《異世界スキルガチャラー》P.M.10~11時(啓斗) 廃屋の探索

「……閉じ込められたか」

開かなくなった玄関の扉を見やり、そのまま啓斗はエントランスホール全を見回す。

床に敷かれたカーペットはり切れており、ドアはいくつかが腐って壊れている。

頭上にシャンデリアがあるが、埃を被っていて今はもう使いにならないだろう。

「完全に廃屋だな。2人はどこへ……」

啓斗は腕時計を左腕に付け直し、ドアのひとつを適當に開けて進み出した。

「人の気配どころか幽霊がいそうな雰囲気すらないな」

廊下を進みながら見つけたドアを全て開けて中を調べるが、ただのボロボロな部屋しかない。

本當に誰もいない、何もない。

啓斗はただひたすら屋敷の中を探索し続ける。

だが、廊下のかなり奧の部屋の1つで気になるものを発見した。

「タオル……?」

そこは、ベッドと椅子、鏡臺くらいしか置かれていない簡素な部屋だった。

その部屋の床に、水に濡れたタオルが落ちていた。

「まだほとんど乾いていない。使ったのは數分前だな」

啓斗はタオルを手に取り、そのまま鏡臺の上に置く。

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とにかく、どこかに人がいる可能が出た。啓斗は先程よりもしだけ希が見えた気がした。

別館へと続く道も見つけたので、別館も探索したが、本館より崩壊合が進んだボロボロの建があるだけだった。

本館に戻り、まだ調べていない方の廊下を調べる。

廊下には、一家の私室が並んでいた。

手前から順に、「ユーリ」、「ジョン」、「ネッド」、「リーラ」と書かれたドアプレートが掛かっている。

取り敢えず1番近い「ユーリ」の部屋のドアを開けようとするが、何かが引っかかっているのか開かない。

仕方なく次の「ジョン」の部屋を開けてみる。今度はすんなり開いた。

部屋の中はシンプルな作りだが、タオルを見つけた部屋より2倍は大きく、本棚や勉強機があり、ベッドもかなり大きく豪華だった。

更に、他の部屋と比べても腐敗の度合いがなく、清潔だった。

「まるで、まだ誰か住んでいるみたいだな。この部屋だけ」

そう言いながら啓斗は本棚を調べる。

本棚には、「魔法と機械の共存」やら「黒魔法への誤解について」など、容もかなり難しいものが多い反面、「まほうのくにのおひめさま」など、絵本もそれに匹敵するくらいあった。

異常な本棚から離れ、啓斗は次に機を見る。

學校の教科書と思わしき本がブックスタンドに十數冊置いてあり、開いたままの本も置いてある。

まるで、機に向かってなにかしている時に突然いなくなったかのようだ。

次に、機の引き出しを上から開ける。上段と中段には何も無かったが、1番下段に、一冊の小さな本がっていた。

「……日記か」

本のタイトルには、「Diary」とあり、裏には「ジョン・ソルレイク」と名前が書かれている。

読もうとして本を開いたその時、

「こんばんは、お兄さん」

背後から年の聲で話しかけられる。

振り向くと、顔面蒼白な年が2人立っていた。

「僕はジョン、こっちは弟のユーリ。お察しの通り、この貴族一家の息子で幽霊です」

ジョンと名乗った年は丁寧に、ユーリと呼ばれた年は面倒くさそうに一禮した。

「その日記は、5年前に僕が書いたもので、僕ら一家の死の真相が記されているはずです」

「「はず」っつーの俺達も生前の記憶が曖昧で、確信がないからだぞ」

そう言ってジョンは困った顔をし、ユーリは頭を掻いた。

「だが、確信を持って言えるのは、俺たち兄弟と親父、母さんが死んだこと」

「そして、妹のマリーが呪われてこの屋敷に閉じ込められてることだ」

ユーリが忌々しそうな顔で口を開く。

「お兄さん、あなたは街で黒い影に出會いましたね?」

ジョンの言葉に、啓斗は頷く。

「あれは僕達の父のれの果てです。父があるに手を出したばかりに、妹以外の一家は死に、生き殘った妹には強力な呪いがかかりました」

「母は、かつて父だった怪に吸収され、奴にまとわりつく亡霊と化しました」

「父と母は今、怠惰の悪魔の僕しもべを倒したあなたの仲間に襲いかかろうとしています」

シーヴァのことだろう。啓斗の焦りは増した。

「んで、あと2人のアンタの仲間は、マリーと一緒にいる。アンタの協力があれば、マリーの呪いを解いて出できるかもしれねぇし、親父も倒せるかもしれねぇ」

「いやぁ、しっかしマリーの呪いの力と俺のイタズラ魔法で逃げ回るはケッサクだったぜ」

ユーリは人の悪い笑みを浮かべる。

「お前、2人に何を……!」

啓斗はユーリを睨むが、彼の顔は変わらない。

「おいおい、そんな反抗的でいいのか?俺らの言うこと聞いとかないとお仲間は救出できないぜ?」

その言葉に黙り込む啓斗を見て、ジョンはユーリの頭を毆る。

「ユーリ、いい加減にしろ。折角ここまで辿り著いてくれた人達なんだ。余計に挑発するな」

「……ってぇな、分かったよ。んじゃ、俺は1回消えるぜ。兄貴、あと宜しく」

頭をさすりながらユーリは明になって消えていった。

「弟が無禮なことを言ってすみません。今までに街に來た方々は全て父に殺されてしまい、一筋の希すら無かったのです」

「しかし今日、貴方達はここに辿り著いてくれた。そこで、幻覚魔法を使い、仲間のお二人には昔の屋敷を見せて、舞臺・・まで導しました」

ジョンはそこで啓斗に再び頭を下げる。

「本當に、僕達が仏したいという勝手な思いと、妹の呪いを解きたいという願いに付き合わせてしまってすみません」

「でも、既に死んでいる僕らにはもうどうにも出來ないんです。どうか、力をお貸しいただけますか?」

ジョンは更に頭を下げる。

「……頭をあげてくれ。力を貸そう。2人を救いたいからな」

2人、というのはもちろんルカとゼーテである。

「そうですよね。では、日記を開いて下さい。そこのどこかに、真相と解呪に必要な最後の道が書かれているはず」

啓斗は、機に日記を置き、1ページ目から見始めた。

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