《異世界チートで友達づくり(仮)》消失③

「アオイとスサラちゃんを返して!」

「はァ、諦めが悪いですね…」

その気だるそうな聲の中に微かな圧倒的殺意が潛んでいるのをじた。

しばらくの沈黙が続くが全くと言っていいほど気の抜けない空気だった。

━━━ダンッッ!

先にいたのはフォックちゃんだった。

思いっきり地面を蹴って一瞬のうちに魔族の男の左背後に回ってを勢いを殺すことなく放っていた。

時間にして僅か1秒にも満たない程の攻撃だったけど左足を軽く引いて避けられてしまった。

フォックちゃんのが空を切る。

「うぐッッ…!」

前かがみに飛び込んだフォックちゃんのがら空きになったお腹をあのスピードの中的確に膝蹴りをれた。

そのまま天井に凄い勢いで叩きつけられた。

「フォックちゃん!」

そして改めて弦を思いっきり引っ張りやを放った。

「[エイトホーミング]!」

と同時にった矢が紫のに包まれて8方位に分裂しそのまま魔族の男の立っている場所に放線を描きながら向かう。

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このは8つのの矢が対象に當たるまで追尾し続ける。だがこの技を放っても男は一切こうとはせずに8方向全ての矢が発音に似た音と共に一斉に命中した。

「よし、!」

見事命中したことに対する小さなガッツポーズをした。

「まだだ!」

しかしダルのび聲にをビクつかせた時にはもう遅かったのだった。

━━━ドスッ!

「カハッッ!!!」

鈍い音と尋常ではない程の腹部の痛みに口からを吐いた。

今までじたことの無い痛みだった。

そのまま思いっきり地面を転がり勢いが衰えることなく壁に叩きつけられた。

「ゴフッ…はァ、はァ……どうして…」

を吐きながらなんとか聲を発した。

「はァ、特に何もしてませんよ…避けただけです」

避けた…だけ…?[エイトホーミング]は追尾系の技のはず…それを避けるとなるとギリギリまで矢を引き付けてからじゃないと避けきれるはずがない。

これほどレベルが違うなんて…!

そして私は今までに験した事のないほどの痛みによって意識を失った。

とある場所━━━

そのくらい部屋に聲が響き渡っていた。

「お前達のみどうりに仕事はしたぞ」

「はァ、まぁ時間はかかりましたけどお疲れ様でした…後は三日後の作戦決行から終了まで護衛等をお願いします…」

「あぁ、分かった」

「全ては“変革”のために…」

『━━ル……ベル………ベル』

『………ん…アオ…イ?』

遠い意識の中でアオイの聲が聞こえた。

辺りは真っ暗で何も見えないがその聲を聞いた時私は自然と不安を全くじなくなった。

『ベル……今日は…別れの挨拶に來たんだ』

『………え?』

私は一瞬アオイが何を言っているのか分からなかった。

“別れの挨拶”…?

『何を言ってるの、アオイ…私たちずっと一緒でしょ?ねぇ!アオイ!』

朦朧とする意識の中でアオイが私に背を向けて歩きだすのが見えた気がした。

『アオイ!ねぇ待って!嫌だよ!私アオイがいないと嫌だ!行かないでよ!アオイ!━━』

「━━アオイ!」

気がつくと私はベットに上半を起こしていた。どうやら夢で飛び起きたようだ。

さっきの夢…不思議と鮮明に覚えていた。あれがもし正夢になるのだとしたら…そう考えるとまた涙が溢れそうになった。

「(ガチャ)ベル、起きたか」

「……ダルさん」

ダルさんが食事の乗ったプレートを持ってきて部屋へってきた。

ここは恐らく宿屋『集い亭』だろう。見慣れた風景にしだけ心が落ち著いた。

の方は大丈夫か?」

「はい、もう大丈夫だと思います」

プレートをベット橫の小さな置の上に乗せて椅子に腰かけながら容態を心配してくらた。

正直まだ呼吸がしずらい。痛みはすっかり引いているのだけど不思議なじだった。

あれからどうやら丸一日くらい寢ていたらしい。窓の外を見ると今はまだ朝方で日が出て間もないくらいだった。

「あのそれより、フォックちゃんは…?」

「フォックなら割と軽傷で済んだから下で飯食ってるよ。でも、全然元気無くなってるからいろいろ言ってやってくれ。俺が言えるのは━━」

そう言ってダルさんが深々と頭を下げ、し間を開けて真剣なトーンで言った。

「━━……本當に、すまなかった…」

聲が震えていた。私は何も言えないままただ見ていることしかできなかった。

「俺があんなことしなけりゃあ、アオイとスサラは…!」

それを聞いて私は思った。

いつもふざけたような態度をとってるダルさんが今回の件では“自分が借金の肩代わりをさせようと店を招待して、そのせいでアオイとスサラがいなくなった”と責任をじていたのだ。

「そんなことないですよ」

だが、それは大いなる勘違いであることを私はダルさんに教えてあげなきゃいけない。

「ダルさんがそんなことをしなくてもアオイはきっとあの男にやられてスサラちゃんもさらわれていたと思います。だから誰のせいでもないんです」

そして私はベットから出て立ち上がった。頭を下げたままだったダルさんも私の行揺して顔を上げていた。

「ちょ、そんなでどこ行くんだ」

「決まってる…アオイとスサラちゃんを助けに行く!」

私はただそれだけしか考えてなかった。自分ののことなんて頭になかった。

「━━待て!」

ガシッと手を引かれてドアを開けるのを止められて振り返る。

「━━俺も行くぜ」

言われた言葉は予想外なものだった。

「俺にも責任はある。気にするなって言われても俺の中でどうしようもなく暴れ回っている。それを靜めるためにも俺はアオイとスサラを助ける」

そう言ったダルさんの目に迷いとか後悔とかのじられなかったと思う。

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