《神様との賭けに勝ったので異世界で無雙したいと思います。》第31話 破滅

「いよいよ出発ですね」

僕たちは今までお世話になった住居に別れを告げるところだった。

姫木さんが王城を見上げる。

今ここにいるのは僕、姫木さん、栗田さん、秋山さん。

見送りに來てくれたらしい王城の人たち。

「……寂しくなるな」

ゼンさんも見送りに來てくれたらしい。

「……お元気で」

「ああ」

みんなが握手をわしていく。

僕も手を握り返し今までのことを思い返した。

これでお別れ……また會えることもあるだろうけど……それでもやっぱり名殘惜しい。

「セラさんは來てないんですか?」

「ん? ああ、騎士団長はやることがあるらしい」

あの人らしいな。

苦笑を浮かべながらも、あの人なら仕方ないな……なんて思う。

怖い人だったけど、最後に會えないのはちょっと寂しい。

「案外頼んだら一緒についていってくれるかもしれないぞ?」

「勘弁してください」

そのやり取りにみんなの顔に笑みが浮かんだ。

冗談だとはわかってるけどそれは心臓に悪いですよ……

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そりゃ、ついてきてくれたら心強いけどさ……いや、やめておこう。

そんなこと言って本當についてこられたら僕のが持たない。

「佐山先輩、準備できたらしいです」

栗田さんが僕を呼ぶ。

どうやら馬車の準備が整ったようだ。

「いきましょうか」

「うん、みなさん、またどこかで―――」

ズドン!!!!!!

その時だった。

お城が揺れるような衝撃と共に何かが城門をこじ開けた。

セラさんだった。

この人は普通に登場できないのだろうか?

それとも僕たちにお別れを言うためにわざわざ急いでくれたとか……何にしても來てくれたことは嬉しい。

やっぱりここで何も言えないまま行くのは心殘りだったから。

修復は大変そうだけど……

そして、僕たちを見ると凄い勢いで近づいてきた。

「もしかして見送りに」

僕の言葉には答えずにセラさんは一冊の本を出す。

ぺらぺらとそれを捲り真ん中の辺りで止めて、僕にそのページを開いたまま力強く押し當ててきた。

「えーと?」

「読め」

相変わらず言葉の足りない人だった。

逆らうのも怖かったので大人しく読むことに。

「………」

その書はかなり古いものだということが分かった。

がくすんだようになっていて、あちこちが蟲食い狀態。

だけど……何とか読めた。

読めたけど……これは―――

「……佐山さん? どうしました?」

秋山さんの言葉は耳にらない。

僕はそのページのある一節を食いるように見ていた。

姫木さんたちもなにがあったのかとこちらへ近づいてくる。

僕はセラさんを恐る恐る見た。

手が震える。

セラさんが答えた。

ただ一言。

「死者の蘇生だ」

驚愕が広がる。

皆が言葉を失い、僕も頭が真っ白になった。

「き、騎士団長! それはっ、その書は……まさか書庫から!?」

「そうだ」

「そんな……」

ゼンさんの言葉、慌てようからタダ事じゃないのは分かった。

セラさんは書庫という場所からこの本を探して持ってきたんだ。

おそらく―――無斷で。

皆が言葉を失う中、セラさんは靜かに口を開く。

確かに……と。

そのまま続ける。

「確かに國は困るだろう。だが―――私は困らない」

いつかセラさんが僕に言った言葉。

だけどあの時とは違う……優しすぎる言葉。

「……良かったんですか? そんなことして……」

僕の質問にセラさんは何でもないことのように答えた。

あまりにもあっさりと。

々首が飛ぶ程度……どれだけひどくても」

「拷問よりきついことはない……ですか」

セラさんが頷く。

どう考えても大問題ですよそれ……

々言いたいことはある。

だけど今だけはこちらの方が気になった。

「この力は……世界を破滅させることができる力だ……俺はこの力が恐ろしい」

初めて見た本。

だけど、見たことのある文字。

あの人の――――

「この力は世界を破滅させることができる。そして―――」

見たことのある筆跡。

その文字で、そこには記されていた。

佐山士道―――僕の父の名前が。

そこには確かに……こう書かれていた。

「そして、この力は―――恐らく死者の蘇生さえも葉えることができる」

すると姫木さんが「ち、ちょっと待ってください!」と、言ってくる。

「そんなことが本當にできるんですか!?」

「できる」

セラさんが斷言する。

可能だと。

なぜセラさんがそこまでの確信を持てるのかは分からない。

だけど、はっきりと答えた。

「で、でもそのスキルって……」

々言いたいことはある。

だけど、その可能があるなら僕は……

するとセラさんが言ってくる。

「佐山悠斗、予言のことは覚えているか?」

「セラさんの未來が視えるスキル……ですよね?」

セラさんが頷く。

また何か未來が見えたらしい。

続く言葉を待った。

「今度ははっきり視えた。斷片的ではあるが、ここまでの度で視えたことは今までにない……だから、まず間違いなく的中する」

「……何が見えたんですか?」

「お前と……見たことのない魔族がいた。信じられないほど強大な……おそらく、魔王だと思われる」

セラさんは言う。

「お前はそこで二択を迫られる」

「……その二択とは?」

「世界か、か……だ」

「それは……つまり世界を平和にするかどうかってことですよね?」

ああ、と。

斷言する。

ここまではっきり言うってことは8割どころじゃないんだろう。

そして―――と、セラさんが続ける。

「お前は世界よりもを選ぶ。例えその決斷が仲間も世界も……全てを破滅させることになるとしても―――お前は一人のを選択するだろう」

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