《異世界スキルガチャラー》旅立ちの時

里から階段(ただし社の方向とは違う)を上る。

啓斗は今回は【ダッシュアップ】を使い、スタミナを使い切ることなく200段の階段を上りきった。

すると、突然景が一変した。

雄大な草原や、遙か遠くには城壁のようなものも見える。

啓斗は、しばらくその壯大な景に目を奪われた。

「この丘に、ルカは小さい時から毎日のように來ていたんだ。」

ディーラは懐かしむように言う。

「嬉しい時はいつもこの辺で走り回っていたな。そして、落ち込んだ時は……」

そう言ってまた奧に歩いていく。

「ほら、大抵あの樹の下にいるんだ」

ディーラが指さした先には、まさに「巨大樹」が丘にを張っていた。

「……君一人で行ってくれ。さっきまで怒鳴りつけてた私が行ったら気まずくなる」

ディーラは啓斗の背中を押し、自分は後ろを振り向いて去っていった。

啓斗が樹の近くまで辿り著くと、地面に突っ伏しているルカがいた。

「ルカ、何してるんだ?」

「………!!??」

聲をかけると、ルカは大慌てで立ち上がり、に付いていた土をほろった。

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涙は止まっていたが、跡が何となく殘っていて、目もかなり腫れている。

「ケイト君……どうして……?」

ルカは信じられない、という顔で啓斗を見やる。

「ディーラさんに教えて貰った。君は落ち込んだ時はいつもここに居るって」

啓斗はそう言ってルカの両瞼まぶたにれる。

ルカの目の腫れは綺麗さっぱり無くなった。

「よし、これで腫れは引いた。俺ももう、というか最初から怒ってないし、ディーラさんも許してくれるさ。戻ろう」

啓斗は明るい顔と口調で言う。

「え……あ、本當に腫れ引いてる……」

ルカは目の腫れが一瞬で消えた事に非常に驚いていたが、取り敢えず気を取り直して、戻ることを承諾した。

丘を下ると、ディーラが待ち構えていた。

「ケイト君、大僧正様がお呼びだ。すぐに行け。そしてルカ、お前にもやってもらうことがある。私に著いてこい」

続けて、

「ケイト君、すまないが1人で行ってくれないか?君なら1人の方が速いだろう?」

と言った。

啓斗とルカは顔を見合わせ、また後で、という言葉をわして別れる。

啓斗は【ダッシュアップ】を使って高速で走っていった。

「私達も行くぞ」

ディーラはルカを連れて里へ下りていった。

社やしろに辿り著いた啓斗は、ひとつ深呼吸をした後、扉をノックする。

また音もなく扉が開いた。

中では、昨日と同様に老人が坐禪を組んでいた。

「……ケイト君、こちらに來なさい」

言われるままに老人の隣に正座する(正座したのは何となくその方がいい気がしたからだ)。

「……さて、実はお主がフォレストウルフ共に襲われて生きて帰ってきたと聞いて、次の目的地になろう場所を急いで見つけた」

老人は淡々と続ける。

「君が次に向かうべき場所は、丘の上で君の見た城壁のある國、「魔法王國ヴァーリュオン」だ」

啓斗はその言葉に、

(魔法王國……異世界ってじが出て來たな)

と思った。

「お主のスキルがあれば旅路は問題ないじゃろう。………1つ頼みがある」

「なんでしょう?」

老人は數秒の逡巡の後、思い切ったように言った。

「ルカを……お主の旅に同行させてやってはくれまいか?」

突然の申し出に、啓斗はガッツリ固まった。

「ルカは、あの元來警戒心の無い格に加え、この16年間森の外に出たことが無い。じゃが、エルフとしての素質は申し分ない。才能が開花すれば必ずやお主の役に立つ」

老人は力強くそう斷言した。

「いや、旅は人が多い方が良いので、僕に拒否する理由はありません。しかし……」

「えー!?私がそれ斷るって思うの!?」

ルカがどう答えるか分からない、と言おうとしたその時、いつの間にかってきていたルカが驚きの聲をあげた。

ルカの服裝は明らかに違っていた。

きやすさを重視したズボンに、緑ではない濃い青の長袖シャツ、マントはフード付きのものに変わっていた。

「……というわけじゃ。お主の承諾も取れた。よし、すまんが直ぐに出発させるぞ。2人とも外に出よ」

促されて外に出る。

「ルカ、外界は森の狼共より危険なものも多い。それでも大丈夫か?」

最後に老人がそう尋ねる。

「うん、不安はあるけど、長したいから、大丈夫。それに、ケイト君が護ってくれるし!」

そう言ってルカは啓斗に笑いかける。

啓斗もそれに笑顔で応えた。

「よし、では風の霊様のお力を借り、お主らを森の外まで送ろう……ぬんっ!!」

老人が腕を高く掲げると、啓斗達の周囲の風が渦巻き始める。

そこにディーラが走ってきて、ルカに何かを投げた。

弓と矢、矢筒そして袋だった。

「餞別せんべつだよ!け取りな!」

「ありがとう!ディーラお姉さん!!」

ルカがそう言った次の瞬間、風は啓斗とルカを包み、空へ飛んでいった。

「……希は、行ったな」

大僧正はそう呟く。

「そうですね……」

ディーラは泣きそうな聲で答える。

「さあ、狼狩りだ。今度こそ奴らを1匹殘らず倒し、「地龍様」の封印を解く準備を整えておかなければ」

「ええ、里の戦士達にはもう伝えました。巫・・はその才能を開くため旅立ったと」

それを聞いて大僧正は深く頷き、聲を風に乗せる・・・・・。

「これより、最大級の狼狩りを開始する!皆、必ずや生きて帰れ!」

森の様々な場所から、森の戦士達の雄びが響いた。

「準備は出來てるわね?」

「勿論でサ!」

「じゃあ、こっちも作戦開始よ。さあ、楽しいパーティの始まりだわ!!」

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