《お姫様は自由気ままに過ごしたい ~理想的な異世界ライフを送るための能力活用法~》第一話『馬鹿と天才は紙一重』

沢山の書類に目を通しながら、部屋の主、ザブリェット・フォン・ウンゲテュームは「はぁ」と大きなため息を吐いた。

來る日も來る日も同じような作業。本當に退屈。暇過ぎてあくびが出そう。

あの頃はたのしかったなーと思い出に浸りながら、常人の三倍の速度で仕事をこなす十三歳のお姫様。

こんな雑務をこなすために、私はここにいるんじゃない。思っていたのと全然違うんですけどと悪態つきながら、ふっと窓から外を眺めた。

青い空、白い雲。お城の上の方に位置するこの部屋から見える景は、城下町を一できる。

(あっちのほうが楽しそう……)

人で賑わう城下町では、商人が沢山のモノを売っている景や、大道蕓を行っている蕓人がいて、それに集まる主婦や子供らしき人の姿が微かに見える。

それを羨ましそうに眺めながら、ザブリェットは死んだあの日のことを思い出して、後悔する。なんで今の私に自由がなくなっているのかと……。

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ザブリェットは転生者である。転生前の名前は來棲くるす天てんこ。全く普通じゃない、キチガイ系の異常なだった。

を一言で表すなら馬鹿である。

これは頭が悪いという意味ではない。

むしろ彼績は良いほうで、學年どころか全國トップクラスの績である。そんな彼のどこが馬鹿なのか。

馬鹿と天才は紙一重という言葉があるように、天は、常人ではわかりえない、突拍子もないことを突然するのだ。

理由は簡単であり、楽しいからやっている。自分の好きなことに正直で、気になったら豬のように突っ込んでいく行力。より楽しむために勉強し、他人に迷をかけるのだ。

それが、來棲天という人間だった。

ある日、電気にはまっていた天は、激しい雨が振る空を家の中からじっと眺めていた。

時折、空が輝き、遅れて大きな音が鳴る。雷がまだ遠くにいるため、天は「もうすぐ、もうすぐ」とつぶやきながらじっと待つ。

手に握られているのは、自分で作った避雷針と、特絶縁スーツ。これで一何をしようとしているのやら。

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この時の天は、頭の中が雷のこといっぱいだった。最近見つけた面白いものが低周波治療である。電気をある一定の周期で流し、まるで肩ををんでもらっているような覚が味わえる、マッサージである。

あれから閃いたことは、雷でやったらどうなるんだろう……ということだった。

普通の人ならば、死んでしまうという結論に至るが、天は一味違う。

絶縁スーツを來て、電気を調整すれば、自然現象のマッサージが堪能できると考えたのだ。

もし、このことを誰かに言っていたら、天の運命は変わっていただろう。しかし、天は學習しており、誰かに相談したら止められるので、絶対に相談しないという真理に至っていたのだ。

次第にと音の距離が短くなってくる。これは雷が鳴っている大きな雲が近づいてきた証だ。天は急いで外に出て、自転車の鍵を外してった。大雨の中、制服にを包んでいる天は、傘も刺さずに自転車のかごに詰め込んだ避雷針と絶縁スーツがしっかりっていることを確認し、近くの山を目指して走する。

制服にを包んで走する謎の自転車は、傍から見れば不審者だろう。だが、大雨のせいなのか人の姿がなかった。

山の口に到著すると、自転車をフェンスに掛けて、絶縁スーツをにまとい、避雷針を背負う。

雨のせいで流れる水が、土をらかくさせて、りやすくなっていた。すでに真っ暗になっている上に、歩きにくい山道。頂上に行くまで一苦労なこの道を、雷に打たれたいという想いで登っていく。

何度か転び、膝や肘をりむいた。流れたは、すぐに雨によって流される。傷口に雨が當たるたびに、激痛が走りながらも、自分が楽しいと思うことのために一歩、また一歩足を進める。

が頂上についた時、空がった瞬間に音がなるぐらい、雨雲は近くに來ていた。

ちょうど良いタイミングに頂上についた天は、両手を空に掲げ「雷よ、私に降ってきなさい!」と大きくんだ。

それからかれこれ一時間。雷が落ちる気配は一切なし。雨は強くなる一方で、これ以上ひどくなると帰れなくなる。

「結局、雷は落ないか……」

は殘念そうに肩を落とし、元來た道に戻ろうとした。

雨が激しくなっている為、って転ばないように慎重に移して、下山を試みる。誰だって痛いのは嫌だし、好きなことの為以外に怪我をしたくない天なら尚の事。

実際、悪い道を進む時は上りより下りの方が危ない。

重力に逆らう方向に進むより、重力に沿って移したほうが、足が軽く進む反面、転げ落ちて、最悪の場合死に至る。

だからこそ慎重にかざる追えない。

山の下り道にろうとした時、天に衝撃がはしった。もちろん、理的な意味でだ。

偶然なのか、必然なのか、天に雷が落ちたのだ。

絶縁スーツをにまとっているはずだから大丈夫と思っていた天。しかし、素人が作ったそれではを守ることが不可能。しかも、山を登っている途中、転んだ時に服が傷ついており、全く意味をなしていなかった。

雷をちょくで浴びた天の頭は真っ白になる。痙攣するからだ、激しい痛みに耐えられず、よくわからない聲がでる。

でもそれは一瞬のこと。衝撃がなくなると、天はその場に崩れ落ちた。

思うようにかないが焼ける匂い。

だが、天は生きていた。意識を失うことなく、生きることができたのだ。

「絶縁スーツでも……ダメなんて……逃げなきゃ。私、死んじゃう……」

しびれが取れず、かないを無理やりかそうとしても、は思ったように反応してくれない。

せめて、せめて避雷針だけは遠ざけたい。

心臓の音が大きく聞こえる。また雷が落ちる可能があるその場所で、くようになるまで待たなければいけない天は、次第に焦りが生まれる。

(これで死んだら……自由に楽しいことができなくなるじゃない……)

は「まだ生きたい、もっと楽しいことがしたいんだ」とつぶやき、涙を流す。今の現狀は自分が招いた事態だとしても、それを後悔することはない。だって、やりたいことをやった結果なのだから。でも、これから先、もっと楽しいことがあるはずなのに、それができなくなってしまうのは、涙を流すほどに辛かった。

世界は広い、なら誰も知らない面白いことがたくさんあり、それを遊びつくしたい。自由気ままに、楽しいことをやり盡くして、納得のいくような死に方をしたかった。

だからこそ、まだ生きなくてはならない。どうしてもやりたいことがある。

「ううう、あ…ああぁああ、けぇぇえ」

聲を上げ、気合をれる。次第に抜けていく痺れに、若干くようになったが、強い衝撃をけて転んだため、かすだけで激痛がはしる。

痛い、とてつもなく痛い。それでも、まだ生きるために、天は避雷針を摑み取る。だけど、に固定したそれは、ちょっとやそっとじゃ、取ることはできない。

やっと、摑み取ることができたのに……でも、まだ一回だけ、このあとに雷が落ちるとは限らない……そう、希的な観測をして、天時間が過ぎるのを待つ。

でも、世界は理不盡で殘酷だ。

もしかしたら死ぬかも知れない恐怖に怯える天に、さらに雷が落ちた。それも、ちょっとやそっとじゃない。まるで、天に向かって、雨が降り注ぐように、雷が落ちる。

こうして、來棲天は、生涯の幕をおろした。

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