《すばらしき竜生!》第2話 喧嘩
『お前……學校行ってこい』
いつも通り夕食を食べているとバルトから唐突にそんな事を言われた。なぜこんなことを言われなきゃいけないのか。
――時はし遡る。
◆◇◆
ロードは五歳になった。竜種の長は早くて他の黒竜達と同じくらいけるようになっていた。
ロードは毎日魔狩りで森にり浸っており順調に力を増しているがバルトとの試合では未だに勝ったことはなかった。 そうしてロードにとって日課になっている魔狩りを朝から夕方までやって帰宅して夕飯を食べている時にバルトから七天竜の會議があるから一緒に行こうと言われた。
バルトの話によると七天竜の子供達を次の會議の場で顔合わせをしようと前回の會議で決まったそうだ。 ロードは若干面倒だなと思いつつ、我儘を言ってはいけないと思ったので仕方なく承諾した。
――そして事件は起きる。
次の日にバルトと共に會議の場に共に來て他の七天竜の子供と対面した。 炎竜の子バロールはロードにとって嫌いなタイプだ。子供達の中で一番年上という事もあって無駄にリーダーを気取っていた。全てにおいて上から目線で話しかけてきてロードはイライラしていた。 水竜スイレンは理系タイプで見た目は眼鏡をクイッとかしてそうなイメージだ。話し方も見た目通りで賢い印象が強かった。 風竜と白竜はの子……竜的に言うとメスだった。風竜アンリの方は元気っ子でロードも話やすく、白竜ハクアと共に楽しそうに話していた。白竜ハクアは大人しめな子だった。 土竜ラグラは大きくてタフそうな見た目だったので元ヤンのロードは良いサンドバッグになりそうと思ったのだが、流石にやめておこうと自分を抑える。 一番ロードと気が合ったのは雷竜のラゴウでロードと同じく不良っぽい気配があった。最終的にはロードと肩を組み合って一緒に笑って話をしていた。
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『おいお前……ロードだっけか? 黒竜って事はお前強いんだろ? し試合しようぜ』
ロードがそろそろ帰りたいと思っていた頃にバロールが話しかけてくる。
『……………』『おい……ロードてめぇ、俺を無視とか年下のくせに生意気じゃねぇか』『……どうしたんですかバロールさん。最年長のくせにそんな馬鹿丸出しの悪い口調で炎竜の品格が疑われますよ?』
バロール以外の周囲の者はロードのいきなりの喧嘩口調に若干引き気味だが、バロールは青筋を立てて見るからに怒っていた。
『いい度だな。……いいだろう決闘だ!』『お斷りします』
即答だ。 何よりバロールと決闘したとしてロードには何のメリットも無いのでける義理はない。 そしてバロールはロードにとっての句を言ってしまう。
『なんだ? 俺に負けるのが怖いのか? 黒竜のくせにヘタレなんだな。ハッ……雑魚が』
――ブチンッ!
周囲には何かが切れる音がした。
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『俺をヘタレだと? 俺を雑魚だと? ハハッ……バロールてめぇ最年長だからって調子乗ってんじゃねぇぞ。何よりこの俺に挑発をするとは……そんなに死にたいらしいな』
短い時間でロードと親友と言える仲になったラゴウですら恐怖をじる程にロードに殺意がまとわり付いていた。 この場にクロトの舎弟達が居たなら手を合わせてバロールに向けて合掌していたことだろう。
クロトは不良グループの頭になってから気が荒くなっていた。そしてクロトを下に見て挑発してくる事が一番嫌いなのだ。 いつしか不良の間にはこんな言葉ができていた。
"クロトを挑発するな。まだ五満足で生活したいのなら"
この後、會議を終えたバルト達に許可を貰いロード達は開けた場所に移していた。もちろんロードとバロールの決闘の為に。
『いやぁ、アグラすまんな。うちのロードが問題を起こして』『気にするなバルト。元はと言えばうちのバロールが挑発したのが悪いんじゃ。それに俺達も若い時によく喧嘩してたじゃねぇか』『そうだな……それじゃあどっちの子がボロボロになってもお咎め無しって事でいいな? シルラード回復頼んだ』『なぜ炎竜、雷竜、黒竜はいつも問題を起こすのか。……はぁ、了解した』
炎竜の長アグラとバルトが懐かしそうに自分達の子供を見て話しており、回復を頼まれた白竜の長シルラードは昔の事を思い出したようにため息を溢す。
『両方共に準備いいな? ロードしは手加減してやれよ』
まるでバロールの負けが確定してるかの様なバルトの言葉にバロールがしムッとした表になる。
『ハハッ、それは無理ですよ父さん。俺に挑発するのがどれだけ危険か教えてあげないと』『うーん、まぁいいか。それじゃあ共に距離をとれ、そろそろ始めるぞ』
ロードとバロールは言われた通り距離をとった。二の間は1km程度だ。この程度の距離ならロードは一瞬で詰めることができる。
『…………始め!』
ロードは相手に先手を譲ろうとかない。バロールはすぐさま飛んで炎竜お得意の撃でロードに向かって直徑30cmの火球を無數に打ち出すが、ロードにとって火球のスピードはそんなに速くなかったので頑丈な前腳の爪と尾を使って全弾打ち返す。
『はぁ!? なんだそりゃあ!』
流石に反応出來なかったのかバロールは弾き返された火球に直撃した。バロールは一瞬だけ怯むがロードにとって十分な隙だった。 バロールがもう一度ロードに目線を合わせた時、ロードはその場からすでに消えている。
『戦闘中に相手を見失うと命取りだぜ?』
そんな聲が上から聞こえたのでバロールが上を向こうとした瞬間に果てしない衝撃がバロールを襲った。
ドゴォン!
そんな音と共にバロールは地面に思いっきり叩きつけられた。 だが流石は竜なだけあって無駄にタフなようで意識は朦朧としているが気絶はしていないようだ。
『うぅ……クソが……はぁはぁ』
『……バルトさん。ロードは何をしたんですか? 僕の目には何も見えなかったんですが』『いや普通に木に三角跳びしてバロールより高く跳んで尾で叩き落としただけだが?』『あれが普通ですか……僕もあれくらい出來るようになるんですか?』『いやスイレン……黒竜の戦い方は他の竜とは違う。あれが異常だと思った方がいい』
外野はそんな呑気なことを言っているが、ロードの猛攻はまだ終わっていない。 バルトとの試合中に習得した"天駆"で空中を蹴りながら下に向かって加速していき、未だに意識が朦朧としているバロールに上から鋭利な爪で強襲を掛ける。
『おい立てよバロール。俺を雑魚呼ばわりしたんだからまだ戦えるんだよなぁ? 自分は最年長だって威張ってたよなぁ? だったら……まだ終わらねぇだろ?』
ロードはそんな事を言いながら、上からバロールに覆いかぶさりバロールの背中を拳で毆打したり爪で引き裂いたりしている。一撃の重さのせいで風が発生し、周囲の木々がしなる。 バロールは苦痛のあまりすでに意識を手放しているがロードはお構いなしに毆り続ける。
流石の大人達もロードの容赦無い追撃に『うわぁ……』と引いている。 子供達に関しては現実から目を背けるようにして顔を下に向けている。
『おーいロード、そろそろ終わりにしろ。バロールも既に気絶してるぞ。……というかそろそろ止めないとバロール死ぬから』『………チっ。はい父さん』
試合が終わり白竜が慌ててバロールの元に駆け寄り回復を掛けている。 ロードとしては、あと二、三本折っておきたかったが流石にバルトに止められてはロードも我慢するしかない。
『いや本當にすまんなアグラ。うちの息子がここまで強くなってるなんて思わなくてな』『だから気にすんなバルト。元はと言えばバロールがそっちの息子さんに喧嘩吹っかけたのが悪いんだしな。バロール自もし調子に乗ってた所もあったから、今日は良いお勉強になっただろうよ。ロードつったか? 良いきだったぜ』『……ありがとうございます』
その後は白竜の治療のおかげでほぼ通常通りまで回復したバロールだったが未だに意識が戻らないのでアグラが抱えて帰っていった。 その日はそのままお開きになり、それぞれが帰路につく。 この日からロードを除く竜族の子供達に一つの教訓が出來たという。
"ロードを挑発して怒らしたら死ぬ"
ロードとバルトも家に帰り母親のネイルに今日の試合の事を話したら驚きながら『なんでうちの男は喧嘩早いのかしら……』と獨り言を言っていた。
◆◇◆
――そして冒頭に戻る。
『なんで學校に行く必要があるの? というか竜の學校ってあったのか』
前世での學校生活を思い出して良い記憶が無いロードはしだけ嫌そうな口調でバルトに質問する。
『そりゃあ今すぐとは言わないけどよ。そうだな……五十歳になるまではここで力なり使える魔法を覚えるなりしとけ』『なんで五十歳?』『そのくらいが竜としての年時代突だからだよ。俺達は何千年も生きるんだぜ? 人類の歴史を念に勉強してたお前とはし時間の覚が違うんだよ』
し考えるような素振りを見せるロードを見てバルトは頭をガリガリ掻きながら話を続ける。
『今日の試合を見て思ったんだよ。お前は強い、いや……強くなりすぎた。この後もお前は段々強くなっていくだろう、だから力の使い方を教わらなきゃダメなんだ。ロード……お前にはまだ早い話だろうけどなこれは大切な事なんだ。わかってくれ』『………はぁわかったよ、そんなに言うなら學校行くよ。その代わり殘り四十五年間はみっちり戦い方を教えてね?』『おっしゃあ! 任せろ! とりあえず明日から"人化"の練習だ』
その言葉を聞いた瞬間、ロードはしの間思考停止する。
『………學校って人間のかよ!』
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