《貴族に転生したけど追放されたのでスローライフを目指して自前のチートで無雙します》大進行㉓

「悠遠の時を廻る優しき風よ、極限の嵐となりて、恐怖と共に敵を消しされ」

''暴風嵐''

優しく吹いていた風は、突如として暴れだす。

達は、激しく吹き荒れる風どうしのぶつかり合いにより、蔵をまき散らしながら潰れて行く。

そのは、高く吹き上がり赤黒い雨のように地に降った。

「な、なんだこれは! 」

「先生、無事か? 」

背中に黒い翼を生やしたアルトは、靜かに足を地につける。

それと同時に翼はローブへと姿を変え、アルトを包み込んだ。

「ア、アルトか……。さっきのはなんだ。それに、その翼? も……」

何度か対峙したアルトの異常な事にもの応じしなくなったハヴェは、至って冷靜にアルトに訊ねる。

その返答に、アルトはし寂しく思うが、それを表に出すことは無く質問に答えた。

「さっきの魔法は暴風嵐。先生も知ってるでしょ? 」

「し、知ってはいるが実際に見たのは初めてだな。Sランク魔法なんてもの、お目にかかることは滅多にできない」

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Sランク魔法とは、才ある魔法師が何十年の時をかけてようやく會得するものだ。

魔力の消費も激しく、滅多に使われることは無い。

それに、今回アルトが使用したものは広範囲殲滅魔法と呼ばれ、所謂雑魚処理に長けた魔法だ。

雑魚と言っても、均一でレート50はある魔ばかりであるが……。

それに、アルトからすれば消費魔力(アルトにとっては力だが)などさほど多くない。

「それと、このローブはキウンだ。訳あってこうなった……」

アルトは、ひと間あけてし俯いて言う。

「理由は……詮索しないでしい」

アルトのその表から何かじ取ったのだろうか。ハヴェは口を噤んだ。

そして、口を開くことなくアルトの頭をでた。

「先生……」

「よし、殘りを片付けるぞ」

アルトは、首を縦に降る。

既に2回Zランク魔法を放っているアルトの力は殘りない。

魔法でいえばZランク魔法1回、それ以外の魔法を數回使える程度だろう。

「黒龍」

そう呟き、手を翳すと黒い霧と共に一筋の刀が現れる。

闇のように黒く染まり、海底のように深い。

この刀を見た時にアルトがじた印象だ。

さやを抜き取ると、やや薄暗い銀の刃が顕する。

「遂に刀を使うのか、アルト」

「あぁ、力も殘りないしな。溫存しておきたい」

「そーか……よし、行くぞ! 」

2人は駆け出す、目の前に群がる魔達に向かって。

先程のアルトのZランク魔法で魔の増加はほとんど無い。

著々と、ゆっくりではあるが魔は減っているのだ。

アルトは、迫り來る魔の腕を屈んで躱す。そのままクラウチングスタートのような制になり、刀を水平に構えると閃

目の前にいた大きな魔は真っ二つに斬り

裂かれていた。

「この調子でどんどん行く。キウン、支援は頼んだ」

意」

戦場を駆け抜け、すれ違いざまに敵を真っ二つに切り裂く。切り裂かれた魔達も認識が遅れ、2つにを分斷されながらも腕を振るうものまで現れている。

「す、凄い」

し離れたところで的と対峙しているハヴェは、その景に圧倒された。

理屈じゃない、力任せでありながらも繊細なその剣技に、師匠としてでは無く1人の剣士として見とれている。

「やはり、アルトは凄い……っと! 」

「グガァ! 」

ハヴェの後方から腕を振り上げた大きな熊は、を一突きにされ倒れた。

見とれながらも正確に相手のを突くその剣技も、また見事なものであった。

「はぁぁぁぁ! 」

その頃、もう既にハヴェからだいぶ離れた位置にいたアルトは、目の前にいる最後の敵の首を跳ねるときを止めた。

はぁ、はぁ……と、息は軽く上がっている。

アルトは、ハヴェに習ったその剣技と、スキルとして持っていた剣技を掛け合わせることで、より強力剣技をみにつけた。

これは、ハヴェですら知らないことだ。

「……っ!? 」

突如、アルトはただならぬ気配にその場を飛び退く。

だが、そこには何も無い。

だが、草むらの奧からゆっくりとした足音が聞こえてくる。

(なんだ……この気配は。人であり、人でない……そう、魔に近しい気配が混ざりあっているみたいだ)

アルトは、その不可解な気配に寒気をじ、冷や汗を背中に垂らす。

「ハッハッハ、よくここまでこられたな、人間!」

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