《お姫様は自由気ままに過ごしたい ~理想的な異世界ライフを送るための能力活用法~》第十八話『魔王様のお部屋でトラブル』
數日もすれば筋痛はなおり、元気になったザブリェット。
でも、なんだかんだでグダグダと過ごしたので、結局何も決まらないまま時間だけが過ぎていった。
まぁとりあえず元気になったので、ザブリェットは一號を毆り飛ばしてみた。
「ご褒です!」
とても嬉しそうにする一號をザブリェットは冷めた目で見つめる。すると一號がうっとりとした表で腰を抜かす。こいつ、真正の変態だなとザブリェットは思った。それはサキュバスである二號も同様のようで「うわぁ」とつぶやいている。
こいつは本當にサキュバスなのだろうか。役割的にはこっちが悶える方が正しいとザブリェットは思う。だって二號は魔サキュバスだし。それに、二號がザブリェットの攻撃をけて悶えたことがあるのを知っている。
だからだろうか、ザブリェットは二號に攻撃した。
「嬉しいです!」
うへうへ笑いながら四回転半宙を舞い、顔面から地面に激突。重力に引っ張られて足が地面に落ちていやらしい姿勢になる。その時ですらうへうへと笑っていた。
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もしかしたら『テンタシオン』の効力でこうなっているだけなのかもしれない。
二號はザブリェットに攻撃される前、一號を引いた目で見ていた。それなのに、攻撃をけるとこの様子。確実にそうだとザブリェットは思う。
「さて、ちょっと運もしたことだし、そろそろ行きましょう」
ザブリェットがそう言うと、一號と二號がむくりと顔をあげて、きらきらとした目でこう言った。
「「お供します!」」
「まぁ別にいいけど……とりあえずついてきて」
「「了解であります!」」
元気よく返事をするふたり。の子が嫌いなザブリェットでも、こうもなつかれると悪い気はしない。
さりげなく『破壊デリート』の能力を行使して、一號と二號の汚れをとってあげる。
それに気がつかない一號と二號。それをちょっぴり殘念に思いながらも、二人が笑顔ならまあいいやと思い、とりあえずヘルトの部屋に向かうのだった。
***
「ウラウスの森がどこだか教えろー」
「「教えろー」」
ヘルトの部屋の扉を蹴り開けるお姫様。けった扉は勢いがありすぎて破損。扉は砕け散り、散々な狀況となる。
當然、中にいた人は開いた口がふさがらない。驚いた表のまま固まった。
「……あれ、ヘルトは」
「あれ、いませんね。どうしましょう。ご主人様」
「うーん、ここにいないとなると、僕は畑だと思いますよ」
「よし、それじゃあ行きましょうか、一號、二號!」
「「あいあいさ~」」
壊した扉を無視して去っていこうとする三人。それを部屋の中にいた人が呼び止めた。
「てめぇら……さんざん散らかして何やってるんだ!」
大聲てぶ、部屋の掃除をしていた人……じゃなくって犬であるポチ。
叩きを大きく振り上げて怒鳴り散らす。
「なんで姫がここを襲撃してくるんだよ。おまえは魔國領の人間になったんじゃねぇのか!
それに一號と二號……だっけ?
お前らが抑えなくてどうするよ。何、謀反でも起こす気か!」
「えっとそんなことないよ。それに私たちの主はご主人様ですから」
「そうですそうです。そこを間違えないでください」
「お、お前ら……」
「ごめん、ポチ。私がたまたま使った呪いのせいでこうなった」
「てめぇのせいかこんちくしょう!」
「だからね……もふらせて」
「やらねぇよ!」
ポチは大きく後ろに飛び、ザブリェットから距離を取ろうとする。だけどここは魔王ヘルトの部屋。し広いとはいえ、戦闘を行えるほどじゃない。當然、後ろに飛んだ先にもモノがあり、ポチは上手く著地できず、転んで床に頭を打つ。近くには棚があり、倒れた衝撃で揺れいた。
棚に乗っかっていたモノがグラグラと揺れき、床にいるポチの真上に真っ逆さま。危機をじたポチは咄嗟に避けると、パリィーンという割れた音が響き渡った。
「…………」
「やっちゃったね。どうするの、ポチ」
「……どうしよう」
「助けてあげよっか」
「……嫌だ」
ポチの直が告げていた。ザブリェットの「助けてあげようか」という言葉に乗ると、自分に悲劇が起こるということを。だからこそ拒否を選んだのだが、今回割ってしまったものが悪かった。
地面に落っこちたもの、それはヘルトが大事そうにとっていたワインだった。これがただのワインなら良かったのだが、世界に一本しかない魔王が初めて作ったワインなのだ。
ぶどうを食べてみたいという魔國領に住まう子供たちのお願い。それに答えるように始めたぶどう作り。たくさん実って大きく騒いだらしい。そして、食べきれなかったぶどうは、干しぶどうやワインなどの加工品にした。その時子供たちからプレゼントされたワイン。それを大切に持っていたのだが、それをポチが割ってしまう。
本當に困った様子で項垂れるポチに悪魔的な笑みをしながら話を持ちかけるザブリェット。
それはもうニタニタと、まるでどっちが悪魔なのかわからない構図に一號と二號はうろたえる。
「うーん、私のお願いを三つ聞いてくれるだけで全てがなかったことになるんだけど……だめ?」
「……そ、それでも」
「あーあ、ヘルトは悲しむんだろうな」
「うっ……」
「そしてポチを恨むだろう。だって、本當に大切にしていたから、部屋に置いておいたのに、忠犬が呆れるよ」
ザブリェットの言葉に、ポチの顔がどんどん青くなる。もう藁にも縋る思いでザブリェットに手をばすも、あのニタニタ顔が悪い予しかせず、つかめずにいた。
あともうひと押し、そう思ったザブリェットは更なる行を起こすことにする。
「ふふ、ポチは殘念ね」
そう言い殘し、ザブリェットは『破壊デリート』で証拠隠滅をした。もちろん、消したのはザブリェットと一號、二號がいた痕跡だ。これで、ザブリェット達はこの部屋に訪れていないとでも言い張れるだろう完璧な証拠隠滅。全ての罪をポチにり付けられる。実際ザブリェット達は何もしていないので、怒られることはないのだが、ポチの心を煽るためだけに行ったのだ。それが以外に効果抜群だった。
「匂いが……消えた? お前、自分がいた痕跡を消しやがったな!」
「うん、これでこの場にいるのはポチだけ。ポチはいたずらしてヘルトがほんと~に大事にしているワインを割ったことになるね」
「ふざけんなぁ」
「で、どうするの……私に助けを求める?」
「うぅ……お願いします」
とうとうポチの心が折れて、ザブリェットに懇願した。ザブリエットはやっと來たとばかりに能力を使う。
使用した能力は『復元レストレーション』という、壊れたという事象を消し飛ばし、文字どうり復元させる能力である。
逆再生の映像を見ているように、ワインが復元していき、ザブリェットの手元にが集まりだす。
ただ、これは天使の祝福によってもらった能力。ただ復元ができる優しいものではない。
この能力にはもう一つ、デメリットとなる點があり、それは壊れたという事象が別の何かに起きるのだ。それがなんなのか指定出來るのはありがたいこと。
ザブリェットは一號に手をかざす。すると、ワインが復元するときに集まりだしたがザブリェットの手元から一號に降り注ぐ。
「ぐぇぇぇ」
「い、一號ぅぅぅぅぅ」
口からを吐き、は地面に落ちたコップのように砕け散る。飛び散るしぶきがまるでこぼしたお茶のように広がっていく。壊れ切ったそれを二號が必死にゆすり、涙を流す。
「はぁ、これだけじゃ終わらないよ……『道ヴェルクツォイク・復活アオフエアシュテーウング』」
ザブリェットがさらに能力を使用する。これは死者蘇生の能力であり、道となったものを復活させることができる。道、つまり人権がなく、ただ利用されているようなものにのみ有効と、使い勝手が悪い能力であった。
だけど、一応復活できた一號。生きている喜びを二號と一緒に分かち合う。
「さて、助けてやったぞ、ポチ。早速私のお願いを聞いてもらおうか!」
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