《お姫様は自由気ままに過ごしたい ~理想的な異世界ライフを送るための能力活用法~》第二十四話『能力はこう使う!』

さて、意気込んだのはいいものの、一何をしていいのかわからないザブリェット。靜かに微笑んでいるのだが、実は冷や汗も一緒に流れていた。

未だにギシギシと変な音を鳴らすギたち。それが突然ぴたりと止む。

「一何が……っい!」

ギたちの種は盡きたわけではなかった。無數に飛んできた種がザブリェットを襲う。

やばいとじたザブリェットは咄嗟に『破壊デリート』を使った。

「あ、やば……」

この『破壊デリート』とは、いらない廃棄をポイするための能力だ。生きでなければなんでも消すことができて、消したものは二度と戻らない、使いどころがわからない能力。

いや、今使う能力としては『暴食ベルゼビュート』でも良かったのだが、あれはお腹を壊す。『強化ブースト』も使いすぎて筋痛になるのが早まる可能があるかもしれない。それは危険すぎる。ザブリェットが使える手はなかった。そこで咄嗟に使ったのが『破壊デリート』である。

ただ、ギは植型の魔であるため、使えるかは微妙だった。だからこそ、ザブリェットは使った途端に失敗したと思ったようだが、ちゃんと発したようだ。

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型の魔であるギには効果がなかったが、それらが飛ばした種は生きではないと判定されたようで、ザブリェットに著弾する前に綺麗さっぱり消滅した。

「……ぐっ……姫、さっさと逃げろ。おま……には……『瞬間移テレポート』……が……るだ……ろ」

「ポチ、そんなこと言うと怒るよ。私は一號と二號に酷いことしても、みんなを見捨てたりはしない。一號と二號は盾にするけど」

「……哀れだ」

きっとポチは一號と二號に言ったのだろう。確かに哀れだと思う。ザブリェットのためならなんだってする二人の扱いを間近でじて、ポチはほろりと涙を流す。それをザブリェットは、『私のために涙してる』などと勘違いして、ぐっと拳を握り締めた。

「やったるぞ!」

いきなりんだザブリェットは『破壊デリート』をオート起して種攻撃を回避しつつ、能力ガイドを読み始めた。

この狀況を打破するための能力。それを約十兆三千六百八十五億の中から探さなければならない。常人なら無理だろう。ただでさえ一つ読むのに時間がかかる辭書のようなもの。

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だけどザブリェットは馬鹿でも出來が良かった。

必要となる能力は三つ。それを検索機能を駆使して見つけ出すことに功した。

「さぁ、私の仲間をこんなにしてくれたこと、後悔しながら逝け『人形ドール』」

最初に使った能力『人形ドール』は、肝試しに使用することを推奨した、ただ人形を呼び出すだけの能力である。

その人形にはふわふわと宙に浮くことができる以外に能はなく、実に普通。和から洋まで種類は富、更に質が人間に近くて電気でくという特殊仕様。

別にAIとかっているわけではないので、電気を流してあげても宙に浮いてカタカタと震えるだけ。暗いところに設置すると見た人がビビるぐらいにしか使われないであろう能力らしかった。

「ふふ、沢山出ちゃった。ざっと數えても100は超えているね。うん、これなら余裕だわ。

次は、えっと『ちゃんだ~ぼりゅと』からの『幽霊ゲシュペンスト』」

ザブリェットが放った『ちゃんだ~ぼりゅと』はギたちにまっすぐに向かったのだが、途中で霧散した。微かに意識を保っているポチが、「失敗か……」とつぶやいていたが、そうではない。

原因は次に使った能力。

『幽霊ゲシュペント』の能力は、名前的に幽霊を召喚しそうである。

実際、ザブリェットも名前だけでイメージした能力の容はそうだった。

だけど、説明を読むと、何やら違う能力らしい。

幽霊とは信號の集合。人間であれなんであれ、生は微弱な電気信號のやり取りをしている。脳にある細胞たちが、學習という過程を得て信號を発信するしきい値を決定づけ、それが知能となる。またそれだけにとどまらず、からだをかすタイミング、姿勢、その他生としての全ての指示を電気信號で行っているのだ。

もっとわかりやすく言うならば、はモーターなどの機、脳となどの信號のやり取りをしているのはマイクロコンピュータ、そして信號を出すタイミングを見極めて、全てを制している司令塔であるプログラム。

そして『幽霊ゲシュペント』という能力はプログラムを作り出すような能力だった。

『ちゃんだ~ぼりゅと』が霧散したあたりに球が現れる。よく見ると電気が何かの力に引き寄せられるかのように集まっているようだ。この球は『幽霊ゲシュペント』によって、決まったタイミングで信號が出力されるように定義されていた電気信號の集合である。マイクロコンピュータがないのにプログラム通りに出力される信號の塊なので、幽霊と言っても過言ではないはずだ。

それが人形の數だけ現れる。

ただ、この能力はこれだけだった。

「ただ電気信號の塊を作るだけの殘念能力だけど……ものは使いよう! やっちゃえ!」

ザブリェットが聲を張って指示すると、ゆっくり球が降りてきて、人形に宿る。すると、人形には命が宿ったかのように突然き出した。

人形たちは忙しなくき、ある陣形を取る。

それは紀元前2500年ほどの南メソポタミアでも確認されている古い集陣形、ファランクス……いや、ただ集しただけのようだ。

ファランクスとは左手に大きな盾を持ち、右手に槍を裝備して、盾を裝備しても出してしまう右部分を右隣の人に隠してもらう陣形である。大8列縦深程度で、打撃力が必要な時はその倍の橫隊を構するらしい。

そのことから考えると、大盾も槍も裝備していないので、人形は壁のような狀態になっているに過ぎない。

でも、そこで終わらないのがザブリェットである。

「これで最後、『錬金アルケミア』」

『錬金アルケミア』は名前と容が一致していないとても殘念だけど、かなり優秀な能力である。

この能力は想像を現化する能力であり、頭の中を解析して、それに見合ったものが創造できるらしい。ただし、現化するものに見合った対価が必要となる。一応選択肢は出るらしいのだが、何が出てくるかはわからない。

なんだか『創造クリエイト』っぽいじゃないかと思う人もいるだろう。當然、ザブリェットもそうじている。

そこら辺の事は『能力ガイド』の下の方に、『創造クリエイト』と容が間違えたと記述してある。

どうも天使たちはおっちょこちょいらしい。

さて、能力を使用したザブリェットの視界に選択肢が映し出されたようだ。

『細胞一つ OR 死亡』

「何よ、この選択肢! 細胞一つか死亡って……選ぶ必要もなく細胞一つでしょう!」

『え、本當に細胞一つでいいんですか? おすすめは死亡ですよ』

「なんだこの能力。選択したのに、なんか言い返して來た。細胞なんて60兆…………いや、ちゃんと計算すると37兆になるんだっけ? まぁいいや。こんだけあるんだから細胞一つにするに決まっているでしょう。細胞一つの対価を選択×100にして、決定」

『ほんとに、ほんと?』

「しつこい!」

『ほ………ん………と………………に』

「だぁぁぁぁぁ、こっちは大変なのに、さっさと選ばれなさい!」

『ちぇ、しょうがないな~』

そんなメッセージが視界に流れた途端、人形たちの前にザブリェットがイメージした道が現れる。それは鎖鋸くさりのこだった。ギュインと音を立て、多數の小さな刃がついたチェーンを力により回転させる。これだけで、ギがバッタバッタと切れそうだ。

能力がうまく発して満足したザブリェット。その視界にあるメッセージが流れた。

『表皮にある古い細胞を回収しておいたぜ! 綺麗になっただろう?』

「あら、おの手れをしてくれた……って余計なお世話よ!」

『怒るとシワになるぜ!』

「だあ、もう! なんなのよ、この能力は!」

……やっぱり天使の祝福は微妙だ。能力まで口うるさい。

それでも、一応戦う準備は整った。ザブリェットは作った人形兵を見渡す。裝備しているのは鎖鋸くさりのこだけ。後はフリフリはの子らしい裝をにつけている。ただそれだけだ。

でも、ギぐらいならこれで戦えると、ザブリェットは確信している。もちろん、今も使っている『破壊デリート』を使い続ける前提だが。

「ふふ、これで準備は整った。お人形たち。敵を木材にしなさい!」

人形たちは、ギめがけて一直線に飛び立った

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