《私、いらない子ですか。だったら死んでもいいですか。》第二十九話~異常な景4~
「はぁ、食べた食べた! オムライス、本當に味しかったね」
「ぶぅ、小雪お姉ちゃんがオムライスに夢中で悔しいです。オムライスに嫉妬しました」
いや、食べに嫉妬するなよ。でも、ほっぺを膨らまして、ぷりぷり怒るアンリの姿は、子供らしくて可いな。
……目にハイライトがないのを除けば。
あれはいつ見ても怖すぎ。そろそろヤンデレを出してほしんだけど、ダメかな? ダメなのかな?
「ご飯も食べたことですし、これからどうしますか?」
「うーん、どうしよっか? そろそろいい時間だし、宿でゆっくりするのが一番いい気がするんだけど」
「私もそれに賛します。歩き続けて、ちょっとだけ疲れてしまいました」
「んじゃ、一緒に宿を探そうか」
「二人でイチャイチャできる宿にしましょうね」
「…………襲われる危険がない場所にしようかな」
アンリのイチャイチャ宣言にを震わせつつ、私は町を眺めながら宿を探す。
余りにもあたりをキョロキョロしていると、田舎から都會にやってきた人みたいに思われそう。実際は逆なんだけどね。
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大都會である王都から、田舎町のニートリッヒに來たわけだし。いや、言うほど田舎かな、ここ。そうでもない気がするけど、やっぱり王都民から見たら田舎なんだろうね。
アンリと一緒に宿を探しながら歩いていると、後方から大きな発音と悲鳴が聞こえてきた。
びっくりして振り返ると、あたりには大量のシミができている。おそらくこの町の住人が何人も巻き込まれたに違いない。
そして、発を起こしたでであろう小柄な年が煙の中から飛び出してきた。
年は、疲弊しているのか、フラフラしながら、私たちに向かって走ってくる。
なんでこっちくんだよ。あっちいけ。
ちょっとだけ、そんなことを思ったけど、年の後ろに現れたものを見て気が変わった。
「っち、なんたってこんな場所にゾンビが出るんだよ」
「小雪お姉ちゃん!」
「アンリ、急いで助けるよ」
「うん!」
私は、適當なスキルでゾンビの足止めをしつつ、年の元に向かった。
年は、私に倒れるように寄りかかる。かなり衰弱しているみたい。
ゾクリと後ろから殺気をじたけど、今は気にしている場合じゃない。
にしても、不思議なことに、この年がシミになる気配がじられない。
もしかしてこの子……ニートリッヒの生き殘り?
もうちょっと様子を見よう、そう思ったのだが、大量のゾンビどもが、私たち目掛けてやってくるので、しょうがないから年を背負って離することにした。
あんなにいたら、キリがない。正直めんどくさいし、戦わなくていいんだったらそれに越したことはない。
私はめんどくさがりなのだよ、うはははは。
「小雪お姉ちゃん……その年をどうするつもりですか? 食べるんですか」
「食べないよ! 私はカニバらないからね!」
「いえ、そうではなく……。的に食べるのかなって」
「それこそもっとない! 私をショタコンにしないでぇぇぇぇぇ」
なんでアンリはいつも……。私にショタコンのお姉さんを期待しても無駄だよ。絶対にそんなことな……い…………はずなんだから!
一瞬言いよどんだのは気のせい。きっと気のせい。
私はショタコンじゃない!
そう心の中でびまくりながら、逃げるのをやめてゾンビに八つ當たりした。
◇ ◆ ◇ ◆
あれから一時間ぐらい経過した頃、私たちは一軒の宿の中にいた。
とりあえず駆け込んで見たけど、意外と普通の反応をされた。あと、何故かゾンビがってくる気配がない。
やっぱり、この町とゾンビに何かしらの関連があるんじゃないのかな。そう考えるのが妥當だと思う。
てか、これだけ現狀証拠があればねぇ?
だけど、この現象が起こる原因までは流石にわからない。
やっぱり、この町をもっと調査しないと。
宿屋の將に部屋に案されたあと、私は年をベッドの上に寢かせた。
アンリはまだぷりぷりしているみたいだけど、今起こっている現象について、何か知っているかもしれないしね。
これは私の直だけど、この子はニートリッヒ唯一の生存者だよ。
ベッドに寢かせた年の様子を見ていると、ピクリと年のがいた。
ゆっくりと目が開き、私と目が合った。
その瞬間、年は驚いたように距離をとり、私を威嚇する。背中に生えた真っ黒な翼を広げながら。
っておい、さっきまで翼なんてなかったぞ。しかも、コウモリのような黒い翼を持つ種族は……かなり高位の魔族だぞ! なんたってこんな場所に……。
と、思いつつも、なんとなく心辺があった。
この町を占拠したのは、數鋭部隊の魔族だった。
人間は皆生かされていたのだが、勇者が滅ぼしてしまたんだっけか。
んで、魔族の方が丈夫だったから、ギリギリで生き延びていたけど、霧の影響で出られなくてどうしよう的なじかな?
そんなことを考えていると、くぅ~と可らしい音がなった。
アンリかなと思って視線を向けると、首を橫に振られたので、魔族の年を見ると、顔を赤くしながら、ぷるぷる震えていた。なにあれ可い。
「君、お腹すいたの?」
「う、うるせぇ! そんなんじゃねえよ!」
ムキーっと、威嚇しているようだが、なんだか恥ずかしさを威勢でごまかしているみたいに見える。
うん、この子、マジでやばい。もしかしたら、私はショタコンにされちゃうの! 嫌だもう。
「……小雪お姉ちゃん。何か変な事考えてなかった」
アンリはハイライトのない、瞳孔の開いた瞳で私をじっと見つめてくる。怖!
これ、なんてホラーゲーですか!
「ねぇ、なに考えてるの?」
「べ、別に変なことなんて考えてないよ。えっと、えっと…………あ」
私は思い出したかのように、とある場所から例の実を取り出した。
ちゃっちゃかちゃっちゃっちゃーん、ウマシカの実!
これ、食べるまで何が起こるかわからないんだよね。さっきお腹の音が聞こえたし、とりあえずこれで誤魔化そう。ショタコン云々がバレたら…………私が殺される!
「あ、あの子がお腹空かせているみたいだから、ね」
「…………ホントですか?」
「ホントホント、マジでホントだってば~、わっはっは」
「…………」
アンリの冷たい目が怖いです。誰か助けて。
そう思ったところで、年が聲をかけてきた。
「お、おい。それは……食べか?」
年は私が取り出したウマシカの実を凝視していた。
おもしろ半分に、ウマシカの実を持った手を移させると、年の視線も釣られて移する。ちょっと面白い。
「待て!」
「ッ!!」
私がウマシカの実を近づけながら、年に待ったをかける。
ヨダレをぽたぽたと垂らしながら、じーっとウマシカの実を見つめている姿は、まるで犬のようだ。
私は、そーっと、ウマシカの実を年の口元までもってくる。
年が食べようとしたので、「待て!」と言って、再び靜止させる。
まだかと、視線で訴えながらも、じっと我慢する姿はなんとらしいことか。
ホント、犬だなコイツ。
「食べてよし!」
「はぐぅ!」
年は、私がいいと言った瞬間に、ウマシカの実にかぶりついた。
そして……。
「ぐふぅ」
年は倒れてしまった。と思ったら、再び起き上がって、腕をばして大きなあくびをした。
「ふわぁぁぁぁ、よく寢たー。あれー。ここどこ?」
私とアンリは顔を見合わせて、再び年を見る。
「ねぇ、お姉ちゃん。ここどこー」
どこの小さな子供だコイツ。さっきのしっかりした雰囲気だけどどこか抜けたじが可らしかった年の姿が完全に消えてしまい、生まれ変わった年は、まるで人懐っこい笑みを浮かべる子犬のようだ。
なんでこんなに変わって……あ、なるほど。これがウマシカの実の影響か。児化? でも見た目は変わってないし、神だけくなる的な? でも、この年はアンリと同い年ぐらいでまだい。じゃあ年相応の姿に戻っただけか。なんか解せぬ……。
お、年の食べ殘しがまだ殘っているじゃないか。どれどれ、鑑定さんにお見せなさい。
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【ウマシカの実(食べかけ)】
食べたら馬鹿になる。
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っておい! 馬鹿になるってなんだよ。馬と鹿だけに、バカの実ですか?
ふざけんな!
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