《異世界スキルガチャラー》VS マリー・ソルレイク

「おねえちゃんとあそぶのたのしーなー!」

マリーは怨念の弾丸を次々と撃ち出してくる。

「く……強い……!」

弾丸を弾き飛ばしながらゼーテはマリーをじっと見つめる。

戦闘時間は2分を超過しているが、何故か銀眼の効果が消えない。

(多分、現実じゃない仮想空間だからね)

そう考えてゼーテはそのまま戦闘を継続する。

マリーは、に高度の怨念をまるで鎧のようににまとっている。

だが、攻撃のために怨念を発する時にのみ、鎧の部分がしだけ薄くなる。

ゼーテの作戦はシンプルだ。

マリーが攻撃してきた時に懐に素早く潛り込み、薄くなった怨念の裝甲を銀眼でさらに剝がして倒す、というもの。

しかし、マリーはふわふわと浮いて常に移しているので、中々照準が定まらない。

しかも、銀眼で怨念を引き剝がしても、殘った怨念がマリーのを強制的に後方に移させる上、移した次の瞬間にはまた高度の鎧が構築されてしまう。

ゼーテのきでは、鎧を剝がすまでがやっとで、追撃までることが出來ない。

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そこで、さっきからルカに追撃役をやってもらおうと説得しているのだが……

「うう……でも……」

ルカは、最初におままごとをした時の本當に無邪気なマリーの姿が脳裏にチラつき、攻撃態勢が取れない。

「ルカ!あなたが戦わないと2人とも死ぬわ!弓を構えて!」

の合間をってゼーテがルカにぶ。

それでも決意が固まらないルカだったが、今回はこの優しさが裏目に出ずに済んだ。

「ゼーテ!ルカ!居るなら返事をしてくれ!」

上空から啓斗の聲がしたのだ。

思わず上を見上げると、空中に開いたから啓斗の顔と腕が見える。

「ゼーテさん、行って!私が惹きつける!」

啓斗は打開策を見つけ出したからここに來たはず。

そう判斷したルカは、戦えなかった償いにと囮を買って出る。

ルカの咄嗟に出た言葉に、ゼーテは過敏に反応した。

「分かった!すぐに戻ってくる!必ず生きて!」

ゼーテは啓斗のいるに向かって飛んだ。

「マリーちゃん!私と遊びましょう!あなたが鬼よ!」

ゼーテのは逆方向に走りながらルカはマリーに呼びかける。

マリーは無邪気な笑顔を向けながら追ってくる。

(さっきまでの鬼ごっこもギリギリまで逃げ

られたんだから、今回だって!)

ルカは裏路地に突していった。マリーは怨念弾を次々と放出しながら追う。

「ケイト!」

全速力で啓斗の元まで急行したゼーテ。

「ゼーテ、マリーの呪いを解く聖水を見つけた。これだ、け取ってくれ」

啓斗は硫酸ラベルの瓶をゼーテに渡す。

「中は硫酸じゃないぞ?これをマリーに思いっきりかけてやれば、解呪されるはずだ」

渡された瓶をじっと見て、ゼーテはひとつ頷く。

「分かった。でも、ケイトは何を?」

「俺は、外にいる敵の相手をしなきゃならない。だから、ここは任せていいか?」

啓斗の深刻な表に、敵が只者でないと察したゼーテは、もう一度頷く。

「任せて。完璧に呪いを解いて、あの子のお兄さん達を喜ばせてあげないといけないしね!」

ゼーテはニカッと笑う。

「……そうだな。よし、行ってくれ。ああそうだ、シーヴァが到著したみたいだぞ。無事でよかったな」

だが、啓斗のその最後の言葉に、ゼーテは突然機嫌を悪くした。

「あ、あいつの安否なんて今はどうでもいいのよ!じゃあね!アンタも負けんじゃないわよ!」

ゼーテはそのままルカとマリーのいた方向へ飛んで行く。

「……ゼーテ、その反応は自白してるようなものだ」

啓斗は笑いを噛み殺しながらそう言った。

しかし、今はそれを気にしている場合ではない。すぐに気を取り直すと、シーヴァとベルフェゴールがいる廊下へ走り出した。

「噓ぉぉぉぉぉぉ!?」

ルカは、追われて全力疾走していた。

ただし、マリー以外に、屋敷で追ってきた斧、甲冑、ピエロも追加されている。

「みんなであそんだほうがたのしいよー?」

更に、怨念の塊をこねて、人形の形を作る。すると、人形にがつき、マリーの部屋にあったものと酷似したものになった。

「おにんぎょうさんもオニだよー!」

すると、人形が悪魔のような笑いを浮かべてルカを追跡し始めた。

「ちょっとそれは無いよぉぉぉぉ!!」

ピエロの突進を橫っ飛びで回避したルカの顔はまた泣きそうだ。

遂に路地裏の行き止まりに追い詰められた。

「そろ、そろ……時間稼ぎはいいよね…?もう走れな……」

夜7時頃からずっと逃走を続けたルカのには既に限界が來ていた。

ヘロヘロと壁に寄りかかって座り込む。

マリーが変わらぬ無邪気な笑顔を向けて歩いてくる。

だが、その背後には既にゼーテが忍び寄っていた。

仏……しなさい!!」

瓶のフタを開け、中をマリーの全にぶちまける。

すると、仮想空間自が歪む。そして、視界がグルグルと回り始めた。

思わずゼーテとルカは目を閉じる。

再び目を開けると、部屋の真ん中に立ち盡くすゼーテと、壁に寄りかかったルカ。

そして、穏やかな寢息を立てて眠るマリー・・・・・・・・・・・・・・。

「えっ………?」

「えっ………?」

すやすやと眠るマリーを見て、その後に2人は顔を見合わせる。

ゼーテが恐る恐るマリーの顔にれると、子供特有の暖かな溫がじられた。

「この子……生きてる……」

そう言うと、ルカも目を更に丸くした。

「「ええええええええええぇぇぇぇ!?」」

する2人をよそに、マリーは安らかな寢顔でむにゃむにゃと眠り続けている。

「兄貴、やったな。マリーを延命させる計畫は功してたみてぇだ」

街の上空で、ソルレイクの兄弟は笑い合っていた。

「ああ、しかしユーリ、亡霊なのに魔法陣の定員を急遽きゅうきょ一人分増やすとは、流石だな」

ジョンは心底心した様子で言う。

「ふん、そりゃマリーのためだからな。あーあ、親父が変なことしなけりゃ俺、今より上の役職に就いてたぜ、ぜってー」

ユーリは空中でバク転しながら悔しそうに言う。

「まあ、そう言うな。呪いは解けたんだから、あの世で2人に聞いてみよう。何でこんなことしたのか、てな」

「おう。それでしょーもねー理由だったら親父だろうがぶん毆ってやる」

そう言って、兄弟は1番大きな聲で笑い合う。

「あの人達ならマリーをよく保護してくれるだろう」

「まあ、に呪いを完全に封じ込んだだけなんだけどな。ヤベぇ武になるぜありゃあ」

「僕は、あの方々の人間を信じる。危険かどうかなんて考えずに仲間を助けに魔法陣に飛び込む人達だ。信用できるだろう」

「だな。じゃあ、死人はさっさと消えますかぁ」

兄弟は、夜空に溶けて消えていった。

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