《お姫様は自由気ままに過ごしたい ~理想的な異世界ライフを送るための能力活用法~》第九話『無限ループ』
「もう、一どうしたの?」
突如甘えてきたテディベアたちを宥めたザブリェットは、本當に様子がおかしいとじた。これはやばいことが起きているのでは? っと疑問を抱くのも當然である。そういうわけで、ザブリェットはテディベア達に事を聴くことにした。
といっても會話が立できるはずもない。
テディベアたちは「きゅう、きゅう」と鳴くことしかできないのだから。
テディベアたちは、必死にジェスチャーをして、ザブリェットに気持ちを伝える。
頑張って伝えようとしている姿が微笑ましく思って、ザブリェットも笑ってしまう。だけどザブリェットには何一つ伝わっていない。
それに気が付いたテディベアたちは項垂れる。ちょっとかわいそうに見えた。ザブリェットはちょっとだけ悩み、ある提案をしてみることにした。
「えっと、私の言ったことがあっていたら、頷いてくれるかな?」
「きゅ~~~~」
「それじゃあ行くよ!」
テディベアたちが、一斉にザブリェットが持つ鋏を指差す。
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「えっと、そのハサミで……」
「きゅ!」
一匹のテディベアが頷く、どうやら正解のようだ。
続いてテディベアたちは一斉に自分の首あたりを指差す。
「えっと、テディベア?」
「きゅ、きゅ!」
テディベアたちが頷く。どうやらこれも正解。この時、クイズ番組みたいな気分になっていたザブリェットは、この調子で頑張るぞ! と意気込んだ。
そして…………、テディベアたちは一斉に指を橫にスライドさせる。
「…………えっ」
本當に言っているの! とさすがのザブリェットも驚きを隠せない。
だって、テディベアたちは「そのハサミで、テディベアを殺して」と言っているのだから。
何、こいつらは頭がおかしいんじゃないの!
どう考えても、自分から喜んで殺してなんてドMか死にたがりぐらいしかいないじゃん。生としておかしいよ!
一瞬だけそう思ったが、手をかける前のテディベアたちを思い出すと、死を恐怖して怖がっている印象が思い浮かぶ。
ということは、死ぬ前は普通であったのだ。
そしてザブリェットは思い出す。
チラリと発をじることができた、あの能力『鋏の魅了シザーステンプティーション』の存在を!
急いで能力ガイドを広げて確認するザブリェットは、能力の効果を見て驚愕する。
『この能力をONにさせた狀態で、相手が鋏で切り殺された場合、鋏の魅力に惹かれて復活後にもう一度味わいたくなる。もう死にたくて、死にたくてしょうがないにしてしまう。これはに刻み込まれた快楽ではなく、魂に刻み込まれたものとなるので、いくら復活しようがまたやってくる。よかったね!』
「だぁもう! 天使の祝福は碌でもないものばっかりだ!」
でもまぁ、ベッドを作るための素材は足りないわけだし、もういっちょやりますか。そう思ったザブリケットは鋏を再び構える。
鋏の虜になってしまったことを気にしないことにして、いま優先するべきこと、寢の作のために再びテディベアたちを襲う。
先ほどと違うところは、テディベアたちが喜々として切られにいっているぐらいだ。
傍から見たらどうしてもカオスという狀況しか表せない。
もう一度殺戮劇を繰り広げたザブリェットは、「はぁはぁ」と疲れきった息を吐く。
再びに染まった空間。やりきったと額を伝う汗を拭い、『蘇生リザレクションRev.1』を使う。
逆再生のように、復活するテディベアたち。また、ザブリェットに殺されたいと甘えてくる。
だんだん慣れてきたザブリェットは、「しょうがないな」といったじで再び殺す。
そして『蘇生リザレクションRev.1』をかけ直す。
量産されていく皮。復活したら何度でも殺されに來るテディベア。
十回ほど繰り返したあたりで、ザブリェットは「あれ?」と首をかしげた。
あと何回やれば満足するんだろう。てか、何だこの無限ループ。
ふわふわの皮が大量生産できるのはありがたい。だけど、これは……神的にキツくなってくる。
ザブリェットはもう嫌だとばかりに泣き出しそうになる。切って、蘇らせ、切って、蘇らせ、無限に続く皮量産制。
ぶっちゃけもういらないと思ってきたザブリェットは、とうとう復活させることを諦める。
あのつぶらな瞳で殺してと懇願されると、どうしてもやってしまう。これも人間としてどうかと思うけど、に忠実な割に可くお願いされると斷れないタイプのザブリェットならやりかねない。
でも、このまま殺してしまうのはかわいそうだと思ってしまう。ザブリェットがこの行為に及んでいるのは復活できる前提があるからだ。
本當の死を與えるつもりはない。
だが、全てのものが完全に復活できるわけではない。蘇生にはそれなりの制約が存在する。まあ能力レベルによって変わるので制約が全てというわけではないのだが。
人間領の蘇生法則で言うならば、それは綺麗な死であること。ザブリェットの論外な『蘇生リザレクションRev.1』と比べると簡単に思えるかもしれないが、これがなかなか難しい。
日數が関係ない代わりに、損傷合がない死に限られる。普通襲われて綺麗でいられる方がないので、蘇生はあまり行われないのだ。
そして、壽命で死んだものは生き返らない。これは魂が廻転生で再びこの世界に舞い戻っているからだ。だけあっても、中が存在しなければ蘇ることはできない。
人間領の蘇生ルールはこのようだが、特例もある。さらに特別な勇者に選ばれたものはこのルールに縛られない。
ぺちょを含める神様人が「特異點はゲームがあったほうがおかしなことをしない」というふうに思われて作られているからだ。
ザブリェットはこのルールに則って最後の『蘇生リザレクションRev.1』を使用する。
今回は材料として使わない。再び殺す。綺麗に殺す。これを亡霊神父というやつの元に持っていき、そいつが蘇生を行っている間にどこかに行けば、いやな無限ループを出できると思った。だから、ザブリェットは仕方なく殺る。
「ふう、これで一通り殺ったかしら」
山積みにされたテディベアたち。量が量だけにやりきったがすごいザブリェットはものすごい笑顔だ。まるで、初めてゲームをクリアして達に浸っている年のように爽やか。
「あーでも、これをどうやって持っていこう。そもそも亡霊神父とやらはどこにいるの?」
「「ここは私(僕)たちにお任せ!」」
唐突に現れた一號と二號。若干顔が赤いが、それでもザブリェットに対する忠誠心というか的なものは変わらない。どんなに恥をかこうが、どんなプレイをされようが、ザブリェットに対して無償のを捧げ続ける。天使の祝福『テンタシオン』の被害者たち。
そんな二人を冷めた目でザブリェットは見つめる。
「えっと……誰?」
「「ええええぇぇぇぇぇぇぇぇえええぇぇ」」
當然二人は絶した。こんなにしているのに忘れられる哀れな二人。本當に興味ないようで、正直メンドくさいと思うザブリェット。
(あ、でも待って。このふたりを利用し続ければ割と便利そう。ほら、このテディベアを運んでもらえばいいじゃん。私って天才だ!)
「えっと、名前……は?」
ハーピィのが勢いよく手を上げて「一號です!」と、サキュバスがそのあとに続くよう「二號です!」と自己紹介する。
「……一號、二號……覚えた。これからよろしくね!」
「「はい!」」
この自己紹介の後、一號と二號は激しく後悔した。忘れられたのなら本當の名前を教えればよかったと。でも過ぎてしまったことは変わらない。新しい自分をけれて、ザブリェットにつくそうと決意する。
「じゃあとりあえず、このテディベアを亡霊神父がいるところに運んでほしい」
「ほいきた……えっ」
「僕がお姉さまを案しますから、一號はそのテディベアの山をよろしく!」
にこやかに一號を見捨てる二號。ザブリェットもにこやかに笑い、「お願いね」と言う。
オロオロし始める一號に「勝った!」といった表をする二號は、ザブリェットと腕を組み「行きましょうね」と言って去ってしまう。
當然、「暑い!」とザブリェットからお仕置きされるのだが、テディベアを運ばずに行ってしまったことには変わりない。
一號はフルフルと震えながら、テディベアの山を見る。一號よりも高いその山を運ばなければならないと考えると涙が出てきた。
「ちょ、ちょっと待ってくださいご主人様、二號!」
虛しいびだけが響き、一號はその場にヘタリと座り込む。
「わ、私はどうすればいいのよおおぉぉぉおおぉ」
臺車もない、使えそうな魔法ない狀況の一號はこれから行わなければならない重労働に涙して、渋々と作業に取り掛かるのだった。
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