《異世界転生~神に気にられた彼はミリタリーで異世界に日の丸を掲げる~》第二十二話 パララルカ王國殲滅戦6~躙~

左右より目で追いつけない速度で放たれる戦車砲。それらは確実にパララルカ王國軍の士気と兵を削り取っていた。兵のや頭を砲弾が貫通しれた部分とその周囲を文字通り消し飛ばし地面に著弾する。瞬間、周囲の兵をばらばらにするほどの高威力の発が起こり兵を吹き飛ばす。

それが十回同時に起こり間髪れずに二回目、三回目と行われる。指揮、雑兵問わずに平等な”死”が與えられていく姿に兵士の士気は完全に崩壊した。

「に、逃げろぉ!」

「ここにいたら殺される!」

「戻れ! 急いで戻るんだ! ……ぎゃっ!?」

逃げ出した兵に副武裝の機銃斉が行われる。雑兵の當てどころか騎士の鎧すら貫通するその威力に兵たちのはハチの巣にされていく。逃げだせば機銃でハチの巣に、その場にとどまれば戦車砲が猛威を振るい前進すれば野砲より放たれる砲弾の雨が降り注ぐ。パララルカ王國軍は完全に逃げ場を失っていた。

しかし、そんな中でも本陣は比較的安全であった。戦車砲の狙いからは外れ、機銃は逃げ出す兵によって遮られていたからだ。

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「敵はく大砲も持っていたのか……!」

アクラは悔し気に呟く。彼の眼には火を噴く10式戦車の姿があった。彼にはあの機械は死神のようにも見え、自部たちを地獄にいざなう最悪の存在に思えていた。

「將軍! 將軍!」

「っ!」

部下の必死の呼び聲で現実に戻される。彼には茫然とする時間は殘されていなかった。彼は難しい、いや無理だと思いつつ指示を出す。

「……撤退だ! 撤退するぞ! 全力で南に逃げるのだ!」

「はっ!」

アクラの命令が下された事で撤退の銅鑼が鳴らされる。しかし、耳をつんざくような砲撃音にかき消され本陣付近の兵以外に屆いて否かった。彼らは逃げる事も攻める事も出來ずに戦車砲から逃げい機銃斉からを隠す事しか出來ず、遠くないうちに全滅する事となる。

一方のアクラは兵に銅鑼が屆いていなかったとしても悠長に本陣で構えている様な事はしなかった。馬は砲撃音で混し暴れており使いにはならない為走って逃げる。砲撃で一片に全滅しないように兵士たちは覚を開けつつ逃げるがそれを許さないとばかりに4両の戦車がき出す。馬車すら超える速度でアクラ達を追いかける。この速度なら直ぐに追いつかれるだろう。

「っ! アクラ様! 私はここで失禮します!」

「ビーン!? 一何を……!」

「短い間でしたがアクラ様と共に戦えたことを誇りに思います」

ビーンという騎士はそう言うと數名の兵と共に反転して戦車へと向かって行く。それを見てアクラは悟る。自分を逃がすために立ち向かう選択をしたという事に。後ろで機銃音が響き戦車が近づいてくる音が聞こえてくる。たかが十名にも満たない兵では足止めすら出來なかったのだろう。アクラにはそれが分かってしまったが彼にはどうする事も出來なかった。

「……アクラ様! ここで失禮します!」

「……くっ!」

一人、また一人と騎士が足止めを買って出る。それをアクラは涙をこらえて見送る事も出來ずに走る。既に彼の周りには人はいなくなっていた。全て、足止めを買って出てまともに時間を稼ぐことも出來ずに命を落としたのだ。

「あっ……!」

ふと、アクラは石に躓きその場に倒れ込む。立ち上がる事も出來ずにうつ伏せでいるとアクラの周囲を4両の戦車が囲む。すべての砲塔が彼を狙っているが撃って來る事は無かった。そして、戦車から一人の男が出てくると銃を構えつつ話しかける。

「お前がこの軍の大將だな? 捕虜として帝都まで移送する」

「……好きに、しろ」

抗う事すら諦めたアクラはそれだけ言った。男はそれをじ取り彼を縛ると戦車に乗せ自軍の陣地に戻っていくのだった。

パララルカ王國軍二萬と日本帝國軍一萬の戦いは総大將アクラ・ベル・ブレストラッパー以外の兵の全滅と総大將の捕縛というまさに慘敗という結末で終了した。更に王都を破壊され中樞の機能が失われた事でパララルカ王國の抵抗能力はほぼ皆無となった。

數日後、アクラは帝都ヤマトに移送され捕虜という扱いで監生活を送る事になる。一方の日本帝國軍は南下を続け更地とクレーターしか殘らない王都に到著。パララルカ王國を東西に分斷する事に功したが東側の勢力は聯合艦隊によって攻撃をけたため呆気なく降伏した。一方の西部も國王や宰相などの上層部が逃げていたがまともな兵など殘っておらず降伏乃至寢返りは時間の問題となりつつあった。

パララルカ王國が無法地帯を平定する時にぶつかって以來五年に渡る両國の戦いは日本帝國の圧勝という形で幕を閉じようとしているのだった。

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