《貴族に転生したけど追放されたのでスローライフを目指して自前のチートで無雙します》領地運営と戦爭準備⑯
 勢い余って踏ん張りが効かず、よろめくように膝を付いた。
「アハハっ、黒龍を瞬殺した貴方に膝を付かせるなんて、もしかして私って最強? 」
 頬の辺りまで裂けた口を大きく広げて気味が悪い笑顔を浮かべるは、どこから取り出したのか急に現れた短剣をクルクルと用に回している。
「俺が直前まで気づけないその奇妙な技は、確かに天才かもしれないね」
 アルトは勢いよく肩に刺さった短剣を抜き、それをに投げ返す。
 風を切る音が響くほど早い短剣だが、によってあっさりと切り落とされてしまう。
「そんなんじゃ、當たらないわよ? 」
「ほう、これは驚いた」
 治癒魔法で傷を完治させ、別の用事をさせていたキウンを念話によってこちらに呼び寄せる。ほんの數秒もかからずにこちらに転移したキウンは、屋敷にいた時のように執事の形を模していた。
「あら、お連れさん?」
「そんなところだ。で、君は何者?」
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「私? それはまだ、言えないわねぇ」
「まだ……か。という事は、いずれ教えてくれるの? 」
「ええ、もちろん。貴方が死ぬ間際に、冥土の土産としてくれてやるわ」
「そうか。なら、々無理やり吐かせるしかないね」
「できるものなら」
 その言葉に間髪れず、は手に持った2本の短剣をアルトに向かって投げ飛ばす。
 先程とは違い気配のじられる短剣は、がまだ力を使っていないのだろうと。
 「キウン」
「はっ! 」
  飛んでくる短剣から主であるアルトを守るように、キウンが盾となりその短剣をでけた。
 はそれにし驚いた表をしたが、すぐにまた短剣を投げた。
「氷よ、我が盾となれ――アイスウォール」
 今度は先程と変わり、アルトが魔法を発して短剣を防ごうとする。が、その壁はアルトの背後に展開され、そして5本の短剣をけ止めた。正面からの短剣は、先程と変わらずにキウンがける。
「何故、分かったの? 」
「し前、本で読んだ事がある。悪魔や天使、霊には、魔法とは違った力を持つ者がいると。ネメスで言うところの、悪魔の七裝がこれに當たる。俺の記憶が間違っていなければ、これらは発時に魔力がじられない……。だよな? 」
「キャッハッハ! やっぱり貴方があの男の主だったのね! 」
「どういう事だ? 」
「私は墮天使ルシファー、元5英傑の1人であり、天使で唯一闇魔法を扱える者。まあ、何十年も前に追放されたんだけどね」
 そう笑うルシファーは、背中から黒に染った大きな羽を出現させる。
「なんだ、こんな事スーリヤから聞いていないぞ」
「あら、それはもしかして、神級天使……えーと、スーリヤだっけ? に、慕われていないとか?」
「はっ、そんなくだらん挑発には乗らんぞ」
「あらぁ、殘念だわ!」
 先程と同じように、何本かの短剣はルシファーの手から、それと同時に魔力がじられない短剣が十數本、アルトの付近に不意に出現する。
「なんとも厄介な技だ。風よ、嵐よ、地を暴れ宙を舞え――テンペスト」
 アルトを中心に荒れ狂う暴風が発生すると、臺風のように渦を描き、現れた短剣全てを飲み込み吹き飛ばす。
「こい、キウン」
「意に」
 そしてまだ、暴風がやまないうちにとアルトはキウンを纏う。
「へぇー、その執事武だったんだ。そんなもの、初めて見たわ」
「俺からすれば、その厄介な技も初めてなんだがな。何せ、発の予兆がじられないから、全方向をカバーするしかない」
「あら、さっきの氷の壁はまぐれ? 」
「あれはただ、お前の考えを読んだだけだ。お前みたいな単純なやつが相手で、助かったよ」
「へぇぇ、言ってくれるじゃない。腹がったわ。し、本気出すわよ」
 どこからともなく現れた100を超えるであろう短剣が、ルシファーの周りを漂う。
「なんて數だ、しかも、なんだその剣。全てなんか黒い煙出してるけど」
「私の力を付與した剣よ。いし強いし、早いわよ」
「そうか……」
「行きなさい! 」
 ルシファーの制している短剣が、一斉にこちらへと向かってくる。全てが一直線にと言う訳ではなく、時に力が発し消えて、不意に背後から現れたりと、予測の出來ないきで攻撃が行われる。
 
 アルトは、それを避けるか捌くかで全ての剣を回避しているが、數のせいか防戦一方だ。
 アルトは何度か仕組みを解明しようとしているが、全く原理が分からない。
 消えたタイミングで後ろに剣を降っても前から現れることもある上に、時間差も多い。ワープならば、すぐに発言するはずなのだ。
 そんな時、し威力の強い短剣を弾いた反で剣が大きく外側に逸れてしまう。
 すると、ガキィンと音を立てて、剣が剣を弾いた音が響いた。
 何も無いところに、短剣が? たまたまワープする出口に剣が行ったのか? いや、そうだとしたら起が変わって現れるはず……。
 
 もしや……。
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