《異世界転移するような人が平凡な高校生だと思った?》70話 再開 II

「おにぃ、そのローブいで」

 急に真面目な聲で何を言い出すのかと思えば、出てきたのは服をげとのこと。

「ローブ?....別にいいけどなんだよ急に」

「いいから」

 そう言って結は急かしてくる。

 特に困るものもない俺はローブをごうとする。

(片手しか使えないからローブをぐのも一苦労だな....)

 右が聞き手だったということがあり、普段の食事などにはそこまで支障をきたさなかったものの、両手を使わないと苦労するような作は、どうにも不便だった。

(この世界義手とかあるのかな?あ、でもあぁいうのってリハビリが必要なんだっけか?.......あれ?片腕....?)

 そんなことを考えていると、ようやく俺は妹に見せようとしていたものに気づいた。

「どうしたの?早くいで」

「.......」

 気分はまるで泥まみれになってしまった服を親の前で必死に隠す子供の頃のあれだった。いや、正直それよりタチが悪い。こちとら腕を無くしてるんだ。

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 やってしまった。そうだよ、あんだけ抱きつかれたらそりゃ気づくよな。揺となからずの喜びで完全に忘れていた。

「....がないなら私ががす」

「ちょ、た、タンマ!マジでタンマ!!」

「知るか!」

抵抗しようとしたが、片手だけでは妹の両手を食い止めることは難しく、まさか強引に押し退ける訳にも行かず、妹のもう片方の手によってローブががされる。

「あ.........」

「...っ!」

 そして、俺のを見て驚愕の表を曬す結。想像以上のショックをけたのだろう。

 驚愕とともに、その顔はどんどん怒りのを出し始めている。そりゃそうか。逆の立場だったら俺だって怒る。どんな事があったのであろうと、急に目の前でショッキングな景を見させられれば、我を忘れて怒鳴ってしまうかもしれない。だから、訳を話そうとしても意味が無い。こういうのは、本人が冷靜に語れば語るほど、周りはどんどん熱くなってしまう。

 だから兎にも角にも、俺が今出來ることは多分ひとつ。

「ねぇ..それ、どういう──」

「すいませんでした!!!」

「...はい?」

 頭を下げてひたすら謝ることだ。何に対して謝ってるか分からなくても、まずは謝ることことからだ。

「俺がこうなったのは、々と訳があるけど、元はと言えば俺がもっとこの世界での行にもっと注意して行くべきだった。頭のどこかでこの世界は語に出てくるような世界だと決めつけて、自分の基準で勝手に行して、このザマだ。きっとんな人に迷かけてるし、今も結や香山、蓮にも迷をかけてる。だから、本當にごめん」

 何となく振り返りながら、悪かったところを即興で正直に言ったつもりだったけど、言葉にすると結構な馬鹿だな俺。何してんのさ、下手をせずともミスラとシュナが居なかったら死んでるぞ。こんなの腕とか関係なしにすぐ謝るんだった。

「「「.......」」」

 蓮や香山はまだ一言も言葉を発してないけど、もしかして怒っているのだろうか。だとしたら、し嬉しいとじるとともに申し訳ない気持ちになった。

「.....顔あげてよ。理不盡な怒りそうになった自分が恥ずかしくなるでしょ.......こんなよく分からない世界に1人で來て、なんにも分からないままほっぽり出された奴に、忠告もしてもないのに、なんで冷靜に行出來なかったとか言う方が酷でしょ..」

 言われるがままに顔を上げると、先程よりは冷靜にな顔になっている結の表が見えた。

「お、おぅ....ありがとな」

 多分こういう時、こいつは謝れるより謝された方がいいと思い、それを口にするとともに、後ろで未だに黙りこくっている同級生2人に視線を向ける。

「えっとー、蓮と香山も....ひ、久しぶり?」

 この狀況での距離がわからなくて、しだけ聲が裏返ってしまった。

「あぁ...うん。お前は元気そうだな。俺は今回は保護者役みたいなもんだから」

「?」

「そこのちょっと泣くのを堪えているお前の妹と、隣で今にも泣きそうな顔をしているお前の馴染の面倒役みたいなもんだ」

「「誰も泣いてないし!」」

「だから、泣きそうなっつってんだろ」

「「泣きそうでもないし!」」

 すごい息ぴったりに蓮へ聲を荒らげる2人。もしかして仲良いのだろうか。そんなに2人で話してる様子は見た記憶がないんだけれども。子供の頃にたまにいがみ合ってたくらいだ。

「けど、まぁ...早く戻ってこいよ。お前がいねーといじる相手がいなくてつまらん」

「..あぁ....了解」

 一言余計だけど。

 ここにきて、最初は元の世界に戻ることを考えなくてもいいかなと思ってた。その理由はきっと前世の記憶が関係してるのも薄々分かってる。知りたかったんだ。いつも、なんとなく誰かのいている気がしていて、それがなんなのかずっと気になっていた。けど、もういいかもしれない。

 もちろん今でも気になってる。前世のことを知りたいと思ってしまっている。別にそれは悪いことではないのかもしれないけど、それを知るために、大切な人を悲しませるようなことはしたくない。今までの経験からして、前世の記憶を思い出すには條件...というよりは共通點と言えるものがあった。

 1つは魔法を使うこと。(魔力を作するだけでもいいのかもしれないが)2つ目はいつもの変な夢を見ること。そして3つ目は、前世のに呑まれること。

これらの全てが揃うと言うよりは、それぞれの共通點ごとに記憶がしずつ、本當にしだけど思い出せる。一つ一つは些細なことで、前世は多分剣を使えたことだったり、魔力のある世界にいた事だったり、脳が思い出すと言うよりは、その時に起きた前世の自分の行を客観的に捉えて事実を裏付けてるに過ぎない。

 そして、それを思い出すためには、いずれにしても魔力のある世界でなければ多分無理だ。俺のいた世界でも1つ目の共通點以外は経験したことがあった。夢なんかはよく見る事もあった。けれど、この世界で見た夢と違って、何を言ってるのかがさっぱりだった(別にこっちの世界でみる夢が、要領を得られるとは言い難いけども)。3つ目に関しては、今思えば子供の頃に一度か二度あったくらいで、それ以降は無かったと思われる。.....あ、もしかして中學のあの黒歴史もかな........おぉ!じゃあ黒歴史じゃなくね!?俺がおかしくなったわけじゃないし!中學の頃の友達に今度會った時は『あの時は俺もおちゃめだったな〜、前世の記憶が荒ぶっちゃってさ〜』って事実を明かして笑い話にできるって事か!!

.....出來るかボケ...もっと頭おかしいヤツと思われるわ........

 

 まぁそれはいいとして、こっちの世界に來てからは、魔法も使うようになったし、夢も結構頻繁に見る。前世の記憶に呑まれることも相當増えた。それもこれも、関係することといえば、魔力があるかないかだと俺は勝手に思っている。それがあっているのだとすれば、俺は記憶を取り戻したいのであればこの世界にいることこそが絶対の近道なのだと思う。けど、さっきも思ったとおり、大切な人に悲しい思いをさせてまで記憶を取り戻したい訳では無いんだ。だから、もういいだろう。記憶のことはこれからの人生、長く付きまとわってくる事もあるだろうけど、別に死ぬわけじゃない。これは憶測だけど、前世の俺は多分相當のお人好しだ。上手くやって行けることを願おう。

「....どうしたよ?神妙な顔をして」

「ん?いや、ちょっとした覚悟が決まったってだけだよ」

「なんだそれ.....」

 ふとミスラを見ると、その顔は無表ながらも、ずっといた俺にはなんとなく悲しい表をしているように見えて、けど俺の視線に気づくと、薄い笑みを浮かべる。多分俺の思ってることを察したんだろう。けど、お前にはそんな無理やりの笑顔をさせたくない。たまに見る笑顔がかわいいってのに(本人には絶対に言わないけど)、それが噓の笑顔とか何も嬉しくない。

「そうだな、ちゃんと言っておくよ。俺は──」

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