《異世界転移するような人が平凡な高校生だと思った?》44話 罪
ダンジョン99層にて────
「....あ、起きタ」
 気絶から回復した祐のそばには、ミスラとシュナがいた。
 ぼーっとシュナを見ている祐は、どこか気だるげな様子だ。
「覚えてないんですか? 前みたいに突然倒れたんですよ?」
「あ、あぁ....」
 祐が気絶している間、ミスラとシュナは話し合って、実際にあったことは隠そうという方針になった。話し合ったと言っても、ミスラが提案し、シュナがただ頷く。と言うだけのやりとりだが。
 そして、ミスラはし祐の様子がおかしいことに気づく。
「祐....?どうしたんですか? ぼーっとして」
「....あ、いや..........シュナ」
「....なに?」
 ぼーっとしていた祐の顔は、し険しい顔になり、を起こしてシュナの方に向ける。
「....ごめん!!」
溜めて出てきた言葉は、謝罪だった。その意味は、きっとミスラとシュナは一瞬で分かったことだろう。
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「ゆ、祐...もしかして、覚えてます?」
「....あぁ、俺が何をやって、何を言ったのか、しっかりと覚えてる」
 これにはミスラも驚きだった。見開いた目を何度か瞬きさせていると、祐が話を続ける。
「信頼してくれていた、かは分からないけど、俺がやったのは、紛れもなく、シュナを裏切る行為だった。こんなことで許されるとは思ってないけど....ごめん」
  祐の謝罪に対してシュナは、快く許す。かと思われたが、予想を裏切り、シュナは、し頬を膨らませて、そっぽを向いて黙り込んだ。
(まぁ、そりゃそうだよな....)
「えっと....ゆ、祐?もしかして、これまでのことも全て思い出しました?」
 2人の空気に耐えかねたのか、話題を切り替えるミスラ。
「....いや、俺が覚えてるのはシュナと戦った時のことだけかな。ミスラは何か知ってるのか?俺がもし何かしていたなら....教えてしい」
 そう言って、ミスラに懇願する祐の顔は、思ってたよりも追い詰められているように見えた。
(記憶を取り戻す前兆が出てきているなら、言っても大丈夫....ですよね)
 そしてミスラは、自分の知る限りの前世の祐の行を包み隠さず話した。
「....そっか。ケンタウロスの時にはそんな事を.......」
 もしかしたら、ミスラにも危害を加えていたのではないかと思っていた祐としては、逆に助けて貰っていたことに、なからず驚きを隠せない。
「はい....まぁ、自分が死ぬのを防いだ。という見方も出來ますが。私の知ることはそんなに多くないんですよね。神王なら前世の祐の事を知っていたように思えますが....」
 突然出てきたワードに、全く関連をじない祐は、思わず聞き返してしまう。
「神王....?なんで神王が俺の事を知ってるんだ....?」
「....さぁ?」
......ちょっと? もうし神王と対話してあげて?
「そこで一方的に話してきたのは、祐の前世が中々壯絶な人生だった。という事だけですね。私もその時に関しては、特に興味が湧かず、スルーしてしまったのですが」
 神王、悪くなかった。興味持たれてなかった、俺が悪かった。
「....あ、でも今は知りたいですよ? 前世の祐がどんな人で、何をしてきたのか」
 フォローはありがたいけど、先程から気になっている違和について、ほっておくことが出來ず、聞いてしまう。
「えっと....それでその、前世の祐..って呼び方....なんか長くないか....?」
「名前を教えてくれなかったんだから仕方ないじゃないですか」
「..それもそれで不便だなぁ....なんか、名前付けとくか.....んー.....祐二號....祐二....」
 そう呟く祐の隣で、ミスラは、シュナに名前をつけた時のネーミングセンスはどこに行ったのやら、すごく悲慘なことになる未來が見えて戦慄する。
「.......ブラッディ」
 私が考えなくてはダメか。と考えていたミスラの橫で、シュナは靜かにそう言った。
「え?」
「....前世の祐........腹黒そう だかラ」
 拗ねたように膨れた顔で、そう言うシュナを見て、何かを察したミスラは、それに乗る。
「お〜、シンプルでいいですね。そう言えば、シュナは何でそんなにいじけているんですか?」
「....いじけてない」
 祐は、ミスラが突然口に出した言葉に、戸いを隠せない。
「シュナ? 私や祐は、シュナみたいに、を読み取る能力が、長けているわけじゃないんです。それは、言葉にしなくちゃわからない事が、沢山あるってことなんですよ? 話してくれませんか? 何で、そんなに黙り込んでしまっているのか」
「...............前世の祐に...雑魚って、言われタ」
「....え?」
 祐は、目を見開いて、シュナに聞いた。
「シュナ....まさか、ずっとそれを気にして....?」
 コクッ、と靜かに頷くシュナ。
「で、でも、俺がシュナに剣を向けたことは事実で....」
「そんなの、前の姿の時に、 ユウと、ミスラと、戦ってたとき、とっくに覚悟 出來てた。それに、魔は死なない。いづれまた蘇る」
「.....そう、なのか?」
 魔についての知識がない祐は、ミスラに「説明頼む」というような視線を送る。
「....間違ってはいません。ですが、ある程度規則もありまして、弱い魔は死んでから短い期間で、最初に生まれたダンジョンに転生するんですが、ほとんどの魔は前世の記憶が完全に消え去っています。対して、魔王ほどの力を持っている魔は、年月ほど長いものの、記憶をそのままけ継いで蘇ることが出來るのです」
「長いって....どれくらい?」
 正直嫌な予はしているが一応聞いてみる。
「まぁ、なくとも1000年は掛かりますね」
「..やっぱ次元の違う長さだな....」
 だけど、そうか。それが魔のサイクルか。それならば、仮に討伐しなかったとしても、無限に増することは無い。逆に言えば、いくら倒してもキリがないとも言える。
「1000年....」
 シュナは、蘇ることは知っていたが、それがどれくらいの年月かは知らなかったようだ。
「....シュナ」
「なに?」
「シュナは雑魚じゃない。俺には前世の、ブラッディの意図は、分からなかったんだけどさ、あいつ、何か考えがあったんだと思うんだ。例えば........理由はわかんないけど、今より強くさせる為......とか。安易すぎる考えだけどな」
「....じゃあ、ブラッディは噓をついてたノ?」
「なくとも、そんな意味の無い言葉を発するやつだとは....思えなかった。かな?」
 言っていることは自分のことなので、中々変な気分にさせられる祐だ。
「....分かった......強くなる....それでブラッディを。ボコボコにする....」
 あれ?めるつもりが、なんか人が変わったように危険なじになってるんだが....それと、一応ボコボコにされるのは俺なんですが....いや、まぁ、罪を償う為なら甘んじてけるつもりだけど....
「そうですね、じゃあブラッディをボコボコにする為にも、そろそろこのダンジョンにも、お別れしないとです」
 あれ!?ミスラさん!?甘んじてけるとかカッコイイこと思ってたけど待って!?多分、あんまり気持ちを高ぶらせておくとワンパンされそうだから!何も殘らない可能あるから!
 とは思ったものの、言葉にはしない祐。
「ふふっ、まぁ大丈夫ですよ。シュナは用ですしね」
 早速立ち上がって、準備をするシュナ、その後ろでミスラは俺に余裕そうな微笑みを浮かべて、そう言う。
「....それもそうだな。シュナは中は大人だもんな」
「えぇ、そうですよ」
 俺とミスラは、はははっと笑い、シュナに続いて、ゆっくりと準備をしていく。
「ん、早速おでましだ」
 先程までは全然魔が來なかったのに、きき始めると、『気配知』がズバズバ引っかかった。
「さーて、んじゃいっちょやり──」
 ズドォォォン!
 そうして上から落ちてきたのは、長5メートル近くあり、妙に黒りした裝甲、無駄に長い覚、祐は初見の魔のはずなのに、もの凄くゾワゾワとする覚に襲われた。
 そう、その魔は、誰がどう見たってデカイGにしか見えなかった。
「「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」」
俺と、ついでにミスラも、Gを見た瞬間回れ右をして走りだした。だが、約1名、全く逃げる素振りをせずに、Gと向き合っている人がいた。
「ちょ、シュナ!下がれ!」
 だが、聞こえていないのか、青い炎が、シュナの回りに漂い始める。
「まさか....またあのスキルを...!」
 ブラッディと戦った時に見せたあのスキル。あいつが言うには5分が限界、その後、數分けなくなる反を顧みず、今ここで使うのは、流石になしだろう。だが、もうシュナは止まらない。
「『瞬・魔天魂蒼』」
 シュナがスキルを解放すると、青い炎がシュナのから吹き出す。
「『衝天絶火しょうてんぜっか』」
 そして、シュナは、恐らく、オリジナルスキル、『魔天魂蒼』の狀態でしか使えない技を発させた。すると、炎は渦を巻き、その大きさとは逆に、蒼が見えなくなるほどの速度でGに迫った。
 その攻撃に、特に特殊なスキルといえば、生命力だけが取り柄だったGは、跡形もなく吹き飛ぶ。
 そして、そこには蒼い炎のの消えた、シュナの姿だけが殘った。
「一瞬だけ発させただけ だから そんなに消耗 してない」
 シュナは、いい笑顔でサムズアップしてそんなことを言った。
「.......ミスラ、俺これ、ヤバイでしょ....」
 
 もしかしたら、いいじにフォローしてくれて、俺の心を癒してくれるかもしれないと思った考えは甘かったようだ。ミスラは何も言えず押し黙っていた。
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し投稿が遅れました。
どうしても、日常系の語を書きたくなりまして、2作品同時進行ってことになってしまった訳ですが、更新頻度は下げ過ぎないよう頑張ります。
 興味があれば、日常系の語の方もご覧下さい。
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