《異世界転移するような人が平凡な高校生だと思った?》51話 絶の洗禮 VI
「....ん、分かった。頑張ル」
 無事シュナに作戦を伝え終わり、白龍が復活する前に、さっそく斬り込む。
 予想通りと言うべきか、黒龍は白龍が吹き飛ばされても、俺とシュナが堂々作戦會議していても、全くを見せることなく、直立していた。
 あの時ミスラが言っていたことが、ここに來てようやくわかった気がする。段階を踏む。一見よく分からないように聞こえるその言葉は、考え方を変えてみれば簡単な事だった。
 
───例えばそれが、ゲームの會話だったら?ゲーマー同士の會話なら、それだけで大理解出來る。段階を踏む。わかりやすく言えば行パターンがあるという事だ。
 
 ....全く何を考えてるんだか..ミスラは気づいているのだろうか。自分がゲーマー用語を使ってたことに。
 ミスラが日本に滯在してた時、アニメに手を出していた事は確認済みだ。ならばゲームはやらないなんてことがあるだろうか。いやない、そんなことあるはずが無い。あったらそんなやつ俺がぶっこ──...ゴホン
 まぁその事は後で聞けばいい。そろそろこの戦いにも蹴りもつけたいしな。
 今さらあの龍がゲームのように行パターンがあるのか確認する必要は無いだろう。思ってみれば、今までずっと不自然なきはしてたからな。
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「『敵を貫き、塵とせ』」
「〝炎槍ファイアーランス〟!」
 火屬中級魔法   〝炎槍〟   槍の形の炎を作り出し標的に飛ばす技。
 その極大サイズが三本出現するとともに、前方の余裕そうにしている黒龍に飛ばす。
ゴォォォォ!という音とともに飛んで行った炎の槍は黒龍の右肩、腹、顔に直撃した。煙が晴れると共に現れた黒龍にそれらしい傷はない。
 「余裕そうだなぁゴキブリさん。けど........そこに立ってると危ないぞ?・・・・・」
『ッ!?』
 黒竜の真後ろには、蒼い炎を今にも放たんとするシュナの姿があった。
 
 今まで1歩もかなかった黒龍が、ようやくいた。翼を広げ、すぐさま上空に上がろうとする。周りに暴風を起こし、一瞬にして───飛んだ。
 完全にシュナのスキルの方が早く発していた。なのに回避されてしまった。だが。あの巨があれほどの回避速度をあの狀況で出せるわけが無い。最初からシュナの攻撃には注意していたと考えるべきだ。
 シュナの攻撃が當たらなかったのは痛い出費だが、そんな事よりも重要視するべきことがある。目の前の絶の象徴のような存在が、攻撃ではなく回避を選択した事だ。
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 今までなんの攻撃に対しても興味がなさそうな。まるで認識さえしてないようだったのに、だ。つまり、今回はやはりシュナの蒼い炎にこそ希がある。
「シュナ!炎は使わなくていい!最速の攻撃を仕掛けてくれ!」
 だが、相手はとっくに警戒してしまっている。正直今のままでは、またさっきのようによ蹴られて終わってしまう。だから、今は様々な攻撃を仕掛けて混させる。俺の攻撃は多分當たりに行くだろうが、シュナの攻撃に関しては警戒している限り避け続けるだろう。
「ん、分かった。見てテ」
 俺に見せたい技らしく、珍しく目を輝かせながら、未だ上空にいる黒龍を見上げると、腰を落とし、空気を吸って、吐いて─────思いっきり飛んだ。
 正確にはジャンプしたと言うべきだが、シュナがジャンプした距離を見れば、誰しもが飛んだと表現したくもなるだろう。
 一直線に上へ上へと進んだシュナは、黒龍のいる場所を軽々と飛び越えて見せたのだ。
「うっそぉ......」
 湖の上は走るわ、龍より高く飛ぶわ。なんなんあの子。しかもあれ多分筋力だけで飛んでるよな。シュナは〝強化ブースト〟とか使えないはずだし。
 だが上空にいるシュナと黒龍の距離は、まぁまぁ離れている為、近接型のシュナは攻撃ができない。流石のシュナでも空中を筋力だけで移するのは難しい。けれどシュナは落ち著いた様子で、拳を構えた。
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「〝破掌はしょう〟」
 そして明らかにリーチが足りない狀態から、シュナが黒龍に向かって掌底打ちを、放つ。すると────
『グフォッ!?』
 黒龍も當たるわけがないと思っていたのか、警戒をゆるくしていたのが裏目に出た。
 シュナが放った掌底打ちは、まるで風魔法のような風圧の塊のようなものとなって飛んでいき、見事黒龍の顔面に當たった。
 
 祐は確信した。シュナはそのきっと吐息ブレスを吐くと。
 黒龍はぶっ飛びはしなかったが、滯空が出來なくなったのかゆらゆらと落下し、崩れ落ちた。
 シュナが隣にスタッ!と降りてくる。
「新技、どウ?」
「え?あー....うん。凄かったぞいろいろと」
「....ほんとウ?」
 シュナが訝しそうな目を向けてくる。
 実際本當にすごかったと思ってる。だが、祐がもっと驚いて、褒めちぎって、頭をでてくれるくらいの反応をしていたシュナにとって、それだけでは不十分だったようだ。
「もっと凄いの....見せル」
「あれよりも凄いやつ!?」
 有効打が増えるのはいい事なので、もちろん止めはしないが、あれより凄いのって....
「ちょっとだケ、集中」
「......え?」
 シュナは完全に集中モードにってしまった。言い方を変えれば、無防備な狀態に。そんなシュナの行を、俺の時みたいに待つほどアホではない黒龍は勿論攻撃に出る。
......どうやら俺が黒龍を止めなきゃ行けないらしい。
「あーもう、あの作戦だけは頼むぞ」
 剣を握り、シュナを守るようにして黒龍と対峙する。
 黒龍は翼を広げて低空飛行しながらこちらへ向かって突っ込んでくる。
「『剛力』『重力作:増幅グラビティブースト』」
 まず重力によってきが鈍らないように、スキル剛力を使って筋力を上げる。『強化ブースト』の方は能力を全的に上げることが出來る。だがその代わり、上がり幅は微妙だ。いつしかの教のように重ね掛けなんて真似は今の魔力量では到底できない。
 それに『剛力』の方がパワー面だけで言えば『強化ブースト』の上を行く。
 そして、1度使い方を間違えて痛い目にあったスキル。『重力作:増幅グラビティブースト』今回はかけた対象は自分ではなく剣だ。
 なんせ魔法も斬撃も効かないのだ。なら出來ることは1つしかないだろう。
 そう、力押しだ。
 俺など認識してない龍の頭に向けて、數倍の重力になった剣を筋力で無理やり持ち上げ、構える。
 そしてあとは時を待つ。あと30メートル.....2.....1........
「──ここだぁあッ!!」
 掛け聲とともに黒曜剣を切り上げた。
 剣は黒龍の顎をしっかりと捉え、直撃する。
『ぐぎゃぁあ!?』
 すると龍は巨人にアッパーカットでもされたかのように上空へ不自然な勢で飛び上がる。
 そして、ここにきて初めて効果のある攻撃が出來た祐はと言えば。
「くぁぁぁぁぁっ!いってぇぇぇぇぇ!!!」
 剣の反で相當痛がっていた。
 切り上げる直前で、実はあの時黒龍に『重力作:減衰グラビティダウン』をかけていた。そうする事でしでも軽くし、吹っ飛びやすいようにしたのだ。だが、それでもあの巨を剣で切り飛ばした反は凄まじいものだった。
「準備できたヨ?」
 痛がってる祐に首を傾げながら、準備完了を伝えるシュナ。
「.....ぁ....あぁ.........やって...くれ....!」
 そうして地面に蹲り、一生懸命聲を紡ぐ様は、死ぬ前の言と言うよりは、足の小指を角にぶつけた者のそれだった。
「...? うン でも龍は、どコ?」
「え?」
 自然落下したならばもう降りてきていてもおかしくないはずだ。祐は嫌な予がして、痛む両腕を無視し、上空を見上げる。
「なッ!?」
 そこには空に滯空し、そのに紫煙を貯めている黒龍の姿があった。
 このままだと、またさっきの二の舞だ。ミスラは今はあの〝神威〟とか言うやつで白龍を足止めしてるから、こっちに來るのは無理だ。白龍まで來たらもっと手に負えなくなる。
「シュナッ!打てるか!?あれ!!」
「やってみル」
 詠唱する時間もなければ魔力もない。こうなれば即攻撃可能のシュナに頼むしかない。ただ、シュナが黒龍までジャンプする時間さえあるかどうか....
 しでも防げるように、今からでも中級魔法の1番詠唱の短い魔法の準備をする祐。
 チラッと見れば、シュナはしゃがみ込み、目を瞑り、地面に手を當てている。
 ジャンプして黒龍との距離を詰める訳では無いらしい。じゃあなんで.....いや、シュナを信じよう。いつだってシュナは俺らを助けれくれてきたじゃないか。
「........お願い きテ・・」
 その途端──────
 
      ゴゴゴゴ...........ズドォォォォン!
 シュナのすぐ目の前から、結界を破り、円錐形の巖石が飛び出してきた。
「...へ?」
 
 その巖石はどんどん上へ上へとせり上がっていく。だがその速度はお世辭にも早いとは言えない。黒龍には當たるだろうが、紫煙の発には間に合わないだろう。
「くっ!ダメか....!」
 ────そう思っていた
 黒龍は目の前のせり上がる巖石を見て、紫煙の発を辭め、すぐさま巖石の軌道線上から逃れたのだ。おかげで巖石が當たることは無かったが、紫煙を回避出來た。
 せり上がる巖石はぐんぐん上がり、やがて天井まで屆き、深々と突き刺さることによって勢いが止まった。
「ど、どウ?」
 そう言って顔に疲れを見せながらも、ドヤ顔のシュナ。
「あぁ....本當にすごいよ、お前は。」
 この際どうやってやったとか、なんで黒龍は紫煙を発させなかったとか、そんな事はどうでも良くなった。とにかく目の前の仲間を褒めたくなったのだ。
 頭を手を置こうとしてふと気づく。
(命を預け合ってる仲間にするのは、こうじゃないよな)
 今にも頭をでようとしていた手を下げて、代わりにシュナの腰に手を回す。
「強いな。シュナは、誰よりも」
 そしてそっとハグをした。
 シュナは目を見開いて驚いている。
「....これ......な二?」
「あぁ、ごめん。知らなかったか。これはハグって言って、意味は...まぁいろいろだ」
「そう、なんダ なんか、落ち著ク」
「そりゃよか───」
 最後まで言葉を紡ぐまでに、後ろからのピリピリと威圧されてるのをじ、直ぐにシュナから離れた。
「さ、さて、シュナ!準備は出來た。そろそろあいつをぶっ倒しちまおう!」
「む.....早い...」
「ま、まぁまぁあれ倒したら、ハグくらいいくらでもしよう?な?」
「ん」
 まだ不機嫌さは消えていないが、今は目の前の敵の殲滅に目を向けさせることに功した。
 そして黒龍はといえば、あまり遠くにいてもまたシュナのあれが來るのを警戒し、絶妙な距離を保っている。
 仕込みは完璧だ。あとはこちらから仕掛けるだけ。
 やるのは超接近戦。黒龍が距離を取れないように立ち回る。
「じゃあ、いくぞ!」
 先行したのは祐。シュナが先行すると距離を取りたがると思ったからだ。
 予想通り、黒龍は俺を見ると、警戒はしたが距離を取ろうとはしなかった。
 
 程圏にはった。ここからはガチンコだ。
「『重力作:増幅グラビティブースト』」
 まずは龍が飛べなくなるように、翼に限定して重力をかける。
 魔力ももう本當に底を盡きかけてきている。ここであの黒龍を倒せないと萬事休すだ。
 そして黒龍がシュナに警戒しているのを確認して、黒曜剣を鞘・に戻し、皮袋にってる次元水晶から、予備の黒曜剣を取り出す。
 黒龍は自分の翼がかせないことに気づいたのか、鉤爪で猛攻を仕掛けてくる。
 白龍と違い、黒龍の方はため攻撃がないのかもしれない。その代わり、あの紫煙の威力は凄まじいのかもな。
 シュナは軽々と黒龍の鉤爪を避けると、メリケンサックを手に、懐にり込み、そのまま黒龍両足の僅かな隙間にスライディングして後ろへ回る。
 黒龍は直ぐに後ろを向こうとするが、真っ直ぐ走るのと違って、方向転換は苦手のようだ。その間にシュナが尾の元を摑み、メリケンサックで本気で毆り、尾を斷ち切って見せた。
 『グァァァァァァァ!!』
 すると黒龍は大きな悲鳴をあげ、振り返るのを諦め前方を走りある程度の距離をとると共に振り返る。が────
「まだまだァ!」
 距離を取ることは分かっていた祐が考える隙も與えないまま、剣を投げた。
 飛んで行った剣は、正確に飛んでいき、黒龍の右目へと深々と突き刺さった。
『グゥゥッ!ガァァ!!』
 突然の片方の視界のシャットダウンにより、よほど焦ったのか、がむしゃらに鉤爪を振り回す。
「うぉ!?」
 軌道を見て避けようとした祐だが、揺によって不規則にく黒龍の鉤爪はその軌道を読みずらい。避けられないと悟ったのか、咄嗟にケンタウロスが背負ってた武。片手剣を取り出してそれを盾のように使い、あえて後ろに飛んで、鉤爪をけることによって武への負擔を無くし、勢いよく飛ばされることで距離を取る。
「んぐっ!」
 一気にシュナの元まで飛ばされたが、何とか転ばないように踏み留まる。
「....ハァハァ.......よし、シュナ。そろそろ良いだろう.......かましてやれ」
 祐の指示にシュナが頷き、暴れ狂っている黒龍との距離を詰める。
 未だにシュナに気づいていない黒龍。ともすれば、シュナは今回何度目かの蒼い炎を迸らせ、一點にまとめる。
「これで..終わっテ  〝衝天絶火〟!!」
 そうして飛ばした蒼い炎は、何をかもを喰らい盡くす化けのようなモノを形作る。その攻撃にようやく気づいた黒龍。焦りと揺がMAXであるのだろう。窮地と呼べるべき狀態だ。だが、そんな時だからこそ、火事場の馬鹿力というものが働くのであって───
 かせないはずの翼を広げ、地上から5メートル程度を無理矢理飛んで、シュナの〝衝天絶火〟を避けてみせた。
 黒龍は、きっと目の前の敵はこの攻撃が全てだったんだろうと決めつけ、勝利を確信する。その狀態のまま堂々紫煙を溜め始めた。
 窮地に立ってい立つのは、自分だけじゃないとも知らずに。
 黒龍は紫煙を溜めながら、1匹の獲がいないことに気づく。
「───よぉ」
 聲がする。風切り音と共に。そして上か下かと言われれば......上・。
 見てみれば、上空から自分の方向へ自然落下してくる年がいた。これまでの攻撃で、右目以外は大した傷も與えることも出來なかった年が。
  
 黒龍は予がした。とてつもなく嫌な予が。
 祐は鞘に収めていた剣を抜く。真っ黒だったはずの黒曜剣は、爛々とり、発寸前といったじの刀は、黒など一切なく、真っ白に輝いていた。
 「────『蓄積チャージ解放』〝斬〟!!!」
 
 そして祐は龍を空間ごと斬った・・・。
 一瞬の出來事だった。黒龍は重い翼のせいで、ろくに空中回避も出來ず、地に足を落とすこさえ許されないまま、頭から真っ二つになって、ドシン!と地面に落ちた。
 確認するまでもなく絶命した黒龍を見下ろす祐。
 
「なんとか....倒せた....! 」
 正直魔力はもう、ほとんど使ってしまった。けど、まだ足がく、手も、頭も、心だって折れちゃいない。だからいける。絶対に勝てる。いや、勝つ!
だが、その瞬間─────
 
「ゆうッ!よけてぇぇぇぇ!!」
 
 今までに聞いたことのないような揺した聲。
 意識が朦朧としながらも、必死に振り返る。
そして俺はに包まれた。
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