《すばらしき竜生!》第5話 久しぶりの再會

目を開けると白い空間にいた。 ふとが重い気がしたので見下ろしてみると、何故か今は前世の姿になっていた。

――――……ん?

この空間に來たのだから、あの時の神も居るのではと思い、呼び掛けようとしたのだが、聲も出せなくなっていた。

「今の君は思念のようなものだからね、簡単に言っちゃえば、魂だけの存在? だから前世の濃い魂の形になってるんだと思うよ」

一時の夢みたいなものか。……というか気配無く後ろに現れるのやめろよ、普通にビックリしたぞおい。

「そう? 久しぶりだったから悪戯心で驚かしたくなってね。どうかな、そっちの世界でも元気してる?」

あぁ、どこかのお馬鹿さんが無駄に張り切って、凄い種族に生まれ変わったからな。退屈はしてないよ。

「やっぱりしは強い種族がいいかなぁって思ってね。久しぶりに話してて楽しい相手だったから頑張っちゃった」

し強い種族がドラゴンって……やっぱり神はし頭がおかしいな。

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「ひっどいなぁ、神の頑張りには素直に謝しといたほうがいいよ?」

ハイハイドウモアリガトウゴザイマース。……というか異世界でもお前と會話出來るのな。なんで今になってこの空間に?

「本當は竜族にコンタクトは取りづらいんだけどね、それのせいで今までで出來なかったんだけど……ほら、君"人化"出來るようになっただろ? それでやっとコンタクト取りやすくなったんだ。 それで用事っていうのは、し忘れていた事と……謝罪かな」

ん、謝罪? なに……お前、俺になんかしたの?

「最近、君の集落に襲撃をしてきた人間達がいるだろ? それも僕が擔當した転生者なんだよ」

なるほど、責任的なやつか。 ……お前さ"弱強食"って知ってるよな。強い者が勝って、弱い者が死ぬ。今はそんな世界に生きているんだ。 非常なのかもしれないけど、集落の竜達は他の転生者より弱かったってだけだ。俺だって魔を何萬と食っているんだ。同種が殺られたくらいで俺が何か言える立場じゃない。 ………それに最後は俺が竜も人間も食べちゃったし。

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「……うん、そう言ってもらえると気が楽だよ」

それで、忘れていた事って何?

「本當は転生者には特殊能力を二個授けるんだけど、前は転生者案件が沢山あって忘れてたんだ」

いや、今のままでも十分強いんだけど、更になんか貰えるのか? なんかヌルゲーになりそうだから要らないんだけど。

「ん〜、じゃあ"竜眼"と"収納"はどうだい? 力の増加は無いけど、機能は良いと思うよ」

"竜眼"? ……観てきたアニメとかの知識で予想すると噓を見破るとか? "収納"は説明が無くても分かるよ、確かに便利そうだな。

「そうだね、"竜眼"は噓を見破る能力もあるけど……そういうのは自分で見つける方が面白いだろ?」

そうだな、教えてもらったら楽しみが無くなる……わかってるじゃねぇか神様。

「じゃあ"竜眼"を埋め込むよ…………よし、これで大丈夫。"収納"は夢が覚めたら自的に習得出來るよ。これからも頑張ってね。僕も暇な時に君を観てることにするよ」

そうか。それじゃあ出來るだけお前が退屈しないように生きるとするよ。

「楽しみにしてるよ。そうだ、謝罪料に一つアドバイス……帝都には気をつけて」

ん? 分かった、アドバイスありがとさん。

……そろそろ夢も終わりみたいだな。視界がボヤけて何も見えなくなって來た。

「ん、それでは……良い旅を」

◆◇◆

ロードはゆっくりと目を開ける。真っ暗だった窟の中も、今ではクリアになっている。

『これも"竜眼"の能力という事か。今は何でも見通す眼って理解でいいだろ』

ロードは神から最後に聞いたアドバイスを思い出して、この後の行き先を大まかに決める。

『帝都には気をつけろ、か…………それよりも帝都の場所が分からねぇから気をつけるも何も無いけどな』

アッハッハとロードは笑いながら、意外とこの世界の事に知識が無いのを再確認する。 ともかくずっとこの場に留まってても意味が無いので、移しながら適當に街を探そうと窟を出る。

『おっと"収納"はもう習得出來てるんだっけか? ……どうやるんだこれ』

ロードはとりあえず近くにあった木を軽く折り、手に取った。心の中で"収納"と念じてみれば木は手のひらから消えて、逆に出て來いと念じたら手に戻ってきた。 次に生きでも収納出來るのか試してみたが、それは収納が出來なかった。既に死んでいるれられて、水分も問題無くれられた。 収納出來る量はまだ分からないが、八mの木を十本収納しても、まだじだったので結構ると思って良さそうだった。

『あ、そういえば他の七天竜に事を話しに行ったほうがいいか? ………いや、バルトとネイルが話に行ってる可能が高いから、これは保留』

當分のロードの目標は黒竜種を襲撃してきた人間達の報を調べるのと、バルトとネイルの大まかな居場所の特定になる。

ブツブツとロードが様々な考えを巡らせていると、遠くから何やら喧騒の様な怒號が微かに聞こえてきた。

「――オラァァ! 待てこの小娘ぇええ!!」「帝國軍をコケにしやがった罪は大きいぞ!!」「野郎ブッ殺してやる!」

約一人、ネタを口走っている奴がいるが、多分追いかけている方は大変お怒りモードらしかった。 あからさまに面倒事な気がしたが、神が忠告してきた帝國が絡んでいそうなので様子見だけでもと思い、聲が聞こえた場所まで跳んでいく。

◆◇◆

聲のする場所付近まで來てみたが、そこは草原が広がっていた。狀況はの子一人を兵隊らしき人達が約五十人で追いかけているという、あの子何やったん? と思ってしまう構図だった。 ちなみにロードは竜形態だと目立つと思ったので人型になって遠くから様子を見ている。

追いかけられているは遠目から見ても綺麗で、絶世のとはあんな子の事を言うんだなぁとロードは場違いな事を思ってしまう。 眺めながらを助けるべきか迷っていると、が急カーブをしてこちらに向かってきた。 一瞬、バレたか!? と思ったロードだがそれは無いだろうと首を降る。こちらと追いかけっこ軍団との距離は二kmも離れている。普通のに見えるはずが無い。……なのだが。

「そこの黒い人! さっきから眺めてないでさっさと助けなさいよ〜!」

――思いっきりバレていた。

「あいつ、どういう目をしてるんだよ」

謎のし驚愕しながら、バレてしまっては仕方が無いと隠れていた場所から出て"地"を連続で行い、瞬時に長い距離を詰める。 は遠くにいた人間が瞬時に自分の隣に現れた事に目を見開いて、追いかけ隊の男達は突然の隣に見知らぬ男が現れたのに揺して、追いかけるのを停止した。

「おいガキ、どういう狀況か説明し――」

ロードはに説明を求めようと振り返り、言葉に詰まった。

綺麗な純白の髪にロードと同じく紅に輝く瞳、男達に罵倒を言われる様な者とは思えないしく高級そうな服裝では白で統一されている。

「なによそんなにジロジロ見て……私の顔に何か付いてる?」

全てを見通すかのように鮮やかな目で見つめられたロードは咄嗟に視線を逸らす。

「あ……あぁ、何でもない。それより何かあったのか? おい、そこの一番偉そうなお前答えろ」

ロードは気を取り直して、次は男達に問いかける。指名された男はロードを訝しげに見ながら、ロードが中立の立場だと理解したのか、相変わらず剣に手を添えたままだが質問に答えてくれる。

「お前の後ろにいる小娘が、駐屯中の我らの基地に侵して、金と食糧を盜んで逃げたのだ。 量とはいえ我ら帝國軍に喧嘩を売ったことに変わりはない、相応の罰を與えなければ部下共に示しがつかん!」

ロードは呆れてジト目でを振り返る。はサッと視線をずらして下手な口笛を吹いている。 何故かいきなりこのが殘念に見えてくるのはロードだけではないはずだ。無に腹が立ったので、襟首を摑んで口元をムギュッと軽く摑む。

「ふぁっ、ふぁって! ふぉあえうほうがふぁういんふぁない!」

が何かを必死に訴えているが、ロードが口元を摑んでいるので最早言葉になっていない。仕方が無いので襟首を摑んだまま、もう一度言うように顎で促す。

「だって……元から帝國は大嫌いだからちょこっと嫌がらせしようかなぁ……って思ってたら帝國の基地を見つけたのよ。それに見張り番は半分寢てるし、丁度いいからやってやろうと思ったの」

「「「「「…………………………」」」」」

殘念なの言い訳を聞いてロードも男達も皆揃って黙ってしまう。ロードは無言のまま縄を取り出し、殘念を縛る。

「えっ……ちょ待って? えっ、マジで?」「それでは皆さんお元気で」

未だに狀況を理解してない男達に、軽く手を振ってさっさとこの場から撤収する。ロードには既に殘念を助けるという選択肢は無かった。 心の中には只々無駄な時間を過ごしたなと思うだけだった。

「――ちょ!? 待ってぇええええええ!!!」

殘念の絶が草原に轟いた。

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