《異世界転移するような人が平凡な高校生だと思った?》46話 絶の洗禮

 俺とミスラとシュナの3人は、100層にたどり著いてからというもの、未だにこの層の全像が分からないでいた。

「はぁ....いくらなんでも広過ぎないかこの階層........東京ドーム何十個分だよ....」

 何となく口から出た愚癡は、獨り言というよりは、ミスラ大先生に、ダンジョンの最終階層がどれくらいの広さか聞くためのものでもあった。

「トーキョ?」

 シュナは、自分の知らない単語に、興味を持つように繰り返し音読する。

 「ここにきて言うのも何ですが、私ダンジョン攻略って初めてなんですよねー」

「ほんっっとうに、ここにきてだな!?」

 まさかのカミングアウトに一瞬、周囲の警戒を怠ってしまう祐。

「じゃあ、今までのダンジョンの知識はどこから....」

「..........いやまぁ......神王の書庫から....?」

 君、神王の対応がとことん酷くね?

「....そもそも神の知識なんて殆どは書から來てるんですよ? 気軽に下界に降りれる訳でもないですから。えぇ、そうですとも、私は神としての自覚と向上心から、神王の書庫の本を盜み見....ではなく、拝見させて貰っていたのです」

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「........あ、うん。そうだよな...」

 いい加減このくだりも慣れよう.....毎回驚いてちゃが持たない。

「........ふたりとも、くル」

 穏やかな空気から一転、即座に気を引き締める一同。

 気配はじることが出來ない。そして熱源も同様。つまりは、先程と同じ、骸骨の魔かもしれない。

 祐はシュナの勘に頼ってばかりではいられない。と、また骸骨が來た時のために、考えていた策を実行する。

「二人とも、あまりかないでくれ。『ウィンド』」

 祐は初級魔法、『ウィンド』を発させると、できるだけ広範囲に、地面にある砂を巻上がらせながら、風を吹き渡らせる。

 祐は目を閉じる。る風に集中するためだ。風を吹き渡らせるだけならば、広範囲であっても、そこまで集中力は必要ない。だが、これから祐がする事は、ただのウィンドとはある意味全く別の使い方。

「シュナの後ろだ!」

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  骸骨の居場所を探知して、即座にぶと、シュナより早く、ミスラが短剣を引き抜き、骸骨がいるだろうというところへ突き出す。

『オォァ!?』

 すると、何もないと思われたその場所から、薄らとローブを著たシルエットが映し出される。

「まだ淺い!」

 俺が言うよりも早く、シュナが後ろにいる骸骨の頭に向けて、後ろを振り向きざまのジャンプからの蹴りをかますと、頭蓋骨は軽く折れてどこかへ飛んで行った。

「ふぅ....ナイスアシストでした。まさか風の揺らぎを敏に察知して居場所を探知するとは....」

「風に集中するとけなくなるから、まだ改良が必要だけどな..でも、これでしは、安定した戦いができるだろ?」

 正直、自分がけない狀態になるこの技は、あまり良くはない。

 もちろん他にも策はあったが、この狀況じゃ、出來るだけ魔力は溫存したい。ならばと、燃費のいい策を選んだのが、それもたまたま上手くいっただけ。次もこれでいけるとは限らない。

「それにしても、ここまでで、遭遇した魔は、この骸骨だけか....どうなってるんだ?」

「偶然かあるいは、広すぎるあまり、未だに遭遇する魔が変わっていないのかもしれません」

 後者だけは勘弁だ。それでいくと、時計にして2時間ほど、まだこの層の1段階もクリアしていないことになる。だが、有りうるとしたら後者だろう。ミスラ達も、薄々気づいていると思うが、魔に遭遇する回數がこれまでと比べて、圧倒的にないのだ。最終階層にしては....軽い・・

 「....一回休息を挾もう」

 二人とも合意し、変わりばんこで見張りを1人付けて、し狹い空間で腰を下ろす。

 ──あ、そう言えば、慌ただしかったせいでステータスカードを確認していなかったな。

 不意にそのことに気づき、腰のポーチに手を突っ込み、ステータスカードを取り出す。

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名前: 佐野  祐

種族:人間

Lv:  100

力: 867560

攻撃力:952600

力:864800

魔力:1054550

知力:1107550

運:863900

スキル:

言語理解、進化、魔法適正、幻刀、潛伏、鑑定、マッピング、蓄積チャージ、付與、気配知(+熱源知)、剛力、剣、障壁プロテクション、強化ブースト、重力作:増幅グラビティブースト、重力減衰グラビティダウン、

稱號:

転生者

転移者

世界に呪われし者

神殺し

######

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 ................あれ?もしかしてカンストしてる?

 一見して、それに気づき固まった。まさか、こんなに早くレベル100になると思っていなかったのだ。だが、いくら見返しても、100という數字が、そこには表示されていた。

 だがどうしても、理解し難いものがあった。それは、この尋常ではない數字の割に、それが実できてないのだ。

 ここはダンジョンの100層で、最終階層、敵ももちろん強くなるし、こんなハイリスクハイリターンをずっとやっていれば、敵が弱くじるということは無いのも無理はない、けど、自分自の振り方に関しては、もっと変化をじてもおかしくないはず。  

 

 とてもではないが、今の自分が全ステータス80萬越えの能力を持っているとは思えないのだ。

 もしかしたら、急すぎる長に、が反応して、無意識に手加減しているのかもしれない。そんな疑問は殘る。この時、それをミスラに聞けばよかったのだろう。けど、俺にはそれが出來なかった。あるものを見つけてしまったから。

『神殺し』....神を殺したものに與えられる稱號。この稱號を所持している者は、全ステータスの90%が使用不能となる。

 神殺し....俺は神なんて殺した覚えはない。世界に呪われる覚えも、だからこれは、あいつの稱號なんだろう。転生者の稱號もきっと。

 全ステータスの90%使用不能....つまり、俺は今まで、10%の力しか引き出せていなかったわけか........どんなハンデだ....力も出ないわけだ....

 俺の殘りない神をガリガリと削ってきやがる........けどまだ立ち上がれる....実質、使えるのは全ステータス8萬程度の力。それでここまで來れたのは、確実にミスラとシュナのおかげだな。

 ミスラも初めはレベル1だったけど、俺がもうカンストしているくらいだし、きっと50くらいまでは、いってるんじゃないだろうか。50もあれば、今の俺より何倍もステータスは上のはず。

「? 祐、暗い顔をして、どうしました?」

「え?......あ、あぁ、いや、100層の広さに圧倒されちゃってさ」

「まぁそうですね。かくいう私もし驚いています。けどこの難所を越えれば地上に戻れます」

 そう勵ましてくれるミスラの顔は、最初にあった頃と比べると、まるで別人の様だった。

 そんなミスラを見てしまったから、余計、神であるミスラに、この稱號の事を言えるはずがなかった。いい加減、分かってきているのだ。前世の自分は別人格なんかではないと、シュナに攻撃したのは紛れもなく、俺の意思だ。前世からけ継いだ。俺の....

***

 

 見張りを代させながら、休憩を済ませた祐達一行は、相も変わらず100層を彷徨っていた。時間は掛かりながらも、広大な階層を、確実に、1歩1歩進んでいたのが良かったのか、しだけ全の地形が読めてきた。  

 なんとなく、この階層は円形の地形になっているものだと錯覚していたが、マッピングを続けているうちに、四角い地形だということがわかった。正方形か、長方形かはまだ定かではないが、橫幅が分かったのはでかい。

 円形でないとすれば、真ん中に100層のボス部屋があるというのは、考えづらい。あくまでダンジョンが、口から、できるだけ遠い所に、出口を設定している、という推測が前提の話ではあるが。

 俺たち3人は、なんとなくの地形が分かったことで、モチベーションも高まり、ボス部屋がありそうな所を推定し、そこを目標に寄り道せずに進むことになった。

 地形もある程度わかったこともあり、魔とはできるだけ戦せずに、撒ける狀況であれば、逃げの一択を選ぶこととなった。

 魔の種類もついに骸骨から変わり、4本足のでかいトカゲが出てくるようになった。だが、そのつきはトカゲと言うよりは竜に近く、鱗は鎧のようにそうだった。

 そして極めつけに、この狹い空間で炎を吐いてきた。即座に逃げたが、巻き込まれた骸骨が一瞬で灰になって散ったのを橫目で見て、逃げててよかったと安堵した。

「....なぁ、ミスラ、今更なんだけど、魔の名前とか特とか....知らないのか?そこら辺の知識があれば初見殺しも回避できるんだけど....」

「知ってたらとっくに教えてますよ....」

「ですよね〜」

 軽い話をしながらも、足取りは慎重に、目は真剣に、陣形をさない。

...........ドドド.....

「....なんだ?」

 何か、遠くから音が聞こえた気がする。ここに來るまで、自分たちの出す音以外は、全くというほどなく、靜かだったのに。突然の地鳴りに違和を覚える。

....ドドドドドドドドドドド

 音は段々大きくなる。それはまるで、何かが迫って來ているかの様に....

「....なんか、完全にこっちに向かってきてないか....?」

「きて....ますね」

 そして10秒後、それは來た。

『グギャアアアアアア』

 様々な魔の群れ。その數....不明。  

 

 誰から見たってそれらに追われると考えただけで、地獄絵図だった。

 

 一個の群れならまだ分かる。だが、目の前の群れは違った。骸骨や蜥蜴、それにコウモリや蛇など、魔の種類がバラバラだったのだ。普段、共に行する筈のない魔達が追ってくるその様は、さながら、深夜に徘徊する百鬼夜行のよう....

───って冷靜に分析してる場合じゃない!!!

「逃げるぞッ!」

 流石に、どんな技を持っているかわからない魔の集団を相手にするのは不利すぎる。

 まぁ、その魔達の特知していても、この數は不利だけど....

俺達は全速力で走る。生憎、この狹い通路が幸を期したか、大型の魔のせいで、きずらくなっているようだ。

「ユウ、力 つかウ?」

 シュナが提案しているのは恐らく、Gに打った時の衝撃波のことを言っているのだろう。追いつかれなくとも、撒く事は出來ないこの狀況、使わない手はない。

「頼む!だが狙いは魔に直接じゃなくて、やや天井へ打ってくれ!」

「....? 分かっタ」

 祐の意図が分からなかったが、説明を聞く時間もないので、信じることにした。

「『瞬・魔天魂蒼』『衝天絶火』」

 シュナから溢れ出る蒼い炎を一點にまとめると、あの時と同じように、衝撃波を放った。そして飛んでいく蒼い炎は、先頭の魔達を蹴散らしながら、轟音を立てて天井を崩した。

 崩れ落ちた天井は、魔との間に壁を作った。

 倒壊は広がる事はなく、俺たちを巻き込んで潰すという最悪の事態は免れた。

 取り敢えず、安堵し呼吸を整える。

「進もう。もし俺らを追っていたのだとすれば、直ぐに回り込んでくる」

 狀況は依然、変わっていないのだ。

俺らは、先程までの慎重な探索から一転、とにかく前へと、暗闇の道を進んでいくのだった。

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