霊使いと冠位の10人》夜空の戦い

セントラルビルのり口付近まで走って移し、れる場所がないかリーシャと二手に分かれて探してみたが、やはりどこもかしこも鍵がかかっていて開いていない。

「どうしましょうか。壊してるわけにもいきませんし」

「仕方ない、リーシャ悪いけど擔がせてもらうっスよ」

「はい?」

リーシャは訳が分からずといった様子で可く首をかしげたのだった。

「きゃあああああああ」

「ははっ意外といけるもんだな!」

リーシャを肩に擔ぎ、ビルの壁をものすごい勢いでで登る。

ただの力技で登っているわけではなくリーシャの魔力放出を推進力にして登っていくため、フリーランニングのように軽々と登っていく。

「よっと、到著っス!」

 「こ、康太様!早く下ろしてください!」

「ああ、悪い悪い」

「その、重くありませんでしたか?」

「いんや、思ってたよりも軽かった。それよりも・・・」

辺りを見渡す。

先程のリーシャの話では人が一人いると言うことだった。

すると自分たちとは反対側の端に人がいることに気がついた。

よく目を凝らすとあわや落ちるかどうかのギリギリの場所に金の髪をした男が街を眺めていた。ビルの出り口は封鎖されているにもかかわらず、こんな場所に人がいるというだけで十分怪しい。金髪の男は街を見下ろすように眺めていたが、俺ととリーシャに気づいて顔だけをこちらに向けた。

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金髪の男と視線が合い、數秒の沈黙が流れた。

まず間違いなくこの男は魔師と康太は直した。

魔力の気配は全くしないが、戦い慣れた者がもつ特有の雰囲気のようなものが、この男からじ取れたのだ。

師の力量を図る上で魔力の所持量というのは重要なファクターの一つだ。

ただ一概に魔力の大きさだけが強さに直結するわけではない。

人間は自分が無意識に魔力を放っている。

そしてその無意識に放つ魔力は、魔師同士の戦いにおいて自分の位置を魔師に知らせてしまうというデメリットがあるのだ。

しかし、魔師としての技能が上がるにつれてその魔力の放出を抑えることができる。

この金髪の男から魔力の気配が全くしない

にらみ合ったままの膠著が続く。

だが、そんな膠著狀態などなかったかのように、金髪の男はまるで友人に語りかけるような気楽な聲音で康太たちに問いかけた。

「こんな夜中に、ガキンチョ共がこんなとこいちゃあいけないだろ。ととっとと帰んな」

男はあっち行けと言わんばかりに手を振った。

しかし、康太達もはいそうですかと言ってここを去るわけにはいかない。

康太は駄目元でも一応一つ聞いておこうと思った。

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「あんた、こんな所で何してるんスか?」

「ん?だ。仕事なんでなーこれでも」

 金髪の男はあーと頭を掻きながら、街の方を見ながら行った。

「けどもういいかなー。俺の方は外れっぽいし」

男は飽きたかのように欠をし、そういえばといったようなじで質問を投げかけてきた。

「さっき、下でなんかやってたのってお前らか」

恐らくタワーに登るためにリーシャが放っていた魔力放出の事を言っているのだろう。

「多分そうかも」

「あんま目立つ事してくれんなよ。だいたいこういう時って面倒事が起こるし」

怒ったフリをしたように男が軽く注意をする。

「目立つとまずい事でもしてるんスか?」

「言ったろ?の仕事なんだ。んじゃ俺帰るから、ガキンチョどもも早くお家に帰れよ」

このままではこの男が本當に帰りかねない。

そうじた康太は賭けに出た。

「探し、見つかったか?」

すると男が目を見開きこちらを見た。

ビンゴか?と康太が思った矢先、 その時、男から微かながらに魔力が溢れ出したのがわかった。

「ちょっと今暇なんだよね。暇つぶしに付き合ってくんね」

何をするつもりかはわからないが、今まで隠していた魔力を放つ理由は大抵想像がつく。

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「リーシャ!!」

とっさにぶ。

 二人は同時にいた。

リーシャは詠唱を始め、康太は金髪に踏み込みながら、元を狙い右の拳を突き出す。

しかしその拳は金髪の男の元に屆くことはなかった。

まるで見切っていたこのように、金髪の男が首にしていたペンダントが黒い炎と共に槍になったのだ。

その槍は赤黒いをしており、長さは5、6m近くある。

「おいおい、俺が一般人だったらどうする気だよ」

「バカ言わないでほしいっスね。こんな殺意に満ちた一般人が居てたまるか」

「確かに、ちげえねえわ」

挑発するかのようににやけながら男は言った。

康太は宙へと飛び上がる。

男は康太に気をとられ、康太の背後から現れた巨大な炎の弾丸に反応が遅れた。

「うおっまじか!?」

男は炎の弾丸の中に飲み込まれた。

距離を取るためにリーシャの近くまで下がった。

「どうっスかリーシャ?」

「癪ですがあまり手応えがありませんでしたね」

リーシャは悔しそうに自分の放った炎を見つめ、同時に、その炎の中から人影が現れた。

男は左手を上から下に振り下ろし、業火をあたかもなく消し去った。

「思ってたよりダメージなさそうっスね」

「お嬢ちゃんも炎の屬か。びっくりしたわ!」

怒鳴った後、急に冷靜になり男は二人を観察するように見た。

康太は金髪の男に考える暇を與えないために、すぐさま攻撃に移った。

深く沈み込んだ勢から飛び出すように男に毆りかかる。

それに応えるかのように男は持っている槍で康太の拳を捌いていく。

互いに繰り出す攻防の速度は、常人離れしている。

一瞬の遅れが命取りになり得る戦いだ。

しかし武持ちに対して拳では間合いをとられてしまえば為すすべを無くしてしまう。

それもあり、超至近距離での攻防が続いていたのだが、金髪の男が短い詠唱を唱えた。

「全てを灰燼と化せ。全てを燃やし盡くせ。その名はリホルス!」

「やべっ!」

康太の下に黒と赤が混じった魔法陣が出現し、その中から黒い炎を纏った龍が現れた。

康太は咄嗟に後退し、その黒龍から距離を取る。

リーシャが立て直す時間を稼ぐために、炎弾を放つが黒龍には気にも留めない程ダメージが通っていないようだった。

「おいガキ。お前強えな。勢いでこいつ出しちまったよ」

「黒い炎ってことは黒魔か」

「せーかい。黒魔師は初めて見るかい?」

黒魔師とはいわゆる使いだ。

 一度を使うとその使用者は殘りの人生においてしか魔法が使用できなくなる。

黒魔師の見分け方は意外と簡単だ。

火の魔であれば黒炎。

雷の魔であれば黒雷というように、使用する魔が全て黒化するのだ。

そして黒魔師は使用者として、エスペランサから特別指名手配がされている。

であればこの金髪の男も指名手配されているか、なくとも今後指名手配される人間だろう。

の仕事に首突っ込んだ罰だ。まずはお嬢ちゃんから死んでもらうぜ」

黒龍がリーシャ目掛けて突っ込み黒炎のブレスを吐き出す。

「くそっ間に合え!」

「康太様!」

康太がものすごいスピードでリーシャの元に駆ける。

黒龍の炎が屆くその直前。

康太の指先がリーシャの手にれた。

「リーシャ・ヒュポグリフ!」

名をぶと同時に二人がブレスの黒炎に包まれる。

「あれ?意外とあっけなかったな」

すると黒炎の中から一柱の炎が吹き荒れた。

「黒炎を普通の炎で押しのけたのか?」

先程金髪の男がしたように、黒炎を康太が吹き飛ばした。

しかし、そこにはリーシャの姿は見當たらず、代わりに康太の手には紅の刀があった。

「危なかったっスわ。まさか生魔法(ライフ・マジック)を使われるとは予想外。」

康太が男に賞賛を送ると男は驚いたように康太の手に持つ刀を見ていた

「お前のその刀、いったいどういう手品だよ?」

「手品の種明かしをするマジシャンなんていないでしょ」

「はははっ確かに違いない!」

男が急に大笑いをし出す。

「こりゃあまさかの大當たりじゃねえか」

「あんたには本當の魔法ってやつを見せてやるよ」

剣や槍といった武を魔法で創り出すには、その対価としてが必要になる。

いくら魔法といえど無から有を創り出すことは不可能だ。

先ほど金髪の男が創り出した槍も男のペンダントがとなっている。

では康太の刀のは何か。

「魔法?おいおい、お伽話かなんかかそれは?」

「どうっスかね?」

「まさかその刀、あのお嬢ちゃんか?」

「だったら?」

人間をにするなど天地がひっくり返ってもありえない。

では何をに刀を創り出したのか。

答えは単純だ。

魔力の塊である霊であれば足り得る素質がある。

しかし、如何に理論的に可能であろうとも、そんな膨大な魔力の塊である霊をとしてし得る事など人間の所業ではない。

だが今、江康太という人間はまさしくそれをしている。

「おいおい、大當たりすぎるだろ俺!!」

「っつ!」

「その刀いただくぜ!」

男が勢いよく飛び出し、高速の槍捌きで康太の急所を狙ってくる。

同時に黒炎龍も黒い炎弾を放ち、康太は紙一重でその二つの攻撃をかわし続けていく。

10秒程剣戟の攻防が続き、康太が刀で地面を斬りつけると、その切り口からオレンジに輝く炎が勢いよく吹き出した。

金髪の男は後ろへ勢いよく飛んだため、その炎を被ることはなかったが、黒炎龍はその炎にれてしまった。

すると、そのれた箇所から勢いよく燃え上がり、龍の纏っていた黒炎がオレンジの炎に燃やしつくされ、消滅してしまった。

「なんだそれは?黒魔法の黒炎を燃やすなんぞ、人の扱える魔じゃねえだろ?」

金髪の男は驚きながらも、なお冷靜に狀況を見ている。

「だから言ってるっしょ。これが魔法っスよ!」

「じゃあこの一撃も魔法とやらで防いでみろよ!」

男の持つ槍が黒炎に包まれる。

と同時に康太は刀を納刀し腰に刀を置く。

「全てを燃やせ!黒死を纏う槍(レーヴァテイン)!」

槍が投擲され、槍の通りすぎた後が全て黒炎で燃やし盡くされている。

この類の攻撃は避ければ致命傷になりかねない。

それを咄嗟にじ取った康太は迎撃するべく目にも止まらぬ速さで抜刀する。

「炎舞一式」

その斬撃はオレンジの炎となり投擲された槍をも一瞬で灰にした。

「何っ!」

その炎は留まるところを知らず、男も飲み込む勢いで炎の斬撃が広がる。

金髪の男は地面に黒炎をぶつけ勢いよく上昇し、斬撃を紙一重で躱す。

「はははっ死ぬかと思ったぜ!」

金髪の男が笑って座り込んでいると、いつの間にか康太が剣先を男に突きつけていた。

「おい、あんた。なんで霊を狙うんスか?」

「狙ってんのは俺じゃなくてリーダーなんだがな?」

「リーダー?」

テロン

この場の空気には似合わい音楽が流れた。

「ちょっと待て俺のだ。」

正直待つ義理もないのだが、踏み込む隙がまるでない。

男は攜帯を取り出し普通に電話に出だした。

「なんだよ、今いいとこなんだよ。」

男は不機嫌になりながら電話の相手と話している。

口論になっていたようだがどうやら男の方が折れたらしい。

「はいはい。わかりましたっての」

男は攜帯を切ってポケットへしまった。

「あーすまんな。用事がったから帰るわ」

そういう男は足りないけど仕方ないみたいな顔をして康太達にそういった。

「逃すと思うんすか?」

「逃げられないと思ってんの?」

互いに睨み合い男が指を鳴らした。

すると背後から膨大な魔力の気配がした。

急いで振り返って確認するとオーガと稱される巨大なゴブリンがが黒の魔方陣から現れた。

高さ的には大人3人分くらいの大きさだ。

オーガ自、パワーこそあるがスピードが遅いので大した問題でないし、康太一人でも2程度倒すのは容易である。

しかし、不意をつかれたこともあり、迎撃に一瞬遅れる。

「くそっ!」

一振り傷を負わせると切り口から全へ炎が広がり灰となる。

(康太様!)

刀の姿のリーシャのびで先ほど男がいた場所を振り返る。

するとオーガの出てきたものと同様の魔方陣の上に立っていた

「俺はヴォイドだ。また會おうぜ。年」

まるで瞬間移したかのように、ヴォイドと名乗った男と魔方陣が消え去った。

「逃げられたか!」

あたりを見渡し近くに潛んでいないか確認する。

しかし、辺りを見渡しても炎の殘り火があるだけで人の気配が全くない。

そしてみるみると自分が屋上一面を焼き盡くしたという事実に直面する。

「やっばい、これどうしよう。」

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