《無能な俺がこんな主人公みたいなことあるわけがない。》一章 5 『周りから見ればもはや中二病』
冷たい冷気がタクミとフェルを包み込んでいる。
タクミとフェルの周りを銀幕の壁が覆いかぶさるかのように聳え立っている。
フェルの尾が左から右へと素早く空を切った。
周りを覆いつくしていた氷の壁が一瞬で々に崩れ落ち、破片が地面についた順にその姿を紫の粒子のようなものに変え、一瞬で大気へと消え去っていった。
「さて、初めて魔法にふれた気分はどーだい?」
「いや、どうっていわれてもな・・・」
タクミは正直な気持ちを言葉にした。頭の中では先程起きた現象が何度もループしていた。
「なんだか反応がつまらいなぁ。せっかく見せてあげたのにもっとや、なんらかしらの反応があってもいいと思うんだけどね。君ってつまらない男って言われない?僕の魔法を見れるなんてそうそうない貴重な験なんだよ?」
フェルはまるですねた子供のような言いぐさをしていた。
「いやその・・・なんだ。その魔法とやらが実際にあるのは信じたよ、うん。けど・・・この世界にいくら魔法が実在するからって、俺がその・・・ここで活躍できるなんてことはないんじゃないか?」
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タクミは混する頭をゆっくりと整理しながらも拭いきれぬ疑問をフェルに問いかけた。
「そうだね。たしかに、今までの君ならここでもなんの取柄もなく、それこそまた無能の匠なんて通り名をつけられる運命だったかもしれないね」
「だけど、まだ君は気づいてないけど、すでに君はすでに変化しているんだよ」
この言葉を聞きタクミは、自分のをあちこちまさぐった。だがどこか変わった様子はない。
フェルはそんなタクミの様子を気にせず続ける。
「さっき僕が噛みついたでしょ?あれはね僕が持つ霊の力を君に分け與えるために必要な行為だったんだよ」
タクミはフェルの言葉にハッとして先程噛みつかれた首元を左手で押さえた。だがそこにはもう傷跡は綺麗に消えて殘っていなかった。
「今こうして僕と君が會話出來ているのは、その力のおかげなんだ。だからもう君はこの世界の言語を理解することが出來ているんだよ。もちろん文字を読むことだってできるよ。まだ実はわいてないかもしれないけどね」
「そしてこの霊の力は、この世界では俗に魔力と同義で魔法の源になるものなんだ。そしてこの魔力を使えば使うほど強力な魔法を生み出すことが出來るんだよ」
「だから君はもう僕から霊の加護をけた人間として、魔法を使うことが出來るようになっているはずだよ。ちなみに、この世界にはさまざまな異能の力を使う者たちがいるけど、霊の加護をけているっていうのは結構すごいことなんだから僕に謝してくれてもいいんだよ?」
フェルは相変わらずの得意気な口調でこう話した。
魔力?霊の加護?
タクミはフェルの言葉を理解しようとしたが理解速度が追い付いていなかった。馬鹿な自分が憎い・・いやこれは學力関係あるか?
「・・・つまり今の俺は魔法使いになってしまったってことなのか?」
タクミは恐る恐るフェルに問いかけた。
「そうだね!簡単に言ってしまえばそうなるね!」
あっけらかんとした様子でフェルは答えた。
タクミはゴクリと唾を呑み込み、右手を強く握りしめた。手のひらが興からかうっすらと手汗がにじんできているのがわかった。
「で、その魔法はどーやったら使うことができるんだ?」
「さぁ?それは人それぞれだから僕には説明できないよ」
「なっ!?なんだそりゃ!?じゃあどーすればいいんだよ!?・・・そーだ!!コツとかないのかよ!?なぁ!?」
フェルの予想外の答えに焦りを隠しきれなかった。
「うーん・・・コツとか聞かれてもねぇ。魔法と一言で言っても々あるんだよ。それは呪文を必要とするものだったり、念じるだけで発させることのできる人もいるね。僕の場合はこの尾が鍵となっているんだけどね」
フェルはおを巧の方へ向け、その長い尾をフリフリっと左右に振って見せた。
「結局の所、タクミにとって魔法を使うために必要なカギとなるもの、まずはそれを見つけるところから始めるのが大事なんじゃないかな?僕がしてあげられるアドバイスはこのくらいだね」
そうフェルは言うと背中の羽を広げ、タクミを見下ろせる高さまで軽やかに飛び上がった。
「まぁ、とりあえずはこの世界を知ることから始めたらいいんじゃないかな?あと君がこの世界でどういう風に過ごすかは君次第なんだから。魔法を極めるのもよし、なにもせず平々凡々と普通の生活を送るもよし、自由にしてくれていいんだよ。ただこの世界は個かな者たちの集まりみたいなところがあるから、そんなのはもったいないと思うけどね?じゃあ僕はこの辺でお別れとさせてもらうよ。じゃあね!」
そういうとフェルはその姿を振りかえらせた。
「あっ!?おい!待てよ!まだ聞きたいことは山ほどあるんだよ!」
タクミは右手をフェルの方へばしんだ。タクミの問いかけに反応してか何か思い出したようにフェルが振り返った。
「あ、そうそうさっき元の世界に戻る方法は知らないと言ったけどそれは方法がないってことじゃないからね。魔法を覚えていけば未來にも過去にも行くことが出來るし、異世界・・つまり君がもといた世界にも戻ることができるかもしれないんだから。まあそれはもちろん簡単じゃないんだけどね。じゃああとは頑張ってねー!バイバーイ!」
顔だけ振り向かせこう言い殘すとフェルは、羽をはばたかせ湖の向こうへと飛んで行ったかと思ったら白いに包まれ、あっという間に見えなくなってしまった。
タクミは右手を上げたままそれを見ているだけだった。
「・・・なんなんだよ!あいつ!結局よくわかんなかったじゃねーかよ!」
タクミは上げた右手を頭に乗せ髪をクシャクシャとした。
-----魔法か・・・・
「俺が魔法使いねぇ・・・」
タクミは右手を月にかざして呟いた。
「どれ、ちょっと試してみるか!」
そういうとかざした右手を前にばしてんだ。ゲームなんかで魔法が使われるシーンを思い出した。
「いでよ!ほのおぉぉぉぉーーーーーーー!!!」
・・・・・・・・・
タクミの期待とは裏腹にただ靜寂な夜の森にタクミの聲が響き渡っただけだった。
「・・・な、なんだよ!なんもおこらねーじゃねーかよ!くそったれが!」
怒りと恥ずかしさを地面に落ちていた石を蹴飛ばし八つ當たりした。
こうして使い方もわからないまま、いきなり魔法使い認定されてしまった男がここに誕生してしまったのである。
じょっぱれアオモリの星 ~「何喋ってらんだがわがんねぇんだよ!」どギルドをぼんだされだ青森出身の魔導士、通訳兼相棒の新米回復術士と一緒ずてツートな無詠唱魔術で最強ば目指す~【角川S文庫より書籍化】
【2022年6月1日 本作が角川スニーカー文庫様より冬頃発売決定です!!】 「オーリン・ジョナゴールド君。悪いんだけど、今日づけでギルドを辭めてほしいの」 「わ――わのどごばまねんだすか!?」 巨大冒険者ギルド『イーストウィンド』の新米お茶汲み冒険者レジーナ・マイルズは、先輩であった中堅魔導士オーリン・ジョナゴールドがクビを言い渡される現場に遭遇する。 原因はオーリンの酷い訛り――何年経っても取れない訛り言葉では他の冒険者と意思疎通が取れず、パーティを危険に曬しかねないとのギルドマスター判斷だった。追放されることとなったオーリンは絶望し、意気消沈してイーストウィンドを出ていく。だがこの突然の追放劇の裏には、美貌のギルドマスター・マティルダの、なにか深い目論見があるようだった。 その後、ギルマス直々にオーリンへの隨行を命じられたレジーナは、クズスキルと言われていた【通訳】のスキルで、王都で唯一オーリンと意思疎通のできる人間となる。追放されたことを恨みに思い、腐って捨て鉢になるオーリンを必死になだめて勵ましているうちに、レジーナたちは同じイーストウィンドに所屬する評判の悪いS級冒険者・ヴァロンに絡まれてしまう。 小競り合いから激昂したヴァロンがレジーナを毆りつけようとした、その瞬間。 「【拒絶(マネ)】――」 オーリンの魔法が発動し、S級冒険者であるヴァロンを圧倒し始める。それは凄まじい研鑽を積んだ大魔導士でなければ扱うことの出來ない絶技・無詠唱魔法だった。何が起こっているの? この人は一體――!? 驚いているレジーナの前で、オーリンの非常識的かつ超人的な魔法が次々と炸裂し始めて――。 「アオモリの星コさなる」と心に決めて仮想世界アオモリから都會に出てきた、ズーズー弁丸出しで何言ってるかわからない田舎者青年魔導士と、クズスキル【通訳】で彼のパートナー兼通訳を務める都會系新米回復術士の、ギルドを追い出されてから始まるノレソレ痛快なみちのく冒険ファンタジー。
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