《私、いらない子ですか。だったら死んでもいいですか。》第五話~捨てられた勇者5~

「もう、もうやめてください、小雪様」

「アンリ……エッタ様?」

私はいったい何をしようとしていたんだろう。何かが私に囁いて、全てを壊してしまいたくなるような衝にかられた。

ああ、私は正気を失いかけたんだ。また、私の中にいる化が這い出てきて、全てを殺し盡くしてしまえと……。アンリエッタが止めてくれなければ、私は暴走して、破壊の限りを盡くしたのかもしれない。

そう考えるとぞっとする。

「小雪様……すごく辛そうなお顔をしていました。どうか、どうかお願いします。もうやめてください」

「……ごめんね。怖い思いをさせちゃって」

「い、いえ。そんなことはないです。それに……小雪様は、また私のことを助けてくださいました」

「ん? また?」

あれ、私、この子を助けた覚えがないんだけど。そんなことやったけ。まあいいや。

こんな騒になってしまったんだ。最悪指名手配されるかもしれない。そうなったらやだな。

ん~そうだ! ここは、あれを獻上して終わりにしよう。そういえば、さっきっから悪臭王が靜かだな。

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視線を向けると、目を閉ざし、口を閉ざし、手で耳を塞いでいた。そして、臭が振りまかれないように、じっと、石のように座っている。

シルエットに言われたことが相當ショックだったみたいだね。ざまぁ!

「さてと、シルエット王様? これ、どうすんの」

「あ、あう……はぐぅ…………うう」

おもらししちゃったし、もう姉の威厳なんてものはない。しかもここにいる騎士様たちがみんな見ているんだ。

かわいそうに。明日から王都中でこう言われるんだよ。おもらしシルエットちゃんって。

まあ、言いふらすのは私だけど!

さて、あれを獻上して、さっさと帰ろう。そうしよう。

「シルエット様~。もう、しょうがないからあれを獻上してあげるわよ」

「……すぐ……へっぐ…………ふぐぅ…………さっさと…………そうしなさいよね……っ!」

「さっきまでの威勢はどうしたのかな。プークスクス。おもらししちゃったから仕方ないもんねぇ。だっさ。チョーだっさ」

周りから、クスッと笑う聲が聞こえた。よく見ると、さっきまで直していた騎士さんたちが、おもらしシルエットちゃんを見て、今にも吹き出しそうに頬を膨らませている。

あ、私が床に叩きつけた騎士はまだ意識を取り戻していないよ。ホントだよ。トラウマ與えちゃったから、これから騎士として戦えなくなっているかもしれないけど! まあ頑張れっ!

あと目は……大丈夫そうだ。アンリエッタのおかげで助かったな。こいつも、私も。

私は、手のひらを上に向けて、前に出す。このポーズをしていると、雨が降ってきたかな? って、手を出すようなじに似ているから、イラスト栄えしそうだなっていつも思う。だけど降ってくるものが違う。

が雪のようにふらふらと落ちてきて、眩く輝いた。

があたりを照らしたかと思えば、次第に収束していく。

そして形をしていき、現れたのは聖剣のような何か。

ちなみに鑑定スキルを持っている私は、これが本か確認してみたことがある。

結果はこうだっ!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【聖剣のようなもの】

レア度:エクストリーム(笑)

分類:たぶん剣

概要

『持っていると勇者になった気分になれる。

また、これで戦うと、悪魔系の敵に効果がありそうに思える。ちなみに脆い。

所持者に勇者の稱號を與える』

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正直言っていらねぇ……。マジでいらねぇ。

何回見てもこの説明だった。おかしくねぇ。

たぶん剣ってなんだよ。武なら、どれぐらいステータスアップするのか表示しろよこんちくしょう。

あ、これ裝備したところで、攻撃力なんて上がらなかった。ひのきのぼうの方が強いよ。圧倒的に。

説明に脆いとか書いてあったけど、なんだかんだで折れたことないな。まあいいや。

「シルエット様。とりあえず、これを獻上します」

「「え、ええええええええええ」」

シルエットだけでなく、アンリエッタまで驚かれた。

「こ、小雪様は本當に勇者をやめてしまわれるのですか」

「う、うん」

「どうか、どうか勇者として戦っていただけませんか」

「ん~~、もうさんざん戦ったからね。だけど周りは罵倒するだけだし、疲れちゃったよ。 最終的には、お前なんていらない勇者はポイするぞって言われちゃったしね」

「で、でも……」

「君は優しいね。ほんと、君みたいな子が増えれば、私は救われる気がするよ」

「……っ!」

私はアンリエッタの頭を優しくでてあげたあと、おもらしシルエットがいる方向を見る。

手には聖剣。これをただ獻上するだけじゃつまらないな。

それに、あの悪臭王には悪口を言われっぱなしだ。それは嫌だ。やり返したい。

というわけで……。

私は悪臭王に向かって走った。周りにいた騎士たちは、また私が暴走したのか! と驚いてしまう。シルエットに至っては、またちょろちょろやっていた。の緩いやつめ。

あれ、こういうときい言う言葉じゃなかったっけ? なんかすごく違う気がするのは、なぜ?

まあいいや。とりあえず!

「死に曬せやボケェェェェェェェェェェェ」

剣を平に、悪臭王の頭を思いっきり叩いてやった。

「ぐほぉっ!」

ポッキーンといいじの音が響く。あの腐った王様を叩いた聖剣は綺麗に真っ二つとなったとさ。

【システムメッセージ:対象『西條小雪』から聖剣が消失したことを確認。対象から勇者の稱號を剝奪します】

お、世界樹の聲が聞こえた。ということは、私は完全に勇者ではなくなった!

「やったあああああああああっ!」

悪臭王、ナイス! よくやったよ。気絶しちゃったっぽいけど、聖剣の殘骸あげるから許してちょ。

「その折れた聖剣、作り直せばそこそこいいものが作れると思うから、後よろしく。じゃ!」

「あ、待ってください! 小雪様!」

ん? アンリエッタに呼び止められたような気がしたけど……私は立ち止まれない。私は……風になる!

◇ ◆ ◇ ◆

悪臭王やその他から逃げるように謁見の間を出たあと、私は一軒の宿屋にはいった。

ちなみに宿の名前は『首吊り亭』。ネーミングセンスがおかしくて面白そうだったから、ってみた。

宿屋の名前の由來は、一番奧の部屋で37人ぐらい首吊り自殺をしているらしい。

な・の・で、その部屋に泊まってみることにした。

せっかくだし、泊まらなきゃそんだよね。しかも一番安かったし。ラッキー。

部屋の中は大きなダブルベッドと小さな機、窓から見える城下町は、他の建に遮られてあまり見えない。なんとも微妙な部屋だった。

まあでも、死ぬにはちょうどいいかも知れない。

まさか、あそこで聖剣が折れるなんて思ってもいなかった。

しかも世界樹の聲まで聞こえたんだ。私はもう勇者ではない。

やった、やったよ。私は役割を終えることができた。

私が始めて異世界召喚されてから、何年ぐらいたっただろう。もう數え切れないほどだ。

死ねないのは苦しかった。死ねないのは辛かった。

一人だけ取り殘される不安。周りだけ死んでいく絶。心が何回バラバラになったことか……。一回しかなかったっけ? まあいいや。

ここが私の旅の終著點。私は今日、自殺する。

ほんと、ちょうどいい部屋が見つかってよかった。ここなら私が自殺しても大丈夫だよね! 大丈夫じゃない? あの宿のおっちゃんは変態そうだったからな。されるかも。このは清いままでいたい。に細工しておこう。

自分自に設置型の魔法を付與する。

容は、えっと、犯されそうになったら、相手ごとを燃やすようにっと。

うん、これで完璧。死ぬ準備は萬端。

私は小さな機の上にあった、果用のナイフを手に持った。これも、宿のおっちゃんの計はからいなのかな。はよ死ねっていう。なんてキチガイなやつなんだ。

「はは、ははははは」

ナイフを首にれさせる。ひんやりとしたが妙に心地よかった。

「バイバイ、また來世で」

手に力を込めて、私は自分の首を切り裂いた。吹き出すは止まらず、真っ白なベッドや床を赤く汚した。そして、は力なく崩れ落ち、私の世界は闇に包まれた。

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