《私、いらない子ですか。だったら死んでもいいですか。》第三十九話~魔が蔓延る町8~
それは、どこからともなく流れ出した。
その音は、まるで信號が青に変わった時に流れるような、いやなんか違うような、そんな音。その音にあわせて、神像がリズムよく踴りだす。
正直、アンリにかなり削られているから、気持ち悪いところもあるけれど、楽しそうに微笑む神像はなんともらしいことか。
そして、楽しそうに笑い出す十円ハゲ。
おかしなことを言っているっていうのはわかる。わかるんだがな、マジで笑っているんだなこれが。あの十円ハゲなんなの。怖いわ。マジで怖いわ~。
なんか頭の皮っぽい部分が人の顔の形になって笑ってんの。
んで、激しいタップダンスに変わった神像が、そのまま數十分踴り続けて……最終的に階段になった。
いいか、私は見たままの事した言ってないぞ。だけど、それでもわかる。
なんでこんなおかしな狀況になってるのっ!
あれか、私がボタンを押したからいけねぇっていうのかよ。ふざけんなっ! 私、何も悪いことしておりません……。
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「わぁ、階段ができましたね。どこに続いているのでしょうか」
「わっふー。地獄に続いてるぜぇ」
「クラヌ、よく聞いて。この世界には小雪お姉ちゃんという素晴らしい方がいらっしゃるのです。小雪お姉ちゃんがいる限り、そこは地獄ではなく天國に変わるのです。一般常識ですよ」
……私はアンリの中では神様扱いかっ! なんかやべぇ。々とやべぇ。口では言い表せないぐらいにすごくやべぇ。
そして、この階段。怪しさが半端ない。絶対に何かあるよな。
だって、クラヌが言っているような禍々し雰囲気がビリビリとじる。
これはあれだな。ゲームでいうボス戦の前ってじか?
RPGとかだと、ダンジョンの奧に進むと、ボスの部屋っぽいところが必ずある。それは大きな扉だったりワープホールだったり、地下に進む階段だったりする。
今回は地下に進むパターン。これは先の展開が見えてきたな。
だって、地下に進むパターンのボスって、ドラゴンかアンデットかロボットだもん。あとは盜賊ぐらいか? でもこんなところに盜賊なんていねぇだろう。盜賊は除外。
んで、ドラゴンなら窟、ロボットも窟。ロボットって言っても、ゲームに出てくるやつだと、古代の産とかそんなじだよな。
んで、アンデットが出てくるパターンは、古びた教會とかそんなじの場所にいる。
ほら見えた。このあとの展開。ぜってぇーアンデット系のボスがいるんだぜぇ。
でも、なんでこんな場所にアンデットがいるんだろう。
ここはクラヌ率いる魔族の數鋭部隊によって選挙され、勇者によって滅ぼされたかわいそうな町。
勇者が滅ぼすまで、ゾンビがどうたらこうたらと言う話は一切なかった。
じゃあ、今いるであろうボスゾンビはどこから流れてきた?
うむ、不思議だ。
「小雪お姉ちゃん。あの階段からすごく嫌な気配をじます。行きますか? 行っちゃいますか?」
「ねぇアンリ。なんでそんなに楽しそうなの? クラヌじゃないんだからさー」
「えー僕はそんなんじゃないよ」
「クラヌじゃないんだからさー」
「もうっ! お姉ちゃんのバカっ!」
クラヌがぷりぷり怒るが私の知ったことじゃない。クラヌより、今はアンリの方が……。
クラヌを避けてアンリを見ると……にんまりと笑っていた。
その笑顔が怖い。
「小雪お姉ちゃん。あの階段の下に行くのですか?」
「そ、そりゃ行くけど……、何か怖いよ。その笑顔っ!」
「くふふ、小雪お姉ちゃん。私はわかるのです。あの先から男の気配をじるのです。あれですか。會ですか? 私に緒で誰と付き合っているのですかっ!」
「それの方が誤解だよっ!」
この子は何を言っちゃってるのっ! てか、なんでこの先に男がいるのがわかるのさ。
クラヌといいアンリといい、第六レベルの直がやばいよっ!
いや、第六というわけじゃなく、何かの特殊な能力なのか? 私だってスキルとかいろいろ持っているわけだし……。
そんなことはさておいて、今重要なのは、この先に何がいるかってこと。それは行ってみてからのお楽しみというわけなんだけど。アンデット系なのは確定なんだけどな。
それに加えてすっげぇー嫌な予がする。
この先にいるのが男かどうかはわからないけど、すごい悪意的な何かをビシビシとじることができる。
もしかしたら、相當な恨みを持つ何かがいるのかもしれない。
これはちょっと厄介だな。
誰に恨みを持っているのかまではわからないけど、これほど強烈なものなんだ。
もしかしたら、勇者が恨まれているのかもしれない。
だってこの町は、勇者によって滅ぼされたようなものなんだから。
おかしいことを言っているのはわかっているけどこれは事実。
始まりはクラヌが率いる數鋭部隊による襲撃だったけど、町を壊滅させたのは勇者だ。
あれ、私が行っちゃいけない奴じゃないか?
だって、私は元勇者だ。聖剣を折っちゃったから勇者ではなくなっているけど、勇者であったことに変わりはない。
と、いうことはだよ? 私が行ったらかなり大変なことになるじゃん。うわぁやだー。いきたくなーい。
「…………クラヌ、アンリ。帰ろうか」
「はいっ! それがいいと思います」
アンリさんが満面の笑顔を浮かべた。それほどまでに進んでほしくなかったのか。
逆に何があるのか気になるところ。だけど、厄介ごとに巻き込まれたくない。
困った人がいたならば救ってあげるのは私の信條だけど、ここにいるのは困っている人というより、恨みに恨みまくっているゾンビがいるだけだろうしな。うーん、帰ろ……。
そう思って、方向転換しようと思ったが、またしてもクラヌが奇行に走った。
「聲が…………聞こえる。行かなきゃ。絶対に行かなきゃっ!」
そう言って、クラヌが走り去っていった。
ちょっ! いきなりどこに行くのさっ!
私はクラヌを追いかける。
「な、なんでそっちに行くんですかーっ!」
「だ、だって、クラヌが!」
アンリはすごく嫌な顔をして止めようとした。だけどクラヌだって仲間だし、ウマシカの実を食べさせた責任だってある。
だって、あれを食べさせてあそこまで馬鹿になると思わなかったし?
あのまま野に放ったら、きっとどこかで野垂れ死ぬ。それだけは許せない。私の信條に違反してしまう。
だから私はクラヌを追いかける選択肢をとった。
一つ、よかったことといえば、アンリが私を見捨てずについてきてくれたことだ。
「わ、私も行きますから置いていかないでくださいっ!」
手には人切り包丁を持っていたけどさ。なんか包丁を持っているヤンデレ子に追っかけられている気分になって怖い。マジ怖い。だけどそれよりも、クラヌをどうにかするほうが先なんだ。
だからね、本當にね。勝手にどこか行かないでよっ!
そんなことを心の中でびながら、私は地下に降りて行った。
階段は緩やかな下りだったが、非常に長い。階段の奧が真っ暗で、どこまで先があるのかわからない。そんな中でかろうじで視認できるクラヌを必死で追いかけた。
ちょっとばかしペースが速かったのか、アンリは息を荒げているが、何とかついてきてくれている。
「アンリ、大丈夫?」
「は、はいぃぃぃぃぃぃ、大丈夫でしゅぅぅぅぅぅぅ」
「うん、大丈夫じゃないな、これ」
私は勇者ステータスがあるから全然大丈夫なんだけど、アンリはお姫様だったわけだし、力がないのは當たり前。あれ、クラヌもお姫様なんじゃねぇ。なのに力がやばい……。お姫様とはいったい。
あらら、いつものように思考がそれた。
それよりクラヌ。集中しろ、私っ!
と、気合をれたのもつかの間、階段の終わりに到達した。
たどり著いた先は、しばかし大きな部屋だった。中央には大きな魔法陣が描かれており、その中央には臺座のようなものが置かれている。
クラヌは魔法陣の外に立ち、中央をぼーっと眺めていた。
私がクラヌに聲をかけようとしたとき、私とは別の聲が部屋全に響き渡る。
「ああ、ようやく完した……」
その聲の主は、魔法陣の中央に置かれた臺座の前に佇む、一人の男の聲だった。
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