《お姫様は自由気ままに過ごしたい ~理想的な異世界ライフを送るための能力活用法~》第十六話『筋痛は地味に辛い』

王國が騒ぎになっていたその頃、囚われの姫、ザブリェットは自分で作ったベッドに橫になりながらしくしくと泣いていた。

「……くちゃい」

そう、ザブリェットの部屋になる予定の牢屋はとっても臭かったのだ。ろくに管理もされてなく、放置されていたのだから當然であろう。そんな部屋を自分で改裝できるからという理由で選んだザブリェットもあれかもしれないが……。

ザブリェットの見立てでは、掃除をすれば筋痛で寢込んでいる時は我慢できるだろうと思っていた。それに『破壊デリート』を使えばごみは掃除できる。そのために一號と二號に掃除をさせ、さらに能力を使ったのに、それでも匂いだけは落なかった。鼻をえぐるような気持ち悪い匂いに吐き気がする。

「……くちゃいよ。いちごう……にごう……」

「「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃ~ん」」

ザブリェットの一言で唐突にあわられた一號と二號。その手にはモップとバケツを摑んでおり、鼻は鼻栓をしている。どうやら掃除で呼ばれたと思い込み、急いで駆けつけたようだ。

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「さて、どこから掃除をすればいいですか、ご主人様」

「いちごう……きょうはそうじいい」

「ふえ?」

「ばっかだな、一號は。僕はわかっているさ。お姉様は別の要件があって僕らを呼んだんだ」

「その要件てなに?」

「そ、それは……」

そんなことを言いながら騒ぎ出す二人と匂いにイラっと來たザブリェットは人差し指を二人に向ける。そして、こっそり窓から見ていた國家魔導師達による汎用魔法開発の実験現場で覚えたビリっと來る魔法を唱える。

「『ちゃんだ~ぼりゅと』」

「「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁっぁぁ」」

人差し指から放たれた雷は一號に直撃。當然、近くにいた二號も雷に巻き込まれ、をビクンビクンさせながら不思議な踴りを踴った。

そして、二人は崩れ落ちる。そう、とっても臭い地面に……。

イケメンとの子に厳しいザブリェットは「ざまぁ」とケタケタ笑うのだが、やぱり匂いがきついようで、直ぐに表が歪む。

これは、一刻も早くこの部屋をどうにかしなければいけないが、筋痛でけない。仕方ないから今のうちにどうやって改裝するべきか考えることにした。

「一號、木材まだある?」

「えっと、木材ですか? すいません。このベッドのために渡した分で盡きてしまいました」

ザブリェットは「ふむ」といって頷く。木材がなくなったということは取りに行かなければならない。そういえば、ヘルトがウラウスの森に行けば木材が手にると言っていたな~と思い出す。とりあえず、報収集か……と考えたところで誰かがやってきた。

「お~姫さん。大丈夫だっぺか。果持ってきたど」

ヘルトがカゴにいっぱいの果れてやってきた。正直、この匂いのせいで食がないザブリェットは渋い顔をする。ヘルトもこの匂いが相當なものだとわかったらしく、って來てすぐに固まった。

「こ、これは相當な匂いだっぺ。こりゃ魔法でも使わんときついんだな」

ヘルトの手元に魔法陣が構築される。その上にりんごのような果を乗っけると、サラサラっしたじに消えていった。するとどうだろうか。今まできつかった匂いがりんごのような匂いに書き変わっていくではないか。

思わずほころんでしまうザブリェット。

そして、『ちゃんだ~ぼりゅと』のダメージから回復した一號と二號は、いい香りにほころんだあと、魔王に気がついて土下座した。

「ままま、魔王様! 申し訳ございません!」

「ぼ、僕たちが不甲斐ないばかりにお手數おかけして……」

おそらくぬめりがひどいであろう地面に額をこすりつけるふたりを見て、ザブリェットはよくやるとっといったじで見つめていた。ヘルトもまさか土下座されるとは思っていなく、オロオロとうろたえる。

「とりあえず、みんなで果食べるっぺ」と言って、ヘルトはナイフを取り出した。

それを一號と二號はつかさず奪う。

「皮むきぐらい私たちがやります。ご主人様のために、ご主人様のために!

大事なことなのでもう一度言います。ご主人様のために!」

「一號、しつこい。それに僕だってそれぐらいできる。お姉さまのために、魔王様のために!」

一本のナイフを取り合うふたり。正直危ない。

見かねたザブリェットは人差し指をまた向ける。

「『ちゃんだ~ぼりゅと』」

「「ご褒!」」

この二人は真正の変態のようだ。ザブリェットの攻撃をけて、嬉しそうに笑いながら崩れる二人。そんな景にヘルトは「はぁ」とため息を吐く。

「姫さん。このふたりをあんまりいじめんでくれ」

「でも、この二人喜んでいるよ?」

「え、そんなわけなか!」

そう言って、視線を一號と二號に向けるヘルト。その目に寫ったのは「うへうへ」と笑いながら地面で悶えているハーピィとサキュバスの姿。あまりにもひどい。

「ま、まあ見なかったことにするっぺ。それよりほれ、いいから食ってみ」

ヘルトが投げたリンゴのようなものをキャッチしたザブリェット。かしたことでに痛みが駆け巡る。全痛のものに果キャッチはメチャ辛い。

うう、ヘルトは私をいじめる気なんだ。

そう思ったザブリェットの瞳に涙が浮かぶ。

でも、貰いだから食べないとという気持ちで、痛みを我慢してリンゴのような果に口をつけた。

一口かじっただけで溢れる果した桃のようにらかいのにリンゴのようなさっぱりとした甘さが口いっぱいに広がる。

の痛みなんか忘れ、一心不に食べるザブリェットは食べながら「うまい」とつい言ってしまった。その言葉を聞いたヘルトが嬉しそうに頬を緩める。

ヘルトが農業にはまった理由、それは誰かに食べてもらい、喜んでもらえるからだ。「味しい」といって食べる姿、それが農業を営むものにとって最高の幸せ。本當に味しそうに食べるザブリェットを見たら、嬉しさが顔に出てしまうのも無理はないだろう。

「そっかそっか、そんなにうまいっぺか。オラが作った果をたくさん持ってきたっぺ。ゆっくり食べや。逃げたりせんから」

「うん……ところで、この果はなんて名前なの?」

「おお、それはすまんかったな。それを説明するん忘れてたな。それは『モモリン』っちゅうオラが作った果だっぺ。リンゴのようなさっぱりしたじと桃のようなやわらかさが特徴の一品ださ。リンゴがい、桃は甘すぎっちゅう要に応えて作ってみたさ。うんめぇだろ?」

「うん、味しい! まだいっぱいあるんでしょ。私、いろいろ食べてみたい!」

この時、ザブリェットの中にひとつのが湧き上がった。農業いいなと。

農業のスペシャリストである魔王ヘルトに教えてもらいながら、自分の好きな味を追求するのも面白そうだと思った。だけど、それよりも前に、この部屋をどうにかしなければならない。くっさいこの部屋のまま異世界を自由に生きるなど不可能なのだ。まずは自分が住む場所をしっかりさせる、それができて初めて自由気ままに異世界生活を送ることが出來るのだとザブリェットは思った。

だからこそ、即効で部屋をきれいにしよう。そして、ヘルトのように、自分の好きに正直に生きて人生を謳歌するんだとザブリェットは心に決めるのだった。

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