《神様との賭けに勝ったので異世界で無雙したいと思います。》第38話 警戒

エルフとは排他的な種族である。

他種族との流を斷ち自然と共に生きる。

そんなことを授業で聞いた覚えがあった。

「それでは質問に答えて頂こうか」

「その前に武下ろしません?」

一応もう一度言ってみる。

たぶん無理だろうけど。

「侵者が! 何が目的だ!」

うん、無理だった。

検討にすら上がらない。

を持ったエルフの青年……かなり若く見えるな。

殺気立ってる。

親の仇でも見るような視線。

「まず……どこでその霊言語を知った?」

と、質問してくるのは160歳というそれなりに高齢のエルフさんだ。

見た目ではなく神眼で鑑定したからこそ分かる。

スキルは1つもないけどいくつか魔法を覚えている。

霊魔法……というやつらしい。

うーむ、強そうだ。

「おい! さっさと答えろ!」

「いやいや、そんな高圧的に來られたら答えにくいですって」

「黙れッ!」

わー……凄い敵対心。

こっちの言葉は聞いてくれない。

だけど僕たちには答えろと言ってくる。

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でもさすがにこの展開は面白くない。

力づくでいうことを聞かせようというその姿勢。

言葉が話せるなら話し合いで解決するべきだと僕は思う。

「秋山さん、ちょっと遠視で見てほしいんだけど」

エルフさんは無視して秋山さんに聲をかけた。

視線は油斷なく前を向いたまま。

だけど、急事態とは思えない僕の態度にエルフの人たちの威圧が膨れ上がった気がした。

「え、な、なんでですか?」

「いいからいいから、あれって湖であってるよね?」

秋山さんが頷く。

うん、よかった。

一応距離はそれなりに近くて見えるには見えるんだけ間にある木々が邪魔だったんだよね。

「妙な真似はするな!」

「秋山さん、あと僕に強化魔法かけてくれない? それとあの人も」

「は、はい? え? 向こうにもですか?」

再びエルフの人の言葉を無視して秋山さんに話しかける。

秋山さんは意味が分からないままに強化魔法をかけてくれる。

エルフの人たちが警戒する。

苛立ってるなあ……もう今にも攻撃して來そうだ。

まず友好的に……とまでは言わないけどここまで敵対行をとられるということは完全に舐められているんだろう。

それはよくない。

対等ではないにしても、甘く見てたら痛い目を見るぞということを理解してもらう必要がある。

そうじゃないと遅かれ早かれ本當に面倒な事態になると思うから。

と、そこまで考えたところで神眼による鑑定が全員終わった。

うん、問題なしだ。

僕はこっそり魅了を発した。

「死ねえええええええええええ!!」

一番レベルの低かったエルフさんに斬りかかってもらった。

先ほど僕たちに黙れと言ったエルフの人だ。

秋山さんが強化魔法をかけた人でもある。

かなり若く22歳。

見た目だけではなく実年齢も若い。

スキルは理的なダメージを減らす『緩和』というものを持っていた。

以前有名なスキルを教えてもらった時に聞いた覚えがある。

効果は覚えているし、このスキルを持っている人がエルフの中にいたのは運が良かった。

斬りかかると同時にそのスキルを使い続けろと深層心理へと命令を出した。

「待て! ロッゾ!」

殺したら問題……とでも思っているのだろうか。

いや、違うな。

殺したらというよりかは、殺したことによって報が聞き出せなくなることを恐れているんだろう。

けど問題はない。その心配は無用だ。

この人のレベルは9。

僕のレベルとアルマの加護によって高めに長したステータスの前にはこのくらいのきは脅威にならない。

何より魅了によって遅めに斬りかかれと命令している。

そのきは止まって見える……とは言い過ぎかもしれないけど、似たようなものだ。

なくとも対処するくらいは可能だ。

僕は相手の剣を持つ手を叩いた。

相手が武を落としたのを確認して服を摑む。

「え――――」

「さ、佐山さん!? それはっ!」

エルフ側と仲間たちの両方から悲鳴にも似た聲があがる。

うん、言いたいことは分かるよ。

僕のステータス+強化スキル+魔導スキル+強化魔法のコンボで背負い投げでもしようものなら大怪我は免れない。

だけどそれは仕方ないだろう。

僕たちにこれだけ敵対的な態度で危害を加えようとしたんだ。

痛い目は見てもらわないとね。

けど、大丈夫。

もしもそんなことをしたら本當に殺し合いになってしまう。

だから怪我はさせない。

怪我は……ね。

「どっっっせえええええい!!」

を無理矢理反転。

僕はエルフの青年を投げた。

本気で。

文字通り全力全開。

地面に……ではない。

空に放り投げた。

「は――――?」

風は湖の方向に強い追い風。

程問題なし、方向、角度も完璧。

大砲でもぶっ放したような勢いで飛んでいくエルフの青年はそのまま放線を描きながら……

―――湖に大きな水柱を立てた。

「ふう」

すっきりした。

みんなが唖然としたまま固まる。

その隙に僕は言う。

「星になりたい人からかかってきてください」

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