《私、いらない子ですか。だったら死んでもいいですか。》第四十五話~嘆きの亡霊6~

◇ ◆リグレット◇ ◆

突然、小雪様から魔力があふれ出てきた。それだけではない。魔力と共に世界を憎悪して言うかのような黒い何かもじ取れる。

まるで破滅を人の形に押しとどめたような、そんな不気味さがじられる。

「はは、はははは、あはははははははっはははは」

狂ったように笑いだす、壊れた人形のように笑いだす。まるで悪魔のごとし彼はゆらりと屑どもに向き直る。

「お、おい……どうしたんだよ」

「俺たちを守ってくれるんじゃねえのかよ……」

ガタガタと震えて助けを求める屑どもに、小雪様はどこからともなく取り出した剣を振りかぶった。

しぶきが上がり、屑共がび聲をあげた。

「いだ、や……げふぅ…………」

「あああああああああああああ、足が、俺の足がああああああああああああああ」

「……………あはっ」

にんまりとした笑みを浮かべて、小雪様はただただ勇者を痛めつける。

この景は、俺がんだはずの景だった。

あの屑どもにすべてを弄ばれて、最を汚されて、こんな人生は俺の人生じゃないと何度も運命を呪った。

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ずっと、ずっと一緒にいるはずだったヘレンの笑顔はもう二度と見れない。

生きながらにして死んでいる、魔となった俺にこの世界で生きていく場所なんてないだろう。

だったら、最後の最後にすべての原因に一矢報いてやろう、そう思っただけだったのに。

目の前で起こっていることは思っていたことと全然違った。

アレは何も考えず、本能に従って壊し続けているだけだ。復讐でも何でもない。そこに正義があるわけでもない。

勇者は泣きながらに抵抗する。お得意の重力魔法、強制魔力暴走、折れた剣での必死の抵抗、それらすべてが無駄に終わる。

いくら傷つけられようが瞬時に回復して襲ってくるその姿はまさに不死の化け

「はは、あはははははははははははっ」

「ごふぅ…………なんで、なんで死なねぇんだよ」

「もう殺して………………は、はやく……ごろ……じ…………てぇ」

を切られようが、を貫かれようが、四肢を切り落とされようが、勇者どもは死ななかった。

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あれは俺が作った魔法陣によるものだ。

傷つけられても回復するため、長い時間かけて痛めつけることができる陣を組み込んでいた。

勇者が苦しんで、懺悔したくなるような気持になれば、俺もヘレンもしは救われるかなと思った。

だけど結果は死という逃げ道を封じる代になっていた。

あれは……あまりにも可哀そうだ。

そう思った時、俺は自分自の狂気からしているのだとじた。

「俺は…………なんてことをしようとしていたんだ」

ずっと見てきたのは平和な未來。きっと魔族との戦爭が終わればそれは訪れるだろう。

その景を見るために、ずっと努力してきたのではなかったのか。

勇者のお供をやってから殺されるまでさんざんな出來事があった。それでも、自分の目指した道を曲げずに進んでいこうとずっと思ってきた。

そうすれば、きっとんだ未來に進めると信じて。

きっかけはヘレンの死だったのだろう。今でもその事実を思い返すだけで怒りが沸々とわいてくる。

この怒りの気持ちは間違ってはいないと思う。誰だって大切な人が殺されたら怒り、悲しむものだ。

俺が間違っていたのは、きっと自分の信條を曲げてしまったこと。

復讐にとらわれて、本來目指していたものが見えなくなっていた。

そう思ったとき、ふと聲が聞こえてきた。

『あなたはあなたの信じた道を行って』

「…………ああ、そうだよな。俺が間違っていたよ、ヘレン」

俺が目指すは誰もが笑っていられる平和な世界だ。

飢えることもなく、犯罪を犯すこともなく、皆で笑って毎日を過ごせる世界を目指したい。

勇者は死んだ。魔法陣ごと破壊された。頭は潰れ、どれほどの恐怖をじていたのかわからない。

が暴走した原因は俺にもあるだろう。

「あははははははははははははっは」」

は笑っている。殺しながら、壊しながら、笑い続けている。

だけど頬のあたりをツーっと涙が伝う。

狂気に捕らわれた俺と同じような雰囲気をしだけじ取れた。

この原因は俺にあるかもしれないんだ。

だったら俺が止めなければならない。

一回亡くなった命だ。前は理想をかなえられずに死んでしまった。

なら今度は、偶然にも手にれたこの命を、今度こそ理想を、己の正義を貫き通すために使わないといけないんだっ。

暴走した小雪様は、次なる獲を探して、すぐに見つける。

「ひぃ、お姉ちゃんが怖い顔してる。え、エロいっ」

「何言っているのクラヌ。小雪お姉ちゃんのかっこいい姿が見えないの。きゃー、かっこいいですよ、小雪お姉ちゃんっ! いや、今度こそお姉さまと呼ばせてー」

…………シリアスな展開がぶち壊しだ。

俺の覚悟を返せっ!

場違いすぎる二人に若干あきれてしまった。そのせいで、しだけ出遅れた。

小雪お姉ちゃん…………小雪様はみどろになった屑勇者の折れた剣を拾い、それを持って二人に襲い掛かった。

俺は魔になった時に手にれた能力をフル活用して、らを助けに向かう。

剣を橫に薙ごうとしたタイミングで、うまく間にり込むことができた。

俺は自分の背中を盾にしてたちを守ろうとする。

「ーーーーーーーっ」

「はは? ぇ? ん? っくく、あはははっはははははは」

一瞬、小雪様の戸った聲が聞こえたが、すぐに笑い出した。どうやら自分の意識がはっきりしていないようだ。

になったことで、ある程度の再生能力はついている。なんたって俺はアンデット系の魔なんだ。

だいぶ深く切られてしまったが、これでやられることはない。

そう思ったとき、當たりから強い痛みが走った。まるで何かに刺されたかのようだ。

いったい何が……。そう思ってのあたりに視線を向けると、禍々しい包丁がに刺さっていた。

な、なんでっ!

「くふ、くふふふふふ、小雪お姉ちゃんに群がる男は排除ですよ」

「こ、この子っ! 病んでれーら!」

「あ、また後ろから攻撃來るよ?」

「クラヌ、今はそれどころじゃありません。この男をどうにかしないといけないのです」

「えー、それよりお姉ちゃん止めなくていいの?」

「大丈夫です、私のがあれば小雪お姉ちゃんに伝わるのです。きっと小雪お姉ちゃんはこの男を殺せと言っているのでしょう。なんたって、私たちはし合っているのですからっ。さぁ殺しましょう。男なんていらないのです」

「君っ もうちょっと周りを見ようよっ。今すごく大変な時なんだから、ヤンデレしないでっ!」

っく、まさかたちがトラブルメーカーのギャグ要因だったなんて。

さっきまでいろいろと難しいことを考えていたのがばかみたいに思えてきた。

くすっと笑えるこのじに、ちょっとだけ心が救われた気がする。

が、今はそれどころじゃない。

ん? なんか攻撃がやんだ気がする。

後ろを振り返ると、口元を抑えて小雪様が笑っていた。

あんた…………暴走しているんじゃないのっ!

もしかして、落ち著いてきたの、そうなのか?

一瞬そう思ったが、どうやら違ったみたいだ。

小雪様は、いきなり表がストンと抜け落ちて、濁った眼で俺……というより俺の後ろにいるたちを睨みつけていた。

っく、まだ暴走中か。一どうすれば……。

そう思った瞬間、俺の手にある赤い石が力を與えてくれた。

この石は、霧の魔法陣を作った人間がトチ狂った思考の元に作られた賢者の石。

膨大な魔力を大気から貯蔵することができる魔法使いならから手がびる程しい逸品だ。

ニートリッヒでは至る所に転がっている。

その賢者の石にためられた魔力によって、俺は新たなスキルに目覚めることができたようだ。

その力の名は鑑定。ありとあらゆるものを鑑定してくれる。

……今それいるか?

俺は、首を振って自分の考えを否定する。

もしかしたら、この狀況をどうにかできるものを見つけられるかもしれない。

この狀況を打破する何かを持っていないのだ。

こうなったらこの力に賭けるしかない。

「か、鑑定っ!」

香ばしいポーズをとって鑑定スキルを使った。

か、が自然にいただとっ! って、なんでネタに走るんだよ。

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【アンリエッタ・フォン・エムリア】

種族:ヤンデレーラ

別:別は関係ない

力:は最強無敵のバーサーカー

魔力:に限界はない

攻撃力:エクストリーム

力:する人以外に貫けるものはいない

魔攻力:心を抜くの狩人

魔防力:鉄壁の構え

素早さ:ストーキング能力は最高だぜぇ

神:一途な想いは絶対無敵

魅力:

運:表示できません(エロすぎて)

【魔法】

『治癒魔法:極み』

『水魔法:極み』

『ストーキング魔法:匠』

『炎魔法:素人』

【スキル】

『キューピットハート』

と嫉妬の心』

の救済』

【狀態】

する乙

『一途な心』

『病んでる心』

【稱號】

『同した乙

『エムリア王國第二王

『希を與えし者』

の忠実な下僕』

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ツッコミどころが多いな、この。ってかこの國の第二王かよっ!

ってまて、一つ気になるスキルを持っている。

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の救済』

するものがどんな狀況であれ救済することができる神様のようなを持つものに與えられるスキル。

嫌いするシンの悪意により、熱いキスをわさないとスキルの効果が発揮しない。

っけ、リア充は発しやがれっ。

は許す。鑑定様が許しちゃうっ!

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俺はつかさずの襟首をつかんで小雪様に投げつけた。

この際第二王だとかそんなことはどうでもいい。

きっと、ヘレンが見ていたら怒られるんだろうな。でも、俺の力だけじゃこの狀況をどうにもできないんだ。俺は、平和な未來を目指したい。だからちょっとだけ協力してくれ、第二王っ!

そう心の中で言い訳をしたわけだが……。

「うっひゃああああああああああああああああああああああああああああああああ、小雪お姉さまの顔が近くに~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

投げられたから嬉しそうな悲鳴が聞こえてきた。

あいつ、なんか楽しそうだな。

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