《異世界転移するような人が平凡な高校生だと思った?》43話 力の差

轟音がなる。それも斷続的に。

 見えない壁の外で、ミスラは神でありながら祈っていた。

 2人の戦いは続いている。それを見屆けることしか出來ないミスラには、こうするしか出來ることがなかった。

***

「フッ!」

 シュナは、拳がメインの戦い。になると思いきや、シュナは拳だけではなく、腳や、剣など、様々な攻撃方法で祐と戦っていた。

 慣れていない戦い方のはずだ。だが、シュナはとてもに、それ自が武のように流れるように拳、腳、剣を互に使っていた。

「本當に....用だな。しでも俺に見せてない戦法で隙を突こうって訳か。悪くない、けどな」

「..ッ!!」

  常人なら見えないスピードのシュナの蹴りを、何事もないように摑む。

「俺には効かない」

 そう言うと、先ほどと同じようにシュナを投げ飛ばす。

「小細工は辭めとけ、自分が一番力の発揮出來る方法でこい」

 シュナからすれば渾の一撃だった。それを軽々とけ止められたことにより、本當に、小細工が効かないと確信する。

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「さて、そろそろやるか」

 そして、祐の顔にが消え去った。

「『障壁プロテクション』『強化ブースト』『重力作:増幅グラビティブースト』」

「『幻刀』」

3つの魔法の同時発。そこに3の分。維持するだけでも、相當の集中力が必要だ。だが、前世の祐は涼し顔だ。

「....ソれ......祐のスキル」

「元々俺のスキルだ」

「.......そう..なんだ。 ならいい」

「「....」」

 今度はシュナではなく、前世の祐がいた。スピードは祐と同じくらい。シュナでも対処出來る速さだ。

「『炎槍ファイアーランス』」

 祐の頭上に、4つほど出現した炎の槍が、いっせいにシュナに迫る。

 それをシュナは、きで、全て避けきる。力で跳ね返す選択肢もあったが、この実力差で、力でねじ伏せる事は不可能だとしっかりと分かっているらしい。

 ならば、無駄は極力省かなければならない。

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「後ろががら空きだぞ」

 炎槍ファイアーランスを避けるのに、集中がいって、一瞬祐への意識が外れたシュナの元へ、拳が迫る。

「ぐぁッ!」

 前の蹴りとは比較にならないほどの威力。急所は外したらしいが、シュナはまた吹き飛ぶ。

 今の祐は、強化ブーストにプラスして、重力作:増幅グラビティブーストにより威力が桁違いのものになっている。その代わりにスピードは落ちる。という仕様だ。

 シュナは顔を渋らせながらも立ち上がり、先手を取らせないように突っ込んでくる。

「....『魔天魂蒼まてんこんそう」

 ここで、シュナが初めてスキルを発する。

「....魔王種になったことによる固有スキルか.....初めて聞くスキルだが....いいぜ、こいよ」

 シュナのからは蒼い炎が吹き出ている。

その炎は、ただ青いだけではなく、どこか神々しい。見れば、赤かったシュナの目は、今は蒼く染っている。

「....いく」

 すると、祐の視界からシュナが消える。

「.....ッ!?」

 全く目で追えなかった....?いや、そんな事よりも........俺は今、何をしている....?

 頭と腹に痛みがあった。よく見れば、目の前には天井があることに気づく。

 まさか....仰向けに倒されている..?

 あまり冷靜に分析もしていられない祐は、すぐさま立ち上がる。

 見てみれば、シュナは、最後に見た場所からいてなかった。

 それにより、自分が何をされたのか気づく。

「衝撃波か........いや....」

 恐らくあの炎で衝撃波を飛ばした。それが妥當な考え方だ。だが、仮にも魔王の固有スキルだ。衝撃波があっていたとしても、ただの衝撃波であるはずがない。

「取り敢えず、様子見だな」

祐は、自分の分かして、シュナへ攻撃を仕掛ける。

は、しでもかしやすくするために、重力作:増幅グラビティブーストは掛けていないようだ。その分、速度は出る。が──

「....なるほどな」

 シュナから吹き出る炎は、剣のような形狀に変わり、分を軽く上回るスピードで刺す。

 魔王は本來、一人で一つの國を滅ぼせるほどの魔力を持っている。その圧倒的な魔力量で、極大魔法を連発して放ったり、億の軍勢を一瞬で出現させたりする。それが魔王の、一番恐れられる戦い方だろう。

 しかし、シュナは魔法を得意としない。元はミノタウロスなのだから、當然っちゃ當然なんだが、だがそれでは、折角手にれた絶大な魔力も無駄に終わる。

 強化ブーストくらいは出來るだろうが、圧倒的な力までにするには、何百回も使うことになる。そこでシュナにはこの固有魔法が生まれたのだろう。

 個を最強とする力。魔力を全て強化に注ぎ込むスキル。単純なようで、案外、一番厄介なものだ。

「って事はさっきのは衝撃波ではなく、普通に突っ込んできて、俺を腹パンしたってだけか....」

 きっと手加減したのだろう。障壁プロテクションを使ってでもこの痛みってことは、もうし力をれてれば、上半ごと吹き飛んでた可能がある。

「これだから魔王ってやつは、油斷出來ねぇんだよな」

「次は....本気........」

「もう魔力の殘りとか気にしてる場合じゃないな...」

 シュナは、祐の魔力が數倍に膨れ上がるのをじ取る。

「『完全防フルレジスト』『滅剣』」

 前世の祐は、また自の防魔法、そしてもうひとつの魔法により、祐の手にの剣が出現する。

 シュナが仕掛ける。圧倒的なまでの速さ、蒼い炎で出來た剣が祐に迫るが、それを、まるで分かっていたかのように、滅剣でけ止める。

 ──よし、さっきは油斷したが、今はギリギリ目で追えるな。

 祐も速さが増している。速度を落とす重力魔法は解除したようだ。

シュナからの一撃をけ流し、カウンターを狙うが、直ぐに距離を取られる。反応速度では祐が勝っているが、単純な速度はシュナが上のようだ。

「『滅竜式、一の太刀』       〝竜牙一閃りゅうがいっせん〟」

 そうして、抜刀の構えから放たれた祐の剣は、瞬きした瞬間には、抜刀の構えに戻っていた。

「チッ やっぱ竜とは訳が違うか」

 シュナは無傷。何かあるとは思っていたが、あの炎、打撃は一切効かないらしい。加えて、滅剣が効かないということは、恐らく魔法も同じだろう。

「やっぱ危険だな。これがもう長してたら、負けてたかもな」

「........この狀況で 勝てル?」

「あぁ、この程度ならな」

 シュナはしムッとしながら、炎の剣を構える。対して、前世の祐の方は、ただ突っ立っているだけ。これにシュナは、余計に頬を膨らませながら、一瞬で祐の背後へ....と行くことは無かった。

「.....あ.....れ.......?」

 シュナが纏っていた炎が消え去り、力したように倒れ込む。

「....なに......した?」

 「何もしてない」

 誰から見ても祐はいていない。なら何故いきなりシュナが倒れるのか。

「當分はけないだろうから教えてやる........お前の固有スキルは、確かに強い。だが當然、強ければ強いスキルほど、魔力が必要になる。しかも見る限り、そのスキルは、使っている間、魔力を凄まじい速度で消費するタイプだ。圧倒的な魔力量のある魔王なら問題は無いだろうが、魔王になったばかりの奴がそれを使うのは、持って5分って所だったな」

 説明をけたシュナは、難しい顔をしながらも、なんとか理解できているようだ。

「....勝てると思って....油斷した、私の 負ケ」

「あぁ、そうだな........祐の奴が、出來る限りショックをけないように、完全に消し去ってやる」

「......けど」

倒れ込んだまま、目だけこっちに向けるシュナの顔は、死への恐怖や憎悪、そんなじさせないほど、優しいものだった。

「ユウを殺したく、なかった。から..これは  私の勝チ」

「......あいつは、俺から見れば、なんの力もないのに、なんでも守ろうとする、愚かなお人好しだがな........」

「......自?」

「.........」

シュナの的確なツッコミに、前世の祐はバツが悪そうな顔をする。

 後ろでは、見えない壁を叩くミスラの姿がある。

「『我がするは業火の炎、全てを滅ぼし、無に還す。そこに恐怖はなく、救いもない』」

 詠唱が始まる。殘りの魔力で放てる最大の魔法。

「『願わくば、彼の者の罪ごと、業火の炎で焼き払わんことを』」

シュナの頭上には、完された魔法陣が浮き出る。詠唱は終わった。あとは魔法名を発して、発のトリガーを引くだけだ。

 シュナは目を瞑る。自分を焼き滅ぼす炎を、れるように。

 だが、10秒、20秒経っても、それがやってくることは無かった。

「........時間切れだ。俺も油斷したな....」

 どうやら、前世の祐として行できるタイムリミットのようなものが過ぎたようだ。

「......」

 ゆっくりと開けたシュナの目は、目の前の人が、何を言っているのかわからないという目だった。

「......殘念だ。人類最大の危機を潰す可能を、逃すなんてな」

 そう言って殘念ぶる姿はどこかわざとらしい。

「........トドメ....刺す時間   あッタ」

 「....うるせぇな....生き延びたんだからもっと嬉しくしてろ。次會った時は、瞬殺するつもりでやるからな。々もっと強くなりやがれ。雑魚」

「..........雑魚じゃない....」

 々とツッコむところはあったが、強さへのプライドがあるシュナに、「雑魚」は応えたようだ。

「....じゃあな」

 シュナを無視して、前世の祐は、自分を毆って気絶した。

 

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