《貴族に転生したけど追放されたのでスローライフを目指して自前のチートで無雙します》國士騎士②
翌朝、ようやく朝日が現れた頃、訓練所には大きな荷を背負った騎士隊員達が眠い目をりながら整列をしていた。
「隊長、用意出來たぞ」
「分かった」
ハヴェは、アルトを隊長とする國士騎士の副隊長として就任して以來、アルトのことを隊長と呼ぶようになった。
アルトも、以前までは''先生''と呼んでいたのだが、それだと下に示しがつかないだろうという事で、今は''副長''と呼んでいる。
深く被っていたフードを外し、騎士隊員の前に立つ。
「皆、おはよう。今日から、この騎士隊の準備期間として陛下直々に頂いた1ヶ月間で、お前達を國士騎士に相応しくするための強化合宿を行う。辭退するなら今だ、名乗りあげろ」
數秒の間ができる。だが、誰もその場から立ち去ろうとはしない。既に覚悟はすませているようだ。
「そうか、ならば早速強化合宿を始める。先ずは、後ろに見える山を登ってもらう」
「あ、あれをですか」
アルトが指さす山は、王都よりはるか遠くにあり、2000メートルはくだらない山だ。
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勿論魔も現れるが、比較的弱いものばかりで、王都の騎士隊であれば難なく倒せるものばかりだ。
因みにだが、その向かいにある山は兇暴な魔達が多數生息し、冒険者たちの1番の稼ぎ場であり、1番の死に場でもある。
「あそこにいる魔程度なら問題ないだろう? 」
「そ、そうですが……」
「明日の朝、頂上で待っている。全員揃って登りきれなければ、ペナルティを與える」
「そ、そんな……一日でなんて」
「無理なのか? ならば辭退してもいい。もう一度ばかり、チャンスをやろう。こちらとしても、多の無理を言われて逃げるような腰抜けは不要だからな」
「いや、やります! やらせて頂きます! 」
一人の男の言葉に、その場にいる皆が賛同の意を示す。
隊員達は下に置いていた荷を持ち、駆け足でその場から立ち去った。
「隊長よ……大丈夫か? あいつら」
「無理ならばそれまでだ。その時は、地獄を見せてやる」
「容赦ないねぇ」
「あんたこそ楽しんでいるくせに」
「ははは……バレた? 」
隊員達が、これから迫り來る數々の試練に不安を抱き、目の前の壁に立ち向かっているさなか、この2人は呑気に談笑をしていた。
「じゃあ先生、稽古つけて」
「よしアルト、いつものルールでいいな? 」
「勿論だ」
隊長という仮面を外してしまったアルトとハヴェの関係はいつも通りであった。
お互いに刃引きされた剣を手に取り、3メートルほど間を開けて向かい合う。
「先生、この石が地面に落ちたら開始だ」
「了解」
地面にあった手頃な石を拾うと、上へと投げる。
石は、訓練所の2回の窓のあたりまで高く飛ぶと、直ぐに落下を始めた。
そして、地面に著いた。
2人は、駆け出す。魔法を使えないこの試合では、完全に己ののみが頼りだ。
背を低く保ち、振り下ろされるハヴェの剣に振り上げるかたちでその剣を防ぐアルト。
弾かれた剣は、次の攻撃へと移る。
ハヴェは、今だ下にいるアルトに再度剣を振り下ろす。
アルトは、弾き返された勢いを利用して橫に一回転し、右足でハヴェの剣を持つ手を蹴り抜く。
その勢いは強く、ハヴェの制が揺らいだ。そこには、僅かだが隙ができた。
ここだと言わんばかりに、アルトは刃引きされた剣でを3度打つ。
最後のとどめと、柄の部分で鳩尾に叩き込む寸前、ハヴェの左手によって遮られる。
アルトは、剣を握った右手首を立て、自らの方に刃を向けていた剣を垂直の向きに変える。
そのままハヴェに押し込み、踏みとどまるハヴェを土臺に距離を取った。
「ふぅ、流石アルトだ。いつの間にを織りぜるようなことを覚えた? 」
「何言ってるんだ、剣を教える前に先生がを教えたんだろうが」
「それはそうだが……あれはあくまで剣を失った時のための保険であってだな……」
「だからと言って、剣に使えないわけではないだろ? 」
「そうなんだが……」
どこか釈然としない様子で刃引きの剣を鞘にしまったハヴェは、用意していた魔法薬を一気に飲み干した。
「それにしても、容赦ないよなお前」
「そりゃそうだろう、容赦なんかしていたら勝てねぇからな」
「まぁ、そりゃそうだな」
ハヴェは、笑いながら皮の防と服をぎ始める。
「アルト、風呂ろうや」
「そうだな、汗かいたし一風呂るか」
2人は、訓練施設に設置されている大浴場に向かった。
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