《お姫様は自由気ままに過ごしたい ~理想的な異世界ライフを送るための能力活用法~》第二十一話『いや、今日中に取りに行く!』

「ううう、やだぁぁぁ、絶対に今日中に取りに行くの~」

ザブリェットは地面に転がってだだをこね始めた。足をバタバタとして、実にみっともない。これが4歳ぐらいの子供なら可らしいものだがザブリェットは十三歳。地球ではちょうど中學生ぐらいの年頃だろう。その年の子供が足をバタつかせてだだをこねている姿は、あまりにも稽で痛々しい。

當然、この場にいるポチは「はぁ」と呆れたじにため息をつく。

一號と二號?

アレらはザブリェットの呪いのような能力で汚染されているので、「はぁはぁ」と息を荒げながらじっとザブリェットを見つめている。

どうしようもないバカがたくさんいる世界。これぞ『デポトワール』クオリティーというものだろう。

「おい、姫! いい加減にしろ!」

「やだやだやだ~、絶対に今日中に木材ゲットするの~ あんな臭い部屋、もういやだぁぁぁ」

「それはわかる……俺だってワーウルフ。匂いには敏だからな。でも、それとこれは話が違う。ウラウスの森に転移で行けるが、あれは決まった日にしか使えないんだよ。膨大な魔力、それを補填できるか? 無理だろう。 わがまま言うんじゃねぇ、クソ姫!」

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「わぁぁぁん、ポチが怒鳴ったぁぁぁぁっぁ」

ヒートアップするザブリェット。顔を手で覆い、ポチは顔を上に向ける。

こんな時、魔王様がいてくれたら……。

そう思ってしまうほど、今のザブリェットは手におえない。ポチにはどうしようもないのだ。

「…………決めた!」

「あぁ、何を決めたってんだ、クソ姫様」

「ウラウスの森に転移する」

そう言うと、ザブリェットはどこからともなく一冊の本を取り出す。

「ちゃっちゃらっちゃっちゃ~。能力ガイド!」

「「おお~」」パチパチパチ~。

ザブリェットは某アニメを思い出させるような口調で能力ガイドを取り出して、一號と二號はそれを見て拍手する。一なんなのかよくわからないポチは呆然とするしかない。

「流石ですわ、お姉さま。僕、しちゃいました」

「ほんと、二號の言うとおりです。流石です、ご主人さま」

何が一號と二號をこうさせるのか、ポチにはわからない。だけど、あまいにもザブリェットに心酔しきっているため、ちょっとばかし不安に思うことがある。

それは、ザブリェットが裏切ったとき、一號と二號はどうなるか、ということだ。

散々ザブリェットにぶっ飛ばされているこのふたりだが、魔國領でもかなり優秀な方である。

魔王城と言ったら、魔王の趣味満載な豪快な城。確かに、外見はボロいけど、趣味の農業が快適に行われるように道は整理され、過ごしやすいように環境づくりまでされている。

複雑な魔法を駆使しており、熱や気などで道や種が傷まないようにしているのも、魔王のゆえだろう。

そんな魔王が施している魔法に干渉して、手れやメンテナンスを行えなければ、城での仕事など不可能。それ相応の技レベルが要求される。

空を飛べ、城の隅々まで雑務をこなせるであろうハーピィの一號であっても、催眠系の魔法のエキスパートであるサキュバスの二號でも、並外れた能力がなければこの若さで任されることはない。

魔王はザブリェットと同様、自分の趣味に一直線で、好きなことを好きなだけしたいやつなのだ。邪魔をされれば街一つ消すレベルの魔王であるけど……。

優秀な二人が、いきなりやってきた人間のにこうもなついていると、不安になるなという方がおかしい。

ザブリェットが裏切ることによって、二人の優秀な者が敵に回る。全で見たらあまりたいした事じゃないかもしれないが、魔族や魔にとって、戦力が欠けて、人間にとって戦力が増大してしまうことに繋がる。

そんな不安を心の中で思うポチだが、ザブリェットの真剣な姿勢が、その不安をあまり大きくさせない。

なんだかんだ言って、魔王と似ているところがあるから。自分の人生を、自由に、好きなことをして生きたい。そんなザブリェットだからこそ、れられる部分がある。

ちょと不安になりながらも、ザブリェットがこうして好きなことをしている間は大丈夫だろうと、わがまま溫かく見守ることにした。

こちら側にいる間は、一號も二號も裏切ることはないのだから。

そんなじに見つめていたはずなのだが、一何を勘違いしたのか、一號と二號がジトーとした目で見つめていた。

「狼ですね……」

「お姉さまは僕が守ります」

「オメェらは一なにを考えているんだ!」

「だって……」

「ねぇ……」

「お前らなぁ……」

「ポチ様は立派な男です。そして、男は狼になると僕たちサキュバスの間では言われています。

そういえば……お母さんが舌をなめずさりながら、狼になった男はいいわよ~的なじのことを言ってやがりましたね。しかも頬を赤らめて、くねくねとしながら。一なに考えていたんでしょう」

「え、二號のお母様もそんなこと言っていたの?

私もお母様に、あなたが生まれたのは狼に豹変したお父さんが無・理・や・り・襲ってきたからできたのよ~。あの時、新しい世界が見えたわ~とかよく言ってたな~。

どういうことだろう?」

うんうんと悩み始める二人。話を聞いてポチは顔が青くなる。

(あの馬鹿どもは、子供に一なにを教え込もうとしているんだ!)

ポチの怒りもごもっともである。子供にそんな話をする親など、ロクでなしかバカップル並にイチャイチャとした関係が続いている、微笑ましい家族のみである。

なんだかんだで面倒を見るのが好きだったりするポチは、このふたりにどうやって教育するか考え始めた。

オスであるポチがあるのはなんかセクハラしているっぽくて、嫌だ。だけど教えられるものがいない。みんな馬鹿か変態か趣味に沒頭するやつしかいない。

それに、頼むのもセクハラとしてなんか言われそう。それが一番怖いポチは、ふとザブリェットに視線を向ける。

こいつならっと微かな希を抱くが、ヘルトと同様に趣味に沒頭するザブリェットなのだ。ちらりと見ただけでその幻想は打ち砕かられる。

鬼気迫るじで能力ガイドを見つめるザブリェットの姿は、かなり危ないように見えたのだ。まぁ、それは仕方がないことかもしれないが。

そんなポチの悩みなんて関係ないとばかりに、ザブリェットは「見つけた!」と大きな聲をあげる。

「ポチ、見なさい! これならウラウスの森に今日中にいけるわ!」

「ああ、一何だって……これは!」

ザブリェットが見せた能力ガイドのページにポチは驚愕した。

書かれている能力は『瞬間移テレポート』だ。だけどこの能力ガイドに書かれていることは、天使たちが與えた祝福に関する事。當然、碌でもない能力だった。

そこに書かれていた容は、當然瞬間移と呼べるものではない。これは一種の概念魔法に近いなにかだ。

今いる場所をAとすると、『ザブリェットたちはAという場所にいる』ということになる。

當然と言えば當然のことで、言葉で説明することでもない。當たり前の事。

その言葉の意味を書き換えて、現実にする能力が『瞬間移テレポート』だったりする。

簡単に言えば『ザブリェットたちはAという場所にいる』を『ザブリェットたちはBという場所にいる』という意味に書き換えて、それを現実のものにする能力である。

そして、この能力で一番大事なのがイメージ力であり、それがかけると、『ザブリェットたちは▼×↓↑ABXXX672いう場所にいる』という意味不明なじになり、無の空間に放り出されるというわけだ。

二度と出られなくなるかもしれないリスク。かなり危険な能力。

でも、この時のザブリェットはしおかしかった。

「それじゃあ、能力使うよ~。ポチ、しっかりイメージしてね!」

「ちょっとまてぇぇぇぇぇぇ」

「んじゃ、いっきまーす『瞬間移テレポート』」

問答無用と言わんばかりに能力を発し、ブロッコリー畑にいたザブリェットたちは姿を消した。

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