《私、いらない子ですか。だったら死んでもいいですか。》第四十一話~嘆きの亡霊2~

と、思ったら、勇者を呼んだゾンビからアクションがあった。

「…………くく、勇者の屑っぷりを見せつけて、こいつらを無殘に殺してやろうと思っていたが、まさか來客が元勇者だったとは、これはこれは……」

「まぁ、それはどうも」

條件的にお辭儀をしてしまった。けど何だろう、すごい慈悲のこもった瞳で見つめられた。

「辭めさせられたということは、小雪様ですか。今更ですが、あなたが一番まともな勇者だったと思います」

なんかゾンビに褒められたんだけど。これは喜んでいいのだろうか。というか、今の口ぶりだと、このゾンビは勇者の関係者なんじゃないだろうか。

私がゾンビと話していると、やっとゾンビさんの存在に気が付いた屑どもがすげぇことを口走った。

「て、てめぇは! リグレットじゃねぇか。生きていたのか。これで戦いが楽になるぜぇ」

「リグレット。お前の彼のヘレンはどうした? お前が生きているってことはあいつも生きているんだろ。あいつはかなり締まりがよかったからな。ほら、さっさと出せ…………いや、なんか様子が。お前はいったい…………」

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「くく、かははははは、久しぶりだな、ごみ屑ども。お前らを殺すために地獄から舞い戻ってきたぞ」

ゾンビ男のリグレットの言葉を聞いて、私はポンッと手をたたいた。ようやく狀況を理解できたさ。

この勇者がニートリッヒ奪還を名目に滅ぼしてくれちゃった屑勇者。そしてリグレットというゾンビは、この二人に殺されたお供ってところか。

じゃあ、あの臺座で橫たわっている死はリグレットの彼さんであるヘレン嬢か。

あれ、私はお邪魔蟲じゃない? 撤退していいかしら。

「アンリ、その人切包丁をしまってクラヌと一緒に私の後ろに隠れてなさい。これから見ても不愉快にしかならないドロドロの復讐劇が始まるから」

「でも小雪お姉ちゃん。あいつらは小雪お姉ちゃんに無禮を働きました。これは死罪に値します。さっさと殺さないと。あんな勇者……いらない」

おいおい、一國のお姫様が勇者に対してそんなこと言っていいのか?

まあ、あの屑っぷりを見たら、そう言ってもいいのかもしれない。だっていきなりご奉仕しろとかげとか、気持ち悪い……。

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私自、あれは世界の害悪になるから処分したいところ。だけどそれはリグレットというゾンビさんがやってくれる。

元々世界の平和のために勇者とともに戦うことを決意してくれていた人だ。復讐をし遂げた後は平和に暮らしてくれることだろう。

「アンリ、これからあの屑が制裁をけるから。アンリは何もしなくても大丈夫」

「ほんとですかっ! うれしいです!」

勇者が制裁されそうになって喜ぶお姫様とはいったい……。まあいいや。あれは屑だし。

私がアンリとついでにクラヌに言い聞かせていると、屑勇者が突っかかってきた。

「おい、お前っ! さっさとげっつってんだろ。お前はたいして強くない勇者だったんだ。俺たちにかなうと思っているのか?」

「そうさ、俺たちは勇者なんだ。お前みたいな元勇者なんて簡単に殺せちまう。ほら、死にたくなかったら言うことを聞けよ」

「いや、あの……私はあんたらより強いんだけど」

そういっても、相手は聞く耳を持ってくれない。ことあることに、げだとかなんだとか言ってくる。というか、さりげなく神に異常をきたすような魔法を使ってません?

さっきっからイライラが半端ないんですけどっ!

いや、これは違うな。きっとあれだ。むかつく勇者を目の前にしているからいけないんだ。

「さて、俺を無視しないでいただこうか。世界に害をなす勇者に裁きを」

私と屑勇者どもの會話に橫からり、リグレットは真っ赤に染まった石を天に掲げた。

すると、魔力の流れが激しくなり、地下空間を振させた。

……これは、はっきり言ってかなりまずい。

私はアンリとクラヌを守ることに集中する。

目の前で屑ふたりが「うわぁぁ」だとか「ぐぇええ」といったび聲をあげているが、知ったことか。

「貴様らは今まで俺たちに何をしてきた。最後に何をした? お前らは本當に勇者か?」

「っぐ、何を言っている、リグレット。俺たちは勇者だ。魔族を倒すために召喚されたんだっ!」

「違う、違う違う違うっ! 勇者とは世界を平和に導くために、強大な敵に立ち向かう勇気ある者たちの総稱だ。貴様らのような、仲間を仲間とも思えぬようなごみ屑どもが、勇者であるはずがないっ! ここで死ね、偽ども!」

リグレットは、赤い石を掲げながら、何やらぶつぶつとつぶやきだした。

あ、あれはまずい奴だ。極大魔法というかなんというか、かなり威力の高い魔法っぽい。

でも、私ならなんとかできる。クラヌとアンリは守って見せるさ!

え、勇者。あれは犯罪者でしょ? そんなの知らない。

案の定、ヤバさをじ取った屑どもは回避行をとろうとする。

そんなんじゃ無理だろう。回避なんてできる攻撃じゃない、防、防ーーーー。

屑どもは防なんて知らんとばかりにいて回避しようとするが、場所が悪すぎた。

地下空間はそんなに広くないため、回避なんてできるはずがなくーー

「「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ」」

屑どもは地面を転げまわった。裝備していた素晴らしく高そうな裝備たちはボロボロになり、みどろなじになっていく。罰が當たったに違いない。日頃の行いが悪いからだ、ざまぁー。

でもね、屑勇者をざまぁーと言っちゃっている自分が黒いとじると、なんか切ない。

「うぅ、いてぇ、いてぇよ~」

「なんで俺たちがこんなことに。俺たちは最強である勇者だろ、畜生」

「はは、あははっ! そうだ、その顔が見たかった。俺たちにさんざんなことをして、最終的に殺しやがった。守るべき人たちに手を挙げて、何が勇者かっ!」

憤りをじられるほどの気迫。それほどまでにリグレットが屑勇者を恨んでいるのだろうと実できる。そして、アンリとクラヌはというと……。

「いいですよ、やっちまぇですっ! 小雪お姉ちゃんを侮辱した罪、死をもって償えです」

「やっふー、復讐は最高だぜぇ!」

アンリはいつも通りヤンヤンしているけど、その意見は同意。そしてクラヌ。お前は何言っちゃってんのっ! さっきまでの辭めてとかその人はんでない的なあれはどうしたのさっ!

あと、『小學生は最高だ』的なノリで復讐を肯定するのもやめてよ。あの素晴らしい作品を侮辱しているみたいでなんかいやー。

ちなみに、私は読んだことありません……。

バスケのほうは全く読んでなかったから知らんけど、バンドのほうはコミカライズ版読んでたから、そのフレーズの良さは知っている。

ほんと、あの作品を読んで思ったよ。小學生は最高だ。ところで、クラヌとアンリって、年齢的に小學生じゃねぇ。うっはー、最高だぜぇ。

そんなバカをやっている間に、屑勇者はリグレットにやられまくっていた。

あんなのが勇者で大丈夫なの? と疑問に思えるほどボロボロにやられている。

気が付けば、回避するのも防するのもあきらめてしまったのか、それとももう限界が來たのか、ただやられるだけの人形になり果てた。

ああなってくるとちょっとかわいそう。

そしてリグレットさん。あなたの悪役っぷりにはほれぼれするわ。生前はもっと立派な人だっただろうに、復讐にとらわれると人はここまで変わるのね。

屑勇者たちがぼろ雑巾になっていくのを眺めていると、屑どもからまさかのことを言われてしまった。

「ごみ屑……助けてくれ。お願いだ……同じ、仲間だろ?」

「いてぇよ、手が……足がぁぁぁ、小雪ぃぃぃぃ、お願いだよ、いてぇんだよ。助けてくれよ? 仲間だろ?」

お願いだ、そんな懇願した目でそんな言葉を言わないでくれ。

私の信條は困っている人を助けること。それが悪事でない限り、どんな屑でも救ってあげたい。

今は屑でも、もしかしたら未來では違うかもしれない。そんな希があるから。

だけど、今目の前に起きていることは、屑どもが制裁をけているだけ。だから守るのは違うんだと思う。

だけど、助けを求められると、自然といてしまった。

だって、この先の未來ではどうなるかなんて、誰にも分らないんだから。

「小雪様……。あなたはその屑を守るのですね?」

「だって、助けを求めたから。どんな屑でも、助けを求める程の窮地に立ちった経験をすれば、もしかしたら変わってくれるかもしれないでしょう。だから私は助けるの。それが私の信條だから」

ちなみに、アンリとクラヌの安全はちゃんと確保しているよ。

人間ってそんなすぐに変わらないし、屑どもが反省せずにアンリとクラヌを襲う可能もあるしね。

しかし、反的に守ってしまったが、この後どうしよう。ボス戦に突か?

「くく、もしかしたら変わるかもしれない……。あなたはまっすぐで素敵な馬鹿ですね」

「っむ、なんか馬鹿にされた、でもちょっとうれしい」

「だがしかし、これは斷言できる。そいつらは変わることなどないのだ」

リグレットが殺意のこもった目でこちらをにらみつけてくると、私の後ろにいる屑勇者が「「ひぃぃぃ」」とけない聲を上げた。

お前ら勇者だろう? もうちょっと自分でどうにかしようぜぇ。

「あなたの考えは素晴らしいかもしれないが、それはそいつらのことを知らないから言えるのだ。そいつらはいつまでたっても屑のまま。だからこそ世界に害をなす害獣に他ならない。そいつらが、本當の勇者なら、俺も……ヘレンも………………あんな死に方をすることはなかったっ!」

「うぅ…………でも……」

どうしよう、反論できない。

「だからお見せしましょう、あなたは……これを見て同じことが言えますか?」

リグレットの手に持っている赤い石が輝き、私に向かって魔法が放たれた。

ふ、並大抵の魔法は私には効かない。だって、魔法防力がいかがわしい表示しかできないほど高いから。

なんか怪しげなっぽい何かが向かってくるけど、高いステータスをもっている私に魔法は効かないよ。

その慢心が、致命的なミスとなる。

「あ……ぁぁ…………」

放たれた魔法は神に作用する魔法だった。

神のステータスは表示できないほどひどい。食らったらひとたまりもないだろう。

ここからどうにかできないかと思いつつも、が全くいてくれない。

私はそのまま魔法に飲み込まれていき、すべてが黒く染まった。

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