葉が虛言の類でないことも神眼の所有者には理解できたらしい」
「噓だとバレないスキルでも持ってたんじゃ?」
「そんな説もあるな。発條件故に使いにならなかったんじゃないかとも。今となっては確認のしようもないが……」
「………」
ふいに、一人のある男を思い出した。
ある日突然僕を殘して姿を消した―――父親のことを。
なぜだろうか……拠はない。
だけど、僕の脳裏には子供の頃に優しく笑いかけてくれたその男の姿が見えた気がした。
「優しすぎたんだ。誰も殺すことなく不殺の信念で世界の平和を目指した勇者はあまりにもあっさりと死んでいった」
僕は恐る恐る名前を問う。
聲が震える。
ありえない、そのはずなのに―――
「サヤマ・シドウ……おそらく誰よりも強かったその男は、誰よりも弱かった。稀代の大噓つきと呼ばれている最弱の勇者だ」
モテない陰キャ平社員の俺はミリオンセラー書籍化作家であることを隠したい! ~転勤先の事務所の美女3人がWEB作家で俺の大ファンらしく、俺に抱かれてもいいらしい、マジムリヤバイ!〜
【オフィスラブ×WEB作家×主人公最強×仕事は有能、創作はポンコツなヒロイン達とのラブコメ】 平社員、花村 飛鷹(はなむら ひだか)は入社4年目の若手社員。 ステップアップのために成果を上げている浜山セールスオフィスへ転勤を命じられる。 そこは社內でも有名な美女しかいない営業所。 ドキドキの気分で出勤した飛鷹は二重の意味でドキドキさせられることになる。 そう彼女達は仕事への情熱と同じくらいWEB小説の投稿に力を注いでいたからだ。 さらにWEB小説サイト発、ミリオンセラー書籍化作家『お米炊子』の大ファンだった。 実は飛鷹は『お米炊子』そのものであり、社內の誰にもバレないようにこそこそ書籍化活動をしていた。 陰キャでモテない飛鷹の性癖を隠すことなく凝縮させた『お米炊子』の作品を美女達が読んで參考にしている事実にダメージを受ける飛鷹は自分が書籍化作家だと絶対バレたくないと思いつつも、仕事も創作も真剣な美女達と向き合い彼女達を成長させていく。 そして飛鷹自身もかげがえの無いパートナーを得る、そんなオフィスラブコメディ カクヨムでも投稿しています。 2021年8月14日 本編完結 4月16日 ジャンル別日間1位 4月20日 ジャンル別週間1位 5月8日 ジャンル別月間1位 5月21日 ジャンル別四半期2位 9月28日 ジャンル別年間5位 4月20日 総合日間3位 5月8日 総合月間10位
8 162優等生だった子爵令嬢は、戀を知りたい。~六人目の子供ができたので離縁します~(書籍化&コミカライズ)
子爵令嬢のセレスティーヌは、勉強が大好きだった。クラスの令嬢達と戀やお灑落についておしゃべりするよりも、數學の難しい問題を解いている方が好きだった。クラスでは本ばかり読んでいて成績が良く、真面目で優等生。そんなセレスティーヌに、突然人生の転機が訪れる。家庭の事情で、社交界きってのプレイボーイであるブランシェット公爵家の嫡男と結婚する事になってしまったのだ。嫁いですぐに子育てが始まり、最初の十年は大変だった事しか覚えていない。十六歳で公爵家に嫁いで二十年、五人の子供達を育てブランシェット家の後継ぎも無事に決まる。これで育児に一區切りつき、これからは自分の時間を持てると思っていた矢先に事件が起こる――――。六人目の子供が出來たのだ……。セレスティーヌが育てた子供達は、夫の愛人が産んだ子供。これ以上の子育てなんて無理だと思い、セレスティーヌは離縁を決意する。離縁してから始まる、セレスティーヌの新しい人生。戀を知らない令嬢が、知らないうちに戀に落ち戸惑いながらも前に進んでいく····そんなお話。 ◆書籍化&コミカライズが決定しました。 ◆マッグガーデンノベルズ様にて書籍化 ◆イラストは、いちかわはる先生です。 ◆9人のキャラデザを、活動報告にて公開
8 130【書籍化】ファンタジー化した世界でテイマーやってます!〜貍が優秀です〜
主人公は目が覚めたら森の中にいた。 異世界転生?ただの迷子?いや、日本だったが、どうやら魔物やら魔法がある世界になっていた。 レベルアップやら魔物やらと、ファンタジーな世界になっていたので世界を満喫する主人公。 そんな世界で初めて會ったのは貍のクー太と、運良く身に著けた特別なスキルでどんどん強くなっていく物語。 動物好きの主人公が、優秀な貍の相棒と新たに仲間に加わっていく魔物と共に過ごす物語です。 ※新紀元社様から書籍化です! ※11月半ば発売予定です。 この作品はカクヨム様でも投稿しております。 感想受付一時停止しています。
8 174黒月軍事學園物語
能力を持った者や魔法を使う者が集まる學園、黒月軍事學園に通う拓人が激しい戦闘を繰り広げたり、海外に飛ばされいろんなことをしたりと異常な學園生活を送ったりする物語
8 64まちがいなく、僕の青春ラブコメは実況されている
不幸な生い立ちを背負い、 虐められ続けてきた高1の少年、乙幡剛。 そんな剛にも密かに想いを寄せる女のコができた。 だが、そんなある日、 剛の頭にだけ聴こえる謎の実況が聴こえ始め、 ことごとく彼の毎日を亂し始める。。。 果たして、剛の青春は?ラブコメは?
8 100見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
交通事故で命を落とした中年「近衛海斗」は、女神様から大した説明もされないまま異世界に放り出された。 頼れるのは女神様から貰った三つの特典スキルだが、戦闘スキルが一つもない⁉ どうすればいいのかと途方に暮れるが、ある事に気付く。 「あれ? このストレージって、ただの収納魔法じゃなくね?」 異世界に放り出された海斗の運命やいかに! 初投稿となります。面白いと思っていただけたら、感想、フォロー、いいね等して頂けると大変勵みになります。 よろしくお願いいたします。 21.11.21 一章の誤字・脫字等の修正をしました。
8 108