《異世界転移するような人が平凡な高校生だと思った?》61話 事聴取 II
「あの、どうかしましたか?先程からお顔が真っ青ですが」
 ウェストさんの呼び掛けにより、俺は現実に引き戻される。
「あ..あぁ、すいません。10%と聞いて、前世のステータスが結構高いことに気づいて驚いていただけです」
 事実だ。驚いたのは確かだしなんの噓も混ぜてない。
「ほう、そんなに高いのですか......聞いても?」
「80萬〜100萬です。あ、一応自分のもってるので70〜90くらいかな?」
 神殺しの稱號で今俺は8〜10萬しか使えない訳なんだが、これがなんと言うか、とてもしっくりとくるのだ。だから多分俺の、佐野祐としての數値はそれくらいなんだと思う。低く見えるが俺はそもそも爭いに疎い一般人だ。今は前世の記憶とステータスで何とか戦えているだけ。言ってしまえば仮初かりそめの力だ。
「っ!? それは、確かに前世は相當....いや、規格外の力を持っていたようですね」
「規格外..ですか?」
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 やはりそうなのだろうか。他の人のステータスというを見たことがないから、本當に高いのか分からなかったのだ。
「ちなみに....レベルは?」
「100です」
「な、なるほど」
 こっちはそんなに驚いてないようだ。というか逆に安心しているように見える。超越者に至らない限り、これ以上ステータスが上がらないからだろうか?
「佐野さんは強さの基準があまり分かってないようですね...」
「はい、教えて頂けますか?」
「.....まず、レベルが100に至った者のステータスの平均は40〜50萬程度。素質のあるものであれば60〜70まで行く者もいます。人それぞれですが、それが100萬を超えるとなると、超越者以外に有り得ません」
「....確か、レベル100を超えた者の事ですよね」
「それは知っているのですか。そうです、超越者とは、自でレベル100を超えた者。神が與えた力の限界を超えた者のことを言います」
 あれ、ミスラが言うには、神が與えたのは力ではなく、可能って言ってなかったか?うーん...全てが人間に正しく伝わってる訳じゃないってことか。
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「超越者の長に上限はないんですか?」
 一番気になっていたのはそこだ。自分には関係無さそうだから、後々聞けばいいかと先延ばしにしていた。
「分かりません。なんせ超越者なんて數百年に1度現れるかどうかですから。ただ、勇者様が言うには『その者の素質次第』と仰っていたそうです。人によってレベル100の時のステータスの高さが違うように、超越者の上限も人それぞれ、という事なのではないでしょうか」
 「......」
 どうでもいい。前世の記憶なんて。
 そう思っていた、ダンジョンで白龍のブレスをけた時までは。
 今は、無に気になって仕方が無いのだ。どうしても記憶を取り戻したい。前世の自分について知りたい。
「自らの前世のステータスが規格外の力ということを理解できましたか?」
「...はい、それはもう。重々と」
「安心してください。例え貴方の前世が規格外の力を持ってたとしても、それは前世の話です。今の貴方は、相當素質のある冒険者。程度ですよ」
「は、はぁ...」
 あぁ、そうだ。今は俺の力の話をしてるんだった。前世は関係ない。
「取り敢えず、々と分かりました。貴方の強さは確かにダンジョンで十分に戦える能力だ。ただ、技についてはまだ貴方がどれ程なのか分かりません」
 やはり、そこを突っ込んできたか。強い能力はあっても、それを使いこなす技、経験はあるのか。それを聞いてきた時點で、俺は理解した。『転生者』とは、前世の記憶まではけ継げるものでは無いんだと。
 『転生者』というスキルは10%の力を引き継げると言った。だが、記憶は?
 何も言っていない。前世の記憶というのは、俺でも実している通り、中々にチートスキルだと思うのだ。なんせ、前世の記憶であれば、10%なんて制限はない。技は數値ではないからだ。つまり、記憶を取り戻すということは、その名の通りその人間1人の人生で培った、技、知識を全てけ継げると言うことなのだ。
 ダンジョンでこれが無かったら、俺は確実に帰って來れなかったと思う。そんなチートスキルが、稀ではない?どう考えても可笑しい。
「飲み込みの早い程度ですよ。仲間のサポートが大きかったんです」
 サポートが大きかったのは事実。シュナとミスラが居なくとも、俺は死んでただろう。
 ただ、記憶のことに関しては、ここでは黙しよう。後でミスラに聞くべきだと判斷した。
「仲間、ですか。あのの子二人の事ですよね」
「俺と同じように々と事があります。あの二人について、ここで俺からは何も話せることはありません」
「なるほど、分かりました。こちらとしてはダンジョンクリアと、『異常種』の討伐がされていなら何も言うことはありません」
 と、いかにもタブーですよと言わんばかりの言い方で話すと、ウェストさんはあっさりと引き下がった。
「じゃあ事聴取はもういいですか?そろそろ俺の仲間も戻ってくる時間なので」
「あぁ、最後にもうひとつ」
「はい?」
 終わりかと思って安心しそうになった時、ウェストさんが口を開いた。
「ダンジョン攻略者は、ギルドの規定で冒険者ランク金になる権利が得られるんです」
.......ランクか、そう言えばそんなのあったなー。確かに下から緑、黃、青、赤、銀、金とかだっけか?あれ?俺大出世?
「金になったら何かいいことがあるんですか?」
「結構ありますよ、大のクエストは制限されずにけれるようになりますし、それを持ってるだけで強さを認められます。権力はありませんが、ギルドによっては、多の融通も聞いてくれるでしょう」
「面倒なクエスト押し付けられたりしませんか?」
「はははっ........ノルマはありませんよ?」
 押し付けられるんだな.......
「ですが押し付けると言っても、もちろん拒否権はありますから大丈夫ですよ」
 貴方の場合絶対に斷れない狀況を作るでしょ.....
「.......まぁいいですよ。ノルマがないと言うのは楽ですしね」
 この街から出ればこの支部長には何か頼まれることは無いしな!
「そうですか!それは良かった。あぁ、一応言っておくと、街を出ても冒険者宛てに手紙を送るのは可能なので安心してくださいね」
「...........あ、やっぱ昇格しなくていいです」
「あっと、そうでした仕事が溜まってるんでした。それにダンジョンがクリアされた事によってもっと仕事が増えるんでした〜。あれ?佐野さん、何か言いました?」
 なんだその噓くさい芝居は....ついでに俺のせいで仕事を増えたみたいに.......!
「.......いいえ、なんでもありません」
「そうですか!ではそろそろ事聴取は終わりにしましょう。後日武裝してギルドに寄って來てくださいね!」
なぜ武裝.....?嫌な予しかしないんだが。
 それを聞く前に、ウェストさんが「さぁいったいったー」と言ってシスティさんも巻き添いに部屋から追い出された。
***
「な、なんなんだあの人.....」
「はは....ね、はいい人なんですよ?」
「...まぁ、それは何となく分かりますけど.......」
 戻ってまで昇格を辭退するのもバカバカしくなった為、システィさんとギルドの付所へ戻る事にした。
「それにしても、本當にダンジョンを攻略したんですね。驚きました....」
 気を使ってくれたのか、システィさんが話を振ってくれる。
──うっ、気遣いは有難いんだけど、人見知りにとってはキツイ....今度こそ話を上手く続かせなくては
「え、えぇ、本當に何度も死にかけました。その度に何度も仲間に助けられて....」
「佐野さん.....やっぱり、佐野さんにティファを任せてみて、正解でした」
「えぇ、そんな事も.....ん?任せ...る?」 
──あ、そういえば私、佐野さんにティファの事、何も話してなかった。そりゃ戸うよね。今もこんなに困して.....
「────あの、」
「ごめんなさい、意味が分からなかったですよねちゃんと説明を───」
「俺、貴方とどこかで會いました?」
「へ?」
───あれれ?おかしいな。なんか今の言葉、私の事を知らない風なニュアンスだったんだけれど?
「え、えっと...今....なんと?」
「....?俺、貴方とどこかで──」
「ちょっとすとぉぉっぷ!」
「え?え?」
──そ、そうよ。思ってみれば私、佐野さんとあまり話してないものね。グサリと來そうだったから咄嗟に言葉を止めさせたけど、これは仕方の無いことよ!ちゃんと言えば思い出してくれるに決まってるわ!
「わ、私の名前はシスティ。システィ=レポーネです。....佐野さんの冒険者登録の時や、クエストの斡旋を勤めさせてもらった気がするのですが、覚えてないですか?」
「...........................................あー」
 長い!その長い間で今50コンボくらいグサッときた!!!
「「..........」」
 挙句の果てに二人とも気まづくなって會話が途切れる始末。
***
──あれ?俺今めっちゃ失禮なこと言わなかった?
 思い出せば、システィさんにはめちゃくちゃ世話になった気がする。
 気がするというのは、本當に忘れてしまっているからだ。何となく々と世話になってたと思うんだけど、失禮なことにあまり覚えてない。
「あー......システィさん?」
「......はい、影の薄いシスティならこちらです.....」
 や、やばい....結構ダメージけてるっぽい.......そして、またもや失禮なことに、そんなシスティさんを、ちょっと面倒臭いと思ってしまってる自分がいる。
「佐野さん、気にしないでください。全ては私の影の薄さがいけないんですから....」
「え、いや....あれ?ちょっとー?システィーさーん!?」
 すっかり意気消沈してしまってるシスティさんは、付所の方向とは別にを向けて歩き出す。
「トイレに行ってきます。後から行きますので先に付の方へ行っててください」
「は...はぁ.......」
 ダンジョンで々あったからとか、お互い自分の口から自己紹介はして無かったですよねとか、取り敢えず言い訳をしとこうとしたが、その前に専用のトイレにって言ってしまった為、追うことは葉わなかった。
 
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