《異世界スキルガチャラー》400連目 ヴァーリュオン到達の朝

(主にルカのせいで)一睡もできない夜を過ごした啓斗。

一瞬の隙をついてホールドから出はできたものの、その後しばらく心臓の悸が収まらない現象にまで悩まされた。

1人で汗だくになりながら(ほぼ冷や汗だ)時計を見やると、午前0時を既に回っていた。

ガチャ畫面を起してみる。どうやらガチャの更新は午前0時ピッタリのようだ。

啓斗は「アタックスキルガチャ」か「アザースキルガチャ」かで悩んだ後、「アザースキルガチャ」を引いた。

戦闘能力よりも今回は移系に重點を置いた結果だ。

なんと今回はSRスキルが2つ排出されるという高記録をマークした。

【百里眼ひゃくりがん】と【トリプル・スピード】というスキルだった。

この【トリプル・スピード】が今回の狀況で非常に有効だった。

能力は名前の通り、5分という制限付きではあるが、全ての行スピードが3倍になるというもの。

マップを確認すると、端の方に城壁と思わしき表示もある。

【ダッシュアップ】とこの倍速能力を併用すれば今日中に到著できるかもしれない。

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啓斗は、未だ眠りこけるルカを橫目に、火を消し、準備運を始めた。

「ん……ふぁぁ……って、えええええ!?」

激しく揺さぶられるような覚で目を覚ましたルカは、絶した。

ルカは今、啓斗に抱だき抱かかえられており、しかも周りの景がどんどん過ぎ去って行くのだ。

「え、え、えええ?」

あまりにも突然の出來事に、ルカは意味を持つ言葉を発せなくなっていた。

「ん、ああルカ、起きたのか。なら、舌を噛まないように気をつけろよ。もっと飛ばすからな!」

いつもよりかなり早口な啓斗の言葉を聞き、ルカは口を閉じて頷く。

ガチャでスキルレベルが上がった【ダッシュアップ】と【トリプル・スピード】のコンボで、啓斗は時速約40kmの速度を維持していた。

全速力で5分間走ったおで、あと數キロという所まで來ることが出來た。

ちなみに時刻は午前2時。ルカは無理矢理起こされた反で二度寢中だ。

だが、啓斗の目は完璧に覚めている。

(まさか【ピンチヒール】が重度の寢不足の時にまで自するとは……)

一昨日、「リカバリースキルガチャ」で手したSRスキル【ピンチヒール】。

ヒールで治せないレベルの重癥を1日に2回まで自治癒する、というものだったのだが、まさか寢不足にまで反応するとは啓斗はほども思っていなかった。

取り敢えずルカを地面に降ろし、自分は隣に座る。

あの高速の中にいたにも関わらず、ルカは再び眠りに就いていた。

その後、朝6時にバッチリ起床したルカ(何となく元気度が上がっている気がする)と一緒に數十分歩き、遂にヴァーリュオンの口に辿り著いた。

遠くからは城壁しか見えなかったが、近くに來るとまた違った景が見える。

10m以上は悠にあるであろう巨大な門をくぐると、眼前には賑やかな街並みが広がっていた。

「うっはー!!私、都會初めてなんだー!凄ーい!!」

ルカはまるで小學生のように無邪気に走り回っている。

「ルカ、観は後だ。取り敢えず、泊まれる所を探そう」

今にも街中に突していきそうなルカの腕を無理矢理摑んで、啓斗はマップを頼りに宿屋を探し始めた(どうやら、マップは認識者が設定できるらしく、彼とルカ以外の通行人にマップのホログラムは見えていない)。

人混みにまれながら宿屋を探すこと30分。ようやくそれらしき建を見つけ、中に飛び込む。

「くはっ!ああ、まだ朝早い時間だっていうのに何だ、この人の波は!」

啓斗とルカは2人とも息を切らしていた。

「あら、貴方達旅の方?」

宿の客の1人であろうが話しかけてきた。

「今日の凱旋パレードのことを知らずに來たなら災難ね。みんな、英雄サマ達・・・・・を特等席で見るために席取りをやってるのよ」

はそんな人々を小馬鹿にするようにクスリと笑うと、

「もしお祭り騒ぎと事故が嫌いなら今日は軽率に出歩かないほうが良いわよ。夜に備えて出店の準備してる所まであるから」

そう言ってヒラヒラと手を振って宿の階段を上がっていった。

「親切だけど、ちょっとじ悪いね、あの人」

ルカはその後ろ姿が見えなくなったあとに言った。

この世界の通貨は「ルーン」というらしい。

ディーラに貰った小袋には、何と紙幣で50000ルーンっていた。

街中で(機會は非常になかったが)見ることが出來た商品の値段などから推測して、ほとんど日本円と同じ覚で問題ないだろうと啓斗は思った。

その金で、5日分の宿代を前払いで済ませた(夕食付きで1組1泊2000ルーンという、格安らしい代金だった)啓斗は、ルカを部屋に連れて行き、ベッドに座らせ、真面目な顔付きで言う。

「ルカ、髪をほどいてくれないか?」

「へ?」

啓斗からの唐突な要求に、ルカは小首を傾げる。

しかし、すぐに明確な説明がされた。

「街中をざっと見ても、君みたいなエルフは1人も見當たらなかった。だから念の為、エルフ特有の耳を隠しておいてほしい」

そう言いながら啓斗は腕時計を外し、ズボンのポケットにれる。

「これも傍はたから見れば怪しい機械だからな」

髪を下ろして耳が隠れることを確認したルカと啓斗は、報収集と必要な資を買い揃えるために、危険を承知で街へ出た。

通信がる。

「はい、もしもし。…………本當ですか?私の意見が伝わったって?」

「ありがとうございます!いやぁ、嬉しいなぁ!それで、確率は?」

「はい、私の設定したデフォルトに戻ったと。了解しました。上様はなんて?」

「はあ、そうですか。え?いやいや、大丈夫ですよ。案外気にってますし」

「それじゃあ、500連目からはいつも通りでOKってことでいいんですよね?」

「はい、分かりました。じゃあ、お詫びの容はこちらにお任せ下さい」

「それじゃ、私も準備があるので。はい、失禮しまーす」

「……なんか今日の連絡係さんは私に優しめでしたね。新人さんかなんかでしょうか」

「まあ、それはそれとして……んー、ちょっと押しが足りなかったかな。まあ、私のデフォルトが採用されただけマシですかね」

「でも、確定ガチャの実裝は許可もらってますし、要所要所ってじですかねぇ」

「それにしてもあの変更された確率、ホントにクソだったわー。イカサマだろイカサマ」

「SRが1%でUR以上が0%ぉ!?冗談にもなりやしない!詐欺以前のクズ行為!」

「まあ、序盤からハプニングの連続でしたけど、どうにかなりましたねぇ。啓斗様からは他の奴らと違う「何か」をじました」

「今回こそ、今回こそ!絶対に功させて見せますから!!!」

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