《異世界転移するような人が平凡な高校生だと思った?》37話 覚醒 II

 先程まで轟音が鳴り響いていた、ダンジョン90階層の広い大広間にはなんの音せず、ただ赤い炎の燭臺が部屋を照らすだけだった。

 どれくらい経ったか、ついに一人、意識が覚醒して、起き上がるものが現れる。

「....ここは......天界..では無いようですね。 っと言うことは祐は無事倒せたのでしょうか」

 一番最初にそこで起き上がった人。ミスラは周りを見渡し、しの年の姿を探す。

 大広間はもう散々な景だった。地面はヒビ割れ、叩けば崩れそうなほど。そして周りには祐が放った魔法の雪が未だに殘っていて、一言で言えば凄く荒れている。

 そんな慘狀の中に、ミスラは倒れている年を見つけた。

 取り敢えず五満足である事を確認し、張を解いて近づく。

 「....息は........ある。良かった..魔力切れですか..」

 祐に命の別狀がないと分かって、安心して膝枕をしようといたところで止まる。

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「そう言えば、ダンジョンでは止って約束したんでしたっけ....」

 祐との約束を思い出したミスラは、著ていた聖職者のようなローブをぎ、畳んでそっと祐の頭の下を置いて枕替わりにして、自分はその隣で育座りをする。

 「........全く、困った人です..膝枕するなと言うなら倒れないでしいものですよね。 本當に、自分の寢顔がどれだけ魅力的なのか自覚したほうがいいですよ....ブツブツ」

 隣で座るミスラは、頬を膨らませながら文句を垂らす。

「....聞いてるんですかぁ? もう....ふふっ」

 ミスラは祐の頬をツンツンしてみたり、そんな甘い空間をひとりでに作り出す。

 やがて、その甘い空間も終わり、ミスラはし真剣な顔になりながら呟く。

「それにしても、ミノタウロスが見當たりませんね....」

 そう、辺りにはミノタウロスの死が見當たらないのだ。腕1本どころか、の跡さえも。

 ミスラは警戒と思考だけに頭を回していると、何かがいている気配がした。

「....これは..灰? え? そんなまさか..!」

 風により寄ってきた灰の出処を見ると、ミスラが雪かと思って見落としていたが、確かにそこには灰の積もり積もった姿があった。

 天井から落ちてきたようにも見えるが、ダンジョンで灰があると言ったら、もうそれは皆が皆、魔が核を突かれて絶命した跡だと気づくだろう。おまけにその灰に、し小さくなってる気はするが、恐らくミノタウロスのものと思われる角が出ていることから、確実にミノタウロスだと分かる。

「だけど......どうやって.....」

あの狀況で、核まで剣が屆くとは思わわなかったミスラのしては、どうやってやったのかさっぱり分からなかった。

「....まぁ死なずに済んだのですし、後で祐に聞けばいいですよね」

 驚きはあったが、これでもう命の危機は去ったと考えると、安堵して祐の寢ている隣に、自分も同じように寢っ転がって、寢るのだった。

***

「......ん...? あれ、ここは........ミノタウロスは..!?」

ガバッ! と起き上がろうとしたところで、にずっしりとした覚を覚え、起き上がれずに倒れる祐。

「ちょっ!なんだこれ....って..ミスラ....?」

 重りの原因に気づいた祐は、呆然として、だが目は直ぐに周囲へ移す。

「........んぅ? あ、ゆう 起きたんですかー..」

「ミスラ、々狀況確認したいけど、今は早くここを出よう。ミノタウロスがまだ近くにいるかもしれない」

 周囲にはいないと気づいた祐は、恐らくミノタウロスが一番最初に起きて、俺らが倒れているのを見て、死んでると思って去ったか。だが、それは考えずらい。ただのミノタウロスならば、そんな勘違いもあっただろうが、相手は知能を持った敵だ。死んでるか確認くらいするはず。

「....? あれですよ?」

「え? 何が?」

 突然、ミスラが何を言ってるんだみたいな顔で、そんなことを言ってきた。

「だから、ミノタウロス。核をついたのでしょう? それで灰になったと。もしかして寢ぼけてます?」

 確かに、今俺は呆然としていた。だがそれは寢ぼけていたからではない。本當にミノタウロスが灰になっていたのを見たからだ。

「....ミスラ、一応言うと、俺あいつの核を潰せてないと思う 」

 魔の核を壊すと灰になると言うのは初耳だったが、あの剣の淺さでは、核まで屆いたとはどうしても思えない。

「........本気で言ってる顔ですね....ですけど、こうなったらもう、あれを確認するしか答えはわかりませんよ」

 そう言うとミスラは、積もった灰に目を向ける。

「だよなぁ....」

 灰からミスラに目線を戻すと、何か、違和に気づく祐。

「....あ、ミスラ、ローブはどうした?」

 下から上まで見ると、違和の正に気づいた祐はミスラに問いただす。

 今のミスラは、丈の短いワンピースのような格好で、なかなか出の高いじになっていた。主に元とか。元とか!

 「目がとても分かりやすい方向に行ってますよ? 枕替わりにしてただけです」

「そ、そっか。ありがとな」

 指摘されて直ぐに目を逸らす裕。

「別に見られても良いですけどね祐なら」

 ミスラは悪戯の含んだ顔で見つめてくる。

「見てないし!俺が好きなのは太ももだから!」

「それはなんのフォローにもなってないですけど....? 太ももも見てもいいんですよ? 」

「さ、さて、灰の中確認しますか!」

「む、逃げましたね」

 祐はこれ以上は耐えきれないというように、立ち上がって灰の方に向かう。

「こ、この灰さ、集めたらミノタウロスくらいの大きさになるだろうけど、この中にミノタウロスがいると考えるのは難しいよな」

「まぁ理的にいえばそうですね」

 灰の前で剣をいつでもれるようにして、暫くの沈黙が続いたあと、祐がいた。

 片手で剣を持ち、もう片方の手を灰の中に突っ込む。

「....」

「..どう、ですか?」

 手をれた祐は、一瞬ビクッとした後、驚愕の表を見せた。

「いや、なんか................ぷにっとした」

「はい?」

 祐は剣を置き、両方の手を突っ込んで中のものを灰から出した。

「「え、えぇ....」」

 驚愕というか、もう意味わからん。みたいな顔をして出てきたものを見つめる。

 これを見れば誰でもそんな想が盛れるだろう。なんたって灰から出てきたのは、ミノタウロスでも、核でもなく、角が生えていて、ルビーのように鮮やかな赤い髪を持った6歳くらいのだったのだから。

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