《異世界スキルガチャラー》P.M.10~11時(ゼーテ) 屋敷の年
「はい、ここがお客様用の部屋です。今、タオル持ってきますから待っててください」
ゼーテは、廊下を進んだ先の一室に案された。
何故か突然びしょ濡れになった服と、また突然降り出した雨を互に見ていると、すぐに大きなタオルを持った年が戻ってきた。
「どうぞ。著替えは……多分クローゼットに何かってると思います。今、父様とうさまを呼んできますので」
また年は足早に部屋を出ていった。
ゼーテは取り敢えず服をぎ、濡れてしまったの隅々までタオルで拭く(魔法技が発達し、速乾の魔法が存在するヴァーリュオンだが、魔力の消費を抑えたり、魔法が使えない人間のために生活必需品は一つも欠けることなく販売されているのだ)。
だが、流石に得の知れない屋敷のクローゼットにある服をハイハイと著るわけはない。速乾の魔法を使って服を乾かし、著直す。
その後は部屋を観察してみるが、特におかしい所は無かった。
椅子一腳、鏡臺、ベッド、クローゼットくらいしかない小さな部屋。
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し広めのビジネスホテルの一室と言えばイメージしやすいだろうか(ゼーテはビジネスホテルなど知らないが)。
やることが無くなったゼーテは椅子に座り込んで窓の外を見つめていた。
10分ほど経った時、年が戻ってきた。
「すみません、父様が見つかりませんでした。いつもこの時間は書庫におられるはずなんですが……」
困った顔でそう言う。
「あ、別館にいるかもしれません。遠いので、一緒に來てくれますか?」
そう言ってまた歩き出す。
ゼーテは不審に思いながらも著いて行った。
長い廊下を歩き続け、別館と思わしき建にる。
(本館から直接別館にれるタイプなのね)
ゼーテは今、警戒をし解いて単純に屋敷の構造に目を奪われている。
「えーっと、確かこっちに……」
年はってすぐの階段を上っていく。
階段は一段一段踏むたびにギシッという音を立てた。
年はその後、2階の廊下の最奧の部屋をノックする。
「父様、いらっしゃいますか?お客様が來ておりますが?」
返事は無い。年はそのままドアを開け、ゼーテも続いて中にる。
「父様、書斎にもいらっしゃらない。一どこへ……?」
部屋の真ん中で立ち盡くす年に、ゼーテはずっと気になっていた質問をする。
「そういえば君、名前は何ていうの?」
突然の質問に年は目をパチクリさせていたが、すぐに気を取り直すと、丁寧な口調でこう言った。
「失禮しました。父にお會いになるなら言う必要も無いと思っており、名乗っておりませんでした」
「僕はジョン・ソルレイクと言います。この家の長男、15歳です。下に12歳の弟と6歳の妹がおります。申し遅れてしまい、すみませんでした」
そして腰を折り、ゼーテに頭を下げた。
「いえ、こちらこそ突然名前を聞いたりしてごめんなさい。私はゼーテ・ナイトブライト。宜しくね、ジョン君」
ジョンが顔を上げると同時にゼーテが自己紹介をして頭を下げる。
ゼーテも顔を上げて顔を見合わせると、2人とも笑顔になった。
「ジョン君、私、実は友達と一緒にここに來たんだけど、さっきから姿が見えないの。私と同じくらいの歳で、金の髪をしてるんだけど……見てない?」
ゼーテのその質問に、ジョンは深く考え込んでいる様子だった。
「……いえ、見てません。どういう風にいなくなってしまったんですか?」
「私がちょっと廊下に出た隙に悲鳴を上げていなくなっちゃったんだけど……」
それを聞いて、ジョンはピンと來たようだ。
「多分、弟に脅かされたんだと思います。弟は人をビックリさせるイタズラをするのが大好きですから。それでパニックになって逃げてしまわれたのでしょう」
「分かりました、弟の部屋へ行きましょう。彼は最後にターゲットを自室にい込んで、とびきりビックリさせてイタズラを終わらせるんです」
説明しながらジョンは急いで歩き出す。ゼーテも隣を歩く。
「さらにタチが悪いのは、弟は僕ら兄弟で1番魔法の使い方が巧みなこと。防音魔法を使ったりしてイタズラをしていることを僕達に分からないようにするんです」
「1度だけ僕と妹も標的にされたんですが、僕は心臓が飛び出そうになったし、妹は最初から最後まで泣きっぱなしでした」
早足で本館の廊下を歩きながらジョンは話し続ける。
「ここです」
本館1階の一室に著く。
ドアには「ユーリの部屋」と書かれたドアプレートが掛かっている。
「ユーリ!また誰かにイタズラしてるのか!?るぞ!」
ドアを大きな音を立ててノックし、返事を待たずに部屋にる。
「……いない?」
部屋はもぬけの殻だった。電気は點いており、さっきまで誰かいた気配がするようなの配置をしている。
だが、普通の部屋と明らかに違うところがある。
床と天井に巨大な魔法陣が描かれているのだ。
「この魔法陣は……創作世界を作り出すためのものとそれにるためのものだ……」
ジョンは2つの魔法陣を見比べながら言う。
「作のための魔法陣は効果が続いている。だけど、侵用のこっちは閉じてしまっている」
何が起きたのか推理していると、突然ドアが開いた。
「げっ、兄貴!」
ってきたのは、ジョンとよく似た顔をした、だがジョンより生意気そうで背の低い年だった。
「ユーリ!お前、この魔法陣はなんだ!説明しろ!」
ジョンがユーリに詰め寄る。
「いや、ちょっとイタズラしようとしただけだよ!よく分からねぇの人がいたからさ!」
そう言ってゼーテを見る。ゼーテはユーリを憎々しげに睨みつけていた。
「わ、悪かったって。アンタの友達のの人を脅かして回ったのは謝る!」
ユーリは慌てて頭を下げる。
だが、頭を下げて床を見た途端、顔が悪くなった。
「おい、俺の仕上げ用魔法陣、勝手に使ったのか?」
ユーリは2人に問う。
「なに?お前が使ったんじゃないのか?」
「いや、俺はまだ使ってない。でも、この魔法陣は使用済みになってる」
3人は顔を見合わせ、考え込む。
「この魔法陣にアクセスできる魔力を持った人間は僕とユーリと……」
そこで2人の顔がさらに青ざめる。
「……妹のマリーだけだ」
「ってことは、あのの人はマリーと一緒に魔法陣の中の世界に行っちまったのか」
すると、侵用の魔法陣がり出す。
「これは……あと1人だけれるってことだな」
ユーリがる魔法陣を見て言う。
「私が行く。2人は妹さんが無事に戻ってくるよう祈ってて」
ゼーテは言うなり魔法陣の中に飛び込んでいき、消えた。
「行はっやいな、あの人」
「ああ、この人達なら妹を救えるかもしれない。一芝居打った甲斐があった」
2人のはみるみるうちに死人のに変わっていく。
額からはが流れ、ジョンは右腕が、ユーリは左足が無かった。
「さて、もう1人お客がいるね。あの人には真相を知る役目を擔ってもらおう」
「そうだな」
年の亡霊たちは、その場でフッと消えた。
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