《私、いらない子ですか。だったら死んでもいいですか。》第三十四話~魔が蔓延る町3~

「ううぅ、アンリ~。いったい何を見つけたの」

「それはもう、すっごーいやつですよ」

「いやー、見せないで! 私にそんな趣味はない、ってわけじゃないけど、もうちょっとソフトなのがいいの! あんなガチムチでバコバコやっているようなハードなやつは嫌なの! ショタが、ショタがいい! 可らしい男の子とイケメンお兄さんのイチャラブ展開なやつがいい!」

「……何を言ってるんですか。早くこれを見てください」

私がわたわたと見ないようにしていたら、アンリに冷めた聲でそう言われた。

アンリの様子を見ると、ちょっくら頬を膨らませている。

あれか、褒められると思ったら拒否られたからすねちゃった?

あら、なんて可らしいんでしょう。

でもこれ、刺されるフラグをゲットしてねぇ? こんな行をとりまくると、ヤン化が早まって、最終的に刺されちゃうよ的なあれじゃね?

うわやば、私刺されたくない。絶対に嫌。死なないけどさ、死なないんだけどさ! 痛いんだよ。本當に、本當に痛いんだから!

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「お姉ちゃん~、早く見ようよ。アンリが包丁だして怖い顔しているの! ね~早く~」

クラヌの言葉にハッとして、アンリの方に視線を移すと、塗られたヤバげな包丁をこちらに向けていた。うわぁぁぁ、怖い、怖すぎる……。

返して、さっきの可いアンリを返してよ……ってこんなボケしている場合じゃなかった。

「ご、ごめんね。さっきすごいものをビニール袋の中から発見しちゃってね」

「そうなんですか? 本當にそうなんですか?」

アンリさん、目からハイライトがなくなると怖いんですよ。いやマジで、本気と書いてマジで怖いんですって。

「……ごめんなさい。お願いします。私が悪かったから、その怖い瞳をやめて!」

「ふふ、冗談ですよ」

目が全然笑ってねぇ。

「それよりも見てください、これ!」

アンリが指さした方に視線を移すと、なんと地下に向かう階段があった。

……ってこれ、さっき私が蹴飛ばしたビニール袋のせいでがあいた床あたりじゃねぇ。

え、何? 私、隠し通路的なものを見つけちゃった?

でもこれ、ある意味でラッキーだよな。

こんな腐った床、いつ抜けるかわからないし、間違って隠し通路の上で抜けた日には……死ぬな。私は死なないけど。

んで、この隠し通路の奧には、例の本の貯蔵庫があるわけだ。できれば、イケメンお兄さん×ショタのソフトなイチャラブ作品がいいなー。いや、別に私は腐ってないよ? 世間一般的に好まれる作品がイケメンお兄さん×ショタなわけで……私の趣味じゃないんだからね。

と、心の中で言い訳をしつつ、ドキドキしながら隠し通路を眺めていた。

「小雪お姉ちゃん、なんか怪しくないですか」

「そうね、よく見つけたわ、アンリ。きっとこの奧にはーー」

「今の現象の手がかりがあるんですね!!」

アンリ! なんて純粋な子!

認めたくないが……認めざる終えない。私は腐っていた。だからこの奧には腐った本がたくさんあると……。

悲しいな。長く生きすぎて私は汚れてしまったよ。

「ねえお姉ちゃん。この奧からうねうねしてぼわぼわした嫌なじがするの?」

「いや、なんで首をかしげるの。じるんでしょ。そうなんでしょ!」

「んー、よくわからない。でもね、変なじがするの。なにか良くないものがあるような……気がする? 気がする!」

その喋り方、あの作品のキャラにちょっとだけ似ているからやめてくれ。

まあそれは置いておいて、クラヌの覚はかなり正確な気がする。気がするというのは、最終的な結果を見ていないからなんだけどね。

教會の時もそうだった。クラヌの説明があれすぎて全くよくわからなかったが、実際に教會に行ってみると、ゾンビに襲われた。

私が教會敷地でやってた目玉配りのところに行かなければ、きっと何も起こらなかったんだろう。

それにしても、あのひび割れたような音はなんだったのか、今更だけど、よく考えておけばよかった。まあ、逃げるのに必死すぎて頭が回らなかっただけだけどな!

地下に続く隠し通路から、わずかながら風をじた。もしかしたらここは、外にでるための出口なのかもしれない。

でも、ぼろっちい小屋の中になんで?

いやね、王城! とか、お偉いさんの屋敷! みたいな、明らかに分が高い人が住んでいる豪邸ならわかるよ。

でも、こんなおんぼろ小屋に住んでいる人にとって、出口なんて不要じゃねぇ。てか、下手したら侵者がってくるかも……。

怖! 思っただけでこの恐怖! 明日はチビっちゃうかも……。

まあ、それは置いておいて、もう一つきになることがあった。

それは、風と共に流れ出ている魔力の波

下には大規模な魔法陣でも描かれているのだろうか。古臭いな。

現代の魔法は、世界樹のシステムによって行うのが基本であった。

かくいう私もそのシステムのおかげで魔法を使えている。

じゃあ魔方陣ってなんなの? って聞かれたら、かっこよく見せるためのエフェクトじゃねぇって答えるよ。

だけどたまにあるんだよねー。システム外のバグ魔法って奴が。

世界の真理を探求している奴らが、世界樹システムに干渉して、現象を起こす。それが本の魔法というやつだ。

基本魔法は世界樹システムが自で作り出すものなんだけど、無理やりシステムに干渉する人間がたまにいるんだな、これが。人間様すげぇ。

んで、そういったシステム外魔法、人間の手によって作られたそれは、魔法陣を使った設置魔法が多い。

あまり使えるような魔法じゃないけど、威力は絶大。

過去にあったなー。それが原因で勇者召喚されたんだっけ。

なんかね、人間弾っていう大規模魔法を作った馬鹿がいて、その世界に人間はすべて弾になった。

私が召喚された時には人間滅んでたな……。

いったい誰が召喚したんだよ! って盛大にツッコミをれたけど、どうやら世界樹さんがやったらしい。

あの世界が一番人が死んだかもしれない。いや、絶対死んでたな、あれ。人間いなかったもん。

そんでもって、この奧にも同じような魔法陣がある、気がする。

だって人の気配じないもん。なのに魔力の流れをじるって、それしか理由ないよね? 誰かないって言って!

「お姉ちゃん、どうするの? 進む、落ちる?」

「ちょっとまて、なんだその二択」

「だって、奧に行くんでしょ。だったら普通に進むか落ちるしかないと思って……」

「いやだから落ちるって何さ」

「あの、地下に進む階段を転げ落ちるってことなんじゃないでしょうか」

私がクラヌの言葉に頭を悩ませていると、アンリがそっと教えてくれた。

なるほど、転げ落ちる、だから落ちるね……っておい。それひどくねぇか。

私に死ねって言ってるのと同じじゃねぇ? 同じだよね!

「……落ないよ。普通に進むよ」

「でも大丈夫? お姉ちゃんそそっかしいから落ちるんじゃないかなって……」

それってわざと落ちていないよね。だったら聞くなよ。普通に進むから。

「と、とりあえず行くよ!」

私はやけになって、地下に向かう階段に一歩足を踏みれた。

ズルリ。

ああ、こうなるって分かっていたさ。だって私、ツッコミの人だから。お笑い的な観點で見ると、って転ぶって、アンリかクラヌの擔當だと思うんだけど……。

世界が私にボケを強要……って、ちっがーう。私、勇者、ボケの人でもツッコミの人でもなーい!!

そんなことを思いながら、長い、本當に長い階段を転げ落ちていったとさ。とほほ。

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