《無能な俺がこんな主人公みたいなことあるわけがない。》二章 15 『ウルガンド攻防戦3 雨霜雪』

曇天の中、ウルガンドを目指し飛ぶタクミ。森を過ぎてウルガンドの近くのに著地した。ウルガンドの都市としての大きさはアーバンカルの10分の1位といったじであった。

タクミが直接ウルガンドにらなかったのはウルガンド周辺に邪神教徒と思われる軍勢があちこちに見られたからであった。その數は正確にはわからなかったがおそらく5千は超えていたであろう。

所々では戦闘が起きているようだった。おそらくはウルガンドの兵士たちであろう。しかし遠目でも邪神教徒側が優勢なのはわかった。

「たしかにこの軍勢に7人で挑むのは無茶だよな・・・ドズール隊長、あんたは何も間違ってないよ・・・ただ俺が大馬鹿だってことだよな。」

敵の勢力を目のあたりにして、改めて自分が今からしようとしていることに対してどれだけ無謀なのかを実した。しかし後悔はなかった。

「とりあえずあの全員を倒すのはさすがに無理だ。しかしベルモンドの奴は意地でもぶっ倒してやる!・・・にしてもここからどうしようかな。考えなしで來ちまったからな。」

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目の前の敵をどうやって倒すかしばらく考えこむ。

「・・・あー!!だめだ!そんな作戦とか都合よく思いつくわけないよな。やっぱり恐慌突破か。なんとかあの城壁を超えて中にることが出來ればな・・・」

ふとあることを思いつく。

「そうだ!さっきエリーさんにかけられた魔法を使えば気づかれずに飛んでることが出來るんじゃないのか・・・思い出せ。エリーさんがかけてくれた魔法の覚を!」

タクミは全力でさっき自分にかけられていた魔法を思い出した。

「たしかアシミレートって唱えていたよな?よし、やってみるか!アシミレート!」

タクミのが周りと同化するのがわかった。さっきの覚と同じだった。

「よっし!功だな!これで気付かれずに飛んで行けるだろ!フライ!」

再び空に飛び上がった。出來るだけ高く飛びウルガンドの城壁に近づく。邪神教徒もウルガンドの兵士もタクミには気づかないようだった。一応城壁を超えて人気のない路地に著陸した。

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「ふう・・・功みたいだな。さてここからどうしようかな。とりあえずローゼを探さないとな。たしかベルトール家っていえばこの辺りで有名な名家ってやつなんだろ。誰かウルガンドの人に聞くか。」

誰か話を聞けそうな人を探しウルガンドの街を走るタクミ。皆避難しているのだろうか、道端に並べられた店も片づけられた後もなく、無造作に商品が錯していた。

「ここも、もしかしてもう邪神教徒の兵が進行してるのか!?くそっ!マジに急がねーとヤバいんじゃなーのか!!」

さらに街中を駆け回るタクミ。

「きゃーーー!!」

び聲がした。聲の方に走るタクミ、そこには逃げ遅れたのか一人のが複數の邪神教徒の武を持った兵に囲まれていた。

「こんの・・!クソヤロー共が!」

タクミは背後から複數の兵に向かって火球を飛ばした。いきなり起きた発に兵は襲うのをやめタクミの方を振り返る。

「なんだお前は!?」

邪神教徒の一人がタクミに向かってんだ。どうやら慣れぬ同化魔法は火球を飛ばした時に解けてしまっていたようだった。一気に武をタクミに向ける邪神教徒たち。

「うるせー!寄ってたかって罪のない人たちを襲いやがって!お前ら覚悟しろよ!」

「その格好・・魔法騎士の者か。どうやってここにたどり著いたのか知らないが一人で何ができる!覚悟するのはお前の方だ!」

兵の一人がびながら、タクミに剣を構え襲いかかる

「俺は魔法騎士団を一日でクビになったただの無職だ!このボケェ!」

襲い來る兵士を風で吹き飛ばす。飛ばされた兵士は建の壁にぶつかり気を失った。

その勢いに続いてを囲んでいた兵士どももまとめて吹き飛ばした。座り込んでいたに近寄るタクミ。

「あんた大丈夫か!?」

子供をかばうようにうずくまっていたが顔を上げた。

「あ・・・あ、ありがとう・・ございます。本當に!」

タクミの顔を見て安堵からか涙を流す

「別にいいんだ。それよりもここは危険だ。みんなどこに避難しているんだ?」

「他の人たちは奧にある名家の方たちの屋敷にかくまってもらってます。私達もそこに行く途中だったんですが、襲われてしまって・・その制服は魔法騎士団の方ですよね?本當にありがとうございます!」

再び深く頭を下げる

「そんなにもういいから!それよりも今名家の屋敷って言ったよなそれはなんて屋敷なんだ!?」

「え?・・・それはウルガンドを治めていらしたベルトール様のお屋敷ですが?」

まさかの第一村人からの報でローゼの報を得ることが出來たタクミ。

「ベルトール!?今ベルトールって言ったよな!?俺もその屋敷まで案してくれないか!?」

思わぬ報にに詰め寄るタクミ。タクミに圧されて揺する、その様子を見て冷靜さを取り戻すタクミ。

「あ、すまない。つい。俺もそのベルトール家に用事があったんだ。だからあんたと一緒に屋敷まで連れて行ってくれ!」

「いえいえ。こちらこそあなたが一緒について來てくれるなら安心です。では一緒に行きましょうか!」

タクミの手を取り立ち上がるに案されてベルトール家の屋敷まで一緒に走った。

しばらく走るとそこにはとてつもない大きさの屋敷があった。ウインズの屋敷の5倍は余裕で超える大きさだった。

「おぉー!なんてデカさだよ。これなら街の人をかくまうのも大丈夫そうだな。」

「ベルトール様は私たちにとても良くしてくれる領主様だったんですよ。しかし半年前に領主様が何者かに殺されてしまって・・・それからは周辺に邪神教徒たちが現れるようになり、今ではこんな狀況になってしまいました。」

は昔のことを思い出したのか、また涙目になった。

「領主が殺された!?それってローゼの親父さんってことか!?」

「えぇ・・あれからは奧様が領主様に代わってウルガンドの統治をしていました。ローゼお嬢様も奧様の力になろうと日々躍進されていました。」

「なんてこった・・・ローゼの親父さんも犠牲になっていたなんて!」

「あの、ここで話すのもあれですので中にりませんか?」

揺するタクミに気を使いながらが提案した。たしかにここで話してても何も進まないので屋敷にることにした。

屋敷の中にるタクミ達。中には他に避難してきていた人たちであふれていた。それぞれが疲弊や絶の表を浮かべている。

屋敷の中をウロウロするタクミ。ふと聲をかけられた。

「貴方様は・・・もしや、タクミ様でしょうか?」

聞き覚えのある聲のする方をみると見覚えのある特徴的な髭、そこにはローゼの付き人をしていたマルクが立っていた。なんだかしあの時よりやつれている様子だった。

「マルクさん!!そうです!タクミです!」

マルクに急いで駆け寄るタクミ。

「おぉ、タクミ様お元気そうで何よりです。ずいぶんご立派になられた様子ですね。」

優しくマルクがタクミに聲をかける。

「お久しぶりです!ってそれよりもこの狀況はどうしたんですか!?ローゼは今どうしてるんですか!?」

再開の挨拶も早々に気なっている疑問をマルクにぶつけた。

「タクミ様が驚かれるのも無理はありませんな。どこから話して良いのやら・・・」

「その、さっき聞いたんですがローゼの親父さんが亡くなられたって聞いたんですが?」

「ご存じでしたか。えぇ、ローゼお嬢様の父君が半年前に何者かの手によって暗殺されてしまいました。それからというもの、このウルガンド周辺では不穏なきが多く騒な事件も多くなりました。ローゼお嬢様も奧様に負擔をかけまいとご自で再び治安を取り戻すべく盡力されておりました。」

「そんな・・・それで今ローゼはどこにいるんですか!?」

「・・・お嬢様は今はこの大事を治めるべく戦場へと出向かれました。」

「そんな無茶な!敵の數は俺も見てきましたがとてもローゼ一人で対処できるような數じゃなかったですよ!?」

「私も止めたんですが、お嬢様の格はタクミさんもご存じでしょう?このウルガンドの民を守るために行ってしまわれました。」

短い付き合いだがタクミにもわかった。ローゼは勝てないからといって自分の領地の人を見捨てるようなことは絶対しない奴だ。ローゼは最後の一人になってもきっとあきらめないだろう。

「・・・わかりました。なら俺はローゼを助けに行ってきます。そのためにここに來たんですから!」

「タクミ様・・・本當にご立派になられましたな。失禮ですが、あの時とは見違えるようです。タクミ様、勝手なお願いではありますがどうかローゼお嬢様をお願いします。」

「俺を変えてくれたのはあの時、何もなかった俺を助けてくれたマルクさん、そしてローゼのおかげなんです。だから俺はここに必ずローゼを連れてきます!だからあきらめずに待っていてください!」

「かしこまりました。私には何もできませんが、ここでお二人の帰りを待っております。どうか、どうかローゼ様をよろしくお願いします。」

マルクは深々と頭を下げた。

「おう!絶対に連れてくるから待っていてくれ!それじゃあ行ってくるよ!」

タクミは來た道を振り返り屋敷を後にした。 タクミの姿が見えなくなるまでマルクは頭を上げなかった。

屋敷の外に出たタクミ。肩にポツリと滴が落ちてきた。どうやら雨が降ってきたようだ。雨は徐々に勢いを増してきた。

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