《私、いらない子ですか。だったら死んでもいいですか。》第二十五話~彷徨う死者9~
さっきから、この者の行が意味不明すぎてイライラしてきた件。
なんで私が怒られているみたいになってんだろう?
あれ? 私、間違ったことしたっけ?
馬車が襲われているから助けに行った。
ゾンビに襲われているみたいだから、代わりに戦ってあげようとした。まあ、あいつらはアンリが倒したけど。
んで、馬車に乗っていただろう死がゾンビ化したので、頭を消し飛ばした。
……うん。何も悪いことしてないね。
なのに私はこいつに刺された。きっと厳しい世の中に當てられて、心が病んでいるに違いない。
所詮人間はそんなものだ。認めたくない奴は徹底的に落とし込む。いらなければ捨てるのが當たり前。
私だって、捨てられたわけだし。
お前はいらない勇者だっ! って。
それと同じなのかな?
「くっそ、絶対に殺してやるうううううう」
「あ、うん。そうだね?」
もう帰っていいですか?
あ、ダメですか。はい、分かりました。
でも、この者を殺してしまうのはな~。
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なんだか、犯罪者にされそうで怖い。
まあ、誰も見ていないんだけどね。でも、一応人間なわけだし? 敵だから殺してもいいかもしれないけど、助けた人を殺すって……一なんですかねぇ。
「くふ、くふふふふふふふふふふふふふふ」
「アンリが怖い顔して笑っていらっしゃる!」
「大丈夫ですよ、小雪お姉ちゃん。私が守ってあげますから」
「え、一何をするつもりなの!」
「くふ、それは……アレですよ」
「アレって何さ!」
アンリ、心の闇を展開中。あの者は制裁したほうがいいな。アンリの教育に悪い。これ以上ヤンデレ化が進んだら、めちゃくちゃ大変なことになるじゃない! 主に私が!
私の考えていることなんか知らず、者は、私を睨みつけながら、「殺してやる、絶対に殺してやるっ」っと、ブツブツつぶやいていた。
その言葉を聞くたびに、額に青筋を浮かべたアンリの表がピクリと震えている気がする。
こりゃ、すごく怒っていらっしゃるようで。
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あの者……死んだな。なんて哀れな。
一応アンリは、この國の王様なわけだし、そんな子を怒らせてもなんの得にもならないでしょうに。
良くて犯罪奴隷、最悪死刑だな。娘大好きな悪臭王に、アンリが頼み込めば、すぐにそれが実行されるだろう。
だから、コイツは死んだんじゃないかなって思った訳だけど、アンリが予想外の行に出た。
「靜まりなさい! 私はエムリア王國の第二王、アンリエッタ・フォン・エムリアです。ここでの狼藉は、萬死に値しますよ」
狼藉、もうしてますがな。ってか、それだけで萬死に値するって、なんか怖い。
私を殺してくれるならいいんだけどね。どうせ死ねないだろうけど。
「ア、アンリエッタ様。どうしてこのような場所に。それに、なぜ汚勇者と一緒にいるのですかっ!」
「これはアレです。アレなのです」
「そうですか、アレですか……」
怒りに満ちた者の表が、しだけ、哀れみの表に変わった。そして、何故か私を睨む瞳が鋭くなった様な気がする。
え、なんで?
「貴様っ! 生ゴミ汚のゴキブリ勇者めっ! アンリエッタ姫様を奴隷にして、引きずり回すなど……貴様はやっぱり殺さないといけない。殺されてしまった***とアンリエッタ様のために、お前を絶対に殺してやるっ!」
「ちょっとまって! なんでそうなるのよ! 私、そんなことしてないから! どちらかというと、付きまとわれているのは私のほうだから! その、犯罪者を見るような目は……慣れているからどうでもいいや」
「な、慣れているだと! おまえ、***を殺したのはなんとなくだったんだな。この快楽殺人鬼!」
「新たな呼び方が生まれたッ! やだ、快楽殺人鬼なんてやだよ!」
え、ひどくねぇ! 私はなんにもしてないっていうのに。
いや、確かにあいつの大切な人を殺したけど。
ん? あれはゾンビ化したからやったのであって、あいつの大切な人を殺したのは私じゃないような……って、絶対に私じゃないよね! 言いがかりがひでぇよ。
一私が何をしたっていうんだよ……。
「だから落ち著けと言っているんです」
「アンリエッタ様! 世界を救う力を持つ勇者に剣を向けるのが法度だとは知っています。だけど、コイツは人類の敵です! だからこそ、コイツはここで始末しなければなりません。どうかご許可を! 私に復讐の機會を!」
おい、ちょっと待て、勇者に剣を向けるのが法度ってなんだそれ?
さっき、この者に剣を向けられたんですけど! てか刺されたんですけど!
それってどうなのですか。法度って一何!
勇者軍時代も、普通に仲間から剣を向けられていたし、後ろから切られたし、同じ勇者に攻撃されたこともあるんだけどね。
これって法度なことだったんだ、知らなかった。
じゃあ、あいつら犯罪者? でもそんな話、誰も言ったことないし、どうなんだこれ。
いや、魔族と戦爭しているいま、勇者に剣を向けるのは法度だというのはわかるよ。うん、なんとなくわかる。
だって、人間は魔族により領土を奪われて疲弊していたんだ。喧嘩を売ったのは人間が先らしいけどね。
だけど、力ではやっぱり勝てなくて、その損害は結構なものだったと思う。だって、奪われた領土とかを、私が取り戻していたんだしね。
勇者は、そんな人間たちが魔族に立ち向かうために召喚した、無駄にすごい力を持っている連中で、いわば最終兵ラストウェポン。そんな奴らに剣を向けること自間違っているわな。
だって、それを失ったら魔族に対抗できなくなるんだから。
私はそんな風に思っていたけどね。実際はどうなんだろう。
「小雪お姉ちゃん」
アンリがこっそり私に話かけてきた。
「エムリア王國に勇者に剣を向けることは法度だということはありませんよ。勇者とはいえ人です。悪いことをすれば裁かれますよ」
……私、勇者が悪いことをしているの、沢山見たことある。レイプ、殺人、ヒャーハーしながらの全疾走。を侍らせてウハウハしているやつだっている。逆もいるがな。男を侍らせて、逆ハーやったっていう、勇者もいたな。私には理解できん。そんなことより死ぬことが重要だからね。死ねないけど。
そんな奴らは裁かれないんだ、そうなんだ。
でも私は攻撃をけたよ、納得できない。
「大丈夫です、私がこの狀況をどうにかしてあげますよ、くふふふふ」
「こ、怖いよ! 何する気!」
「それは……アレに決まっているじゃないですか!」
「ほんと、アレって一なんなのさ!」
私がアンリと話していると、強烈な殺気が向けられた。
ふと者を見ると、剣を構えて今にも襲いかかってきそうだ。あれ、早くどうにかしないと、私の頭とがバイバイしそうな気がする。
それでも死ねない私のは、本當に不思議がいっぱいだ。
「アンリエッタ様! すぐに、すぐにこいつを殺させてくれええええええええ」
うお、復讐の相手が目の前にいて、殺意が抑えられなくなっているようだ。
なにあれ怖い。早く逃げたいな。
いいかな。え、ダメ? そんな……。
「し落ち著きなさい。話が進みませんわ」
「これが落ち著いていられますか! 敵がすぐ近くにいるんですよ!」
「敵って……やっぱり…………」
「そこの汚勇者は、敵の陣地を火で攻めて皆殺しにするような悪ですよ。正々堂々戦わず、卑怯な手段しかできない臆病者。そして私の最の***を殺したやつなんですよ!」
「卑怯? 臆病者? そうですか、そうなんですか。くふ、くふふふふふふ」
不気味に笑うアンリは、を揺らしながら、者に近づいて行く。後ろから見ていると、こう、心が本當に病んでしまった人みたいでかなり怖い。
まあ、本當に神的に大変な人は、発狂したり暴れたりして、もっと大変なんだけどね。
「アンリエッタ様。ご決斷されましたか。なら、命令を。これを殺す命令をください」
「えい!」
「…………ぇ」
今の狀況に私は心底驚いた。
突然吹き荒れる赤い雨。それは者の首から吹き出していた。
ビシャビシャと飛び散り地面を染める。
者の瞳は虛ろになって、そのまま地面に崩れ落ちた。
アンリは、赤に染まった包丁を手に、私に振り向いた。
「くふふ、小雪お姉ちゃんは私が守るんです! あんな録でもないやつは死んで當然なのです」
そういって、にこやかに笑った。
「アンリ! 何をしているのよ!」
「はい? 小雪お姉ちゃんの敵を殺しただけですよ?」
「だけですよってアンタ……」
この子は……一何をしているの!
この者はエムリア王國の國民で、勇者軍の兵士で、アンリが守るべき人たちだ。
それをアンリが殺してしまって言い訳がない。
「この人は! アンリの守るべき人じゃないの! 殺して言い訳ないじゃない!」
「私には……小雪お姉ちゃんがいればそれでいいんです」
「アンリ……何を言ってーー」
「どうせ私はいらない子なんです! 悪臭漂う腐父だって、私の名前すら覚えていない。お姉さまだって、必要なとき以外は私と會話してもくれないんですよ! 國民だってそうだ。私のことはお國の飾り程度しか見ていない。私を助けてくれたのは……小雪お姉ちゃんしかいないんです。だから私は!」
「……はぁ、わかったわよ」
「ーーっ! 小雪お姉ちゃん……うぐ」
私はアンリにきついゲンコツをお見舞いした。アンリは涙目になりながらその場にうずくまってしまう。
「痛いです、小雪お姉ちゃん」
「とりあえず、今回はそれで勘弁してあげる。本當は勘弁しちゃいけない気がするけど」
「うぅ、そんな……嫌わないでください。捨てないでください。小雪お姉ちゃんに捨てられたら私は……」
「大丈夫、捨てやしないよ。それに、私はもっと沢山の人を殺しているからね。でもいい、これだけはしっかり覚えておきなさい。アンリは人を殺しちゃダメ。あなたはエムリア王國の王様なんだから、ね。危ない時は、全て私がやってあげる。大丈夫! 任せなさい!」
あれ? これって人間的にどうなんだろう。人殺しを任せなさいって……々と間違っている様な……。
ま、どうでもいいか。あの者も、アンリがやらなかったら私がやっていたわけだしね。
「うう、はい。分かりました。でも、これだけは嫌です。小雪お姉ちゃんに悪いことする奴は殺します。これだけは絶対なんです! 小雪お姉ちゃんは、私が守る!」
ガッツポーズを決めるアンリ。この子、私が言ったこと、何も伝わっていないようだ。
……もう諦めようかな。いやだめだ。私がアンリを導いてあげるんだ! それが何兆年も生きた年長者の勤め! 言っていて悲しいかな。
「とりあえず、ニートリッヒの……霧の中にろっか」
「はい! 沢山殺しましょうね!」
「快楽殺人鬼にはならないよ! ってか、アンリは殺しちゃダメぇぇえぇぇぇ」
ダメな子ほど可いとは言うが、これはどうなんだろうか。すげぇダメだと思う。
まあでも、これはこれでありかな。なんだかアンリらしいし。
そんなじで、私とアンリは、霧を纏う町、ニートリッヒを目指して歩き出した。
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