《お姫様は自由気ままに過ごしたい ~理想的な異世界ライフを送るための能力活用法~》第六話『おしっぽ様をもふりたい』
魔王と一緒に魔國領の城下町までたどり著くと、魔族や魔で賑わっていた。
右を向けば、店屋臺から漂ってくる、いい匂いにヨダレが出そうになり、左を向けば、綺麗な洋服や、味しそうな果なんかが売っている。
見るもの全てが新鮮で、あたりをきょろきょろと見るザブリェット。好奇心のせいか落ち著きがないザブリェットの手を、ヘルトがさりげなく摑む。
「ほら、あんまりはしゃぐとはぐれんべ。オラが手握っといてやるか、しっかりついてきりゃ」
「う、うん」
ヘルトに強引に引っ張られながら、城下町を進んでいく。こんな場所に魔王がいるせいか、街中で注目を浴びる。ザブリェットは恥ずかしさで頬が赤くなっていくのをじる
この狀況は一どんな風に思われているんだろうと一瞬だけドキッとするが、そんなことはあっという間に忘れてしまう。
転生しても本的なところは変わらず、馬鹿を発揮したザブリェットは目を輝かせて魔王城を見つめた。
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「なんて、なんて酷い城なの……」
開いた口がふさがらないとはこのことかもしれない。
魔王城はあまりにもボロかった。廃墟といっても過言ではない。でも、窓からちらりと見える裝は、とても立派で綺麗だった。
この外から見た雰囲気と現在地から見える微かな裝の矛盾。きっと、雰囲気作りのために、あえてボロくして、廃墟をイメージさせるデザインにしているのだろうと、ザブリェットは結論づけた。
「んじゃ、姫さん。オラの後ろをしっかり歩くっペよ。一応、こっから先は魔王関係者しかれんようになってっぺ。
オラの城だがんな。りっぱじゃねぇにしても、大切にしてるださ」
「ふーん。そうなんだ。でもそれだと、私がったらまずくない?」
ザブリェットの質問に、ヘルトは首を橫に振る。
「いや、そんなことはなか。姫さんは賓客として案するって伝えてあっぺ。だから、そげに気にせんでええ」
いつの間に……、と驚愕するザブリェットは、素直にヘルトの後ろをついていく。その間も手をつなぎっぱなしだったが、すでにそのことが頭から抜けているザブリェットにとってなんも問題ない。
二人は城に向かってまっすぐ歩いていると、立派な門が見えてきた。高さもそこそこあるけど、なにより厳つい雰囲気がある。ザ・ボスの城的雰囲気がたまらなくいいと思うザブリェットは目を輝かせて興した。
どんどん近づいていくと、門の前を仁王立ちする大きな男が見えてきた。
よく見ると、全をが覆っている。
「おお、魔王様、やっとお帰りになりましたか」
「ポチ、お出迎えあんがとな」
ヘルトがポチと呼ばれる人狼に近寄り、首あたりをでてやると、気持ちようさそうな聲をあげる。わふわふいうその姿はまさしく犬。しかも本気で気持ち良いようで、しっぽを盛大に振っていた。
(なに、あのモフモフ。とてもりたい!)
手をワキワキと、まるで変質者を思わせるように、ザブリェットが這い寄ったが、しっぽで叩かれてしまう。
「お前のことは魔王様から聞いている。俺の名はポチ。見てのとおりワーウルフだ。
あと、気安くしっぽにるな」
「……もふりたい、もふりたい、もふりたい」
「いや、呪詛のように言ってもダメだからな!」
ザブリェットがブツブツと言い始めたので、尾を守るように後ずさるポチ。
魔王城に到著して早速、戦いが始まろうとしていた。
ザブリェットは、まだ効果が切れていない『強化ブースト』による36倍速の移をして、ポチの後ろに回り込む。
だが、相手は人狼。能力と嗅覚に優れていた。
ポチは姫の匂いを辿り、即座に対応。後ろに回り込んできたザブリェットの手を摑み取った。
「俺の尾をりたかったら、匂いを消して來な。それだけでまるわかりだ」
「え、匂い!」
ザブリェットは恥ずかしそうな表と、変態を見るような目つきで後ろに下がる。
そして、自分の匂いを嗅ぎ始めた。
一何事かと思ったポチだが、ザブリェットの一言で全てを理解する。
「……の子の匂いを嗅ぐなんて、とんだ変態ね!」
「そ、そんな理由で嗅いでねぇ!」
し興気味にんだせいかポチにスキが生まれた。これはチャンスだと思ったザブリェットはつかさず行に出る。
意識の合間を拘束移して後ろに回り込む
激怒するポチはそのことに気がつかず。華麗に後ろを取ったザブリェットは、いやらしい手つきでポチの尾をで始めた
もふもふふわふわ。まるで綿菓子をっているようなやわらかさ。だけど、生きであることを象徴しているかのような暖かさをじる。埋もれて寢たら気持ちいいだろう。
つい頬をり付けたくなるしっぽだ。
我慢できずに頬りし始めるザブリェット。うっとりとして、とっても満足そうな表になる。
それとは裏腹に、顔を赤らめてピクンッと震えるポチ。なんだか可らしいが、聲が……なんというか……。
「あ……くぅぅぅ、あ、やめ……」
「……なんか聲がいやらしい」
「しょしょしょ、しょうがねぇだろう。尾って結構デリケートな場所なんだよ。気安くさわんじゃねぇ」
「うわっとっと」
ポチが鋭い爪を出して、ザブリェットを切り裂こうとする。36倍速でけるザブリェットは問題なくかわせたが、せっかくもふっていた尾が手から離れたことに気がついて、殘念な気持ちになった。
「ああ、私のもふもふが~」
「お前のじゃねえだろう!」
「まぁまぁ、二人共、ちょっと落ち著くだべ」
まるで癡漢にでもあったかのように、顔を赤くして、キリッと睨むポチは、純なオスなんだろう。そう思うと、私って実は癡だった? などと思考し始めるザブリェットは、自分の行いに恥ずかしさをじて蹲ってしまった。
「うう、もふもふにしてわざとらせようとするなんて……」
「てめぇが勝手にってきただけだろう」
「そうだけど、そうだけど! の子には々あるんだよ。だからその尾、私のために切り落とし……」
「やんねぇよ! はぁ、なに、お前今切り落としてとか言おうとしてなかった。俺、一応魔王軍の幹部なんですけど、なんだ、この人間」
「……痛くしないのに」
「そういう問題じゃないからね!」
ハァハァ、と息を切らしてきたポチをめるヘルト。このままでは話が進まないと思い、ポチを一旦下がらせた。
とぼとぼとどこかに行ってしまうポチをしそうに見つめるザブリェットの方をポンッと叩き、ヘルトは首を橫に振った。
「……ダメ?」
「絶対にダメだべさ」
「ショボーン」
ポチを後ろから襲撃してもふることをダメだと言われたザブリェットは、悲しそうな表をするが、10秒ぐらいしたら、ケロッとしたじになって立ち上がる。
「じゃあヘルト、早速案して頂戴」
「はぁ……、やっと中にれるだべさ。これだけでどげな時間使ったか……」
「しょうがないでしょ。ポチがもふもふしているのがいけないの。スキがあれば……、もふる!」
「ほどほどに……」
止めるのもめんどくさくなってきたヘルトは、魔王城の中にっていく。その後ろをてくてくとついていき、ザブリェットも中にった。
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