《すばらしき竜生!》第20話 

「ば、馬鹿め! わざわざ一人でやられに來たのか! 先程の幻魔法には驚いたが、我らはまだ千人弱居るのだぞ? 大規模な幻魔法を使った後では―――って、聞いているのか貴様ぁ!」

ロードは長い話を聞いてる暇は無く、傷だらけのシエルを抱えて村人の場所まで歩いて行く。

「シエルを頼む」「………ロードさん、すいません。儂も不覚を取ってしまい………」「気にするな………とは言えないほど俺はキレている。だから黙って俺の命令に従え。―――そこから1歩もくんじゃねぇ」

ロードは、早速貰った白竜の指に魔力を流す。するとシエルと村人達を囲う結界が出來上がった。

「これは……見事な結界ですな」「あぁ【神話級ゴッズ】っていうらしいぞ」「―――なっ!?」

村長が絶句しているが、そんな事を気にせずに兵士達を見據える。

「おうお前ら、よくも俺の大切な仲間を限界まで甚振ってくれたな。………だが、死んでないから最悪の殺し方だけは許してやる」

最悪の殺し方だけは許すという言葉に、兵士達はしばかりホッとする。まだ生きられる可能があると希を抱いたが、ロードの次の言葉でそれは絶に変わる。

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「本當は嬲り殺しを予定していたんだが、お前らは瞬時に殺してやるよ。無駄に息もさせない程にあっさりとあの世へ行け」

ロードは一人の兵士を見ながら指を前に出して、橫薙ぎに腕を払った。

「―――へ?」

その兵士からしたら世界が急に回りだした様に見えただろう。しかし、実際にはロードが放った"飛爪"で、兵士の首が綺麗に切斷されて宙を回っていた。それはボトリと鈍い音をたてて地面に落ちる。その首はなんとも間抜けな顔でこちらを見ていた。 宣言通り、あっさりと一人の兵士が死んだ。そのすぐ橫にいた別の兵士が、ようやく事態を把握し始めて悲鳴をあげる。それは段々と広がり兵士全員に恐怖というが更に込み上げてきた。

「―――ククッ。アハハハハハ! いいねぇ! 悲鳴と絶が心地良いぜ!」

ロードが腕を振るう。また一人の首が飛ぶ。ロードが何回も腕を振るう。面白いように首が飛ぶ。 その場にはすでに大量の溜まりが出來ており、ようやくけるようになった団長は急いで逃げようとする。

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「逃がすかよ」「あえっ?」

急にバランスを崩した団長は、盛大に地面に転がる。足をかそうとしても力がらない、何かがおかしいと思った団長は視線を下半に移す。

「―――ァああああ! 俺の足がぁ!?」

団長の腰から下はロードの爪によって、綺麗に刈り取られていた。下半が無い事が分かって、激しい痛みが団長を支配していく。

「うるせぇなぁ。男がそんなに喚くんじゃねぇよ。タマ付いてんのかぁ? ………あ、ついさっき無くなったか? アハハハハハ!」「………あ………ぁああああ」「おっと、これじゃあ出で死んじまうな。ちょっと待ってろー、応急処置してやるからなぁ。いやぁー、俺ってば優しいなぁ」

すぐさま炎竜のピアスに魔力を込めて、手のひらに炎の力を集める。ロードは、それを出している足にピタリとくっつける。

「―――ぁあづいぃいいい!? やめでぐれぇえええ!」

ジュウウウウというの焼ける良い音がして団長の何度目か分からない悲鳴があがる。辺りには焦げ臭い臭いが漂っていた。

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「お前だけは簡単に殺さねぇよ? 今からお前の部下をサクッと殺してくるから待っててな」

そうしている間に、他にもけるようになっていた兵士が何人か転びながら逃げている。 ロードは気怠そうに近くにあった生首を持ち上げて、逃げている兵士目掛けてそれを投げつける。 豪速球の生首は見事に逃げている兵士の後頭部に直撃して、合計二つの頭が弾けて綺麗な花弁が出來上がった。それを何回も繰り返して、逃げている兵士全員が綺麗に咲いた。

「この化けめ!」「よくも仲間を!」「刺し違えても殺す!」

逃げられぬなら戦うと覚悟を決めた兵士達が槍を持ち、ロードに特攻してくる。 それぞれの兵士は二人一組になってロードを囲み、前に一人後ろに一人となり一斉に突撃を開始した。前の兵士がやられても、すぐ後ろの兵士が隙ができてるロードを刺すという作戦なのだろう。さすがは兵士と呼べる戦とチームワークだった。

だが、それがロードに通じるかと言われたら、答えは否だ。 腳に力をれたロードは逆立ちしながら回転蹴りで風の衝撃刃を飛ばし、難なく対処した。結果として兵士達の上半と下半がおさらばする事となった。ロードの周りに真っ赤なシャワーが飛び散る。

「―――さぁ、次はどいつだ?」

それは死神の死の宣告となっていた。

―――ロードの躙劇から一分後。

そこは地獄だった。兵士達は全ての力を出し盡くして特攻したがロードの前では意味が無く、ロードが腕を振るうのとほぼ同時に兵士達は細切れになる。それが何回も繰り返され、最後に立っているのはロードだけになっていた。 もちろん、倒れている兵士は全て死んでおり、あちこちに死の山と溜まりが出來ている。未だに帝國軍で生き殘っているのは団長だけだ。最もその団長は、激しい痛みと下半が無くなったショックで気絶していたが。

「おい、寢てんじゃねぇよ」「―――グッ! ぁあああぁあ!」

顔を蹴られて気絶から戻った団長は、再度激痛で絶をあげる。

「―――黙れよ」「――――――ッ!」

うっとおしくなったロードは、口を切り裂く。団長は悲鳴にならない悲鳴をあげてこちらを睨む。

「おー、怖い怖い。まぁそんなに睨むなって、これから俺の質問に答えてくれれば命は特別に見逃してやるよ」

団長は未だに黙ってこちらを睨んできているだけだ。だが、ほぼ死も同然の奴に睨まれても何も怖くない。 だからロードも気にしないで質問を始める。

「一つ目の質問だ。俺達を力ずくで連れて來いというのを命令したのは誰だ?」「…………………」「んー、なるほど。帝王陛下と」「―――!?」

なぜ分かるのだ! という目をされた。理由は"竜眼"の能力のおかげなのだが、教える義理もないので無視して質問を続ける。

「二つ目。し前に黒竜の集落を襲撃してきたのはお前ら帝國軍か?」「……………」「やっぱり帝國軍なのか。しかも竜狩りドラゴンスレイヤーってのが居るのか。それは用心しなきゃな」「なぜ分かるのだ! 私は何も言っていないのだぞ!?」「うるせぇっての」「―――ッガ! ………ゲホッ! ゴホッ!」

いきなり大聲をあげた団長を蹴り飛ばして黙らせる。団長は崩れかけの家に飛ばされて、抵抗もできずに壁に思い切りぶつかる。突然の腹への衝撃に呼吸が困難になり、なんとか息をするもののむせてしまう。

「痛いか? ………そういえば、シエルの腹にも痣があったな。凄く痛々しかったからなぁ、めっちゃ強く蹴られたんだろうなぁ、可哀想だとは思わないか? 俺だったら大切な仲間を痛めつけた犯人を絶対に殺してやるけどな………。 なぁ? 三つ目の質問だ。シエルを最後まで甚振ってたのはお前か?」「ち、違っ! 私ではない!」

団長は必死に否定するが"竜眼"で見なくてもロードは分かっていた。なぜなら、ロードが村に著いた時にシエルを嘲笑いながら大剣を振りかぶっていたのは、忌まわしきこの男なのだから。

「いや、お前だろ? どんなペテン師でも、俺に噓は通じない。………まぁ、正直言ってだれでもいいんだけどな。このイライラをぶつける事が出來れば誰でもいいんだ。………それに全員殺すのは最初から確定事項だったんだよ」

再度、団長の腹を蹴る。またしても壁に激突し、バウンドして元の場所に戻ってくる。更に腹を蹴る。団長は壁に當たり、また戻ってくる。 次はしだけ力を込めて腹を蹴る。だが壁の限界がきてしまい、団長が壁に激突すると崩れてしまった。

瓦礫の中から、団長を探し出して首を摑みながら取り出す。無意識に摑む力が強くなってしまい、メキメキという音が聞こえてくる。

「た、たすけっ―――」「言っただろ? お前は絶対に許さない。だからお前は簡単に殺さない。………苦しみながら後悔して死ねよ」

ロードは、首を絞める力を更に強くする。団長の顔が段々と青白くなってきて、今にも死にそうになっている。それでも握力は強まるばかりだ。

「―――――ッ! ……………………」

最後に何かが折れる音がして、団長は一切かなくなった。頭はガクンと下を向いており、手は力したようにブラーンと垂れている。………足は元々切れているので、無かったが。

「…………はぁ。終わったな」

本人は疲れているようだが、村人から見たらそれは口元を吊り上げて笑っているようにしか見えなかった。 村人達は歓聲をあげる事も出來ずに、ただロードを見ているだけだ。その視線には、自分達が弱いばかりにシエルを重癥にしてしまった申し訳無い気持ちと、突然と言うようにあっさりと殘りの兵士と団長を殺したロードへの畏怖のが混ざっていた。

ロードはやり過ぎたとしばかり後悔をしていた。確かにシエルが重癥をおっていたことでロードは理が飛んでいた。結果的にシエルと村人達を助ける事に功したが、兵士を好き放題に殺した代償に村人達に恐怖心を植え付けてしまった。

「……村長。頼みがあるんだが」「な、なんでしょうロードさん」「シエルを宿に連れてってくれ」「………貴方はどうするのですか?」「俺は離れたところで野宿でもしてるよ」「そんな………今までと変わらずに宿に泊まって良いのですぞ?」

ロードはため息をひとつ。

「村長。村人達の目を見てみろ、皆の目には恐怖のがある。それは帝國軍の事じゃない、俺へのだろう」「―――そんな事はございません!」

村長が必死に否定しているが、噓なのはバレバレだった。元々、村長はロードに恐怖心がしだけあったようだが、今回で更にそれが強くなっていた。

「噓だな」「―――ッ! ………ですが、それでも!」

制止する村人を振りほどき、今にも倒れそうなくらいヨロヨロと歩きながらロードの前に立ち、即座に土下座の制になる。

「それでも村を救ってくれた事に変わりはありませぬ! たとえ貴方が魔王でも悪魔でもシエラ殿が命懸けで守ってくださり、ロード殿も我らを助けてくださいました! ………確かに私はロード殿の事を恐れているのかもしれませぬ。ですが、救ってくれた恩は絶対に忘れておりません!」

村長の言葉に村人達も同じ事を思い、全員が綺麗な土下座をし始めた。まさかの展開にロードは驚いており、やがて心を落ち著かせると恥ずかしそうに微笑みながら謝の言葉を口にする。

「………ありがとな」「それはこっちの臺詞ですよロード殿」

未だに村人達の視線からは恐怖心が見え隠れしている。それでも、それよりも謝の心のほうが大きいようで、ロードをなんとかれようとしているようだ。

(………ふっ……好きな連中だな)

「それじゃあシエルが起きるまで世話になる」「―――ようこそロード殿。我らの村、アイラーナへ!」

その言葉は心からの歓迎だった。

「それじゃあ、後始末はどうするんだ? 流石にこんな數の死を放置は出來ないだろ」「魔がいれば勝手に食ってくれるのですが、我らでは一緒に食われて終わりです」「………なるほど、じゃあそれは俺がやろう」「ありがとうございます。その間に村の修復は終わると思いますので………」「ん? 大丈夫だ、すぐに終わる」「………え?」

風のネックレスに多めの魔力を込めて、膨大な風を作り出す。その風は死んだ兵士達を纏め上げて、ロードのむ場所まで飛ばす。もちろんむ場所とは、一番近くの森だ。まぁ、それでも八㎞は離れているのだが。

「………それじゃあ俺はシエルのところに居るから何かあったら呼んでくれ」「ア、ハイ

ロードは「あー、疲れたー」と肩を回しながら宿に戻っていく。ついでに歩きながら水のブレスレットに魔力を込め、指から水を噴水みたいに出して飲んでいる。ちなみに念じて冷たくしたのでとても味しい水だった。 村人達はポカーンと口を開けてロードを見つめているだけだった。村長だけは伝説と呼ばれている【神話級ゴッズ】のいいかげんな扱いに驚愕をしていた。 恐怖心はあるが、今一度【神話級ゴッズ】の凄まじさを説明しなければならないと決心した。

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