《無能な俺がこんな主人公みたいなことあるわけがない。》二章 1 『再び、參上』

「・・・やっと・・・やっと・・・下界に帰ってこられたぞーーー!!」

「グスッ・・長かった。ホントに長かった・・・」

ここはアーバンカル近くの森。そこには余計な脂肪を落とし引き締まったをしているが、しかし顔はどこか頼りないじがする紫のローブにを包んだ男が傷に浸って立っている。なぜか目には若干涙を浮かべている。

男は零れそうな涙を右手で拭く。その時自分の頬ほほにれ、無ひげに気づく。

「おっと、いかんいかん。せっかく帰ってこれたのにこんな髭生やしてたらみっともないな。久々の街だ。だしなみはちゃんとしないとな・・・」

男は右手の人差し指で自分の頬をさする。するとさすったところから髭がきれいに地面に落ちていった。人差し指の通った後はキレイさっぱりになっていた。

人差し指の周りを良く見ると、細かい風の刃が指を覆っていて男はそれで髭を剃っていた。

「いやー、暴風刃エアーソードにもこんな便利な使い方があるなんてな!こりゃ髭剃りいらずだな」

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一通ひととおり髭を剃り落とし満足げな男だ。

この男こそタクミであった。

突然異世界に連れられたあの日から気づけば約2年の月日が経過していた。ローゼ達に別れを告げエドワード大魔導士の元でみっちりと地獄のような修行の日々を送っていた。

「ったく、あの爺さん・・・マジで辺境の地に連れて行きやがって・・・しかも厳しいどころなんてもんじゃない修行しやがって・・・何回死ぬかと思ったか・・・グスッ」

修行の日々は過酷を極めていた。おかげでタクミのは程よい筋に著け引き締まったを手にれていた。・・・思い出しただけで涙が出てきた。

「・・・はっ!いかんいかん!やっと自由のになれたというのにこんな辛気くさい顔してちゃもったいないな!」

タクミはエドワードの元で一人前の魔法使いになるべく修行した。その結果紆余曲折はあったが、めでたく卒業試験のようなものに合格して無事にひとり立ちすることができたのであった。

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今日は下山しての記念すべき一日目であった。

「さて、正直魔法が使えるようになったとはいえずっとあの爺さん相手にしてたから正直どのぐらいのレベルになったのか実わかねーな。なんか良い練習相手でもいねーかな・・・」

自分の上達合を確認したいタクミは、なにか魔法をつかえるような相手を探し森を歩く。

グルル・・・

久しぶりだが聞いたことのある鳴き聲だ。鳴き聲の方をみると、そこには緑の鱗に二つの口、黃い目玉・・・そう初めてこの世界に來た時にタクミが追いかけられたモンスターである。

「おっ!お前たしか見たことあるな。たしか以前、俺を喰おうとして追っかけてきた奴だよな。よーしとりあえずこいつで・・・」

タクミが自の力を試そうと魔力を高めた時、本能で何か察したようにモンスターはサッとどこかに走り去ってしまった。せっかくの魔法を使うチャンスを逃した。

「あっ!おい!ちょっと待てよ!・・・ちくしょう、せっかく試せると思ったのにな。でもとりあえずあいつを怖いと思うことはなかったな」

これもエドワードの元での修行の効果か?

「まっ、いいか!とりあえず街に行くとするか。爺さんの話だと俺が修行してる間にいろいろ変わったこともあったていってたしな・・・」

タクミが修行している間に

・いくつかの主要都市の皇帝達が何者かに暗殺されたこと

・そのことが引き金になり各地で爭いが起き治安が悪くなっている

といったことが起きていた。

「まぁ二年もたったらそりゃ々変わるだろうな・・・さてと、空中浮遊フライ!」

タクミの足が地面から30センチほど浮く。

「あんまり高く飛ぶと目立つからこのくらいで行くか。いやー歩かなくて良いから楽勝だなこりゃ!」

浮いたまま水平に移し、アーバンカルに向かった。

しばらく移するとアーバンカルの城壁が見えてきた。り口に衛兵が二人立っているのが見えた。

し手前で魔法を解除して歩いてアーバンカルにろうとするタクミ。

「止まれ!アーバンカルにるには分を示すが必要だ。見せてもらおうか。」

タクミが近づいてくるのを見て、衛兵二人が手に持つ大斧を差させり口を塞ぐ。

・・・分を証明するもの?なにそれ?

タクミは衛兵の言葉に呆気にとられる。

あ、そういえば・・・前回はローゼの馬車に乗ってたっけ?ということは前回はローゼのおかげでれたということか?

分を証明するもんなんてあるわけないだろ!二年もどこかもわからない僻地へきちで修行してたのに!

心ツッコむタクミ。というか、そもそもこの世界の住人ではないのでもはやタクミの肩書は住所不定無職の男なのである。

「あー・・・分証明ね。うん・・・」

回答に詰まるタクミ。その様子を不審に思った衛兵の一人が詰め寄る。

「お前、分を証明することができないのか?ちょっと詳しく話をきかせてもらおうか?」

「あ、いやー・・・けっして怪しいものではないんですよ?ただ今は、ちょっと何も持ってなくて・・・」

「ほう?・・・それは十分に怪しいな!ちょっとこっちに來い!」

衛兵がタクミの腕をつかむ。

「いてっ!待ってくれ!・・・あーもう!ちょっと離せって!」

強引に腕を摑まれタクミは反的に魔法を使ってしまった。これもエドワードの修行の弊害か・・・衛兵の一人が靜電気にれたかのようにタクミの腕を離す。

「・・っつう!今の・・・攻撃魔法か!?こいつ魔法を使ったぞ!捕まえろっ!」

「あっ、ごめん。そんなつもりはなかったんだけどつい反的に・・・って俺の話聞いてくれます?」

「うるさい!いいからおとなしく捕まれ!」

「南門に不審者発見!魔法を使うため応援頼む!」

もはや聞く耳持たずの衛兵たち。なにやら通信ができる魔法石に応援を要請する衛兵。もう一人がタクミを捕まえようと迫ってくる。

完全に犯罪者扱いである。

「くそっ!ダメだこりゃ!とりあえずいったん逃げるか・・・」

振り向き追ってくる衛兵から逃げるタクミ。

「あーもう!ちくしょう!こうなったら仕方ねぇ!黒煙ブラックアウト!」

タクミが呪文を唱えた。あっというまに辺り一面黒い煙に包まれた。煙幕で視界を奪う魔法であった。

「ゲホゲホッ・・・くそっ!また魔法使いやがったぞ!どこいきやがった!?」

しすると黒い煙が薄れていった。そこにはタクミの姿はなかった。

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「もうなんなんだよ!?せっかく帰ってきたと思ったら街にることもできねぇ!ったくあの爺さんも分証が必要なら教えとけってーの!」

そこは城門から離れた森の中、衛兵たちを振り切ったタクミの姿があった。

「これじゃあむしろ魔法使える前より立場悪くなってんじゃん!犯罪者扱いじゃねーかよ!どーしよう・・・」

途方に暮れるタクミ。

「とりあえず一人じゃアーバンカルにれないのは確かだ。誰か協力してくれる奴探さねーと・・・」

城門を飛んで越えることも出來なくもないが、今以上の騒ぎになりそうなのでやめた。

森の中をあてもなく歩くタクミ。

「キャーーーー!」

遠くからの・・・おそらくび聲が聞こえてきた。

「あーもう!こんな時になんなんだよ!?・・・でも知らんふりは出來ないよな」

聲がした方へフライを使い飛んでいくタクミ。

しばらく行くとそこには盜賊の類たぐいに馬車が襲われている様子が空から見えた。

あれは馬車が襲われてるのか?・・・そうだっ!

それを見て何か思いついたタクミ。

「騒ぐな!いいから荷をよこしやがれ!」

盜賊の一人が剣を構え馬車に襲いかかろうとしていた。

馬車と盜賊の間に空から著地したタクミ。

「っ!?なんだてめーは!?どっから降ってきやがった!?」

「しかしホントに治安悪くなってんだな・・・まぁあれだ。痛い思いしたくないならここでおとなしく帰った方が良いと思うよ?」

「あぁ!?何言ってんだテメーは!?一人で何ができるってんだよ!?」

1,2,3・・・盜賊の數は10人ほどいた。

「うーん・・・さてはこれは絶好の腕試しのチャンスではないだろうか?」

まさにこの狀況こそ絶好のチャンス。タクミは思わず獨り言をつぶやく。

「なにブツブツ言ってんだよ!?死んどけやぁ!」

盜賊の一人がタクミに剣で斬りかかる。

強化プロテクト・・・」

小さく呪文を唱えるタクミ。盜賊の振り下ろした剣がタクミの出した右腕に勢いよく當たった。・・・が剣の方が折れてしまった。

「ふぅー・・・よかったぁ!もし守れなかったらどうしようかと思ったよ!爺さんの攻撃はプロテクト使ってても痛かったしな」

剣の當たった腕を見て安心するタクミ。

「なんだこいつ!?魔法使いか!?ならこれでもくらえ!」

後ろの方にいた盜賊がリンゴくらいの火の玉をタクミに向け放った。どうやら盜賊の中にも魔法を使える者がいたようだ。

「おっ?今度は魔法か?でも・・・そんなもんあの爺さんのに比べたら屁でもねーよ!」

左手で飛んできた火の玉をいとも簡単に握りつぶすタクミ。

その様子を見てどよめく盜賊達。

「良く見とけ!火の魔法ってのはなぁ・・・こういうのを言うんだよ!」

両手を前に出すタクミ。

「フレアッ!!」

タクミの目の前に直徑2メートルほどの火の球が出現した。さっきの盜賊の魔法の比ではない。

「これくらったら痛いじゃ済まねーぞ?」

「こいつやべぇぞ!にげろぉ!!」

それを見て散りばって逃げていく盜賊達。あっという間に馬車の周りには誰もいなくなった。

「ふぅ・・・解除」

火の玉は一瞬で消え去った。

「いやー、やっぱり俺なかなか強くなってんじゃん!あの人數相手でも全然ビビらなかったな!こりゃさすがに爺さんに謝だな・・・」

「あのー・・・」

タクミが自分の強さに浸っていると後ろから聲がした。

振り返るとそこにはポニーテールの金髪のがいた。見たところ12,3歳くらいだろうか。目はクリッとしてその瞳には涙を浮かべている。おそらくさっきの盜賊に襲われた恐怖からだろう。

「あっ、思わず自分の世界に行っちまってたよ。大丈夫か?」

「はいっ・・・その・・・助けてくれてありがとうございます!」

は大きく勢いよくお辭儀をした。

「そっか!無事ならよかったよ!君一人なのかい?」

「あ、そうです。アーバンカルに荷を運んでる途中だったんですが急に盜賊達に囲まれちゃって・・・ホント助かりました!それで何かお禮がしたいのですが?」

「お禮とかは別に大丈夫だよ!それよりも今アーバンカルに向かうって言ったよね?それで一つお願いがあるんだけど・・・いいかな?」

「えっ?」

馬車の荷臺を見てニヤリとするタクミに、そんなタクミを見てキョトンとする

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