《すばらしき竜生!》第14話 依頼達

「ひっ―――」

子供たちは怯えた。シエラがいきなりロードを叩いたからではない。ロードの笑顔に子供たちは皆怯えている。 それはオーク達の気持ち悪い下品な笑みとは全く異なる、恐怖でも震える笑顔―――いや、冷笑のせいだ。

「おいどうすんだ、ビンタのせいでガキ共が怯えてるじゃねぇか」「どう考えてもロードの笑顔のせいでしょうが! というかあんたの笑顔が兇悪過ぎるのに、いい加減気づきなさいよ!」「なん……だと?」

原因が自分にあると分かったロードは、しショックをけたようで頭を抱えている。

「私達は村の人達から依頼をけて來たの。あそこで頭を抱えてる馬鹿は放っといて、村に帰りましょ? 村のみんなも心配しているわ」「―――うん!」「お姉ちゃんありがとう!」

子供たちはシエラには心を開いたようで口々に謝の言葉を言っているが、眠っていてモニターを観ていない子供たちは、目の前にいるが天然の殺戮兵だとは知らない。 そして、それを知っているロードは、あり得ないとでも言うように「……噓だろ?」と呟いている。

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その後、子供たちを引き連れて窟を出た。もちろん來る前にオークは殲滅したので比較的安全に出ることが出來たのだが、ロードの足取りが怪しくフラフラしていた。余程、自分の笑顔が子供たちに恐怖を與えたのがショックなのだろう。 元ヤンキーだって子供には弱いのだ。

「よし、そろそろ竜に戻るか」「え、正バレても大丈夫なの?」「ガキ共が村の人間に言いふらさなければ問題無い。速度はどのくらいに抑えたほうがいいんだ?」「私の時の十分の一。それでも馬車より速いけど大丈夫だと思うわよ。心配ならロープで縛る?」「いや、俺のでも摑んどけば大丈夫だろ。おいガキ共」

二人の話についていけてない子供たちは、いきなりロードに呼ばれてビクッ! となる。

「いいか? これからの魔法を使うから村の人間には話しちゃダメだぞ。……何せだからな」「………の……魔法?」「あぁ、もしをバラしたら………分かるだろ?」「子供を脅すな!」

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―――スパァン!

ロードが笑ってし言葉に圧を込め、子供たちは怯えて素早く首を何回も縦に振り、シエラのツッコミが再び炸裂した。

「なんだよ、単なる冗談だろうが」「ロードの冗談での脅しは灑落にならなんわ! ほら薄暗くなってきてるんだから早くしなさい」「……チッ、分かったよ」

言われてロードは"人化"を解く。 ロードの事を怯えていた子供たちは、ロードの姿が変わっていく度に怪訝な顔になり、正が分かってくると目をキラキラと輝かせた。

「す、すげー! 本のドラゴンだ!」「俺、本のドラゴンなんて初めて見た……」「………信じられない」「を喋ったら……殺される! ――ヒィッ!」「お父さん達どうやって依頼したんだろう?」「………………」

子供たちの反応は、興している者、呆然としている者、驚愕している者と様々だった。

「ほら、早く乗れ。俺のにしっかりと摑まってろよ、油斷したら振り落とされるぞ」「「「「「「………はい」」」」」」「ここまで來たのが二分くらいだから予定では村に二十分後に著くな。それじゃあ行くぞ」

ロードは子供が落ちないようにゆっくりと加速した。

◆◇◆

「本當にあの二人に任せて大丈夫なのか?」「心配よねぇ。もし失敗してオークの怒りを買ったら………」「それに二人共若かったぞ?」「やっぱり金を出してでも冒険者を雇った方が良かったんじゃないか?」「しかも、帰ってくるのが今日の夜だって? どう見ても無茶だろ」

村人達はロード達が村を出てってから、村の中央に集まり話をしていた。 意見として出てくるのは、失敗するのではないかという事ばかりだった。村長とその孫以外は誰も功するなどと思ってはいなかった。

「大丈夫じゃ。儂らは大人しく待ってれば良い」「村長。本當に大丈夫なんですか? やっぱり近くの竜王國の冒険者を新しく雇った方が良いんじゃないですか?」「馬鹿、今から馬車で行っても丸一日掛かるぞ。それに盜賊が怖い」

村長がいくら宥めても、村人から不安の聲が止まない。挙句には誰が馬車で竜王國に行くかを決め始めている。

「皆の者、靜まれい!」

村長の一喝に村人全員が靜かになる。 更に村長は話を進める。

「皆が心配するのも納得出來る。だが、それは儂の家での出來事を知らないからじゃ。 昨日の夕暮れ、二人にオークについての話をしていた時だ、がオークの王を変異種ユニークじゃろうと推測した。そう考えるのは當然じゃ、元冒険者の儂もそうじゃろうなと考えた。……だが、年の方はその話を聞いた時、どうしたと思う? ―――笑ったのじゃ。それはもう楽しそうにな。じゃが、その笑顔はただただ無邪気で兇悪じゃった。儂は年に恐怖を抱き始めたわい。

そしてここの馬鹿二人が年の事を弱そうだと言った。それも完全に見下して笑いながらな。そしたら年は激怒し、が必死に止めた。儂は気がついたら土下座して謝っておったわ。 オークの軍隊が村に來た時は、戦って死のうと思えた。せめて一矢報いて死んでやろう、そのくらいの覚悟を決める余裕は儂にもあった。だが、年の怒りにはどうやっても逆らえない恐怖があった。赤子の手を捻るよりも簡単に儂らが殺される幻覚が視えたほどじゃ。そして年の暴走を止めたも只者ではないじゃろう。

じゃから儂は、あの二人が失敗するとは思えんのじゃ」

村人の一人が唾を飲み込む音が聞こえた。それほど不安が飛びっていた場は靜まり返っていた。 なぜなら、あり得ないのだ。村長は否定しているが、村で一番強いのは現在でも元冒険者の村長であり、誰も村長に勝負で勝った事は無い。

その村長本人が本能的な恐怖を旅人の年に恐怖をじたと言っているのだ。村長と孫は、その時の出來事を思い出したのかをブルリと震わせた。 村人達は何も言えなくなっていた。

「そ、それで二人の要求は何だったんですか? 金は関係無いと聞きました。それでは一何を要求されたのですか?」

村人の1人がそんな疑問をぶつけると、村長は首を振り信じられない言葉を放った。

「周辺の簡単な地図じゃ」「…………………は? 今、なんと?」「簡単な地図じゃ。地図を描いてくれと言ってきた」「そんな………あり得ない! 地図如きで良いなんて!」「儂だって、もう分からんわ!」

村人達は無意識に祈りだした。 今はそうする事しか出來なかった。

そして約束の夜になる。

「あ、おい! あそこに見えるのはまさか!」

誰かが発した聲で皆が村の外を見る。そこには暗くて見づらいが、二人の人影と六人の小さい人影が薄っすらと見えた。

◆◇◆

『おいおいマジかよ』「ん? どうしたの?」

ロードの突然の呟きに、シエラがロードの背中でくつろぎながらそんな事を聞いてくる。ロードの背中がフサフサしてて気持ちいいのか、シエラは走り出してからずっとゴロゴロしながら寢そべっている。

『村人達が村の中心に集まっている。まさかずっとあそこに居たわけじゃないよな………』「うわぁ、それだったら凄いわねぇ。………暇なのかしら」『心配なだけだろ。………本當に暇なんだろうけど』「え!? もう村見えるの?」

子供がを乗り出して目の前を集中して見る。 子供たちも最初は振り落とされないように必死だったが、慣れてきたらシエラと楽しくお喋りをしていた。相変わらずはがっしり摑んでいるが。

『遠くにボンヤリとっているのが見えるだろ? それがお前達の村だ』

子供たちは本當に戻って來られた事に嬉しいのか騒ぎ出した。中には泣いてる子供も居る。

『村に近くなったら降りろよ。そこからは歩くからな』「もうそのまま村にっちゃえば?」『お前、俺が正を明かした時なんて言った? 「あの災厄と呼ばれている黒竜種」って言ったよな』「あうっ」『黒竜種を村人で知っている人が居たらどうする。地図どころじゃなくなるぞ。下手したら追い出される。 …………そしたら、脅してでも描いてもらうがな』「何? 最後聞こえなかっ―――あ、いいわ、予想できたから。と言うか大人なら誰でも知ってるわよ? それだけ有名な事をしたのよロードのご先祖は」

村の近くまで到著したので、子供たちを降ろして"人化"に戻り歩いて村の門まで歩く。

村人達はロード達を視認してから、ずっと頭を下げたままだ。

「ん、今帰った」

その一言で村人達は歓聲を挙げた。

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