《私、いらない子ですか。だったら死んでもいいですか。》第十四話~不安定な旅人9~

私は、アンリの顔をそっと覗き込んだ。

最近ヤンな部分をたくさん見ている私としては、アンリがこれぐらいで泣かないだろうと思っている。

だけど、萬が一のこともありそうだよ。だって、この子は一応12歳だし。

本當にそうなのか怪しいと最近思っているけどね。

「くふ、くふふふふふふ」

ハイライトのない目で笑っていらっしゃる!

やばい、何を考えているかまったくわからない。

「こ、これは王族権限で……」

「ハイ、ストップー。アンリ、ここは違う付みたいだね、あははははは」

なんかとんでもないことを言い出しそうだったアンリ。

なので、そっと後ろから羽い締めにして、口を手で押さえた。ペロペロと私の手のひらを舐めてくるんで、すぐさま捨ててやりたいんだけど、そうも言ってられないんだよ。

だって、放すとこのヒゲモジャに何するかわからないし……。

「ヒゲモジャさん。傭兵ギルドで登録したいんですけど、どの付に行けばいいんでしょうか?」

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「ああぁ! クソガキが登録ぅ……。何言ってやが……あ、てめぇは生ゴミの小雪じゃねぇか! 王都の連中は、々と言っているみてぇだが、俺たちはそんなこと言わねぇぜ。なにせ、俺たちは戦うことしかできねえ連中の集まりだ。人の評価は當然、戦果をどれだけあげられたかによって決まる。お前さん、なかなかいい戦果を出してるじゃねぇか。よくやった!」

「はぁ、どうもありがとうございますーーって、いやいや、言ってるよね! 今生ゴミって言ったよね! なによ、俺たちはそんなこと言わねぇって。全然言ってんじゃないの!」

「そりゃ、お前さんの二つ名が『生ゴミ』だから仕方ねぇ」

「納得いかねぇーーーーーーッ!」

え、何? 今まで生ゴミとか汚とかゴキブリとかさんざん言われてきたけど、あれって私の二つ名だったのっ!

いやね、確かに、この世界の人間にとって最も嫌われる卑怯な戦い方をしていた自覚はあるよ?

そっちの方が効率がいいっていうのもわかっていたからね。

だから、変な二つ名を考えられているっていうのは納得できる。

『裏の支配者』だとか、『魔族の回し者』とか、『腐った臭い』……って最後は悪臭王のことだった……。

でも、酷い二つ名ぐらい付けられているんだろうなって覚悟していたさ。

でも、だからと言って……『生ゴミ』が二つ名とかありえねぇだろ!

何をどうしたらそんなのが付くんだよ!

「あの……その二つ名…………取り消したいんですけど、できますか?」

「あぁ? 二つ名を取り消してぇだって? んなこと簡単だよ。死ねばいい」

「はぁ、なるほど……って死ねってッ! なんで!」

「二つ名は人間が決めるもんじゃねぇ。神が決めるもんだ。その人のあり方に適した二つ名を、神様が教會を通して信託を下すんだよ。取り消したかったら、死んで神の元に行って、直接取り消してもらうしかねぇ」

「それ……取り消しても意味ないよね」

「ああ、ないな。だからやめとけ。れろ」

……ちくせう。私は死ねないからどうすることもできない。

てか、神ってシンのことじゃねぇ!

だったら次に會った時に消してもらえば……無理そう。

神って言われたからシンのことを思い出したけど、そもそもこの世界で祀られている神様はシンじゃないよね。

おそらくは、この世界を管理する天使が神として祀られているんだろう。

私はそいつら知らないからどうすることもできない。シンを通して、お願いしても、あいつのことだから笑ってけ流すだろう。

やばい、本當にれるしかなくなった!

「こ……小雪……お姉…………ちゃん……苦しい」

「あ、ごめん、アンリ。大丈夫?」

「げほ……大丈夫なのです。これがなんですね」

「いや絶対に違うから!」

この子、マゾなのかしら?

息をはぁはぁしながら、顔を赤くする姿は、お姫様というより、ど変態?

本當にアンリが道を外しそうでマジ怖い。というか、もう道を外しているというかなんというか。

……何も見なかったことにしよう。

「んで、ヒゲモジャ。どこの付に行ったら登録できるの?」

「お、おぉ、黃がギルド登録の付だ。んで、青が素材の売買の付だな」

「なるほど……って、あのヘドロ、売買なんてできるの?」

「ああ、できるぞ。かなり的確にな」

最近のヘドロはすごい。そういえば、ヘドロって臭いイメージがあるんだけど、ここからでもじられるフローラな香り。

もしかて、あのヘドロ?

悪臭王……てめぇはヘドロに負けている。

「さてアンリ、登録しようか。ヒゲモジャ、ありがとう!」

「おう、さっさと済まして仕事しにこい!」

「はぁはぁ、ゾクゾクしました!」

「……とりあえず黃付!」

アンリを引っ張って、隣の付に進む。

間近で見ると、本當に綺麗なお姉さんだった。耳が長いから……エルフかな?

「お姉さんエルフなんですか?」

アンリ! いきなりぶっ飛んだ質問をして!

「え、違いますよ。私は普通の人間です。ほら」

「「えっ!」」

スポンッといい音を立てて、耳が取れた。取れてしまったのだ。

え、なにあれ?

「これ、ファッションなんです。私を亜人のエロフと思ってとっ捕まえようとした人間に、実は人間なんですと正を明かした後に憲兵に襲われたって言いつけて、襲ったやつが連れ去られる様を見るのが大好きなんですよ!」

「なんかえげつねぇファッションだな、おい! ってかエロフってなんだよ、ちゃんとエルフって言ってあげてぇぇぇぇぇえ」

うわぁ、エロフとか、私の生ゴミレベルでかわいそうなんだけど。もうちょっと優しくしてあげてぇ!

「小雪お姉ちゃん」

アンリが私の服をクイッと引っ張ってきた。こうして見ると、年相応で可い。

「エルフっていうのはね? 犯されるためにオークとかゴブリンに突撃する種族でね、逆にオークやゴブリンから恐れられるほどが強いんのです。昔、の強さから、オークやゴブリンを滅亡寸前に追いやったとか聞いたことがあるのです! だからみんな、エロフって呼んでるのです!」

「アンリの口からそんなこと聞きたくなかったッ!」

もう嫌だ、この子。なんでそんなこと知ってるの? もしかして、これが世界の常識なのか! そんなもの、捨ててしまえ。

「もういいよ。とりあえず登録したいんですけど」

「分かりました。では、初めにこの用紙をご確認ください。當ギルドの注意事項が書かれております」

「はいはい、これはアンリの分ね」

「分かりました!」

よくよく考えると、こんなロリっ子が傭兵ギルドに登録できるなんて、々とおかしくねぇ。

まあ、地球でも年兵とかいた時代もあったわけだし、この世界では割と普通なのかも。

ちゃっちゃと確認して、登録を済ませよう。

えっと、なになに…………はぁ?

用紙の一番上に、みんなのるーるって書いてある。しかもこの文字……日本で考えたらひらがなと同じだよ。

しかも書いている容は、本當に一般的なことばかり。歩いている人を毆っては行けませんとか、道を塞いでは行けませんとか。

え、なに? この世界の傭兵ってみんな馬鹿なの? ウマシカなの?

しかも一番びっくりしたのは、最後に記述してあるこの容だよ!

なに? 數をいくつまで數えられますかって。え、傭兵ってそんなこともできないの!

本當に戦うことしかできないのかよ、おい!

このギルドに登録して大丈夫なのだろうかと本気で心配になってきた。

「と、とりあえず……確認しました。アンリは大丈夫?」

「ハイ、バッチリです!」

私とアンリは用紙を金髪エルフもどきに返す。

なんかこう、ホッとしたような表で、私たちにカードを渡してきた。

なぜにホッとする?

「今回は賢い方々で助かりました。今お渡ししたのはギルドカードになります。

なんかすっごい機能を期待されても何もないですからね」

「いや、そんなことわかってますよ。このギルドで正式に発行されたこのカードが、分証明の役割になればそれでいいですから」

「これ、本當にすごい機能とかないんですか?」

「ちょ、アンリ。今ないって言われたじゃん。何言ってんの!」

「だ、だって……噂がありましたから」

「噂? なにそれ」

「このカードをつかって離れた場所にいても會話ができるって噂です」

え、ギルドカードにそんな便利機能がっ!

って、何私まで信じちゃってんのよ。今さっき何もないよって言われたばかりじゃない。

「え、あ、はい。できますよ」

「そんなことできないですよねーーって、できるんかい!」

あまりに酷いボケをするものだから、つい頭をひっぱたいてしまった。

パチーンといういい音が、傭兵ギルドに響き渡る。

このギルド……どれだけ私をツッコミをれさせれば気が済むんだよ!

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