《すばらしき竜生!》第3話 親子喧嘩

學校の件から十三年が経ち、ロードは元の世界と同じ年になっていた。

ロードはバルトに連れられて"人化"を習得する為、滝がある川辺に練習に來ていた。

『一つ質問いいか? なんでわざわざ遠い川辺まで來なきゃならなかったんだ?』『そりゃあお前。魔法の習得って言ったら滝だろうが』『あぁ……うん……分かるけどね? もういいや言っちゃうぞ。……季節を考えろバカバルト!』

ロードもバルトの考えにはし納得するところはあるのだが、ロードが周りを見渡せばそこは一面の銀世界が広がっていた。 今の季節は冬真っ盛りであり森の生き達はほとんどが冬眠している、確かに竜族は冬眠をしないが滝行をするには季節外れすぎる。

『……だって面白そうなんだもん』『……この野郎』

自分の息子が寒さで震える姿を面白そうと言うバルトにロードは青筋をいくつも立てていた。

『ま……まぁいいじゃんかよ。……よし分かった! 分かったからその爪をしまえ! なんか今日のお前怖いぞ』

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一向に反省しないバルトに完全にキレかかったロードは"剛爪"を使って無言でバルトにゆっくりと迫る。言いしれぬ覇気をじたのかバルトが慌てて土下座を決行した。これが現在の竜族最強だと思うと自然とため息が出てくる。

『じゃあこうしようぜ。"人化"で試合して勝負に勝ったほうが滝行だ。ついでに人化狀態の戦い方も覚えられるからいいだろ? な?』『なにその俺が絶対に勝つからどんな條件でも大丈夫だろってじのやつは』『別に〜? そんなこと思っていませんけど〜?』

ロードがジト目で指摘するとバルトが目を逸らしてどうせ出來ない口笛を吹いている。

『はぁ……いいぜ。その條件けてやるよ。……ふふっ、父さんの滝行姿楽しみだなぁ、最近覚えた"記録魔法"をようやく使う時が來るよ』

ロードは人化狀態だったら絶対に勝負に勝つ自信があった。ロードは前世の格闘を軽く習得していて、不良グループの頭になってから喧嘩では負け無しだったのだ。 一度だけ一人で歩いている時に二十人に強襲をけた事があるのだがクロトは集団戦法も覚えていたので難なく返り討ちにした事もある。

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『じゃあまずは先に"人化"を覚えなきゃ始まらねぇからな、早速始めるぞ。 "人化"はそんなに難しくねぇ。集中して自分自が人になった姿を想像するだけだ。最初はリザードマンみたいな姿になれば上出來だ』

リザードマンとはトカゲが二本足で歩いているような生だ。全が固い鱗に覆われていて長槍を武にして戦う種族だ。ほとんどのリザードマンは沼地に生息しており、ロードも本でしか見たことがない。

『百聞は一見に如かずって言うからな。まず俺が"人化"するから見ていろ』

バルトはそう言うと目を閉じて集中し始めた。段々とバルトの周囲に黒い渦が出來始め、渦はやがてバルトを中心に球の形になり段々と小していく。一本の木の大きさだった球は人が一人れる程まで小さくなりしずつ薄れていった。 中から出てきたのは黒髪の見た目は中年男で若干ダンディな姿だった。髪はオールバックになっており、長は170cmくらいで細めのだが筋はビッシリと引き締まっている。

「どうよロード。結構カッコいいだろ?」『……とりあえずやってみるよ』『見た目に関してはスルーですか……』

ロードは先程見たまま集中をして人の形を想像し始める。

(原型は元の世界の俺でいいだろう。髪は黒にして髪型は……適當でいいや。長はバルトとの同じで、やっぱり不良っぽいギラついたじがいいな。目のは赤がカッコいいかな?)

ロードが想像している間にロードの周りにはバルトと同じく黒い渦が出來ており既に人がれるの程度の球が出來ていた。

「お? いいじじゃねぇか。まさかの一発功かよ」

(よし、このくらいで良いだろう)

ロードは大のゲームで言うキャラクリエイトを考えて目を開けた。ロードは考えていただけなので魔法を発している覚が無かったので、目線が変わらないと思っていたがいつの間にか"人化"が出來ていたらしくロードの姿は人に変わっていた。

「……どうよ」「いやぁ、流石は俺の息子だな。一発で功とか才能あるじゃねぇかこの野郎」

バルトが近づいてきて肩を組んでロードの頬をグリグリしてくるのでウザくなったロードはバルトの手を払う。

「んだよ、つれねぇなぁ」「うっさい、それよりも約束忘れてねぇだろうな。ほら……早くやろうぜ」

ロードは構えながら左手をバルトの目の前に出してクイックイッと手を折り曲げる。

「はぁ……なんでそんなに自信満々なのお前」

バルトもし呆れながらロードとは違う構えをする。 バルトは右手を後ろに構えて前かがみの姿勢になっている。伊達に現竜族最強と呼ばれていない隙のない構えだった。

「「――――っ」」

最初に仕掛けたのはバルトだった。

バルトは高速でロードに向かって突進しながら勢いを乗せた爪を振り下ろし、ロードは半で回って避けながらバルトの後ろ姿を勢いのまま回し蹴りをする。

――ガツン! 

回し蹴りが直撃したと思ったがダメージをけたのはロードだった。バルトは直撃をける寸前で部分的に"化"をして攻撃を防ぎ、ロードは鋼鉄を蹴り飛ばしたような痛みが足にくる。

「――ってぇ。父さんの"化"すぎだろ」「お前だって蹴り強すぎだろ。あれ直撃したら普通に背中折れるぞ。……それより滝行の覚悟はついたか?」「ハッ、ぬかせ」

ロードは"地"で距離を詰め、バルトは構えるが正面突破は無理だと考えたロードは地面を蹴り目潰しをする。

「うおっ!」

バルトは砂埃のせいで見えなくなった視界を"風爪"で払うがロードは既に"天軀"で空中に移しており、頭上から踵落としを叩き込む。 バルトは咄嗟に"部分化"をして腕で防するが最大加速した踵落としに耐えられないのか地面が刳れてバルトも片足が崩れ始める。

「ぐぅ……っおらぁ!」

負け時と全力でロードを振り払うが既に"天軀"で背後に移していたロードは、バルトを確実に仕留めるため"豪腳"で打撃力と加速を上乗せして下から蹴り上げる。 蹴り上げられたバルトは空中でを翻して"飛爪"で牽制をしながら"剛爪"で地面ごと抉る。ロードも左腕の"部分化"で防いだのだがバルトの鋭利な爪は"化"ごと腕を切り裂く。

「無駄にスペック高すぎだろ父さん。……ったく」「お前だって本當に今日が"人化"初めてなんだよな? なんでき慣れてんだよ」「……伊達に人について勉強してねぇよ。……あとなんかきやすいんだよ」

もちろんロードが元人間だからきが慣れてるのは當然の事だったのだが。一つだけ問題がある。

(前世の格闘意味無いじゃんかよ。普通の人相手だったら使えるのかも知れないけど、俺達は人外だったな……意味無いに決まってるか)

「さて、そろそろ滝行の覚悟は決まったか父さん」「……ヘヘッ。言うじゃねぇか……本気で行くぞ」

地面を抉る音を殘してバルトの姿が瞬時にブレる。周囲に警戒するロードだが、バルトの気配を一切じ無い。

(何処だ? まさか一瞬で"気配探知"の範囲から出たのか? いや、流石に父さんでもそれは無理だ。だとしたら――っ!?)

周囲に気をつけながら考えを巡らせていたロードは突然の橫からの衝撃に吹っ飛ぶ。 いくつもの木にぶつかり盛大に吐したロードに余裕な聲でバルトが話しかけてくる。

「おいおいロードよぉ。ちゃんと気を張ってなきゃダメだろうがよ」「――ガッ、ゲホッ。ふざけんな"気配探知"を最大限に張っていても分からなかったぞ。子供相手に本気過ぎるんじゃないか?」「うるせぇやい。俺はこの季節に滝行なんざまっぴらゴメンなんだよ!」

……どうしようもなく子供っぽい理由である。

またもやバルトが気配ごと消える。すぐに衝撃が來たが吹っ飛ぶ程ではない。どうやらしずつ毆って消費させる作戦らしい。なんともいやらしい攻撃にロードはひたすら"化"して耐える。

(気配が分からないという事はわざと消してるのか? 集中しろ俺。いくら気配が無くても音はあるはずだ。それを頼りに居場所を摑んでやる)

ロードは手をだらんとばして力を抜く。聴覚以外の覚をシャットダウンして僅かな音すら逃さぬようにする。

「どうした、そろそろ負けを認めるのか!」

――ジャリ。

(聴こえる。地面を蹴る音が)

――トンッ。

(聴こえる。木を蹴る音が)

「止めだロードォ!」

(じる。わかる。そこに……居るんだな?)

「みーつけた」

そしてロードはバルトを視認した。

「なぁ!?」

バルトは今までで一番の速度で拳を出して突撃してくる。全重を掛けているので本當に止めを刺すつもりなのだろう。 ロードは冷靜に一歩後ろに下がり、バルトを避けながら襟首を摑みとる。勢いが十分なままその場で一回転しながらバルトを逃がさないように頭を右手で思いっきり摑み地面に思い切り叩き落とした。

―――ドガァン!

盛大な音が響いて決著がようやく著いた。 バルトは白目を剝いて気絶している。

「ハァ……ハァ……俺の勝ちだ」

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