《お姫様は自由気ままに過ごしたい ~理想的な異世界ライフを送るための能力活用法~》第十一話『イケメンには鉄槌を』

ザブリェットはすぐさま立ち上がり、亡霊神父に毆りかかる。

ザブリェットはイケメンである亡霊神父を敵視していた。どう見たってちゃらそう。絶対遊んでいる。の敵。コイツは殺すべし。

なぜか脳に流れる謎のアナウンス。ザブリェットはそれに従い、勢いよく拳を振りかぶった。

そして、當たるはずだった拳は亡霊神父のを通り過ぎ、殺しきれなかった勢いに引っ張られてザブリェットは地面を転げまわる。

「うう……りむいた」

たらりと流れる。ひどくはないが、ちょっとした痛みをじる。目頭に涙が溜まってしまうのは、條件反なんだからね、と一誰に言っているのかわからない言い訳を心の中でして、その場でうずくまる。

「ちくしょう! 全部イケメンのせいだ!」

「えぇ! 私のせいですか!」

突然睨まれたイケメンの亡霊神父はうろたえながらも、そっと、ザブリェットの傷口に手を翳す。

「ヒール」

「……っち」

「なんで舌打ち!」

突然、回復魔法を唱えた亡霊神父。人間領からわざわざやってきたお姫様が怪我をしたのだ。當然の対応だといえよう。

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ただ、イケメンを嫌いするザブリェトだったのがいけなかった。

「神聖な私のに汚れたイケメンの回復魔法をかけるなんて……。私を呪うつもりね!」

「な、何を言っているんですか、あなた!」

「私は亡霊神父にテディベアを復活してもらわなければいけないの。イケメンは死すべし」

このイケメンが亡霊神父であることに気がついていないザブリェットは、イケメンを消し去ることで頭がいっぱいだった。

だが、先ほど毆った時は、を通り抜けている。その原因について、ザブリェットは直的に理解していた。先ほど通り過ぎてしまったのは、生で毆ったからだと。だからザブリェットは拳に魔力を貯めた。

姿勢を低く構え、獲を見つけたチーターの如く狙いを定めて走った。

目指すはイケメン野郎。クソッタレな男を無に帰すために。

「必殺、ゴォォォォットブローォォォォォォォォォ」

「わわわ、私が亡霊神父ですぅぅぅぅぅぅぅ」

ザブリェットが全重を乗せながら、『強化ブースト』にものをいわせて放った必殺技、ゴットブローは亡霊神父の顔一ミクロン手前で止まる。今のびでこのイケメンが亡霊神父であることに気がついたザブリェットは、顔を消し去る一歩手前でとどまることができたのだ。これから大量の仕事を押し付けるつもりの人を殺してしまっては本末転倒だろう。だからこそ、ギリギリで止めることが出來たが、魔力と風圧は止まらずに亡霊神父に襲いかかる。

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直撃した亡霊神父は三回転半宙を舞い、顔から地面に激突した。

本來ならゴースト系である亡霊神父は壁抜けができるであろう。だが、襲った魔力が床の通り抜けを邪魔した。

亡霊神父はかっこいい顔を鼻から出た赤いで染めた。

それを見たザブリェットはピクっと反応する。

疼くカラダを抑えようとしたが、別に自由気ままにすればいいと思い直したので、ザブリェットは亡霊神父に近寄る。

「わ、私を助けぐげぇえええ」

「うわ、本當にだ。幽霊みたいなのに、どうなっているんだろう」

「痛いから、ちょ、そこさわ、ぐげぇぇえええぇえ」

亡霊神父の鼻をいじくりまわすと、ブシュっと音を立ててが溢れる。

おそらく折れているであろう鼻だが、幽霊なんだから、骨があるはずない。だけど魔力をまとってったじ、しっかりと骨があるようながあった。

幽霊とは一何だろうか。

ザブリェットは頭を悩ませる。

「うーん、君のはどうなっているの」

「その前に痛いからやめてくれぇぇぇぇぇ」

「嫌だ。君のに興味がある」

鼻息を荒くしてし興気味、頬を赤くしながら亡霊神父に馬乗り狀態のお姫様は、幽霊の不思議に興味を持った。

のあちこちを魔力の有り無しを切り替えながらっていく。

楽しげに、幽霊とは何かを考察しているとボトリと何かが落ちる音がした。

「ん、なにってあー、やっと來たよ」

「「ななな、何をやっているんですか! 亡霊神父様!」」

もといいテディベアを運んできた一號と二號はザブリェットに馬乗りにされている亡霊神父の姿をみて驚愕した。しの人が男になにかしているのだ。

ザブリェットから何かするはずがないと言う謎の確信を持っている一號と二號は、亡霊神父がいけないと言う結論に至った。

きっと亡霊神父が、そのイケメン力でザブリェットをそそのかして、馬乗りをさせているに違いない。とんだ変態野郎だ。ぶちのめそう。

そうと決まったら行は早かった。魔力をまとった一號のカギ爪が亡霊神父のカラダを切り裂く。しぶきが馬乗り狀態のザブリェットにかからないのは、ゆえのなにかだろう。

痛みで悶えている隙を見て、二號がザブリェットを回収。

「変態、変態、変態! エリアボスだからって、何をやってもいいってわけじゃないんですからね」

「そうですよ、イケメンだからって、お姉様を汚そうとするなんて……」

「ちょ、お前たち、一何を……」

「「汚らわしい変態が近寄るんじゃねぇ!」」

の敵認定された亡霊神父は一號と二號に責められる。確かに、傍から見たらいかがわしいことをしていそうだったが、それは違うと弁解しようにも、話を聞いてくれない。

このままでは変態神父にジョブチェンチしてしまうと恐れた亡霊神父は、とても綺麗な土下座を披した。この時、亡霊神父の頭が見えたのだが、サラサラっと髪が飛んでいき、十円ハゲが突如として現れる。きっと、この狀況に過度なストレスをじ、心優しい亡霊神父が耐えられなくなっているのだ。

それがチャンスだと思ったザブリェットは、ニヤリと笑ってこう言った。

「ねぇ……このこと……黙っていてしいでしょう?」

「黙っていてくれるんですか!」

まるで癡漢の冤罪をかけられた弱気な男の子狀態の亡霊神父をあくどい顔で見つめ、ほくそ笑んでいるザブリェット。でも、ストレスから禿げ始めている亡霊神父からしてみれば、神のような人に見えたのだろう。

ザブリェットはそんな亡霊神父の心境を計算にれているのだ。知恵が回るバカほどめんどくさいものはいない、というのはこのことだろう。

ザブリェットは大量に山積みされている熊もといいテディベアの死を指さした。

「これ……お願いできるかしら」

「これは一……」

「テディベア。呪っ……、鋏で殺されたい病に犯されたの。私が近くにいるとメンドくさいから、復活しておいて」

「呪っ……? まぁいいでしょう。それなら、この私に任せてくれ!

地下神殿のエリアボスにして、魔國領の回復マスターであるこの私に任せてくれたらすぐ終わるよ。

どれどれ……なんと、綺麗に殺されているじゃないか!」

一応復活のことを考えて綺麗に殺してある。人間領の常識から考えれば、綺麗に殺さないと復活できない。まぁ、ザブリェットの見知らぬ能力を活用すればなんとかなる気はするが。だけど、めんどくさがりなザブリェットがそんなことをするはずがない。

そんなやる気のないザブリェットも、亡霊神父の言いにちょっとだけ気になることがあった。

「ねぇ、亡霊神父」

「どうしたんですか、姫!」

「姫……あんたが言うと気持ち悪い。でもまあいいや。死者蘇生ってどのぐらいの損傷まで許されるの?」

「関係ないですよ」

「……はぁ?」

「なんとなくわかりますよ。人間領では損傷がなくないと蘇生できないんですよね?」

「うん、そうだよ」

「それは初級のリザレクションです。比較的簡単で、制限が強く、効率の悪い復活魔法ですね。人間でしたらここが限界かもしれませんが、私はその先を行ったものですので。ヨタリザレクションなら制限関係なく復活できますよ」

「お~すごい。制限って本當にないの?」

「実は……しありますね。大量の死を一変に蘇生させると、時々混ざります。それぐらいでしょうか」

「いや……混ぜちゃダメだと思うんだけど……」

「大丈夫です、戻せますから」

キリッと決め顔をする亡霊神父。ちょっとうざいと思いながらも、ザブリェットは亡霊神父にテディベアの蘇生をお願いした。

地下神殿での要件を済ませたザブリェットは一號と二號を引き連れて、その場を出ようとする。

出口に向かって3歩ほど歩いたところで、もう一つ聞きたいことがあったのを思い出した。

「ねぇ、亡霊神父」

「あれ、まだ行っていなかったのか。どうしたんですか、姫」

「布リアンってどこにいるか知っている?」

「ああ、それなら、固有結界『布の世界』にいるよ」

「それってどこにあるの?」

「さあ、あれは移する結界だから。長年魔國領に住まう謎結界だからね。私の考えでは、いまは魔王城の口付近にいるんじゃないかな?」

「どうしてそんなことが分かるの?」

「行パターンの予測……って言えたらかっこよかったんだけどね。姫が魔王城に來るからってことで、掃除をしているんだよ。布が大量にあったほうがいいでしょう?」

「確かに……報提供謝」

ザブリェットは亡霊神父に敬禮をして、地下神殿を後にした。目指す場所は『布の世界』。筋痛でも安眠できる新品ベッドを作るために、ザブリェットは布を目指す。

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