霊使いと冠位の10人》忘れていた課題

いつ寢てしまったのだろう。

康太の目が奏の家で覚めたのは朝の6時半頃。

そして課題があることに気がついてのは7時頃。

思い出した時には時すでに遅し。

今から課題をやったところで終わるわけがなかった。

的な気分を味わいつつまだ寢ているリーシャとハイネを奏に任せ荷だけ取りに家に帰り、學校へ向かう。

朝一の誰もいない教室にり、自分の機に向かって課題の山を凝視する。

考えに考え抜いたが康太は一つの結論にたどり著いた。

うん。無理だ。

ああ、まさか留年してしまうのか。

來年のクラスに馴染めるかな。

涙を流しながら康太は來年の自分がいるであろうクラスの様子を思い浮かべる。

しかしやれるだけのことをするために、謝りに行こうと康太は思い勢いよく席を立つ。

あれこれ悲しい想像をしているといつの間にか職員室の前まで來ていた。

憂鬱な気分になりながら扉を開けて擔任である峰崎あかねの所まで行く。

「おはよう、青年。昨日は眠れかい?」

爽やかに挨拶されたが、今そんな気分ではない。

Advertisement

「まあしは...」

「ほらできた分提出してろ」

早くよこせと言わんばかりに手をこちらに差し出す。

対して康太はものすごいスピードで土下座をした。

そののこなしに峰崎も目を丸くしてこちらを見ていた。

「申し訳ございません!終わりませんでしたああ!!」

職員室にいる他の先生方の視線がこちらへ向く。

「ちょ、お前私が土下座させてるみたいじゃないか!止めろ!」

「いえ、全ては我が不徳が故に起こった事っス!!どんな処罰でもける所存っス!!」

峰崎は顔を笑顔にしながら靜かに言い放った。

「本気で止めろ毆るぞ」

「ごめんなさい。やめますから勘弁してください」

ものすごく恐ろしい。

最近の教師が毆るとか言っちゃあかんでしょと康太は思ったが口には出さなかった。

職員室をでると偶然にトモノリと鉢合わせた。

「よう、課題提出してたのか?」

「ああ、全力で土下座してきたっス」

「できてねえじゃんか...」

トモノリは朝練が終わって部室の鍵を返しに來たらしい。

鍵を職員室のり口付近にある部室の鍵かけ置き場に鍵を戻して一緒に教室に向かった。

「ところでお前昨日の夜中の事件知ってるか?」

「まあ結構な騒ぎだったっスからね。なのに翌日になんで普通に學校あるんスか。普通臨時休校でいいじゃないスか...」

その事件の渦中にいた康太にしてみれば割と疲労困憊で家でグダグダとしていたい気分なので、眼が座っていた。

そんな康太の様子をみて、はははっとトモノリは苦笑いをしていた。

 トモノリとたわいもない雑談をしながら職員室からから一般科の教室のある棟へ移するために3階にある渡り廊下を目指し二人で階段を上る。

 すると上の階から降りてくる二人の子學生達と出くわした。

 片方の子は黒い髪が背中まで屆くほどのロングヘアをしていて、いつもつけているお気にりの花のヘアピンが彼の可さを際立たせている。

馴染である大築智花だ。

 もう片方は一目見ればわかる程の有名人だ。

サイドテールが特徴的で學校外で知らない人などいないだろうと言える人

魔法省が定めた冠位の名を持つ神草埜々だ。

智花はともかく神草埜々とは知り合いではない。

ここは軽く挨拶するだけでいいかなと思っていたのだがトモノリが二人の子の前に飛び出す。

「神草さん!ファンなんです!サインくれませんか!」

トモノリが見事に思を壊してくれた。

引きつった笑いしか出てこない。

神草も両手を前に出し「えっいやちょっと」と困ったような顔をしていた。

しかし、隣にいた智花が恐ろしい顔をしていて、トモノリに怒鳴った。

「ちょっとトモノリ!恥ずかしいことしてるんじゃないわよ!」

「智花には関係ないだろ!」

トモノリも智花に反論する。

昔に比べると最近はやけに喧嘩が多くなったなと康太は思ったのだが、周りの目が痛くなってきたことに気がついた。

だがそんなことは構い無しに、二人は喧嘩を続ける。

「関係あるわよ!埜々は私の友達なんだから!」

「お前が神草さんと友達だと?なんと恐れ多い!」

「なによ!文句でもあるの!?」

「お前からも頼んでくれよ!馴染だろおお!」

「キモっ」

トモノリにはプライドという言葉はないのだろうかと思う康太であった。

「なんと言われても神草さんからサインをもらえるのならばどんな事だって耐え忍んでみせる!」

「トモノリ、気持ち悪いっス」

一歩後ろでそんなやりとりを見ていたら康太は智花と視線が合った。

いや正確に言えば智花に睨みつけられた。

何とかしてよという視線だということは誰にでもわかるだろう。

「トモノリ。もう授業始まるしまたの機會にしてもらったらどうっスか」

「げっまじかよ!」

「神草さんも急に悪かったっスね。こいつがいきなり」

しかし埜々からの返事はなく、なぜか康太の方を無言で見ていた。

「あのー?神草さん?」

「えっ、あいや何でもないよ!」

「ならいいっスけど....。じゃあ行くっスわ。じゃあな智花」

「うん。またね」

「ちょ、康太待てよ」

それからほどなくしてチャイムの鐘の音が鳴った。

    人が読んでいる<精霊使いと冠位の10人>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください