《異世界スキルガチャラー》P.M.11時~0時 暗黒の騎士の戦い

「コー……コー……」

コープスドラゴンは、その空の両眼をシーヴァに向けて目の前を羽ばたいている。

「目障りだ! どけ!」

頭の流は無視して龍に怒鳴るが、もちろん敵がどく訳もない。

「そうか、良いだろう。この暗黒の騎士に本気を出させたいようだな」

だが、シーヴァは眼帯を取ることはしない。

今使えば、この後に何かが起きた場合に対処出來なくなるかもしれない。

シーヴァは自分の「眼」の威力を過信してはいないまでも充分に理解している。

彼の力を使えば、戦況を一瞬でひっくり返すのも容易であるし、シーヴァ本人も何度か実際に相手の軍勢を一瞬で叩き潰したことがある。

(時間的に考えれば、さっき使った分を計算して……使えるのはあと1分ほどしかない)

決心を固めると右手に魔法剣を作り出し、闇のエンチャントを施ほどこす。

「この【シャドウブレイド】、ケイトには遅れをとったが、貴様程度を消すのは容易たやすいぞ!」

そう言って一気に跳躍し、龍のに斬りつける。

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コープスドラゴンの骨のみのの一部は、あっさりと斬れた。

シーヴァの手には、いつもの敵を斬る「嫌な」が殘る。

「はっ!」

更に細かく分解するように、切り離した骨を斬り刻む。

コープスドラゴンは、龍の死骸に魔力を流し込んでかす魔法によって戦闘を行う、言わばり人形の龍版と言ったところだ。

故に、を真っ二つにしようが頭を消し飛ばそうが問題なくく。

よって、この龍を倒すは方法は大まかにこの3つに限られる。

1.っている者を発見して倒す。

2.龍にかけられているを無効化する。

3.が効かなくなるようなレベルまでられているを細かく分解する。

1は、まずその時間が無いため不可能。

2は、ゼーテなら可能だが、シーヴァでは実力不足だ。

よって、3以外に選択肢が無くなってしまう。

「骨になるまでバラバラに砕してくれる!」

シーヴァは、剣を槌つちの形に変化させる。

「こっちの方が効率いいか。そうだな……【シャドウハンマー】とでも呼ぶか」

闇を纏ったハンマーは、みるみるうちに巨大化していく。

「更に、1から10まで魔法で生してるから、大きさ自由自在だ!」

「一撃で微塵こなみじんにしてやる!」

そのまま更に上空に跳躍し、狙いを定める(槌は魔法製なので、重さなどはない)。

コープスドラゴンも反応して飛び上がろうとしたが、シーヴァの方が一手早かった。

龍を覆い盡くすほど巨大化した槌がそのを一瞬で叩き潰した。

街に轟音が響く。コープスドラゴンは、原型を留めないほど完璧に砕された。

「ふぅ、やはり魔相手の方が気が楽だな」

念の為にもう2回殘骸を砕いたあと、額ひたいを拭ぬぐった。

汗は出ていたが、出は止まっていた。

「軽傷で助かった。さて、早く3人を追わないとな。僕の助けが必要なはずだ」

民家の屋に飛び乗って屋敷の方向を確認する。

「……結構遠いな。急いだ方が良さそうだ」

すると、目の前に「影」を人型に切り取ったような何かが現れた。

「……あえああ、うううぅぅ」

その「影」は、ぎこちないきで近づいてくる。明らかに普通の人間ではない。

「闇」や「黒」には目がないシーヴァだが、これには得の知れない危機を持った。

試しに小型の魔法弾を影に撃ってみる。

高速で影に接近した弾は、影がにまとわりつかさせている黒い霧のような何かに掻き消された。

それだけでもかなり驚愕きょうがくしたシーヴァだが、更に驚かされた。

その霧のような何かが腕のような形を作り始めたのだ。

そして、その霧の手は無數に増えていき、そのまま襲い掛かってきた。

「これは、逃げるが勝ちだな」

急いで踵きびすを返して屋から屋へ飛び移る。

そのまま全速力で屋敷を目指す。

「何か」は、霧の手を増させ続けながらシーヴァをゆっくり追跡し始めた。

「……これは、僕をとことん足止めしたいらしいな」

屋敷の周りには、先程倒した個とは別のコープスドラゴンが3旋回している。

龍達はシーヴァの姿を見つけると一斉に襲い掛かってきた。

「くそっ、もうしで辿り著けるのに!」

爪や尾での攻撃を回避しながら、槌を振り下ろす機會を伺う。

だが、1だけならまだしも、3の攻撃を全て避けていてはその隙は中々來ない。

回避に集中せざるを得ない苦しい戦闘が続く中、背後にコープスドラゴンとは違う異様な雰囲気をじ取った。

「……よし、來た」

先程の「何か」だ。霧の手はもう300本は超えているであろう數が背中に繋がっている。

よくよく見れば、限りなく分かりにくいが本であろう影には顔があり、しっかりとした「人間」の構造をしている。

(ということは、これは怨霊か何かだな。あとはタイプに掛けるしかないが……)

シーヴァは霧の手に絡めとられないように全力で怨霊の橫をすり抜ける。

コープスドラゴンもシーヴァを追って怨霊に近づいた。

瞬間、無數の霧の手が龍のの1に絡みつき、「本」の「中」に引きずり込んだ。

「よし、無差別に敵を殺害するタイプだ。すまないが利用させてもらおう」

「正直、その暗黒の力は羨ましいが取り込まれるのはゴメンだ」

怨霊が2目を捕縛している間に飛行魔法を使って屋敷に向かって飛ぶ。

3目はシーヴァを叩き落とそうとしたが、それより前に絡めとられた。

「……5目は流石にうざったいぞ!」

屋敷の庭に辿り著いたシーヴァだが、そこには翼が無いタイプのコープスドラゴンが座っていた。

「まぁ、それくらい敵に評価されてると思えば、悪い気はしないな」

最後の龍が立ち上がると同時に、シーヴァも魔法の槌を作り直した。

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