霊使いと冠位の10人》神草埜々4

埜々が支部を出たのが19時。

ちょっと休憩ということでカフェに寄ったのが21時

そこから巡回を再開して現在の時刻はもうすぐ0時になろうというところだ。

「あー、流石に疲れたあ。そろそろ支部に戻って仮眠しよ」

基本的に魔省の巡回は0時を境に終わり、それぞれに支部や各駐屯場で待機となる。

多くの人がそこで仮眠をとっているので、埜々も眠そうにしながら支部へ向かう。

支部の方へ足を踏み出した瞬間だ。

サイレンが響き渡り、埜々の肩がビクッと震える。

「え、これって!?」

これは魔省の急警報のサイレンだ。

埜々は狀況を確認しようとスマートフォンを取り出し、支部に連絡しようとしたその時だ。

埜々の背後に狼のような姿をした異形の獣がそこにはいた。

それが魔獣であるのは明白であり、瞬時にそれをじ取った埜々は魔を発する。

振り返りざまに、手のひらに展開した魔法陣から一筋のが放たれ、魔獣のの中心を貫通する。埜々が扱うのは

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これが冠位の10人にるきっかけになった埜々の力だ。

そもそもの魔を使える人間はこの世界で10人もいないと言っても過言ではない。

しかしただレアな魔を持っているから彼は冠位の10人にれたわけではない。

の展開速度が異常に速いのだ。

埜々は普通の人が発にかかる時間のおよそ半分以下の速度で魔を行使できる。

このアドバンテージは魔獣に対しても、対魔使いに対しても強力なものだ。

「なんで魔獣がこんな街の中心街に!?」

すると遠くの方から他の魔省の隊員が埜々に駆け寄ってきた。

「神草さんですよね!?助けてください!とても人手が足りない!」

「どうしたんですか!?」

「街のあちこちに魔獣がいきなり現れて...」

の言葉が終わる前に埜々がの顔の橫に手をばし、先程魔獣に放ったのと同じ魔を発した。

その先には狼型の魔獣がいたが、頭を貫かれ消滅した。

「あ、ありがとうございます」

「気にしないで。けど一何で?」

「原因はわかりません。けど早くどうにかしないと住民に被害が!」

「とりあえず住民の避難を!私も危なくなったらあなたも逃げて!」

はいっと勢いよく返事をしたはすぐさまその場を去っていく。

「急いで原因を突き止めないと」

とは言ったものの何の報もない中で原因の突き止めようもない。

まさか魔省の上位人間が出払っていることと関連があるのかとも考えたが、まずは魔獣が多く出現している場所に向かうこととした。

「探索(サーチライト)」

微かな聲で呪文をつぶやく。

同時に埜々の真下に魔法陣が形され、ほんの一瞬、が町中に広がった。

のサーチライトは範囲の生き、造形を遮蔽があるかどうか関係なく、その場所を把握することができる。

「えっ何これ」

サーチライトは範囲の人や建などは全て明確に把握することができる。

しかし、ある場所に違和じた。

セントラルタワーの屋上だ。

何かがあるというのは分かる。

しかしそれが何であるかがまるでわからない。

ボヤけて霧がかかっているようだ。

「これが原因なの?」

急に出てきた報を整理しようとしていると大きな地響きがなった。

埜々のし離れた箇所にそれは突如として現れた。

空間の狹間と呼べばいいのだろうか。

形容するならば暗闇が形を持ったものだろうか。

その狹間からこれまでの魔獣とは別の魔獣が現れた。

姿は一角鬼のような姿をしてい大きさは3メートル程だろうか。

「邪魔!」

埜々は魔獣の姿を見るなり線魔を放つ。

魔獣の腹部にポッカリと丸いが空いた。

埜々もそれで片がついたと気を緩んだ時だ。

空いた部分がすぐさま修復され、魔獣が拳を振りかざす。

「遅いよ」

魔獣の足元に埜々の魔法陣が展開されていた。

の鉄柱(ライトニングピラー)!」

魔獣はの柱に包まれ、消滅した。

消滅したのを確認したあと埜々はセントラルタワーに向かい走り出す。

これまで幾度かサーチライトの魔を使った事がある埜々であったが、

こんな現象は初めてだった。

「一屋上で何が......!」

セントラルタワーに著くが出り口が施錠されてることができない。

セントラルタワーの屋上の狀況を確認するために埜々はその場でもう一度サーチライトを発する。

すると今度ははっきりと屋上の様子が確認できたのだ。

何かが燃えたような跡があちらこちらにある。

しかしそれだけだ。

屋上に人影もないし、ましてやタワーの中にも人が居る気配がないことがわかっただけだった。

「ここで何かがあったの?」

すると電話のコールが鳴り出した。

埜々は急いでその電話に出ると、エスペランサの支部からの一斉連絡で「街中の魔獣の消滅が確認され、急ぎ住民の安全確保を」との連絡だった。

埜々はセントラルタワーの屋上を見上げ、被害にあった人々を助けるべく、その場を後にした。

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