《無能な俺がこんな主人公みたいなことあるわけがない。》二章 16 『ウルガンド攻防戦4 威風堂々』

ベルトール家の屋敷を後にしたタクミ。降りしきる雨の中をあてもなく走る。

「ローゼの奴どこで戦ってんだよ?とりあえず敵を倒して行けばたどり著くだろうけど・・・なら目指すはベルモンドだな!」

目標を最も危険な人のベルモンドに定めた。

狙いを決めたタクミはいつ敵と遭遇してもいいように自に強化魔法を覚えているもの全てをかけた。それは強化、魔力強化、防魔法、と様々なものだった。

「・・・・ふう。よしっ!これである程度の敵はどうってことないだろう。ただ5千人以上と戦うのはさすがにもたないからなるべく無駄な戦いは避けて、早めにベルモンドの奴を見つけないとな。」

「おいっ!ここに魔法騎士がいるぞ!」

無駄な戦いは避けると決めた矢先に、さっそく敵に遭遇してしまったタクミ。瞬く間に囲まれてしまう。

「な、言ってるそばからこれかよ!くそっ!だけどここまで敵がってきてるってことは狀況は悪化してるってことだろ!えーい!こうなったら手當たり次第だ!ドラゴンフレイム!」

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炎龍を召喚して雑兵との戦闘を開始したタクミであった。

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舞臺は変わってここはウルガンドの大広場。ここではより一層激しい戦火が広がられていた。ウルガンドの自警団と邪神教徒の軍が衝突している。

その戦場に神々しいほどの降りしきる雨の中、業火をまとって自警団の兵を鼓舞する一人のがいた。

「皆!あきらめては駄目よ!ここで食い止めなくては!ウルガンドは絶対に負けないんだから!」

「うおぉぉぉぉぉぉ!」

に呼応して士気を高める兵たち。その戦いぶりは勇猛果敢といった表現がしっくりくるものだ。邪神教徒の兵もその勢いに押されているようだ。

「くたばれー!!」

邪神教徒の一人がに襲いかかる。 これをまとっている業火で撃退するは手の甲の紅い紋章を輝かせ、何本もの火柱を上げて敵兵を撃退している。

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それは、というよりも立派な一人の長したローゼだった。

「このベルトール家の者め!お前こそいなくなればウルガンドは落ちたも同然だ!」

ローゼに狙いを定め集中的に攻撃する敵軍。これを守りにる自警団の兵たち。

「ここは危ないですぞ!ローゼお嬢様!どうかお下がりください!」

「いいえ。たとえ後ろで逃げていても攻め込まれればそれこそどうにも行かなくなるわ!これ以上敵の進行を止めなくては!私は私が出來ることを全力でするだけなのよ!それこそがベルトール家に生をけた者の使命なのよ!ウルガンドの民たちはたとえ私の命に代えても守るわ!」

決意と共にさらに燃え上がるローゼの炎。迫りくる敵軍を圧倒する。ローゼの炎に攻めあぐねている邪神教徒であった。そんな姿をみてさらに士気をあげるウルガンドの兵たち。徐々に邪神教徒の軍を押し返していく。

「その勢いよ!このまま押し切るわよ!」

勢いよく敵軍を追い返していたウルガンド兵であったが突然地面の土が盛り上がり手の形を作り出しウルガンド兵を押しつぶしていく。

「クックっクッ・・・なかなか進行がはからどらぬと思ったら、なるほど。ベルトールの娘よ。やはりお前が原因か。」

邪神教徒の軍の中に一人の男が現れる。それは顔をあらわにしたベルモンドであった。ローゼと対峙するベルモンド。

「この魔法に、この魔力・・・あんたいつかの不審者ね!」

「ふっふっふっ。だから言っただろう焦らずともいつか再び會うことになるだろうとな!」

「こっちはあんたの顔なんか見たくなかったわよ。さてはあんたが今回の主犯格ね!いったいどういうつもりよ!?」

「どうもこうもないさ。このウルガンドの街を我らが邪神教徒の拠點としてもらいけに來ただけだ。なのでお前らには邪魔だから消えてもらうだけさ。」

「あいかわらずふざけた奴ね。あんたがリーダーならあんたを倒せば間違いなく戦況はこっちに傾くわ!あの時の借りもまとめて返してあげるから覚悟しなさいよ!」

「殘念ながら覚悟するのはお前の方だよ。お前たちはここで私の手によって終焉を迎えるのだからな!」

ウルガンドはそう言うと魔力を高めて呪文を唱えた。

「我と契約する地の住人よ、今この場のすべてを躙することを許可する。その魔力をすべて我に捧げよ!我に仕えしゴーレム!」

ベルモンドが呪文を唱えると地面から土で造られた巨神兵が現れた。その右肩にベルモンドは立っていた。巨神兵はその右手でウルガンド兵をまとめて薙ぎ払った。

「こんなのどうしろって言うんだよ・・・」

ベルモンドが造り出した巨神兵をみて膝をついて兵が呟く。

ギリギリのところで戦っていた兵にとって巨神兵の姿は絶を抱くには十分であった。

「この圧倒的力に平伏すがいい!そして絶に死ぬが良い!ハッハッハッ!」

高いところから見下し高笑いするベルモンド。

「あきらめないで!こいつは私が倒すから!だからみんなもあきらめずに戦って!」

ローゼがウルガンド兵の絶を振り払うようにぶ。

「ベルトールの娘よ。相手との力の差もわからぬほど未ではあるまい。お前のそれは希ではなくただの悪あがきというのだよ!」

「悪あがきだってなんだってやってやるわよ!この場において私にあきらめるなんて選択肢はないんだから!くらえ!」

ローゼが自にまとっていた火柱を一つにまとめベルモンドに向けて放つ。

「無駄だ!」

その火柱を巨神兵の手のひらで防ぐベルモンド。

「そんなっ・・!」

「だから言ったのだ悪あがきだと。ふっふっふ・・今日はいい天気だな。まさにゴーレムをるにはもってこいの雨だ。この雨で私のゴーレムはそのに水を大量に含んでいる。お前の炎を防ぐなど容易いことなのだよ!」

「雨が何だっていうのよ!それならその雨ごと燃やし盡くしてあげるわよ!ベルトール家に伝わる紋章はそんなにやわじゃないんだから!」

さらに魔力を高めるローゼ。まとっている炎もその勢いを増している。

「これならどうよ!我が纏いし業火よ!我に仇なす敵を燃やし盡くせ!」

巨神兵を巨大な炎が包み込む。その炎はまさに天にも屆かんとする勢いである。

しばらく燃え続けた火柱が鎮火していくとその煙の隙間からは黒く焼け焦げた巨神兵の姿が見えてきた。

「やった!!」

その姿を見てウルガンド兵が歓喜の聲をあげる。

しかしその黒焦げの巨神兵に地面から土が集められていく。瞬く間に巨神兵は元通りの姿になった。

「さすがはウルガンドを治めるベルトール家といったところか・・・今日が雨でなかったらし危うかったかもしれぬな。だがこれでわかっただろう?お前に私を倒すことは出來ぬ!」

巨神兵がその土の拳を地面に叩きつける。叩きつけられたところから風がおき周りの兵を吹き飛ばす。ローゼも炎で防したがたまらず後ろに飛ばされ地面に橫たわる。

「・・・くっ!」

倒れているローゼに近づくベルモンドと巨神兵。

「どうやらさっきので魔力を消費しすぎたようだな。もはやお前に勝ち目はないさ。あの世の父親の所に送ってやろう!心配しなくともお前の母も、そしてこのウルガンドの民たちも一人殘らずお前の後を追わせてやるから安心して死ぬがいい!!」

「ごめんね・・・みんな。お父さん・・・」

涙をうかべるローゼ

巨神兵がベルモンドの合図で振り上げたこぶしをローゼに叩きつけた。その衝撃はさっきの倍以上はあるものだった。

巨神兵が叩きつけたこぶしを上げるとそこには巨大なクレーターが出來上がっていた。

「ハッハッハッ!ベルトール家はこれで滅んだ!これでウルガンドは我らの手に墮ちたも同然だ!さあ、皆の者よ!思うがままに殺をするがいい!」

「おぉぉぉぉぉぉ!」

勝利を確信して高らかにぶベルモンド。その聲を聞いて荒ぶる聲を上げる邪神教徒の軍。

「そんな・・・ローゼお嬢様。こんなことが・・・・」

その狀況を見て武を手から落とし、力が抜けたように次々座り込むウルガンド兵達。

「調子乗ってんじゃねーぞ、この刺青野郎が!」

び聲と共に白いが巨神兵に降り注ぐ。これを防する巨神兵。しかし大量のの矢がその巨を削り取っていく。

「くっ・・・なんだこの魔法は!誰だ!?」

聲を上げるベルモンド。聲のした方に視線をやるとそこには空に浮かぶタクミの姿があった。その手にはローゼを抱いている。

「貴様は・・・なぜここにいる!」

タクミの姿を確認するとベルモンドがんだ。

「・・・・タク・ミ?タクミなの?」

タクミに抱えられているローゼがタクミの顔を見て驚きを隠せずにいた。

「ああ。約束通り恩返しに來たぜ。」

驚いているローゼの顔に微笑みかけるタクミ。

「なんで!?なんでここにタクミがいるの!って空まで飛んでるし・・・どういうことか全然わかんないんだけど!?」

狀況が理解できずに錯するローゼ。

「事を説明するのは後だローゼ。」

地上に降り立ちウルガンド兵が集まっているところにローゼを降ろした。

「ローゼ、ちょっとここで待ってくれよ。あとで々と説明するからよ。まずはあのベルモンドの奴をぶっ飛ばしてくるからよ!」

ローゼをウルガンド兵に預けベルモンドの方に歩いていくタクミ

「ちょっとタクミ!無理よ!私でも倒せなかったのよ!?」

ローゼが引き留めようとぶ。

「まあまあ。俺も二年でだいぶ変わったんだぜ?そこで見ていてくれよ。今度は俺がローゼを助ける番なんだからな!」

タクミは振り返りローゼに自信満々に親指をたてた。

「わかったわ・・・後で全部説明してもらうんだからね!だから無事に帰ってきてねタクミ!」

ローゼが笑顔でタクミを送り出した。

巨神兵の前に立つタクミ。ベルモンドを見上げる。

「さーて、散々好き勝手暴れてくれたな!今度は忙しいなんて言わせないぜ?ここで二年前のリベンジさせてもらうからな!」

ベルモンドに向け拳を掲げるタクミ。その姿は威風堂々そのものだった。

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