《お姫様は自由気ままに過ごしたい ~理想的な異世界ライフを送るための能力活用法~》第二十二話『気が付くと、真っ暗な場所だった』

気が付くと、そこは真っ暗な場所だった。

上も下も右も左も黒一。まるでぺちょと初めてあった場所の黒バージョンのようだ。

ザブリェットは手探りであたりを確認しようとする。下のは草のようなさわっとしたと、らかい土の香りがした。

だけど周りは何も見えない。もしかしたら……失敗した? そんな考えが浮かんでくる。

「一號、二號、ポチ……どこ?」

真っ暗な空間をひたすらに歩き続けてみるザブリェット。今どっちに向かっているのかわからず、適當に進んでいると、なにからかいものを踏みつけた。

その時「ぐぇ」とか聞こえたので、もう一度踏みつけてみる。すると、また聲が聞こえた。

「ぐぉおお、一なんですか。痛いです、めちゃくちゃ痛いです!」

「……この聲、一號?」

「は! もしかして、ご主人様ですか。助けてください、なにか変なものが私を押しつぶそうとし……」

そこまで言った一號に対して、ザブリェットはもう一度、思いっきり踏み抜いた。

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「ぐぉおおお、お腹がぁぁぁぁ。でもこのは、ご主人様!」

「よかった、そこにいたのね」

「は、はい。ご主人様にグリグリされて、私はしあわせですぅぅぅ」

どうしようもない変態の一號は、踏みつけているのがザブリェットだということに気がついて、悶え、喜び始める。

そんな一號を気持ち悪いと思いながら、他に誰かいないか見渡すが、やっぱり暗くて何も見えない。

さて、ここは一どこだろう。そう考えても、行き著く先は『瞬間移テレポート』に失敗したという事だった。

あの能力は、イメージがしっかりしていないと必ず失敗する。行ったことない場所に使う能力ではない。きっと、某ゲームの○ーラとかいう魔法も、同じような原理であり、だからこそ一度行かないと使えないんだろうな、とか思った。

さて、失敗してしまったものは仕方がない。一どうすればいいのやら。首をかしげながら、一號をグリグリと踏みつけるザブリェットは、目をつむり、考する。謎の場所からの出。二號……はどうでもいいとして、ポチは回収しなければならないこと。ヘルトのもとに帰るのはどうすればいいのか。

三つの中で一番大事なのは、ヘルトのもとに帰ることだ。なんだかんだ言って、ザブリェットはヘルトのことを気にっている。

自分を助けてくれた、好きなものに真剣で、自分と同じようなヘルト。

気が付くと、ヘルトのことばっかり考え始めてしまう。

思考がズレた、そう思ったザブリェットは首を振り、もう一度考え始める。

今は集中しよう、そう思って一號を踏みつける力を強める。「あ、それ、いいですよ、ご主人様ぁぁぁぁ」とか、変なび聲がザブリェトを邪魔するが、そこであることに気がついた。

この真っ暗な空間に、一號のぎ聲の他に、ギチギチとした異音が聞こえるのだ。

この音は一……そう思ったザブリェットだが、突然肩を摑まれてんでしまう。

「うひゃあああああああああ」

「うお、びっくりした。突然ぶんじゃねぇ、クソ姫」

「ぁぁぁぁぁ…………って、ポチ?」

「ああ、俺だが、なんだお前、俺のことが見えて……って當たり前か。俺も暗くてよく見えねぇ」

「だったらなんで私のことが分かるの?」

「んなの當たり前だろう。俺はワーウルフだ。嗅覚には自信がある。つまりそういうこと」

「どういうこと?」

「あったまかてぇな。全てのものには多なりとも匂いがある。無臭なんてものはこの世に存在しないんだよ」

「え、でも無臭のものってあるよね……々と……」

「それは人間が認識できる匂いの範疇から外れているからだろ。匂いっていうのは、揮発の高い質が鼻に付著、それが刺激となり、電気信號に変換されて俺たちは認識できるんだよ」

「あ、そういうことね。私たちにはその質が付著しても何もじないぐらいの質だから匂いをじられないわけだ」

「まぁそういうこった。んで、俺は種族的にも嗅覚がいいほうだから、そこらへんは敏なわけ。匂いがあれば視覚が使えなくても、ある程度は分かる」

「よくわかったわ。それで、今いるのはポチだけ?」

「んや、二號も引きずってきたぞ」

「…………最低」

「おい、待てコラ!」

ザブリェットの一言にすごく引っかかるポチ。それも當然だろう。なにせ、ザブリェットの方が毆ったり、蹴っ飛ばしたり、ひどいことをたくさんしているのだ。それなのに、ポチは引きずっただけで最低呼ばわり。ちょっとばかし理不盡だと思ってしまうのも仕方がない。

まぁでも、ザブリェットが言いたいことはなんとなくわかっている。お前は男なんだからしっかりしろっ的なことだろう、ポチはそう思ったのだが、ザブリェットは全然違うことで「最低」という言葉を口にしたのだ。

「まさか……を引きずって喜ぶ趣味があるなんて……まさに狼!」

「ちげぇよ。なに考えているんだよお前は!」

「だって、二號を引きずって、痛みで悶えている姿を見……匂いでじて喜んでいるんでしょ?」

「あーなるほど、お前が俺をどういうふうに見ているのかわかったよ」

「かわいいペット?」

「俺はペットじゃねぇ!」

「ワンワン」

「くぅ~ん」

「お手」

「ワン! って何やらせやがる!」

「案外ノリがいいわね」

「っけ……んで、これからどうするんだよ」

そういったポチは二號をザブリェットの近くに投げ捨てた。「痛気持い」とか言っているあたり、二號もこの場所では役にたたないだろう。ザブリェットはなんとなく踏みつけた。一號と二號の悶える聲が、真っ暗な場所で響き渡る。その聲に合わせるかのように、ギチギチという音が大きくなっていく。

「ねぇ、ポチはここがどこだか分かる?」

「あーそれなら分かるぞ。微かだが、ウラウスの森に生えている月桂樹の匂いとかじられる。多分、ちゃんと辿りついているぞ」

「え、でもここは真っ暗だよ。なんにも見えないよ。本當にあってんの?」

「そんなの俺にだってわかんねぇよ。それに、この異音、ここで一何が起こっているんだ」

「うーん、明かりがあれば……あ、そうだ。私には能力があった!」

ザブリェットはどこからともなく能力ガイドを取り出した。ぶっ飛んだ殘念能力がたくさんあるのだ。明かりをつけるの能力の一つぐらいあるだろう、そう思ったのだが……。

「真っ暗だ、全然読めないよ~」

「當たり前だろう、馬鹿かお前は」

「……っけ!」

「うわぁ、じわる!」

「ポチ、あんたはなんかできないの?」

「俺は元々弾戦を得意とする魔族だからな。魔法はあんまり得意じゃない。魔法が得意だって言うなら……二號じゃねぇか?」

「……二號? だれ、それ」

「あんまりですよ、お姉さま!」

踏みつけられながら怒る二號。でも、聲は怒りよりも構ってもらえる嬉しさの方が優っており、なんだかピンクの危ない何かをじさせられる。

「まぁでも、お姉さまに頼られることなんてほとんどないので頑張りますよ」

「……そんなことない。私は一號も二號も頼りにしているよ」

「お姉さま……頑張りますよ、一號なんかに負けません」

「わ、私だってなにかできる……」

「一號、黙る!」

「ぐへぇ」

なにか言いそうになった一號をかなり強めに踏みつけて、二號にお願いという視線を向ける。

真っ暗な場所であったため、ザブリェットはまったく違う場所を向いていたのだが、それをなぜか期待の眼差しをじ取れた二號は、張り切って魔法と唱えた。

「いっきますよ~ ぴっかぴっかれ! 明るいライト!」

意味不明な呪文? 的なにかを唱え、二號はの魔法を使った。

と言ったら聖なるもの的イメージがあるので、なぜ二號が使えるのか疑問に思うザブリェット。ふと思ったのは、二號がサキュバスであり、なるものだからなのかもしれない……という馬鹿なことを思いついたが、別に使えるのだから、そういう仕様なのだろうと、ザブリェットは考えるのをやめた。

二號の手からふわりとした小さながたくさん出現する。まるで夜の水辺に蛍が舞っているような、幻想的な景。

つい、を追って、上を見上げたザブリェットとポチ。二號は自慢げに「どうですか!」と言ったが、あまりに綺麗だったため、ザブリェットもポチもうまく想が出てこない。

つい「綺麗……」とつぶやくザブリェット。その言葉だけで、二號の喜びは最高に達する。

そのと共に、大きく鳴り響くギチギチとした異音。

だけど、そんなことは関係ないとばかりに見つめていると、あることに気がついてしまった。

そう、この音の原因。が空高く登った先にあったもの。音の原因となるそれを見て、全員が青ざめる。

激しく気持ち悪いそれは…………真っ暗な空間を埋め盡くすほど大量にある、目。

ギチギチと集した何かの目が、一斉にザブリェットたちを睨みつける。

「「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」」」

ある意味ホラー映像的なそれを見て、ザブリェットたちは思わずんでしまうのだった。

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